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2014年12月26日
以下はロイターに掲載された寺島実郎氏のコラムである。同氏らしく、歴史、地政学、経済に目配りをした、それ相当の内容あるコラムだ。部分的に疑義を挟みたくなる面もあるが、同氏が親米的ポジションにいる識者である限り、この辺はディスカウントして読めば良いだけのことである。ただ、親米だが、出来るだけ“感情の劣化”や“教養の劣化”に配慮したコラムであるにも関わらず、このコラムに示したような事を安倍自民党が行うとか、行えるかについて、議論することは無意味でもある。ざっくばらんに言えば、馬の耳に念仏のようなもので、同氏が考える方向に向かうことはないだろう。
年末年始は、この寺島氏のコラムを契機に、「不機嫌」「不都合」「不可解」「多極化」「混沌」などを視点として、我が国の総体的位置づけと、その未来展望を考えてみようと思っている。無論、愚鈍な筆者の頭脳で考えることだから、学術的ではないし、論証を掲げて書くわけでもない。市井に棲む一個人の肌感覚によるコラムになることは当然だ。まあ、お暇な方は、泡沫候補の演説だとでも思って読んでいただければ幸いだ。最終的には、資本主義の終焉と民主主義の終焉と云う、大規模パラダイムシフトの到来を予測することになるのだと思う。
≪ 視点:「不機嫌な時代」の到来と正念場のアベノミクス=寺島実郎氏
寺島実郎 一般財団法人日本総合研究所(JRI)理事長
[東京 26日] - 日米中のトライアングル関係において、日本はどのような立ち位置を模索すべきか。日本がアジアでリーダーシップを発揮するためには何が必要か。そして、アベノミクスは幻想なのか。日本総合研究所の寺島実郎理事長が、2015年の世界と日本を見通す。 同氏の発言は、以下の通り。
<不機嫌な時代>
世界は、冷戦後の米国による一国支配から「多極化」という時代を経て、もはや極という言葉では説明できない状況にまできている。つまり、「無極化」した全員参加型の秩序形成が問われ始めるのが2015年だと言えるだろう。
そのような全員参加型の秩序、つまり真にグローバル化する世界において、2015年はすべての当事者にとって「不機嫌な時代」が訪れる。例えば、ウクライナ問題で世界を手玉にとったかのように思われたロシアも、国際社会からの信頼が低下し、また足元の原油安で経済も悪化しており、2015年はマイナス成長に陥るとみられる。
一方、米国のオバマ政権はレームダック化し、議会が上下院ともに共和党に支配される中、ますます厳しい政権運営を強いられる。中国でも経済成長が減速するにつれ、国内で内部対立が噴出。中国政府のいら立ちは近隣諸国にも波及するだろう。
こうした世界状況において、日本は、特に米国と中国とのトライアングル関係の中で、どのように立ち振る舞うべきか。
もし日本政府にこう問いかけるならば、米国との連携を深め、中国の脅威に立ち向かいたいという答えが返ってくるだろう。しかし、そのようなパラダイムこそ考え直すべきだと私は思う。日米で連携して中国と戦おうというゲームは、極めて偏狭な思い入れであり、米国に対する日本の「片思い」にすぎない。
米国にとって最も大事なのは、アジアにおける影響力の最大化だ。日中両国に対して米国の影響力を最大化し、ぎりぎりまで双方の期待をつなぎとめながら、アジアにおける米国のプレゼンスを最大化するというのが米国のゲームである。
未来に向けた日米中関係において、日本は欧州における英国に近い役割を担うべきだと考える。英国は欧州から米国を孤立させない一方、米国に過大に依存する構造から抜け出している。日本もアジアで影響力を最大化しつつ、日本自身がアジアで孤立することも、米国が孤立する ことも避けるというストーリーを構築する局面にきている。
そのためには、日本はまず感情的な「プチ・ナショナリズム症候群」に陥っている現状から脱却し、一次元高いレベルから中国や韓国などの近隣諸国と向き合うことが大きなポイントとなる。これは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の人たちと話して痛感したことだ。
日本は領有権問題で連携するという発想でベトナムやフィリピンを見がちだが、実際にはこうした国々はそのような連携は期待しておらず、日本には高みから中国と向き合っていてもらいたいと考えている。彼らは、成熟した民主主義国家としての戦後日本の歴史を見つめている。戦前の日本のように、間違っても軍事的プレゼンスを高めてアジアの脅威となるような国を目指しているという誤解を与えてはならない。
