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今、最も重要なのは財政再建である(そりゃおかしいぜ第三章)
http://www.asyura2.com/14/senkyo176/msg/600.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 12 月 19 日 00:00:05: igsppGRN/E9PQ
 

今、最も重要なのは財政再建である
http://blog.goo.ne.jp/okai1179/e/6b5637dd1903cefd7fda3957efe56c94
2014-12-18 そりゃおかしいぜ第三章


昨年我が国は、国と地方の負債が1000兆円を越えた。今の報道などは、国のGDPを越えた500兆円当たりの方が騒がれていた。そのご負債は留まることを知らずに、天文学的に拡大する一方で、世界最大の債権国家である。

もっとも大きな理由は「財政の健全化は景気の足を引っ張る」という理由である。更に「国債の95%は日本国民が所有している」というものである。国外依存率の高いギリシャやスペインなどとは異なるというものである。

これらは、問題を先延ばしにする、現在を生き延びなければならない政治家にとって、まことに好都合な論理である。

更には、そのために消費増税ばかりが論じられている。これは構造改革に手を付けられたくない、官僚にとって心地よいものである。加えて税収増には、財政投資が必要であるとばかりに、正体不明で不要で不急の公共事業がドンドンやられている。これこそ、財政赤字の原因ともいえるものであるがお構いなしである。

これも、自民党を支援する、土建屋たちとその関連にとっては心地よい政策である。

上記のグラフは、水野和夫氏の「塩本主義の終焉と歴史の危機」からコピーしたものである。このグラフは、2人以上の世帯の金融資産の所有率を、年次を追って示したものである。

1987年には、預金を持っていない世帯が僅か3.3%だったのが、2013年には31.0%にもなっているのである。この表には年代が記載されていないが、バブル以降に急上昇していることや、貧困世帯の年代から推察すれば、40才以下が圧倒的に多いと思われる。
これから日本を担う世代が、国債など購入する余裕などないのである。財政再建に無頓着な政治家たちの最大の根拠が消えてしまうのも時間の問題である。

消費増税が景気の足を引っ張る事実は伏せておきながら、財政再建には都合の良い今だけの理屈で蓋をするのは容認できない。国債の保有率が海外の方が多くなれば、財政破たんは一気に起きることになる。これは少子化問題同様、冷静に見れば簡単に予測できることである。

経済成長により税収増は、成熟した高齢化社会では期待できない。不要の財政投資や官僚に対する徹底した、仕分けこそ抵抗があっても、根本解決には取り組まなければならないことである。

現在最も重要な政治的課題は、財政再建である。国家財政の破たんは一国では到底解決できない問題だからである。アベノミクスは、財政の悪化を広げるだけである。


 

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01. 2014年12月19日 06:47:57 : jXbiWWJBCA

ピケティと同じ手法で「日本の富」を分析してみた!
日本でも納税者の0.1%に富が集中する傾向が顕著

2014年12月19日(金)  岡直樹

 「同じくおもしろいことだが、ヨーロッパとは社会的にも文化的にも異なる日本さえ、20世紀初めには同じくらい高水準の格差が存在した。日本では国民所得のおおよそ20パーセント以上をトップ百分位が占めていた。(中略)どう見ても所得構造と所得格差に関して日本はヨーロッパと同じ『旧世界』の一部だった。20世紀を通じて日本とヨーロッパが似たような変遷をとげたこともまた興味深い」(トマ・ピケティ『21世紀の資本』335ページ、第9章「労働所得の格差」から引用)
 岡直樹さん(前国税庁分析官)の連載第2回は、日本のトップ0.1%に当たる所得金額5000万円超の納税者5万人の所得分析と、日本で平均2.5〜5億円、米国で30〜70億円という所得トップ400人の日米比較をお届けする。
 通勤中の電車で見上げると、“当たれば年収2000万の生活が30年できる”と、宝くじの宣伝が揺れている。年収2000万円というのはみんながイメージできる高額所得者の基準の一つなのかもしれない。米国では政府が高額所得者のデータを分析・公表することを法令で義務づけているが、基準となる金額は20万ドル(100円で換算すれば2000万円)だ。わが国でも給与収入が2000万円を超えると申告書提出義務があるので、このクラスの納税者については税務統計で実態を正確にカバーすることができる。

 2010年に2000万円を超える申告をした納税者は31万人で、この年のわが国の納税者数は約5500万人(総務省調べ)なので、Top 0.6%だ(本コラムではTop1%とみなす)。また、5000万円を超える申告をした納税者は5万人なので、Top0.1%(細かくは0.09%)に相当する。なお、2010年において米国の納税者のTop1%に該当するためには最低42万ドルの所得が必要なので、120円で換算すると5000万円相当だ。

 というわけで、今回は税務データから読み解くわが国のTop0.1%の納税者と、宝くじで1等に当たっても手が届かないかもしれないウルトラリッチ(Top400)の日米比較について。

Top1%の年齢

 まずはわが国Top1%(申告所得2000万円超)の年齢から図1に示す。

図1 Top1%(所得2000万円超)の納税者の年齢階層

出所:FR118号55ページ図7(※1)
 これによると、Top1%の納税者は、50後半〜60代前半の人の割合が最大で、1/3の者がこの年齢階層だ。同時に、いわゆる年金受給世代である65歳以上の者も1/3存在している。2007年と2010年を比べると、年金受給世代の割合が減少した一方、いわゆる働き盛り世代である40代後半〜50代前半の者が2パーセント以上(6〜7000人)増加している。25〜45歳のグループの割合も増加しているが、ここには成功した若い企業家やFX投資家等が含まれているのかもしれない。

 図1は所得の生涯所得カーブと相似形ではない。このようなカーブとなる背景には、毎年の経済活動により蓄積された「富」からの所得が影響していると思われる。

(※1)本コラムは、財務省財務総合研究所編集・発行「ファイナンシャルレビュー 通刊118号(平成26年第2号)」(本コラムでは「FR118号」と略す)47ページ以下に収録された筆者の論考に基づいて作成した。
Top0.1%の所得構成

