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「原発を止めているがために、毎日100億円もの国富が海外に流出している」 安倍晋三×櫻井よしこ対談(1)〈週刊新潮〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150105-00010001-shincho-pol
BOOKS&NEWS 矢来町ぐるり 1月5日(月)11時31分配信
選挙に大勝し、新たな船出を迎えた第3次安倍政権。だがアベノミクスの効果は未だ限定的だ。急激な円安は新たな弊害を生み、再増税先送りで財政再建を絶望視する声もあがる。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、不安渦巻く日本経済の先行きについて、総理に問うた。
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櫻井よしこ 選挙での大勝、おめでとうございます。快勝で、第3次安倍内閣がスタートしました。自民党単独で291議席を獲得し、自民・公明の与党で3分の2を制した。これほどの勝利を可能ならしめた背景には、安定した政権のもと、「日本が抱える重要課題を解決し、歴史的使命を果たしてほしい」という国民の期待の大きさがあると思います。これだけの信任を得た今、総理には、中国の脅威への対処や集団的自衛権に関わる安保法制の整備、憲法改正、経済成長のための改革など、重要課題に、さらに断固とした姿勢で取り組んでいただきたいと思います。とりわけ大事なのは、アベノミクスの恩恵をより一層、浸透させることでしょうか。
安倍晋三総理 そうですね。まず日本の国力を強くするには、何より経済が大事ですから。2012年にスタートさせたアベノミクスはまだ道半ばです。もっとも、雇用面に関して言えば、我々の主導した経済政策によって、すでに100万人の雇用を創出することができました。また宿題であった正規雇用も、この2014年7〜9月期で、前年同期比10万人の増加を達成しています。まだ給与の面で景気回復を実感できない人が多いかもしれませんが、2015年に企業がさらなる賃上げを実行していけば、多くの国民の方に、我々の経済政策は成功しつつある、間違いなく良い方向に向かっているんだということを理解していただけるものと考えています。
櫻井 確かに先の政労使会議で、総理は「2015年春の賃上げをぜひお願いしたい」と要望され、経済界からも前向きな回答を引き出しました。それが実現すれば、展望はかなり明るくなるとお考えですか。
安倍 はい。先の経済界、労働界との合意では、いくつかの点を重視して、お願いしました。その一つは、円安により大きな利益をあげている企業には、それに関連して原材料の高騰に苦慮する下請けの関連企業に対し、充分な配慮をお願いしたいということです。それにより、中小企業や小規模事業者の皆さんにも、円安によるメリットを平等に得られるようにしていくことが可能になると思います。
櫻井 その円安ですが、ここまで進むと、弊害の方が大きいという意見もあります。今後さらに、130円台などになれば、日本はどうなるのかと、先行きを危ぶむ声も出ています。円安についてはどうお考えですか。
■ものづくり企業の国内回帰
安倍 もちろん、円高、円安、それぞれにメリット、デメリットがあります。円安にも難点があるわけですが、だからといって、民主党政権下の行き過ぎた円高に戻っていいはずはありません。日本はこれまで苛烈な円高によって疲弊し、塗炭の苦しみに喘いできました。国際競争力を失うまいと、自動車メーカーや半導体、家電メーカーなどの「ものづくり企業」が次々と日本から出ていき、海外に生産拠点を移すという事態に晒されたわけです。それによって、我々は雇用を失い、税収も喪失する憂き目に遭いました。しかしながら、その為替がようやく是正されてきた。これによって、たとえば東芝は、この間、国内にあった4つの生産工場の閉鎖を余儀なくされましたが、今度は一転、3000億円以上を投資して、三重県四日市市に生産ラインの新設を決めました(2014年9月着工)。再び日本に工場を作り、日本人を雇って、日本で税金を納めようと、そういう重大な経営判断を行ったのです。民主党政権時代に円高、デフレを放置したため、先を競うようにものづくり企業が国内から出て行ってしまったのですが、この悪しき流れを変えることができたと自負しています。今後、さらに大手企業が国内回帰を進めるでしょう。そもそも大手メーカーは海外に避難できても、下請けの企業はついていく資力がありませんから、工場や店舗を閉めざるを得なかった。だから、倒産件数もそれにつれて増加したわけです。私が第2次安倍政権を発足させる前の2012年の企業の倒産件数は月平均約1000件でしたが、それを2014年には月平均約800件とし、この間、2割近く減らすことができました。
