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[古森義久]【日本の安全保障は戦後最大の危機へ】〜米・対日防衛政策にも揺らぎ〜
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150103-00010005-jindepth-int
Japan In-depth 1月3日(土)23時30分配信
2015年は日本にとって国家安全保障の年となるだろう。
いやなるべきである。国家安全保障の年とは、つまり日本という国の外部との関係での安全保障が最も切迫した課題になりそうな年ということである。国にとっての安全保障はもちろん平和、そして独立を意味する。
日本にとっての安全や繁栄はもちろん日本の国内の状況でほとんどが決められる。だが国家の根幹の安保というのは決してそうではない。国家安全保障というのは、日本が外部の世界との安全保障上の状態によって一義的には決まるのだ。だから日本国内だけをみていては、日本の安全保障はわからない。いまの日本の政府にとっても、国民にとっても、砂に頭を突っこんだ「ダチョウの平和」へと逃げこむことは許されないのだ。
日本の安全保障は新しい年には戦後最大ともいえる危機にさらされる。その最大の要因は中国の動きである。中国の軍事力の膨張と軍事志向の領土拡張政策、とくに日本に対する尖閣諸島奪取の構え、そしてその基盤となる日本敵視の政策が日本にとっての危機を生み出すのだ。
中国共産党の基本政策に「反日」が組み込まれていることはすでに現実である。つい12月の南京事件の記念日を国家行事にする集会をみても反日の国是は明白だといえる。第二次大戦の歴史を過去とはせずに日本をなお敵と位置づける中国共産党の基本姿勢の反映だといえよう。中国のそうした反日は若者たちの教育、とくに歴史教科書での日本の扱いをみても明白である。
テレビや映画での果てしない「残虐な日本人」イメージの投射も中国で暮らした人ならば、いやでも知っている。そのうえにわが尖閣諸島への連日のような領海、領空の侵入である。中国側が軍事力を使っても、尖閣を奪おうとする構えは露骨となった。
その一方、中国と日本との間には互恵の協力分野も広く存在する。交流を深め、両国がともにプラスを得るという歴史や現実も尊重すべきである。だが中国の現政権の核心部分に日本への敵視政策が刻みこまれている事実は無視も軽視もできない、ということなのだ。
新年の日本の安全保障の危機を深める第二の要因はアメリカの対日防衛政策の揺らぎである。戦後の日本は自国の安全保障、防衛を同盟国のアメリカに委ねてきた。いざ日本が正面からの軍事的な攻撃や威嚇を受けたときは、アメリカが同盟パートナーとして日本とともに実力を行使しても、その対処にあたることを誓約してきた。
東西冷戦時代のソ連の軍事脅威も、そして近年の中国や北朝鮮からの脅威もアメリカのその日本防衛誓約によって抑えられてきた。だがいまのオバマ政権はその誓約の根幹に疑いを感じさせる揺らぎをみせているのである。
尖閣諸島に関してオバマ政権は日米安保条約の適用対象になるとは明言する。だが有事に「尖閣を防衛する」とは言わない。有事の尖閣防衛の明言こそが中国の侵略や攻撃を防ぐ抑止効果を発揮するのだが、オバマ政権はそこまでは意思を明示しないのだ。
オバマ政権の海外での軍事行動は同盟国支援でも、平和維持でも、抑止効果のためでも、もっぱら縮小や撤退を重ねてきた。とにかく衝突や対決を避けるという姿勢が顕著なのだ。オバマ政権のこうした態度が日本の国家安全保障に対しても、かつてない不安や懐疑を生んでいる。そしてそのことが中国の軍事脅威の拡大と相乗して、日本の危機を深めるのである。
日本を囲むこうした国際情勢に対して、日本側での論議はもっぱら内向きである。日本の安全保障に直結する集団的自衛権の行使容認の論議でも、論点は国内にだけ向けられる。日本の国内的な手続き、そして自虐にさえ響く日本自身への「歯止め」の論議ばかりなのだ。
日本に迫る中国、そして北朝鮮などの安保上の脅威がなぜ論じられないのか。アメリカの日本防衛政策の揺らぎがなぜ語られないのか。そんな懸念をいやでも感じさせられる新年なのである。
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
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