 Top0.1%(申告所得5000万円超)が得ている所得の種類を図2に示す。

図2 Top0.1%(所得5000万円超)の所得構成(2010年)

出所:FR118号57ページ図8および表6より筆者作成。
※大まかにいって、(1)、(2)は「富の処分」による所得、(3)、(4)は、「富の保有」による所得、(5)、(6)は「勤労」による所得。
 図2からわが国のTop0.1%の所得構成の特徴として次が挙げられる。(イ)勤労所得である給与所得の割合が高い。(ロ)いわゆる「富」からの所得(※2)として、(1)株式譲渡所得、(2)不動産の譲渡、(4)不動産の貸付からの所得が目立つ。(ハ)10億円を超える納税者は所得の7割が株式等譲渡所得であり、言い換えれば10数億レベルに達するためには株式譲渡所得が必須だ。

 次に、Top0.1%の所得のうち、「富の保有」から生まれる所得(利子、配当、不動産)に焦点を当てる(図3)。所得の基となる資産の種類は、不動産と株式である。所得階層が高くなるにつれ、不動産所得のウエイトは低下し、配当所得の割合が高まっている。利子所得はほぼ皆無だ(※3)。

図3 Top0.1%の「富の保有」からの所得

出所:FR118号56ページ表4および57ページ表6より筆者作成。雑所得にはいわゆるファンドからの分配が含まれる。
(※2)「富」からの所得について、二元的所得税(所得税の在り方の一形態。富=資本=は労働よりも地理的に流動的なので、勤労所得に累進税率を適用する一方、資本所得には低い固定税率で分離課税するもの)の議論では、利子、配当、株・土地等の譲渡益、帰属家賃、事業所得(勤労報酬相当額を除く)を「資本所得」としている。「勤労所得」には、給与所得、フリンジベネフィット、社会保障給付、事業収益(勤労法等報酬相当分)が含まれるので富からの所得に含めた。
(※3)国内の銀行等から受け取る利子はどんなにお金持ちでも源泉徴収で課税が終了するので税務統計データにも表れない。ただし、海外に保有する銀行口座で受取った利子は別だ。こうした利子は(原則)申告が必要だが、2010年において、利子所得がある申告の件数は5000万円超の申告5万710件のうち1243件、全申告2400万件でも1万9763件しかない。理由はよくわからない。
Top0.1%の常連と1回だけ該当する人の違い

 所得税は、理論はともかく、現実の制度としては所得フローに対して課される税なので、税務データもストックである「富」を直接捉えることはできない。しかし、Top0.1%など高額所得階層の“常連”が得ている所得の構成と、1回だけ該当した納税者の所得の構成を観察することを通じて推察することができると思われる。

 Top0.1%の常連の人数と出現頻度を図4に示す。

図4 Top0.1%(所得5000万円超)の出現頻度(2005〜2010年)

出所:FR118号60ページ図11
 2005年から2010年の6年間(途中の2008年9月にいわゆるリーマンショックがあった)の各年において、Top0.1%に該当した納税者は5万〜7万人いたが、全体の人数の増減には出現回数1回の納税者の存在が大きく影響している。他方、6年間連続して登場した“常連”が1万7000人、リーマンショック後、景気低迷期に3年間連続して登場した者が2万6000人存在する。

 そこで、Top0.1%の常連と、6年間に1度だけTop0.1%に該当した人の所得構成(上位10位までの組み合わせ)を調べると、以下のように顕著な違いがみられた。

表1 Top0.1%の所得構成(常連と1回だけの者別)

出所:FR118号61ページ表9および表10。
(※4)“雑”とは失礼な呼び名で恐縮だ。MIscellenious income から来たと思われる。「他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します」(国税庁ホームページ)
 表1は、例えば6年間連続で登場する常連のうち、16.3%の人の所得が「不動産、雑、配当、給与所得」の組み合わせであったことを示している。10位までの構成比の類型は、常連については75%となる一方、1回だけの者は57%であり、1回だけの者は所得構成が多様であると思われる。

 富からの所得である不動産所得も、安定的に高額所得を得るために貢献していることがうかがえる。また、常連と1回だけの者を問わず、給与所得を得ている者が非常に多いことが特徴だ。特に、給与所得だけの者が、常連グループの8%(第4位)、1回の者のグループの6%(第5位)存在していることが大いに注目される。(なお、何億といった高額な給与を実績(merit)だけで説明できるかについては議論もあるようだ。一種の「富からの所得」の部分が含まれているのかもしれない)

 富からの所得でも、保有資産の譲渡に由来するものか資産の保有に由来するものかという観点からみると、常連と1回の者で顕著な違いがある。配当所得は常連では目立つが、1回だけの者では10位までにすら登場しない。これとは逆に、不動産の譲渡など分離譲渡所得は、1回だけの者では目立つが、常連には登場しない。

 以上から、米国とスケールは異なるが、わが国でも富のTop1%、なかんずく0.1%への富の“集中”が存在していると感じるのは筆者だけだろうか。

米国のTop400の常連

 米国では、Top400番目までの申告書を提出した納税者について、1992年から毎年統計データとその分析が公表されている。

 それによると、1992年から2009年の18年間(延べ7200の申告)に3869人の納税者がTop400に該当したが、そのうち10回以上該当した者が87人(2.2%)、1回だけ該当した者が2824人(72.9%)であることが報告されている。

 申告書でみると、7200枚の申告書のうち、1回だけ該当した者が提出したものが2800枚、40%である一方、10回以上該当した常連によるものも1150枚、16%も存在している。筆者にはもはや想像すらできないレベルだ(少なくとも、Top400の常連が宝くじを買うのはお金と時間の無駄だ)。

米国のTop400は日給1億円

 東京・銀座の数寄屋橋では、年末この時期になると長蛇の列が出現する。取り付け騒ぎなどではない。宝くじを買うための人の列だ。日本各地にこうした列が出現していることだろう。年末の宝くじに1年分の夢や希望を込めるのだとすれば、当選金も一般庶民にとって夢のある金額に設定されているのかもしれない。年末宝くじの1等当選金が6〜7億円だとすると、これは、米国では到底無理だが日本ならギリギリTop400に入れるかもしれない所得だ。

