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大発会に登場したのは麻生財務相。2日間で567円安と多難な船出となった photo Getty Images
厚労省、農協、経済団体の抵抗を排除できるのか? アベノミクス勝負の年の「3つのガバナンス問題」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41668
2015年01月07日(水) 磯山 友幸「経済ニュースの裏側」 現代ビジネス
■アベノミクスの真価が問われる年
「これまではアベノミクスへの期待を中心とした相場だったが、これからは内容と実績が厳しく検証される。真の価値が評価される」
1月5日の大発会で日本取引所グループの斉藤惇・最高経営責任者(CEO)はこうあいさつした。年末の経営者アンケートでも「年内に日経平均株価2万円」という声が大勢を占め、株価上昇への期待は高い。だが、そんな期待先行のムードを戒め、内実が大事だと警鐘を鳴らしたのである。
実際、投資家も強気一辺倒ではない。年明けの株式市場では、日経平均株価が42円安と安値でスタートを切った後、翌6日は525円安と急落、1万7000円を割った。海外で原油価格の下落が続き、欧米株式が急落したのが引き金だったが、「世界経済が不安定な中で積極的に日本株を買い支えるだけの材料に乏しい」(外資系金融幹部)という声が聞かれた。
安倍晋三首相は年初の記者会見などで「経済最優先でいく」と繰り返し発言している。年末の総選挙で与党が3分の2の議席を得たことで、「アベノミクスが信任を得た」とも述べている。
つまり、アベノミクスをさらに進めると安倍首相は繰り返しているのだが、株式市場はいまひとつ反応していないのだ。「言葉はもういいから、成果を見せてくれ」といったところだろう。
ではアベノミクスの真価を示すことにつながる具体的な成果とは何か。秋から年末へ向けての日本株上昇を支えてきた外国人投資家がとくに注目するのが3つの「ガバナンス」問題だ。
■GPIFは厚労省や政府から「独立」できるか
まず第1がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のガバナンス改革。これまでは厚生労働省所管の独立行政法人として、事実上、厚労省のコントロール下に置かれてきた。130兆円にのぼる国民の財産を運用する組織を、きちんと管理し、専門家が責任をもって運用する体制づくりが不可欠だ。
9月の内閣改造で就任した塩崎恭久厚労相は繰り返し、ガバナンス改革の必要性を述べてきた。方針については独立した専門家が合議制で決める日本銀行の政策委員会のような組織にGPIFを変えるべきだとしてきた。国民の財産を守る観点からは当然の改革と言えるだろう。これについては多くの新聞も社説などで支持してきた。
一方で、官邸や厚労省内には、GPIFのガバナンス改革に反対する動きもあるという。厚労省からすれば、所管の独法から外れれば、年金にからむ権益を失うことになる。
現在も運用委員会など外部委員で運用方針を決めている建前だが、厚労省の意向に左右されているのが現実だ。巨額資金の運用先決定などの権限を握る意味は大きい。
官邸の中には、アベノミクスの成功を国民が実感するには株価上昇が欠かせないという意見がある。GPIFはこれまでの国債中心の運用から株式へシフトしていく方針を決めたばかりだが、そのGPIFを政治がコントロールできることこそ重要だと考えているのだ。GPIFに独立性を与えてしまうと、政権の思うがままに動かせなくなると言うわけだ。
GPIFのガバナンス改革に特に注目しているのは、日本株への長期投資を考えている海外の年金基金などだ。GPIFの巨額資金の運用にその時々の政府が関与できる体制のままだと、内閣が交代したとたんに運用方針が変わることになりかねない。長期の安定的な運用を考える年金基金の担当者からすれば、それは大きなリスクなのだ。独立性の高い専門家による運用体制が敷かれなければ、日本の株式市場は、いつ巨大な鯨が飛び込んでくるかもしれない「危険な池」ということになってしまう。
