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民意を反映できない民主主義というシステム(そりゃおかしいゼ第二章)
http://www.asyura2.com/14/senkyo176/msg/560.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 12 月 18 日 00:21:05: igsppGRN/E9PQ
 

民意を反映できない民主主義というシステム
http://blog.goo.ne.jp/fotvet9099/e/69083e69a549529701da7ce2b2bf1586
2014年12月17日 そりゃおかしいゼ第二章


沖縄の今回の選挙のように、巨大与党に協力して選挙が出来ないかと思ってみた。辺野古基地建設反対の一点で、沖縄の4つの小選挙区は知事選の熱が冷めやらぬまま、総選挙戦に突入した。民主党を除く野党の共闘は、見事に自民党を打ち破った。

ところが、敗北した4人の自民党候補は全員比例区で復活している。自民党が、保険として比例区の上位に、沖縄の候補者を置いた。比例区では下地ですら当選した。

結果として、沖縄4区で選挙戦を戦った9人全員が、衆議院議員になった。沖縄小選挙区で勝利した4人は、早速辺野古に向かい反対で座り込む人たちを激励に訪れた。

比例区とはいえ小選挙区の敗北者の自民党議員は、大手を振ってこれまで以上に辺野古基地建設へ動くことになるであろう。

こう見ると、民意どころか選挙結果は何の意味も持たないのでないかと疑いたくなる。逆に、自民党が小選挙区ですべて勝利したことを考えれば、今回の勝利は意味があるとは思うが、それでも釈然としない結果と言える。小選挙区もおかしいが、比例区についても掲げられた理念と異なり、小選挙区候補者のセーフガードになっているのである。

更に、政党投票となる比例区の動向の意味が理解できない。2009年、2012年、2014年の総選挙で自民党はそれぞれ1881万票で55議席、1662万票で57議席、1765万票で68議席とほとんど得票も議席数も変化がない。国民の移民党という政党に対する評価にはほとんど変化がないのである。

同じく民主党は2984万票で87議席、962万票で30議席、977万票で35議席であるが、これは鳩山党首の時の勝利を除けば、この2回の選挙結果に変化はない。むしる増えているのである。自民勝利も民主敗北もない。

もっと不思議なのは、日本共産党であるが前回の369万票から606万票へ、倍に近い得票ながらも、8議席を21議席に2.6倍に伸ばした。21のうちい議席は沖縄の小選挙区であるから、実質的に全員が比例区当選である。

戦後最低の投票率を、実数で評価するのはおかしい面もあるが、議席数は得票数に関係なく与えられる。短期決戦で泡沫候補が少なかったこともある。それにしても、民意は正当に評価されているとは思えない。

選挙後の世論調査でも主要な政策の多くは国民が反対か疑義を抱いている。集団的自衛権行使容認については60%の人が懸念を持っている。原発は70%が反対か慎重な姿勢を持っている。消費増税は60%が反対か疑念を抱いている。アベノミクスと称する経済対策についても成功すると思っている人は20%程度しかいない。

民主主義というシステムに完璧はないと言われている。しかし、民主主義の理念と矛盾することがあれば、その都度でも訂正するべきである。訂正するのが政治家自身であるから、腰が重くなる。定数削減や報酬の見直しなどはその典型である。それでも、民意を反映できない制度は修正されるべきである。


 

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コメント
 
01. 2014年12月18日 06:38:44 : jXbiWWJBCA

上久保誠人のクリティカル・アナリティクス
【第96回】 2014年12月18日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授]
総選挙大勝でも“やりたい政策”実現は茨の道
安倍首相を取り巻く「意外な状況」とは
 第47回衆議院議員総選挙の投開票が行われ、自民党が291議席、公明党が35議席を獲得し、連立与党で合計326議席となった。公示前勢力とほぼ横ばいながら、衆院で法案再可決が可能な3分の2の議席数を超えた。一方の野党側は、民主党が73議席となり公示勢力から11議席増やしたものの、目標としていた100議席からは遠く及ばず、二大政党の一角という地位を回復できなかった。維新の党は横ばいの41議席にとどまり、共産党は議席を倍増させて21議席を獲得したが、次世代の党、生活の党、社民党は壊滅的な結果となった。結局、ほぼ公示前勢力通りの議席配分となり、「誰も勝者がない」選挙となった。選挙戦は盛り上がりを欠き、投票率は戦後最低の52%台にとどまった。