 IRS (わが国の国税庁に相当)によると、米国のTop400人は2007年において1人平均3億4400万ドル、413億円(120円で換算)の所得がある人たちだ。Top400グループでみれば平均程度のつましい所得なのに悩ましい話だが!週給2000万円の生活を40年か、1日1億円の生活を1年間続けるか選択しなければならない。

日米ともTop400の税負担率は20%程度

 Top400人がそのようなレベルの所得の人たちであることを頭に置きつつ、その所得構成などについていくつかの角度から観察してみたい。

 まず、Top400に最低必要な所得などだ。表2によれば、Top400の所得や納税額のレベルは日米で10倍あまり違うが、日本では平均2.5〜5億円、米国では30〜70億円を納税している。また、税負担率(実効税率)は日米で同程度である。

表2 Top400に必要な所得、平均所得・納税額・税負担率

出所:FR118号63ページIV-1、64ページIV-2、およびIRS統計から筆者作成
日本のTop400は株長者・未公開株長者

 日米の共通点は、給与所得を有する者が多いことくらいであり、相違点の方が目立つ。例えば、(1)米国では配当・利子等の金融資産からの所得をTop400全員が有するが、日本では配当所得を申告する者は半数程度いるものの、利子所得は事実上皆無である。(2)日本では、株式譲渡益(シェア20%)、特に未公開株式の譲渡益(シェア36%。上場を果たした創業者社長などがイメージされる)からの所得が貢献している。(3)米国では300件以上の申告で外国税額控除の利用があり、平均2.2百万ドル(120円換算で2億5000万円)の税額控除を受けていることから、米国のTop400がグローバルな経済活動を行っていることがうかがわれるが、日本で外国税額控除の申告をした者は1割以下であり、金額も2000万円程度(平均)にすぎない。

表3 Top400の所得 日本vs米国

出所:FR118号65ページ
節税? 寄付金大国でもある米国

 さて、課税所得の金額は、赤字の所得や法令上規定された所得控除を差し引くことにより計算される。そこで、こうした課税所得を減らす方向の項目についても観察する。

 表3からは、米国では、投資等に利用されるパートナーシップやS法人(※5)の赤字申告の件数や額が大きく、他の黒字と通算することにより課税所得を減らすタックスプランニング(節税や租税回避)が存在すると思われる。他方、日本のデータから明確にこのような傾向を見ることはできない。

 節税の多くは合法なものだが、制度の抜け穴を巧妙に利用したものもある。租税回避への対応や情報開示の問題は、所得税制において重要な要素の一つであり、現在、G20やOECDなどにおいてグローバルな取り組みが行われている(※6)。

 また、各国レベルの取り組みもある。米国では、オバマ大統領が租税回避を一般的に否認できる法律を2010年3月に国内法に導入した。英国も2013年7月に同様の規定を導入している。背景には、「租税は市民社会生活のための便益を提供するための費用に向けた拠出・貢献なのであるから、税法の抜け穴又は弱点を悪用するための複雑なスキームを構築することによりその租税負担を免れようとすることには何らかの制限を法律で課することに合理性がある」。という考え方が支持されたことがある(※7)。

 次に、所得からの控除として、日・米とも寄付金控除の制度がある。米国のTop400についてみると、ほぼ全員(387人)が寄付を行っており、その金額も平均で19億円!(120円で換算)と巨額だ。他方、日本では平均1500万円となっている。

 以上、今回のコラムはこれまでTop0.1%や1%などトップグループの所得構成などについて紹介してきた。これで“上”についてはだいたい見えてきた。

 一方、格差の拡大が仮に存在するなら、その背景には、トップグループに帰属する所得や富の拡大の側面と、中位や下位グループに帰属する所得や富の縮小の側面と、両者の関係がある。ピケティは1980年代に最も公平になったのち、富の集中や所得の偏在が拡大していると言う。

 そこで、次回(最終回)は、上だけでなく下位グループや中間層にも焦点を当てながら検討してみることとしたい。

(※5)投資等のための「ビークル」(組合や法人)だが、組合等に帰属する所得は課税上オーナーである投資家・納税者のものとして扱われる。日本にも所得税や相続税対策としていわゆる個人資産会社を持つ高額所得者は多いが、法人としてオーナーと別に扱われている。
(※6)例えば、OECDによるBEPS行動計画。具体的には、「行動 12:濫用的タックスプランニング(ATP)取決めの情報開示を義務づける国内ルール」など。
(※7)アーロンソン報告書(2011年11月11日)パラ3.3および3.4
 (次回に続きます。掲載は、12月26日の予定です)

岡直樹(おか・なおき)
東京国税局、大蔵省・財務省、国税庁、税務大学校、OECD(出向)などに勤務。

 トマ・ピケティがフランスの日刊紙リベラシオンに月1回連載しているコラムをまとめた時論集、『トマ・ピケティの新・資本論』(村井章子訳)が2015年1月下旬、日経BP社から発売される(アマゾンで予約販売中)。
 トマ・ピケティは2015年1月に来日、31日に東京大学で講義を行います。一般から300人が参加可能です(有料)。みすず書房のサイトで参加申し込みを受け付けています。


このコラムについて
ピケティと同じ手法で「日本の富」を分析してみた!

