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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 対立軸がみえてきた
http://wjn.jp/article/detail/2638182/
週刊実話 2015年1月1・15日 合併号
衆議院選挙は、与党の議席が3分の2以上を占める与党の圧勝に終わった。アベノミクスの継続を問うという与党が示した争点に対して、明確な対立軸を示せなかった野党の戦略負けだったと私は思う。
ただ、選挙結果には、今後、野党示すべき対案の姿を映し出すヒントが隠されていた。一つは、大幅に議席を減らすといわれた維新の党が終盤で盛り返して、ほぼ勢力を維持したことだ。維新は、身を切る改革を優先させるべきだと選挙戦で強く主張したのだ。
実際、安倍内閣の財政膨脹は、とてつもない。今年度予算は、前年度当初予算と比べると2兆2000億円も増えている。過去10年間の平均予算増が4000億円だから、1兆8000億円も増額になっている。
そして選挙後、補正予算の規模を1兆円積み増しして、3兆円規模とすることを決めたから、昨年度当初予算と比べると4兆8000億円もの予算増額となった。今年度の消費税増税による税収増が4兆5000億円だから、増収以上の財政拡張を決めたことになる。
財政拡張が社会保障の充実に回されたのであれば、まだ納得ができる。しかし、そうではない。例えば、国家公務員の冬のボーナスは、前年比で21%も増えた。震災復興の財源確保のための給与削減が終了したことと、民間賞与に合わせて国家公務員の支給月数を増やしたからだ。
しかし、国家公務員の給与や賞与は、事業所規模50人以上の事業所の正社員のみを調査して、そこに水準を合わせている。アベノミクスは、中小企業を置き去りにして大企業の業績だけを大きく改善した。公務員は、その大企業と同じ恩恵を賞与で受けているというわけだ。
もし、中小企業も含めた給与調査をすれば、それだけで国家公務員の人件費を2割以上カットできる。しかも、安倍政権は財政政策を官僚に丸投げしている。選挙直後に、補正予算の中身がすぐに決まること自体が、官僚の用意したシナリオに乗っている証拠だ。
財政の無駄遣いを思い切って削減すれば、それを財源に消費税の引き上げも阻止できる。2016年夏の参議院選挙に向けて、野党は、消費税凍結プラス大胆な行政改革という対立軸を共通して掲げれば、勝機が得られるだろう。
実は、もう一つの対立軸がある。今回の選挙で次世代の党は、壊滅的に議席を減らした。一方、公明、共産が議席を増やした。安全保障政策でタカ派が支持を失い、ハト派が支持を増やしたのだ。安倍総理は、集団的自衛権の行使を可能にする法律整備を行うと同時に、憲法改正に向けての議論を深めていく方針を明らかにしている。だから、それに反対するハト派政策を打ち出せれば、かなり多くの国民の支持が得られるだろう。
今回の総選挙で、沖縄は四つの小選挙区すべてで自民党の候補者が敗れた。普天間基地の辺野古移設反対という政策で一致し、候補者を一本化した成果だった。
2016年夏の参議院選挙に向けて、野党は同じことの再現を目指せばよい。
もし、それができなければ、政権交代の可能性が限りなく小さくなり、日本は自民党の単独支配が続く55年体制の時代に戻ってしまうだろう
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