安倍首相のペースに乗って惨敗した野党:
「将来の日本」を逃げずに議論すべきだった

 昨年の本連載最終回(第73回を参照のこと)では、「2014年は『アベノミクス退潮』と『新たな改革派』に注目」と論じていた。アベノミクス退潮はその通りだったが、安倍晋三首相は、江田憲司氏と民主党の保守系が合同する形の「新たな改革派」が姿を現わす前に、電撃的な解散総選挙に踏み切った。準備不足の野党側はなすすべがなく、まさに安倍首相の作戦勝ちであった。

 選挙結果自体は、特に驚くべきことではない。安倍首相が「アベノミクスの是非」を事実上の単一争点に据えた時点で、勝負はついていた。アベノミクスは、瞬間的に過ぎなかったとはいえ、「失われた20年」の長期経済停滞に苦しむ国民にとりあえず一息つかせたという事実があったからだ

 国民は馬鹿ではない。第二次安倍政権が発足するまでに、歴代政権が苦心惨憺取り組んできた財政再建や持続可能な経済運営を理解しないわけではなかっただろう。経営者も現場も、アベノミクスの本質が「モルヒネ」のようなものだとわかっていた。だが、それでも「今さえよければいい、もう一息つきたい」という気持ちを捨てることは難しかったということだ(第94回を参照のこと)。

 野党側も国民の心情を理解できないわけではない。だから、「アベノミクスは失敗だ」と批判しながらも、結局は「国民の生活の充実」を訴えるにとどまった。だが、財政赤字を直視することのない対案は、リアリティがなかった。与党との違いもよくわからず、野党が国民の支持を得るのは難しかった。

 今回、投票に行かなかった約48%の有権者に訴える政策はなんだったのか。それは、「モルヒネ」を打ち続ける対症療法をやめて、増税を予定通り断行して財政再建に真正面から取り組み、持続可能な社会保障制度のあり方を模索する。そして、既得権益に切り込み、斜陽産業に退場を促す「構造改革」「成長戦略」に尽力することではなかったか。将来の国民のために、引退・現役世代に「痛み」に耐えてもらうことを、逃げずに敢然と訴えるべきではなかったか。

 所詮、今回の総選挙で野党が勝つことは、最初から無理だったのだ。それならば、安倍首相のペースに乗って、「アベノミクスの是非」という短期的な論点を争うべきではなかった。「選択肢がない」といって棄権した約48%の有権者が聞きたかったのは、「将来の日本はどうあるべきか」という中長期的問題を、言いにくい話から逃げることなく議論することだったはずだと、筆者は確信している。

国会運営で守勢に立ちがちだった安倍首相は
総選挙後に「やりたい政策」を強気に進めるか

 総選挙の結果を受けて、安倍首相は「政権公約で示している政策についてご理解をいただいた」と発言した。それは、アベノミクスだけが信任を得たということではない。選挙で争点とならなかったはずの、憲法改正や集団的自衛権を含む安全保障法制の整備、原発再稼働など首相の「やりたい政策」も信任を得たという認識を示したのだ。

 これは、安倍首相のいつもの手口で、特に驚きはない。これまでも、アベノミクスに国民の注目を集めながら、「やりたい政策」を静かに進めてきたからだ(第80回を参照のこと)。しかし、総選挙での大勝を契機に、安倍首相の手口は劇的に変わるかもしれない。