 世界中で100万部を超える異例のベストセラーとなっているフランスの経済学者トマ・ピケティの「LE CAPITAL AU XXIe SIECLE」が『21世紀の資本』(山形浩生他訳、みすず書房)のタイトルで日本でも発売された。ピケティは本書で膨大な世界各国の税務データの歴史的分析から、放置すれば、資産を持つ人と持たない人の所得格差は拡大する一方であるという分析結果を導き出している。

 世界で最も所得格差が大きいのは米国である。では日本はどうか。ピケティの手法と同様の税務データの分析から「ほぼ同じ傾向がある」と結論付けたのが、筆者である岡直樹氏だ。日本と米国の税務データに観察され見える「富の集中化」の比較分析について3回にわたって解説する。  

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141217/275276/?ST=print
 


02. 2014年12月19日 06:50:29 : jXbiWWJBCA

http://diamond.jp/articles/-/63990 

【第85回】 2014年12月19日 森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
ムーディーズも日本国債を格下げ
自民圧勝後の財政運営ここに注目
自民党が事前予想通りの圧勝を遂げた。国民からすれば、経済運営は「アベノミクス」しかなかったのだろう。しかし投票率に表れているように、それは決してアベノミクス経済運営への賛辞ではない。必要なことは、選挙戦で議論された、アベノミクスの副作用やリスクをミニマイズしていく経済政策を、着実に実行していくことだ。
不透明性は多少改善
安倍総理は、解散直前に消費税率の10%への引き上げを17年4月まで延期するとともに、消費増税関連法から景気条項を外す決定をした。今後はエコノミストを総動員してのパフォーマンスもなく、よほどのことがない限り増税が行われるので、経済の不確定要因が排除された。このこと自体は評価すべきだ。 
増税延期の記者会見で総理は、「2020年度プライマリー黒字の公約は守る」ことを改めて明言した。その前に中間目標として、「2015年度プライマリー赤字半減」がある。最終目標のコミットは、この中間目標の達成も含まれるわけで、今後の財政運営が分かりやすくなったといえよう。ちなみにプライマリーバランス(基礎的財政収支=政策的な経費と税等の収支)が、支出(経費)超過ならプライマリー赤字で、収入(税金等)超過ならプライマリー黒字という。 
このように、不確実性がある程度なくなった点は評価できるが、問題は実行に向けての各論だ。これからすぐに始まる経済対策・14年度補正予算編成と、引き続く15年度当初予算編成が大きなカギを握る。 
補正予算は最小限度に
補正予算を考えてみよう。財源としては、前年度予算の剰余金(1.5兆円)や今年度の税収上ブレ、国債利払い費の不用(国債金利が当初予想より下回ったことによる予算の使い残し分)などで3〜4兆円程度の財源が見込まれる。前年度剰余金は法律で、その半分を国債の償還に充てることが決められている。また今年度の税収の上ブレや国債費の不用は、今年度国債発行の減額に充てることが予算編成の常識だ。また、補正予算の一部が次年度に繰り越されるので、2015年度プライマリー赤字半減という目標も念頭に置く必要がある。 
したがって、経済対策・補正予算の規模は、可能な限りコンパクトなものにすることを心掛けるべきだ。地方交付金は、一見、「地方が知恵を出して考える」ということで、分権化の波に乗ったいいアイデアのように報じられることが多いが、実態はそんな美しいものではない。 
かつて竹下総理時代の1988年に、ふるさと創生事業として、全国の自治体に1億円ずつ配布したことがあった。アイデアに窮した自治体の中には、花火大会を開催したり、純金製こけしを買ったところもあった。今回も、国民やマスメディアは、その使途を厳しく監視すべきだ。なぜなら、その財源は、われわれの税金と将来世代への先送り(赤字国債)だからである。 
カギを握る15年度予算
補正予算編成の次は15年度予算である。これは、先ほど述べたように、国際公約している「2010年度比で15年度プライマリー赤字半減」という中間目標の達成を占う上で重要な予算編成である。 
これを達成するためには、一般会計ベースで4兆円程度のプライマリーバランスの改善を行うことが必要だ。政府の閣議決定した「中期財政計画」でもそのことが明記されている。 
たしかに税収は好調だが、消費税率10%引き上げの延期や、膨張し続ける社会保障費を前提にすると、この目標の達成は容易ではない。 
まずは、社会保障費を中心に歳出を極限まで削減することだ。そして、図表のように、一般会計ベースでプライマリー赤字が14兆円程度になっているのかどうか(10年度プライマリー赤字は24兆円)、これが15年度予算編成の最大の見どころだ。 
このような努力によってはじめて、国民の消費増税への支持が得られるとともに、市場の国家への信認もつなぎとめられるからだ。 
(注)正式な財政目標は、国・地方のPBで決められており、20年度の国・地地方ベースの数字では、11兆円の赤字が残るとされている。内閣府試算は、http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h26chuuchouki7.pdf。なおこれらの数字は、2015年10月から消費税率10%への引き上げを前提としている。
20年度黒字は次元の異なる難しさ
さらにその先の「2020年度のプライマリー黒字」の達成は、以上述べてきたこととは異なる次元の難しさがある。 
内閣府の試算では、アベノミクスが成功したケースですら11兆円の歳入・歳出ギャップが残る。これが一般会計ベースでは9.5兆円という数字になる。常識的に考えれば、半分が歳出削減、残りの半分が増税によりギャップを埋めていくということになる。 
これに対して、アベノミクスの成功により、例えば今後3程度の税収弾性値(名目GDPが1%伸びた場合の税収の伸び率の割合)が続いていけば、増税の必要はないという意見もある。 
しかし、内閣府の試算では、2020年度の税収は69兆円と、バブル期の税収である60兆円をはるかに超える(!)税収見積もりになっており、そこから更なる税収増がありうるのか、この辺りが予算編成後に出来上がる(改定)財政試算の見どころである。この欄でも改めて議論したい。 
選挙の結果に浮かれて緩んだ予算編成をすれば、直ちに市場からしっぺ返しをされる、すでに格付け機関のムーディーズが日本国債の格付けをワンランク引き下げ、フィッチも格下げの方向を打ち出した。それがグローバル時代の予算編成であることを官邸も財務省も肝に銘じるべきだ。 


http://diamond.jp/articles/-/63990


03. 2014年12月19日 06:51:21 : jXbiWWJBCA
 
衆院総選挙、緊急解析!データが明かした有権者の本音
有権者の真の関心は、「アベノミクス」ではなかった
2014年12月19日(金)  堀内 勇作 、 ダニエル M スミス 、 山本 鉄平 、 福島 麻友美