厚労相の肝煎りで設置した社会保険審議会年金部会の作業班が、近く意見書をまとめる予定。独立行政法人のままでは政府が選ぶ理事長がすべての権限を一手に握ることになるため、合議制の体制を敷くことはできない。合議制を敷けるような独法ではない特殊会社などの組織にGPIFを改組することが必要で、そのためには法律を改正しなければならない。どんな改正法が出て来るのか。GPIFのガバナンス改革が骨抜きになるようなら、日本の株式市場への信頼や、アベノミクスの改革方針へ期待が一気に失われることになりかねない。
■経済団体の抵抗を抑えて企業のガバナンスを強化できるか
試金石の2番目は、日本企業のガバナンス強化の行方だ。すでに金融庁と東京証券取引所が共同で設置した事務局が「コーポレートガバナンス・コード」の原案が示されており、一般からの意見を聞いている。
コーポレートガバナンスの強化は、安倍内閣が昨年6月の成長戦略の柱として掲げたもの。企業に社外取締役の目を入れるなど、ガバナンスを強化することで、企業自身に収益力を上げさせようというのが狙いだ。具体的には、取締役会などに社外取締役の目が入ることで、これまで唯々諾々と続けてきた不採算事業などを継続するかどうか議論せざるを得なくなり、結果的に不採算事業からの撤退などを促すという考え方だ。
2月中にも最終的なコードが完成、東証の上場規則に盛り込まれる予定。安倍内閣が経済団体などの抵抗を最後まで抑えて、実効性の高いコードの運用ルールを作れるかどうかが焦点になる。
さらに、このコードを受けて、具体的に日本企業がどう動いていくか、国内外の投資家は注目している。
ガバナンス・コードの導入などによって、日本企業に経営改善の圧力がかかるのは間違いない。だが、それで具体的な成果を上げ、ROE(株主資本利益率)など収益性が改善できるかどうかは、各企業の取り組みにかかっている。
もちろん、具体的に日本企業のROEが高まることになれば、それが株価上昇につながるのは明らかだ。日本企業のROEが国際水準並みに上昇すれば、最低でもROEを2倍にすることになる。つまり、それが実現すれば株価が2倍になってもおかしくないわけだ。
■農協の監査権限をJA全中から切り離せるか
アベノミクスの真価が問われるガバナンス問題の3つ目は、農協のガバナンス問題である。
現在、安倍内閣は全国農業協同組合中央会(JA全中)の組織体制の見直しを検討中だ。年明けの日本経済新聞はJA全中が地域農協に対して持つ監査権を廃止し、JA全中を任意団体に改組する方針を報じたが、JA全中は真正面から抵抗しており、実際にどこまで改革ができるかどうか注目される。
JA全中が持つ監査権は農協法に定められており、地域農協に対して強制適用されている。全中は監査権を通じて、地域農協の詳細な経営内容を把握できるため、地域農協の自主性を損なっているとの批判が強い。地域農協を事実上の下部組織化しているのも法律による監査権限を持っているからに他ならない。
しかもこの監査は、監査とはいうものの公認会計士による通常の監査とはまったく別物。農協監査士というJA全中が認めた人物が監査をするという特殊な仕組みになっている。
西川公也農相は年初の会見で、強制監査権は認めないとしたものの、「(農協の監査は)農協にしか出来ないという意見もある」と述べている。監査権廃止後もJA全中の監査機能自体は残すことが想定されている模様で、現在の農協監査と、監査法人による監査を農協自身が選べるようにするという考えだという。だが、これでは実質的にJA全中の監査権を残すのと変わらない。通常国会でどんな農協法改正案が出て来るのか。
GPIFのガバナンス改革、日本企業のコーポレートガバナンス・コード、そして農協組織のガバナンス改革。この3つの改革が具体的にどう着地するかを見ていれば、安倍首相の改革姿勢が口だけなのかどうか、その本気度が見えてくる。
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