 これまで、衆参両院で過半数を回復して「ねじれ国会」を解消しながら、なぜか国会運営で守勢に立たされがちで、重要政策の審議をなかなか前に進められなかった(第64回を参照のこと)。日本政治は複雑怪奇(第94回を参照のこと)だが、選挙後は強固な政権基盤を確立した安倍政権が、国民から「白紙委任」を得たとして、「やりたい政策」を堂々と正面から進めようと、強気の国会運営を行うと考えられている。

安倍首相の解散総選挙の真実:
財務省と財政再建派に包囲されていた

 だが筆者は、安倍政権が「白紙委任」を得たかのように「やりたい政策」をどんどん実現していくことになるとは思わない。それは、選挙中に出たさまざまなマスメディアの報道から、安倍首相を取り巻く意外な状況から考えることができる。

 例えば、「週刊ダイヤモンド」(2014年12月13日号)の後藤謙次氏の記事や、「選択」(2014年10月号)の記事によれば、安倍首相が解散権を行使した理由は、財務省や自民党税調が増税実現のための命懸けで行動しており、これを潰すには解散しかなかったからだという。

 もし、安倍首相が解散せずに増税先送り法案を国会に提出した場合、野党・民主党などが予定通りの増税実施を主張し、自民党内からも党税調などから安倍首相に対して厳しい批判が起こった。国会が混乱し、権力闘争に発展するリスクがあったのだ。テレビ番組での安倍首相の「財務省が善意ではあるが、すごい勢いで対処しているから、党内全体がその雰囲気になっていた」という発言は、この状況を裏付けている。衆院解散・総選挙を決めた背景には、財務省の消費増税に向けた多数派工作があったというのである(日本経済新聞2014年12月1日朝刊)。

 この連載では、今回の安倍首相の解散権行使を意味不明と論じていた(第94回を参照のこと)。だが、これらの報道から、首相の決断には、権力闘争の観点から重大な意味があったことがわかる。首相が、財務省と与野党に横断的に存在する財政再建派による「包囲網」を振り切るには、解散権を行使するしかなかったということだ。しかし、一旦選挙となれば、誰も「増税先送り」に反対できなくなった。安倍包囲網はあっという間に崩壊した。まさに首相は「伝家の宝刀」を抜いたということだ。

アベノミクス支持派は政界・学会のマイノリティに過ぎない:
今後も続く財務省・財政再建派政治家の「安倍包囲網」

 これらの報道が事実であるとすれば、安倍首相が置かれた状況は、「白紙委任」を受けたなどとは程遠いのではないだろうか。結論からいえば、安倍首相やアベノミクス支持の政治家、いわゆる「リフレ派」経済学者らは、実は日本の政界・学会でマイノリティに過ぎないということだ。

 この連載では、シリーズとして野田佳彦政権による消費増税実現の過程を検証してきた。野田政権は「ねじれ国会」に苦しみ、小沢一郎元代表ら民主党議員の大量離党という造反があった。しかし、「民主・自民・公明による消費増税のコンセンサス形成」によって、実に衆参両院の8割が賛成するという圧倒的な多数派形成に成功し、消費増税関連法案を成立させたのだ(第40回を参照のこと)。

 三党合意の成立には、90年代前半の「政治改革」の時代に台頭し、自社さ政権で政策立案の経験を共有した与野党の財政・税制通の存在があった。民主党の野田首相(当時)、峰崎直樹氏、五十嵐文彦氏、自民党の谷垣禎一総裁(当時)や、伊吹文明氏、町村信孝氏、野田毅氏らである。そして、野田政権を自民党のベテランが導く形で三党合意が形成されていった。与謝野馨氏、柳沢伯夫氏など、自民党政権末期に税制改革に取り組んだ元政治家も、彼らの間に立って政策立案に関わった。

 また、この合意形成の背後には、峰崎氏らの動きによって、民主党政権が「政府税調」を再編成した際、学者による「専門家委員会」を設置し、11名の委員のうち4名を自民党政権時代の旧政府税調委員から起用し、自民党政権からの専門的な議論の継続性を維持したことも大きかった(第21回を参照のこと)。