 2014年衆議院議員総選挙は、多くのメディア、政治学者、評論家の予想通り、自公連立政権の圧勝で幕を閉じた。
 今回の総選挙は、2年間の安倍政権による経済・財政政策、「アベノミクス」に関して、政権与党が国民に信を問うための選挙であったという評価がある。一方、論争に欠ける選挙、争点がはっきりしない選挙であったという評価もあれば、 憲法改正や集団的自衛権行使の問題など、政治や外交の枠組みを問う選挙であったという評価もありうるであろう。
 では、有権者にとって重要な争点は、本当は何だったのか。本稿では、著者4人が選挙運動期間中に収集した世論調査データと最新の統計分析技術を用いることで見えてきた、驚きの「隠れた民意」について報告したい。なお、分析結果を早く知りたい方は、5ページ以降をお読みください。
有権者は公約をどのように比較検討するのか?
 公民、あるいは現代社会の教科書に書かれている民主主義における政治過程とは、概ね次のようなものである。先ず、選挙において、各党が様々な政策をパッケージ=公約(マニフェスト)として有権者に提示する。
 有権者は、各党の公約を比較検討し、最適な公約を提示していると思われる政党を選択する。有権者によって選ばれた政権党は、選挙の際に提示した公約に基づいて具体的な政策を作成・実施することに努める。その政策内容と効果をめぐって各党は国会で論戦する。そして、次の選挙において有権者は、政権党の実績、各党が提示する新たな公約等を材料にして、どの党が政権党として最もふさわしいかについて判断を下す。
 このような教科書的な政治過程が機能する大前提は、「有権者が各党の公約を比較検討する」ことであるが、実際のところ、有権者はどのように各党の公約を比較検討しているのであろうか。
 我々がこの質問を友人・知人にしたところ、最も多かった返事は、「各党の一つひとつの政策内容だけでなく、党首や候補者の人柄も含めて、『総合的に』判断している」というものであった。これは、ある程度予想された返事である。実際、無作為割当実験、自動顔認証技術などの様々な手法とデータを駆使した現代政治学の計量研究においては、有権者の政党支持が各党の政策とは全く関係ない要因によっても左右されることを示す論文が、数多く発表されている。
 また、党首や候補者の容姿、人柄、学歴、職歴、イメージ、地元とのつながり、などに基づいて有権者が投票先を決めているということは、様々な世論調査や政治学者による研究が、これまでも示して来たことでもある。
 しかし、有権者が各党の公約を完全に無視しているというのは、極論であろう。「〇〇さんの人柄が良いから」と言って投票する有権者であっても、〇〇さんの政党や政策を無視しているとは考えられない。例えば、どんなに人柄が良さそうな人でも、その候補者が絶対に支持したくない政党から出馬している場合は、その人に投票しないであろう。
 では、なぜ、ある政党には絶対投票したくないと思うのだろうか。その一つの理由は、何か重要な争点に関して、その政党が提示する政策を支持することができないからなのではないだろうか。例えば、憲法改正に徹底的に反対する人は、憲法改正に賛成だけど人柄が良さそうな候補者と、憲法改正に反対だけど人柄が悪そうな候補者のどちらに投票するであろうか。
 その判断に迷った上で、人柄が良さそうな候補者を「総合的に」選んだとすれば、それは人柄「だけ」で選んだわけでなく、政策も考慮の上で候補者を選んだことになる。
 つまり、「総合的に」判断している以上、各党の政策内容は判断材料に入っていることになる。しかし、今回の選挙のように複数の争点がある場合、有権者の判断は無意識のうちにかなり複雑なものになっているはずである。
 例えば、ある有権者は原発再稼働には反対だが、アベノミクスには概ね賛成し、憲法改正には絶対反対かもしれない。もし、自分にとって好ましい政策パッケージを完璧に提供してくれる政党がない場合は、どうやって支持する政党を選ぶのであろうか。
 どの争点も均等に重視するのだろうか、それとも特定の争点に関する政策に注目するのだろうか。様々な争点に関する各党の政策を比較した上で判断しようとすると複雑になるので、政策はあまり重視しないで、政策以外の要因で支持する政党を決めるのだろうか。
支持政党選び=自動車選び
 このように、選挙において有権者は、意識しようがするまいが、各党が提示する様々な政策を少なくともある程度は考慮した上で、支持する政党を判断しているはずである。繰り返しになるが、我々は、政策こそが有権者の政党支持において最重要だとは必ずしも思っていない。また、有権者が各政党の一つひとつの政策を十分に検討しているとも思っていない。しかし、有権者が各党の政策を全く無視しているはずはない。
 では、有権者は、どのように各党の政策を「総合的に」比較しているのだろうか。パッケージとして提示された公約のうち、どの争点を特に重視しているのだろうか。今回の総選挙の場合、経済・財政政策や雇用政策が有権者の最も重視する政策だったのか。それとも、消費再増税に関する各党の立場を重視したのか。また有権者が重視している争点(例:原発再稼働)に関しては、どのような政策内容(例:再稼働を認めない、条件付きで認める、など)を望ましいと思っていたのか。
 この問いに答える計量的アプローチが、「コンジョイント分析」と呼ばれる、マーケティングの分野では長年用いられてきた手法である。これを、著者の1人(山本)を含む、米マサチューセッツ工科大学(MIT)、米スタンフォード大学、米ジョージタウン大学の研究グループが、最新の統計理論(統計的因果推論)に基づき精緻化し、コンピューター・サイエンスにおいて多用されている言語を用いたプログラムを開発したことで、ここ1〜2年、政治学における応用研究が急増している。
 コンジョイント分析を説明する上では、消費者の自動車選びを例にすると分かりやすいかもしれない。消費者が自動車を選ぶ際、何を判断材料にするであろうか。メーカー、燃費、マニュアルかオートか、安全性、シートの数、トランクのスペース、オーディオ装備、等々、様々な属性を多かれ少なかれ考慮の上で、1つの自動車を選んでいるはずである。
 ある人は、あらゆる属性を徹底的に比較検討した上で、購入する自動車を決めるであろう。別の人は、よく耳にするメーカーや車の名前だけで、簡単に決めているであろう。また別の人は、メカニックな性能についてはあまり気にせずに、色と値段だけで決めているであろう。そうした多様な属性を判断材料にして消費者が自動車を選んでいることを前提として、消費者にとってどの属性が重要かを統計的に解明するのが、コンジョイント分析である。
 既にお気づきの読者もいると思われるが、消費者の自動車選びと、選挙における有権者の支持政党選びは、実は良く似ている。有権者は、消費者の日頃の行動のように、様々な選択肢(政党)の中から一つを選んでいる。(厳密に言えば、衆議院議員選挙の場合は小選挙区と比例区で一つずつ選ぶことができる。)また、一つひとつの選択肢(政党)には多様な属性(政策)がある。それらを「総合的に」判断した上での選択行動をしているのである。
選挙運動期間中のデータで分析
 我々は、このコンジョイント分析を今回の総選挙の選挙運動期間中に実施した。実は我々は、全く別のプロジェクトでコンジョイント分析を行う準備を進めていたが、その準備がほぼ完了した11月18日に安倍首相が突然の解散表明したことを受け、新たなコンジョイント分析をする絶好の機会だと判断した。実際の選挙運動期間中に得たデータで、各党の実際の政策内容に基づいたコンジョイント分析をし、どの争点が実際の選挙において重要であったかを調べる研究は、我々の知る限り、この研究が世界初となるからである。
 その後、プロジェクトの方向を急遽一時転換し、諸処の手続きを急ピッチで完了させ、12月4日にインターネット調査によるサンプリングを開始。投票が始まる12月14日の朝7時にサンプリングを終了。その結果、10日間のサンプル期間中に、全国から1951人の回答を得ることができた。尚、インターネット調査では、全国の有権者を代表するサンプルを入手しにくいと言われるが、我々は様々な工夫に基づいて、サンプル・バイアスが相当程度低いと考えられるデータを入手することに成功している。
 この調査の準備段階で我々は、まず、自由民主党、民主党、維新の党、公明党、次世代の党、日本共産党、生活の党、社会民主党の各党が発表したマニフェスト、及び主要全国紙による各党のマニフェスト解説を丁寧に読んだ。その上で、(1)消費再増税、(2)雇用政策、(3)金融財政政策、(4)成長戦略、(5)原発再稼働、(6)TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、(7)集団的自衛権、(8)憲法改正、(9)議員定数削減の9つを、有権者にとって特に重要と思われる争点として選んだ。また、各党の政策内容を吟味し、争点毎に各党の立場を3〜4つの政策に整理した。
 この過程で最も参考にしたのが、日本経済新聞に11月28日に掲載された【表1】のような内容である。「特に重要と思われる」争点を選択する上で、また争点毎の政策内容を整理する上で、研究者の主観を完全に排除することはできない。しかし我々は、安倍首相の解散表明後、主要全国紙、インターネット上の記事、公開討論会の内容などを、連日徹底的にフォローし、可能な限り客観的に、公正に、かつ分かりやすく公約内容を整理することに努めた。