櫻井 確かにそういうプラス面も大きいですね。その反面、輸入による原材料の価格高騰で中小の製造業は厳しい現実に直面し、食料品の値上がりも国民の生活を直撃しています。
安倍 もちろん、原材料や食料品の値上がりにもしっかりと目配りをしていく必要があると認識しています。円安が生む弊害への対策はきちんと手を打たねばなりません。具体的に申し上げますと、中小や零細企業で原材料費が上がり、経営困難に陥っている会社や、借金の返済もままならなくなっているところには、政府系金融機関による低利の融資を行っていきますし、金融機関に対し、返済の猶予をするよう要請もしています。
もっとも、円安によって、他のプラス効果も出ています。海外からの旅行者が増大しているのです。東日本大震災以前は年間800万人ほどだった観光客が、2014年は1300万人を突破する見込みです。実に500万人も増えたわけで、そのインパクトは相当大きい。こうした旅行者が地方にも足を伸ばしてくれれば、地域の経済を潤してくれます。なにしろ、外国人旅行者は、日本人旅行者より平均して、一人約10万円も多くお金を使うという統計があります。円安による観光客の増加は、少子化、人口減による消費の冷え込みをカバーし、内需拡大に寄与してくれるのです。旅行収支(訪日外国人が日本で使う消費金額から、日本人旅行者が海外で支出する金額を差し引いた金額)が2014年4月、月単位において、あの大阪万国博覧会が開かれた1970年7月以来、44年ぶりに黒字に転じました。かつては、毎年3兆円の赤字であり、これを通年で黒字にするのは大変なことですが、それが実現できれば、日本の経済にとっては大変なメリットとなります。観光は新たな稼ぎ頭の産業となり得るもので、しかも地方創生につながる大きな可能性も秘めているのです。
櫻井 円安の好機をうまく捉え、そのメリットを日本経済の成長につなげていく一方で、もう一つ、心配なのが、財政再建の問題です。巨額の財政赤字を抱え、日本の国と地方を合わせた長期債務残高はすでに1000兆円を突破しています。これだけの大借金を背負いながら、消費税の10%への再増税が先送りされました。先の選挙は、その是非も問うたうえで、信任を勝ち得たわけですが、やはり政府は財政健全化への道筋を示す責務があります。日本の個人金融資産は約1654兆円もあり、それで国債を吸収している形ですが、債務総額はその3分の2にまで迫ってきています。このままのペースで国債を発行し続ければ、あと10年ほどで借金の額がこれを上回ってしまうという指摘があります。財政再建はもはや待ったなしの感がありますが、総理はどういう対策をお考えでしょうか。
■毎日100億の国富流出
安倍 我々は、借入金を除く税収などの歳入と、過去の借入金の元利払いを除いた歳出の差を示す「プライマリー・バランス」(基礎的財政収支)を挙げて、財政健全化への道程を示しています。まずは2015年度までに、このプライマリー・バランスの赤字額の対GDP比を、2010年度(マイナス6・6%)に比べ、半減させていきます。そのうえで、2020年度までにプライマリー・バランスを黒字化する目標を掲げているのです。これらの目標を達成すべく、現在、全力で取り組んでいるところであります。
櫻井 これまで中々できなかったことですが、実現できるのでしょうか。
安倍 安倍政権になって、この2年間でプライマリー・バランスは7兆円も改善しました。対GDP比でも1・5%、赤字幅を縮小させています。その意味では、財政は着実に、確実に改善してきているのです。いずれにしろ経済の再生なくして、財政再建はありません。この間、税収は50兆円を超え、民主党政権時代と比べると、8兆円も増やすことができました。今後、経済の好循環を創り上げ、デフレ経済から脱却していく中で、さらに税収を増やしながら、その一方で無駄はしっかりと削減していきたい。そうすることで経済成長と財政健全化の両方を成し遂げたいと考えています。
櫻井 国家運営の命運がかかった極めて重大な課題ですから、ぜひとも国民に率直に語りかけて財政再建を進めてほしいと思います。
エネルギー政策では原発の再稼働問題についても、前向きの指導力が必要です。世界で一番厳しい規制基準を設けている原子力規制委員会の審査に合格した原発は安全が確認されたわけですから、再稼働させていくことが、日本経済にとっても大切なはずです。
安倍 仰る通りです。規制委員会が新基準に適合したと確認した原発は、地元の理解を得る努力を続けながら、再稼働を進めていきます。目下、国内の原発をすべて止めているがために、火力発電の稼働に要する追加燃料の輸入増などで、毎日、1OO億円もの国富が海外に流出しているのです。これは貿易赤字を拡大させているばかりか、電気料金の値上げにより、国民負担にもつながっています。
安倍晋三×櫻井よしこ対談(2)では安倍総理が安保法制の整備と憲法改正について語る。
「日本ルネッサンス【拡大版】安倍晋三×櫻井よしこ対談 円安 財政再建 日本経済の『先行き不安』説に答える!」より
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