 さらに、財務省主税局の粘り強い人脈形成の努力があった。主税局は日常的に、与党だけではなく野党・反対勢力とも常にコミュニケーションを取っておくことに努めていた(第37回を参照のこと)。その結果、消費増税に対する理解者が、若手の政治家などに増えていった。

 要するに、野田政権における消費増税のコンセンサス形成は、「政治改革」の時代に台頭した与野党の新しい財政・税制通の政権運営・政策立案の経験の共有と、財務省主税局の粘り強い人脈構築という、約20年に渡る政界の大きな流れの中で結実したものだといえる。

 しかし、野田政権を2012年の総選挙で倒して登場した安倍政権は、大胆な金融緩和による「デフレ脱却」を掲げ、公共事業拡大、大胆な金融緩和、成長戦略の「三本の矢」からなる「アベノミクス」を打ち出した。そして一方で「社会保障と税の一体改革」三党合意を推進した「財政再建派」を官邸の意思決定から外したのである。安倍首相は経済成長重視、財政再建・社会保障改革軽視という経済政策の大転換を行ったのだ(第51回を参照のこと)。

「アベノミクス」の意思決定の中心にいる安倍首相、麻生太郎副総理・財務相、菅義偉官房長官、甘利明経済再生相や、そのブレーンである「リフレ派」「公共事業推進派」の学者は、「三党合意」の意思決定から外されていた。それは、国民に「痛み」を強いながら、苦心惨憺取り組んできた財政再建や持続可能な経済運営を行ってきた、歴代政権の経済政策の意思決定からも外れていたことを示している。つまり、彼らは政界・学会においては多数派ではなく、実はマイノリティであったといえる。

圧倒的多数派の財務省と財政再建派が
アベノミクス支持派を静かに包囲する

 アベノミクスとはマイノリティでしかなかったグループが権力を握り、長年取り組まれてきた経済・財政政策を一挙にひっくり返したものだった(麻生副総理は、首相在任時に税制改革に取り組み「中福祉・中負担」の概念を示した。その意味ではかつて税制改革の中心にいたが、「三党合意」からは外れており、微妙な立ち位置だといえる)。

 安倍首相や菅官房長官は、消費税率8%への増税は容認したが、10%への増税については「前政権が決めたことに従うことはない」(菅官房長官)として、今年8月の時点で、早々に先送りを決めていたという。基本的に安倍首相やアベノミクスを推進する政治家・学者は、これまで「外されていた」ことから、従来の経済・財政政策に対して、嫌悪感に近い感情を持っており、ことごとくそれを否定する意思決定をしてきたのである。

 だが、マスコミ報道の通り、消費増税先送りを巡る財務省・財政再建派の政治家の包囲網が、安倍首相に解散総選挙という「伝家の宝刀」を抜かせるほど厳しいものだったとすれば、それはアベノミクス支持派がいまだ、政界・学会でマイノリティに過ぎないということを示しているように思う。

 総選挙後、安倍首相はまず、景気回復を確実に行うために、公共事業など補正予算、企業に設備投資と賃上げを促す法人税減税など減税措置の経済対策を断行するだろう。だが、財政赤字がさらに悪化し、もはや、財政再建の国際公約の達成が不可能な状況となっても、首相に「白紙委任」が与えられ続けるということはない。

 なぜなら、これまで安倍政権の2年間でさえ、財務省はアベノミクスの意思決定から排除されたように見えながら、実際はしたたかに「アベノミクスの狂騒」を利用してきたからだ(第82回を参照のこと)。

 実際、アベノミクス「第一の矢」は財務省出身の黒田東彦日銀総裁、「第二の矢」は総額10.2兆円の12年度補正予算、総額92.6兆円の2013年度予算という過去最大規模の予算編成を行った財務省が放っていた(第61回を参照のこと)。つまり、財務省は、アベノミクス「第一の矢」「第二の矢」をしたたかに利用しながら、8%への増税実現の環境を整えていったといえる。