【表1】出所:11月28日付日本経済新聞記事を基に当サイト作成
どの政党を支持しますか?
 このようにして公約内容を整理した上で、インターネット調査に参加した回答者に、【表2】のような表を提示した。この表では、9つの争点の順番が、回答者毎にランダムに割り当てられている。更に、2つの「仮想」政党を作り、争点毎に用意した3〜4つの選択肢(政策)のうち1つをランダムに割り当てた。

【表2】
 表中の「集団的自衛権」の項目のように、争点によっては2つの政党の間に違いがないケースも出てくるが、これは実際の選挙で、部分的に似たような政策を掲げる政党が複数あるのと、まさしく同様である。
 このような表を提示した上で、各回答者に、どちらの政党を支持するか選んでもらった。そして、この作業を回答者毎に、5回ずつ繰り返してもらった。毎回ランダムに生成される仮想政党は少しずつ異なるが、表の中にある2つの政党が全く同じになる確率はほとんどない。この作業を通じて、各回答者は意識しないうちに、9つの争点を比較して、どの政策を重視するかを判断しているのである。つまり、政策のパッケージを「総合的に」判断した上で、支持する政党を選択しているのである。
 今回我々が使ったこのコンジョイント方式の世論調査は、いろいろな政策について一つひとつ順番に賛成か反対か質問していく通常の調査と対照的である。通常の方式では、個々の政策について有権者が賛成なのか反対なのかについては、確かによく分かる。しかし、それらの政策を公約=パッケージとして提示された際に、有権者が果たしてどのように「総合的な」判断をするかについては、全く見えてこない。現実の選挙で有権者が個々の政策について個別に判断を下すということはほぼあり得ないことを考えると、今回の方式でより真に迫った分析が可能になると言ってもよいであろう。
 調査結果を報告する前に、2つの重要な点について言及したい。1つ目は、争点の順番も、各争点の中身(政策)も、完全にランダムに割り当てられている点である。通常の世論調査では、ある政策(例:憲法改正)に関する質問をした後、別の政策(例:集団的自衛権)に関する質問をするということがありうるが、そのような調査では、質問の順番が回答内容に影響を与えている可能性がある。
 そのようなバイアスは、今回の調査では完全に排除されている。また、各争点の政策も完全にランダムに割り当てられているため、特定のタイプの有権者(例:民主党支持者、70代、男性、千葉県在住、無職)に、ある特定の政策内容が提示されるということはない。このことは、通常の世論調査データ分析のように、回答者の属性(年齢、性別、在住地、職業、教育水準、所得水準など)を「コントロール」しなくても、どの争点のどの政策が有権者の支持政党選択において重要であるかを、統計的に推計できることを意味している。
 2つ目の点は、今回の調査で回答者に行ってもらったような作業は、必ずしも現実的にありえない作業ではないという点である。実際、【表1】のように、各党の政策を簡潔に整理した表は、ほとんどの主要全国紙が公示日まで少なくとも1つは作成している。インターネット上でも、似たような表はたくさん公開されている。全党のマニフェストを全て読破する有権者は、ほとんどいないはずである。
 また、主要全国紙が長文で紹介する各党の政策サマリーを丁寧に読んで比較する有権者も、ほとんどいないはずである。多くの有権者にとって、各党の政策を比較しようとした際に入手しようとする情報は、【表1】のような簡潔明瞭な表なのではないか。それらを1分前後だけ眺めた上で、主な争点に関する各党の政策の相違を「だいたい」理解しようとしているのではないか。そうであれば、我々の実験で回答者に行ってもらった作業は、かなりの程度、現実の判断過程に近いはずである。何よりも我々は、実際の選挙運動期間中に、各党が提示した実際の政策を素材に、この実験調査をデザインしている。したがって、調査に参加した回答者が、同時進行していた実際の総選挙における議論を踏まえて質問に答えていたと仮定することは、概ね妥当であろう。
驚きの結果
 さて、注目の分析結果を示したものが【図1】である。尚、本稿で紹介する結果は、わずかな時間で分析を行ったこともあり、あくまで暫定的なものである。細かい統計的処置を施したり、回答者のタイプに応じた詳細な分析をしたりした上でのより精緻な結果は、別途執筆予定の学術論文を参照頂きたい。

