02. 2014年12月19日 07:27:00
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政治の劣化を招いた小選挙区制導入は「大きな誤り」 “成熟した民主主義”への道を拓くのは有権者の自発的な政治参加 2014年12月19日(Fri) JBpress 第47回衆議院議員総選挙の投開票日に放送された今回の『やすトラダムス』(12月14日放送/Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)。元衆議院議員の中山正暉氏と元産経新聞記者の今西和貴氏のナビゲートで、投票率や選挙制度の話題などを取り上げた。「政治のデジタル化」を起こした小選挙区比例代表並立制 今西 今日12月14日、第47回衆議院議員総選挙の投開票が行われました。投票率は戦後最低だった前回を下回るとの報道も入っています。また開票速報によると、自民・公明の連立与党で300議席超を確保する大勝となる見通しですが、今回の選挙をご覧になっていかがですか。 第47回衆院選、きょう投票 投票率は52%と記録的低水準にとどまった〔AFPBB News〕 中山(正暉) まず投票率ですが、地方以上に大都市圏の低投票率が顕著です。期日前投票制度があるため一定の投票率が確保されていますが、当日投票率は下がる一方です。 民主主義の根底は選挙にあります。投票に行かなかった有権者も少なからず政治の影響を受けるわけですから、もっと多くの方に投票所に足を運んでいただきたいですね。もっとも、選ばれた政治家がしっかりしなければならないのは当然のことですが。 私はかねて、小選挙区比例代表並立制に疑義を呈してきました。先日、9月20日に死去した元社民党党首の土井(たか子)元衆院議長を追悼する「お別れの会」があって参加してきたのですが、その霊前で河野(洋平)元衆院議長が次のように弔辞を述べました。 「私が自民党総裁だった94年1月、当時の細川(護煕)首相とのトップ会談で衆院の小選挙区比例代表並立制の導入を決めた。この時、議長だった土井氏から議長公邸に呼ばれ、慎重な検討を求められたにもかかわらず強行してしまった。それは政治の劣化をもたらすことになる大きな間違いだった」と。 94年当時を振り返ると、小選挙区比例代表並立制をめぐり数回にわたって衆議院と参議院の協議が行われましたが、最終的には両院協議会で同法案が可決され、成立しました。 こうして日本の選挙制度は択一的に候補者を選ぶようになったことで選挙の“どんでん返し”が起きやすくなり、政治のデジタル化が進んでしまった。 小選挙区比例代表並立制が分かりにくい理由は、小選挙区制と比例代表制を組み合わせている点にあります。 中山 小選挙区制は、全国を300の小選挙区に分けて1区から1人の当選者を選出する制度ですが、比例代表制は立候補者個人ではなく各政党に投票し、その得票率に応じて議席を配分する制度です。 すなわち、ある区から1人の当選者を出しても、同時にその区で複数の候補者が比例名簿に載っているということであり、これでは従来の中選挙区制と結局あまり変わりません。 小選挙区制が“1か0か”の選択であるのに対し、比例代表制はそれを否定するような制度構造になっている。それこそが小選挙区比例代表並立制の矛盾点だと言えます。 今西 投票する側にとっても、小選挙区で落選した候補者が比例で復活当選するのは非常に分かりにくい現象ですよね。 共産党を合法政党化している日本に二大政党制は根付かない? 中山 現在、衆議院の定数は475議席ありますが、私が昭和44年に初当選した時は486議席でした。その後は増減を繰り返し、一時は田中(角栄)元首相の下で512議席まで増えて、それからまた減って現在の議席数になりました。 現職の国会議員たちに今の制度を変えさせるのは難しいかもしれませんが、今後は第3者の意見も交えて日本の将来のためにふさわしい選挙制度をよく検討する必要があります。 実は米国では、共産党が非合法です。結社の自由によって共産党という団体は認められていますが、公的費用で選挙を行ったり、議員に歳費を支払うことは財政法で認められていません。だから米国は民主党と共和党の二大政党制になっているわけです。 日本で小選挙区制が導入された背景には、二大政党制を促し、政権交代が可能になるからという理由がありましたが、私は現職だった当時、「衆議院選挙制度に関する調査会」で「日本は、米国や英国とは違って共産党を政党として認めているため、二大政党にはなりにくい。どうしても3つの流れになる」と述べたことがあります。 世界には、中国の全人代(全国人民代表大会)のように年に1回、10日ほどしか開かれない議会もありますが、果たしてどの国の制度が将来的に残るのか非常に興味深く思います。 独裁政治は一党派による政治権力の独占を指しますが、そのアンチテーゼとして生まれたのが民主主義です。その主役である国民が、より良い制度への発展を目指して国会に働きかけていくことが、成熟した民主主義への道ではないでしょうか。 今西 その意味でも選挙の投票率が低いのはとても残念ですよね。これからは有権者に強制するのではなく、自発的な政治参加を促すことも大切だと思います。 増税は財政赤字削減のための賢明な判断 中山 今回、いわば電撃的に解散・総選挙が行われ、日本の政治は新たな船出を迎えることになったわけですが、今後の国会運営においては特に財政再建が急務です。 というのも、我が国の借金は既に1000兆円という莫大な金額にまで膨れ上がってしまっている。 1兆円というのはお札にすると積載重量10トンの貨車56両分に値し、積み上げると富士山の約2.6倍もの高さになります。その1000倍もの負債を抱えている日本をいかに舵取りするかが、安倍政権の今後の大きな課題だと言えるでしょう。 一般的に政府が発行する国債のうち、橋や鉄道建設などの公共事業にあてる建設国債は償還期間が60年で、人件費などに充てる赤字国債は10年となっています。 先日、安倍(晋三)首相が消費税率10%への引上げを1年半延期したうえで2017年4月に実施することを正式表明しました。これは財政赤字のツケを将来に回さないための賢明な判断です。 私たちの周りにあるインフラの多くは、過去に建設国債で公共事業を拡大することによって整えられてきたものです。そのインフラを日々利用する我々自身が1000兆円という膨大な借金をどう捉え、いかに債務返済の道筋を付けていくか。一人ひとりがよく考えるべき時だと思います。 『中山泰秀のやすトラダムス』12月14日 24:00-25:00放送 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42479
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