 今後も、財務省と財政再建派の政治家はいつでも安倍首相を包囲することができる。しかも、20年間に渡って築かれてきた圧倒的多数派が、マイノリティに過ぎないアベノミクス支持派を静かに包囲するものなのだ。

「選挙」で安倍首相に従った政治家は
「選挙」がなければ首相に従わない

 しかし、安倍首相の解散総選挙の決断は、一瞬にして財務省・財政再建派の政治家の安倍首相包囲網を「武装解除」し、自民党から共産党までのすべての政治家を「増税先送り」に賛同させたじゃないかと、反論する方がいるだろう。だが逆にいえば、「解散総選挙」だったからこそ、すべての政治家が首相に賛同せざるを得なかったのだ。これから2018年までの間、基本的に総選挙がないとなれば、首相に従う必要はなくなるのだ。

 もちろん、首相は解散権を持ち続けている。だが、「伝家の宝刀」は簡単に何度も抜けるものではない。例えば、2017年になっても景気が回復せず「増税先送り法案」を改正するために衆院解散すると首相が言ったとする。しかし、国民は到底納得しないだろう。また、憲法改正など首相の「やりたい政策」が世論の支持を得られない事態が生じたとしても、衆院選に二度も大勝してスーパーマジョリティを持つ首相が、解散権を安易に行使することは許されない。首相の国会運営の手腕が厳しく批判されるだろう。

 今回の解散総選挙の断行で、「安倍首相はなにをするかわからない」という恐怖を抱いた国会議員が多いという話はある。しかし一方で、安倍首相は批判に対して極度に敏感で、批判をできる限り避けようとする「八方美人的」な性格だ(第58回を参照のこと)。今回でさえ、首相は当初「増税を先送りするという決断をしました」とテレビ画面に向かって勇ましく語ったが、国民の評判が悪いと知ると「アベノミクス解散」だと、微妙に言い換えた。首相には、国民の理解を得られない解散を繰り返すような度胸はない。

 一方、政治家たちは、ただ選挙が怖かっただけである。今後しばらく選挙がないとなれば、安倍首相に「白紙委任」を与えて黙って従う必要はなくなるのだ。もちろん、来春の統一地方選、16年の参院選はあるが、選挙がしばらくなく身分が安泰な衆院議員は、首相の支持率が下がっていれば、容赦なく首相に反旗を翻すだろう。

やはり日本政治は「複雑怪奇」:巨大化した与党の中で、
財務省・財政再建派と族議員が入り乱れて大混乱となる

 アベノミクスでは、抜本的な日本経済の回復は不可能である。「モルヒネ」を打ち続けるがごとく、金融緩和・公共事業の拡大を続ければ、景気を維持することは可能だろうが、同時に財政赤字が拡大し、少子高齢化がさらに進む将来への不安も広がっていく。安倍首相に対して国民の支持が高まることはない。総選挙後しばらくすれば、首相の求心力は次第に失われる。ポスト安倍を狙う政治家が動き始め、政局が始まる。

 その上、安倍首相が今回の総選挙で、集団的自衛権、特定秘密保護法、原発再稼働、社会保障政策、環太平洋経済連携協定(TPP)などすべての重要政策を、アベノミクスの袋に包んで隠すように、争点から外したことが問題となってくる。326名の連立与党の議員が、衆院選勝利の要因を、いかようにでも解釈できるからだ。

 これは、2005年の小泉純一郎首相による「郵政解散総選挙」と比較するとよくわかる。あの時は、明らかに「小泉首相が主張する郵政民営化が信任されたこと」が自民党の勝因だった。だが、今回はなにが選挙の勝因か、さっぱりわからない。アベノミクスが信任されたのだというかもしれないが、アベノミクスのなにが信任されたのか曖昧で、いかようにでも解釈できるのだ。