【図1】
 この図、カラフルな飛行機がたくさん飛んでいるところを前から見たような感じにも見えるが、この見方をまず解説したい。まず、それぞれの争点に関して、自民党の政策(多くの争点に関しては自公両党の政策)を「基準点」として一番上に示している。例えば、図の一番上の消費再増税に関しては、「2017年4月に10%へ。軽減税率を導入」である。
 それに対して他の政策が、どのくらい回答者の支持率を平均して上げるまたは下げることに寄与しているかを、この「飛行機プロット」は示している。図中の「飛行機」が、真ん中より右側を飛んでいる場合、その政策は、全体として自民党の政策よりも有権者の支持を得ていることになる。一方、「飛行機」が、真ん中より左側を飛んでいる場合は、その政策が、全体として自民党の政策よりも有権者の支持を得ていないことになる。尚、ここで言う「支持率」とは、選挙での実際の得票率とは別のものである。我々の分析では、回答者にどの「仮想」政党を支持するか選んでもらうことを通じて、各政策に対する支持率を推計していることに、留意する必要がある。
 「飛行機」の「翼」は、統計分析でよく示される「95%信頼区間」と呼ばれるものである。この「翼」が真ん中の縦線(=0)を含まない場合、その政策が自民党の政策よりも、「統計的に有意」に有権者の支持態度を変化させていることになる。逆に言えば、「飛行機」の「翼」が0を含む場合は、その政策に関しては、自民党の政策も他の政策も平均的には支持率に有意な差がなかったということである。
雇用政策は争点にならなかった
 では、「飛行機」が左右にあまりずれていない政策、つまり、有権者の判断にあたってあまり重要でなかった政策はどれか。その代表が「雇用政策」である。増加の一途を辿る非正規雇用者の待遇をめぐって国会で重要な論戦があったが、今回の衆議院選挙では、有権者にとっての重要な争点ではなかったようだ。
 驚いたことに、「アベノミクス」の「第1の矢」と「第2の矢」である金融財政政策も重要な争点ではなかった。「大胆な金融緩和と機動的な財政出動によりデフレ脱却」(自民、公明)と訴えようと、「過度の金融緩和や円安、公共事業のバラマキを是正」(民主、維新、次世代)と訴えようと、「格差拡大をもたらす金融財政政策に反対」(生活、社民、共産)と訴えようと、有権者の支持態度を変化させることはなかった。
 大論戦となった集団的自衛権行使をめぐる問題も、一見すると、今回の総選挙では、有権者の政党支持態度に影響を与えなかったかのように見える。しかしこれは、集団的自衛権が争点とならなかったのではなく、各党の立場に対する有権者の支持が拮抗していたために、全体としては同程度の支持率を得たということである。
 本稿ではスペースの都合上提示しないが、実際に選挙で戦った各党の支持者別にグループ分けした分析をしてみると、それぞれのグループの集団的自衛権行使をめぐる問題に対する態度に、はっきりとした違いがみられた。これに対して、雇用政策や金融財政政策に関しては、グループごとに分けた分析をしてみても有意な差はほとんど見られなかった。「アベノミクスの成否を問う選挙」という報道があれほど多かったことを考えると、実に驚くべき結果といえる。
 自民党の政策と比べた場合に、統計的に有意な差を示した政策もある。まずは、消費再増税である。自公両党は「2017年4月に10%にし、軽減税率を導入」することを決めたが、それに対する対案は、「当面は延期するが、一定の改革実現後速やかに実施」(次世代)であろうと、「期限を決めずに延期」(民主、維新、生活)であろうと、「中止・税率引き下げ」(社民、共産)であろうと、支持率を2〜4%ほど上げることに有意に貢献している。
 これはやや分かりにくい結果であるが、衆議院解散の少なくとも1つの(タテマエ上の)理由とされている消費再増税に関する自公両党の立場に対して、他の代替案が何であれ、「とりあえず反対」という態度を有権者が示したとも言えなくない。
 原発再稼働も、有権者の意識の上では、今回の選挙における重要な争点であったようだ。自民党、公明党、次世代の党は、「安全基準に合格すれば認める」という立場であるが、それに対して、「再稼働を認めない」(生活、社民、共産)、「責任ある逃避計画など厳しい条件で容認」(民主、維新)という立場は、多くの有権者の共感を得たようである。選挙前の報道の内容とは裏腹に、有権者にとっては依然として原発をめぐる問題が重要であることを、この分析結果は示している。
 それ以外に、自民党の政策よりもより多くの支持を得た政策は、アベノミクスの「第三の矢」である成長戦略に関する、民主党、生活の党、社民党、共産党による「雇用政策や子育て支援などによる所得増で消費拡大」という政策である。自民党の「農業・医療など岩盤規制を打破」よりも、3%ほど政党支持を高めることに貢献している。
 なお、公明党は「地方産業・中小企業の活性化による成長実現」を訴えたが、自民党の政策以上に支持を得ることはなかった。成長戦略は多岐に渡り、一言で内容を整理できるものではないため、どのような表現で各党の政策を簡潔明瞭に整理するかについて、我々は苦心した。最終的には、日本経済新聞に掲載された表【表1】を若干修正した表現を使ったが、分析結果は政策内容の表現によっても影響を受けている可能性があることを留意したい。
TPPにはむしろ賛意、憲法改正は意見割れる
 TPP(環太平洋経済連携協定)に関しても、興味深い結果が得られた。安倍首相は今年3月15日に交渉に参加することを表明し、自公両党、および民主党は、「参加するが自由化には慎重」という立場である。これに対して、「参加して積極的に自由化を推進」(維新、次世代)という立場は政党支持態度を変えることに寄与しなかったが、「TPPへの参加反対」(生活、社民、共産)という立場に対しては、支持率を有意に下げる効果が確認された。この結果から、国益を踏まえてTPP交渉を継続していくという国の方針に対して、国民的合意が形成されつつあると言えるのではないか。