では、日本がアジアでリーダーシップを発揮するには何が必要か。その鍵は経済力よりも、むしろ理念性にある。全員参加型秩序の世界で国益を貫きつつ発言力を高めていくために必要なのは、筋が通っていることだ。主張を貫く理念がなければ、このような時代でリーダーにはなれない。果たして日本がそれに耐えうるだけの理念をもっているかどうかが問題だ。
<つり天井の経済>
一方、経済・金融政策においては、相変わらず米国型モデルが世界の主流であり続けている。米国は量的金融緩和第3弾 (QE3)を2014年10月末で終了し、2015年には利上げが開始される見通しだ。このように米金融緩和が出口戦略に向かう中、2015年はリフレ経済学に基づくアベノミクスの正当性が問われることとなるだろう。
20年来苦しんできたデフレからの脱却を目指し、安倍晋三政権が掲げるアベノミクスは、 異次元緩和(第1の矢)と財政出動(第2の矢)に続き成長戦略(第3の矢)を実行することで日本経済の成長率を底上げするという再生シナリオを描いている。だが、税収の倍近い歳出を賄うために、借金を重ねる日本政府は、まるで自分の身の丈の2倍の生活を送る愚か者のようだ。 異次元緩和を実施して株高・円安にしたものの、「第3の矢」はいつ飛ぶのか。今の日本経済はいわば「つり天井の経済」で、株価がつり上げられ景気が良くなっていると錯覚を起こすが、実は実体経済の柱や土台がない。株価をつり上げているのは海外の投資家であり、世界経済の動向次第でこの天井はすぐにつぶれかねない。
「第3の矢」が急がれるゆえんだが、結局放たれないまま「第1の矢」と「第2の矢」に戻って追加金融緩和と追加財政出動を繰り返す恐れがある。実際、日銀は10月31日に追加緩和に乗り出した。こうした景気刺激的な政策への過度な依存は、傷口を広げ、次の世代に問題を先送りにするだけだ。
実体を伴わない株価先行の今の日本経済は、かつての米国経済をほうふつさせる。米国では、2001年に電力デリバ ティブなどを手掛けていたエネルギー大手エンロンが倒産してから7年後となる2008年、サブプライムローンが引き金となりリーマンショックが発生。そして2015年はそれからまた7年後に当たり、リーマンショック・パート2が起きる可能性がある。
その背景には、アルゴリズムを取り入れた株式の超高速取引などでマネーゲームが高度化したことや、複雑化した金融派生商品がある。英フィナンシャル・タイムズが2014年8月に指摘したところによれば、複雑に手の込んだ新種の金融派生商品が開発され、運用力のない金融機関に静かに浸透しており、再び金融危機の芽になりかねないという。
翻って日本に目を向けると、金融機関の間で資金運用力の差が極端に開いてきている。以前は国債に逃げるという手があったが、大量発行にもかかわらず日銀の大規模購入によって金利が抑え込まれたことで現在10年物の利回りは0.3%近辺の低水準にある。実力のない金融機関にとって運用は悩みの種となっており、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないが、不可解な金融派生商品投資への甘い誘いに再び乗せられないとも限らないだろう。
一方、米経済が再浮上した2つの要因は、日本にとっても非常に示唆的だ。1つはシェールガス・オイル革命で、米国はすでに石油と天然ガスの合計生産量において、サウジアラビアとロシアを抜いて世界1位になっている。原油価格下落の主な要因でもあるが、これは米国の産業競争力にもつながり、経常・財政収支のいわゆる「双子の赤字」問題も改善するという好循環となっている。日本も天然ガスの一種であるメタンハイドレートの産出などエネルギー戦略強化に向け、今のうちに手を打っておくべきだ。
2つ目に次世代ICT(情報通信技術)革命、ビッグデータ時代の到来が挙げられる。例えば、米ゼネラル・エレクトリック(GE)は現在、ビッグデータを活用して産業の効率性を飛躍的に高めるプロジェクトを主導している。日本においても、国力の底上げにつながる類似のプロジェクトを先導する企業がもっと現れて然るべきだ。
これら米経済の「光と影」は、正念場を迎えることになる2015年のアベノミクスへの教訓として大いに生かされるべきだろう。
*寺島実郎氏は一般財団法人日本総合研究所理事長、多摩大学学長、三井物産戦略研究所会長。経済産業省・資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の委員として、国のエネルギー政策議論にも参加している。 *本稿は、寺島実郎氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。 ≫(ロイター)
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