 族議員、支持団体や省庁は、「第一の矢」(金融緩和)、「第二の矢」(公共事業の拡大)を続けてきたことが評価されたというだろう。今後も、まずは景気維持のために「第一の矢」「第二の矢」の継続が重要と主張するはずだ。彼らは地方経済の回復、斜陽産業の保護を重要視する。

 これに対して医療・雇用の規制緩和や女性の活躍、農業改革など「岩盤規制」を打破する「第三の矢」(成長戦略)は、都市と地方の格差を拡大し、既得権を失わせ、斜陽産業に退場を強いるもので、本質的に受け入れがたいものだ。従って、「第三の矢」断行への期待こそ、衆院選勝利の要因だと考える改革派と、激しく対立することになる。

 安倍政権発足以来、特に「第二の矢」公共事業拡大による大規模な利益誘導の復活を期待して、自民党本部には族議員が跋扈し、陳情に訪れる業界団体の自治体関係者が押しかけて、大賑わいが続いている。しかし、安倍首相が二階俊博総務会長ら族議員に対して、バラマキを防ぐために指導力を発揮した形跡はない。二度の総選挙を経て、もうしばらく選挙がないとなれば、族議員は首相に遠慮する必要はなくなる。首相はさらに族議員を抑えられなくなるだろう。

 総選挙後、安倍首相は「白紙委任」を得るのではない。野党が崩壊し、巨大化した与党の中で、財務省・財政再建派と族議員が、安倍首相を包囲しようと入り乱れて闘い、大混乱となる。安倍首相はその大混乱の中に埋没し、どこにいるかわからなくなる。日本の政治は単純にはいかない。「複雑怪奇」なのである。
http://diamond.jp/articles/-/63830


02. 2014年12月18日 06:53:31 : jXbiWWJBCA

田中秀征 政権ウォッチ
【第262回】 2014年12月18日 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]
総選挙雑感――これで安倍政治は信認されたと言えるのか?
 衆院総選挙は事前の予想通り、自民党が291議席を獲得して圧勝。公明党は35議席と公示前議席を上回った。これによって自民党はまたも単独過半数(238議席)を大きく超え、公明党と合わせた与党議席は326議席と衆議院の3分の2を確保することになった。

順風も逆風も吹かない
それこそが自民党大勝の要因

 この総選挙についての私の所感は次の通りである。

(1)この総選挙は稀にみる無風選挙であった。どの政党に対しても特別強い順風も逆風も吹かなかったように思う。あえて言えば依然として民主党に対する逆風は続いている印象だ。

 どの野党に対しても強い順風が吹かなかったことが、自民党大勝の最大の原因と言ってもよい。

 民主党は、かつて支持した多くの人が「民主党にだけは入れない」と固く決意していることを知らない。反省も処分もせず、自ら民主党政権時代を評価しているようでは消えて無くならざるを得ない。

自民党の選挙圧勝でも
安倍政権は信認を受けていると言えるか?

(2)安倍晋三首相はこの選挙結果により、アベノミクスはもとより消費税再増税、集団的自衛権、原発再稼働、特定秘密保護法など全ての懸案事項について信認を受けたと錯覚するだろう。

 案の定、首相は翌15日の記者会見で「集団的自衛権の一部容認を含む閣議決定にもとづく法整備を行うことを訴え、支持いただいた」と語り、従来の軌道をまっしぐらに走ることを強調した。

(3)しかし首相のこの認識は間違っている。なぜなら、選挙結果の数字の上からは圧勝であっても、実質的には首相の政権運営が確かな信認を受けたとはとても言えないからだ。

 投票率は52.66%、戦後の最低記録を大きく更新し歴史的低投票率を記録した。

 注目すべきは、いつもなら大都市圏より高い地方の投票率が大きく下落したこと。大雪の影響があった地域を除いて考えても異常に低い投票率であった。これは地方の多くの自民党支持者が安倍政治に失望して棄権にまわったとも考えられる。