 今回の選挙で自公連立政権が3分の2以上の議席を獲得したことで、今後、憲法改正をめぐる動きが加速する可能性がある。その憲法改正に関しては、自民党、民主党、維新の党、次世代の党の「改正に賛成。国民の手による新しい憲法を制定」という立場に対して、社民党、共産党の「現行憲法条文のいかなる変更にも反対。平和憲法を守る」という立場は、両者への支持が拮抗しており、全体としてはほぼ互角の支持率となった。
 一方で、公明党、生活の党の「現行憲法の基本原理を維持した上で必要な条文を追加」という立場が3%程度ほど支持率を有意に上げている。いわゆる「1955年体制」で最大の争点であった憲法をめぐる論議は、「自主憲法制定」対「平和憲法擁護」という対立軸を残しつつ、徐々に多様なかたちに変化してきていることの表れだろう。
 残る争点は、議員定数削減に関する問題であるが、今回の最大の「隠れ」争点であったとも言える結果を示している。【図1】では、他の争点に比べ、「飛行機」のバラツキが、左側にも右側にも大きい。自公両党の「選挙制度調査会の答申を尊重し、よりよい選挙制度改革に取り組む」という、やや玉虫色の立場に対して、「比例区の定数削減には反対」という社民党と共産党の立場は、5%程度も支持率を下げることに貢献している。
有権者は「議員定数削減」にこだわった
 自民党の公約と比べた上で、全ての争点、全ての政策の中で、最も有権者にとって評判が悪かった政策が、「比例区の定数削減には反対」である。有権者は、「身を切る改革」にあからさまに反対する政党に、強い嫌悪感をおぼえたのかもしれない。
 一方、「議員定数削減を実現する」(民主、次世代、生活)という立場は、4%近い支持率上昇に寄与している。更に、「議員定数を大幅に削減する」という維新の党の政策は、6%以上もの支持率の上昇をもたらしている。「身を切る」か、「身を切らない」か。我々の暫定的な分析結果によると、これが今回の総選挙において、有権者にとっては最も重要な争点の1つだったようである。
 だからと言って、この争点が選挙結果の決め手になった訳ではない。実際、定数削減を訴えた維新の党、次世代の党、生活の党は、議席を減らしている。民主党は議席を伸ばしたものの、目指していたほどの議席増は実現できなかった。
 今回の選挙で、議員定数削減が最大の論点に浮上したとも言い難い。2年前の11月、テレビ中継された党首討論の場で、当時の民主党・野田首相が、自民党・安倍総裁による「来年の通常国会での定数削減と選挙制度改革」を実施する「約束」を確認した上で、「約束どおり」衆議院を解散したことは周知の通りである。約束が反故されたことに対して、今年の11月、野田前首相は、「重大な約束違反、強い憤りを覚える」と厳しく批判している。しかし、その後の新聞の論調は、議員定数削減を訴える立場を強く支持したわけではない。
 その例は、読売新聞の12月9日付の社説である。「議員定数削減 大衆迎合の主張は嘆かわしい」と題した社説で読売新聞は、「国会議員が身を切らなければ、消費税率引き上げなど『痛み』を伴う政策への国民の理解が得られない、と思っているのだろう。何か勘違いしていないか。(中略)『身を切る改革』を否定するわけではないが、定数削減は国民受けするという発想からそろそろ『卒業』してはどうか」と、議員定数削減を訴える立場を逆に批判している。こうしたメディアによる、「身を切る改革」を争点としようとする政党に対する批判が、議員定数削減を「マイナー」な争点にしてしまったのではないだろうか。
 では、少なくとも有権者が、「アベノミクス」や他の経済政策よりも、議員定数削減の問題を重視したのは何故か。その答えは、このコンジョイント分析からだけでは分からないが、有権者の国会議員に対する強い不満足感(「無用の長物」感)の表れだとも考えられる。メディアは、政党の主張を「大衆迎合」と一蹴するのではなく、有権者自身が議員定数削減に拘る理由について、より深く検討する必要があるのではないか。
ビッグデータ解析で真の民意をつかめ
 最後に、今回行った調査の意義を強調したい。我々は、安倍首相の突然の衆議院解散表明にも関わらず、選挙運動期間中に全国の有権者に参加してもらう調査を実施し、最新の統計手法に基づいて、各党が訴えた公約が、どのように有権者の政党支持態度に影響を与えたかを厳密に計量分析した。(この調査にかかった費用はわずか70万円強である。通常の世論調査にかかるコストと時間に比べて、破格に安く、かつずっと早い。)
 そして、投開票から1週間以内に、このように記事を書くことができた。政治学における統計分析やデータ収集の技術は、過去10年ほどの間に劇的に進歩している。政治学者がありとあらゆるデータ(いわゆるビッグデータや、リアルタイム・データを含む)を膨大に入手し、タイムリーに世界の重要な問題に関してコンピューターを駆使した統計分析を行い、その結果を一般向けに迅速に公開することを競う時代になってきているのだ。日本においても、このようなデータに基づく政治や選挙に関する研究をめぐって、学者たちが積極的に論を戦わせていくことが、日本の政治をより良くすることに貢献するのではないかと、我々は強く思っている。



ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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