 自民党の得票率は48%だと言うから、有効投票の半分以下。有権者の半分が投票して、その半分を自民党が獲得したに過ぎない。だから、自民党は有権者のわずか4分の1の支持しか受けていないことになる。これでは実質的に信認を受けたとはとても言えない。

 民主的議会の存在しない絶対王政や帝政においても、4分の1の政治基盤では統治することはきわめて困難だ。安倍首相が国や国民の運命に関わる重要な案件を強行すれば、一気に政権は弱体化せざるを得ない。

(4)野党勢の不振の原因は、やはり魅力ある政党や魅力ある指導者を欠いたこと。小さな政党であっても明確な政策目標を掲げ清新で魅力ある指導者が先頭に立てば大きな注目を集め、選挙後の政治の流動化に期待が生まれて盛り上がるはずだ。

 維新、共産には微風が吹いたが、それは強い魅力があったというより、自民党に対する反発票の受け皿となったに次ぎないように思われる。

首相の独断で恣意的に行われる
「7条解散」は最も慎むべき行為

(5)首相が恣意的に断行する憲法上のいわゆる「7条解散」は最も慎むべきだろう。

 かつては、7条解散は憲法違反とする議論が活発であったが、それが繰り返されたために今では下火となってしまった。

 だが、国際的にもきわめて異例な首相の独断による恣意的な解散は、首相権限としてあまりにも大き過ぎている。

 今回の解散については、与党内からも「大義がない」との声があったが、首相が勝手に決める大義では、あっても無くても大差ない。

 やはり「69条解散」と言われる内閣不信任案が可決されたときのみ首相の解散権を認めるのが憲法の合理的解釈だ。

 首相が、また与党が自由に機会を選べる解散・総選挙では、いつまで経っても日本の政治は変わらない。

 安倍首相はこれから「すべてが信認された」という大きな誤解によって、支持率下落の下り坂をアクセルを一杯に踏んで突っ走るのだろうか。それは安倍首相の自爆になるばかりか、安倍政治に同乗する大半の人に幸福をもたらさないことになる。首相には4分の1の政治基盤を自覚して“官意”より“民意”に耳を傾けることをあらためて望むばかりだ。そして、反転攻勢の絶好の機会にもなり得たこの選挙を「不毛な総選挙」にしてしまった野党は、その責任の重大さを噛みしめてほしい。

http://diamond.jp/articles/-/63903


03. 2014年12月18日 06:54:50 : jXbiWWJBCA

山田厚史の「世界かわら版」
【第75回】 2014年12月18日 山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
前門のイスラム国、後門の財政破綻
安倍長期政権を待ち受ける死活問題
「この道しかない」。安倍首相はアベノミクスを前面に押し立て総選挙に臨み、これから4年間の信任を得た。憲法改正を視野に長期政権を目指す首相の前には数々の難題が待ち受ける。日本の政界では敵なしでも、経済や国際政治の現場は容赦ない。シナリオが狂ったアベノミクスにどう始末をつけるのか。さらに手ごわいのはイスラム国だ。米国が地上戦に踏み切った時、日本の命運が問われる。

対イスラム国で協力を求められたら

 この二年間で安倍政権の性格を鮮明にしたのが集団的自衛権を合憲としたことだろう。憲法9条がある以上認められないとするこれまでの解釈を覆した。次のステップは憲法改正であるという指針を鮮明にした。強引な手法で目指すところは米国との同盟強化である。隣国の中国と緊張関係を高め、米国の後ろ盾で対抗する。この姿勢はこれまで「極東」に限定していた日米安保条約の対象地域を「世界」に広げる結果となった。集団的自衛権を踏まえて変更される日米防衛協力のガイドラインの見直しも、与党が3分の2超を占める国会は難なく通すだろう。

 防衛協力は制度として強化される。次は行動が問われる。米国にとって最大の懸案はイスラム国とロシアである。弱腰と非難を受けるオバマ政権はイスラム国に強硬姿勢で臨む構えだ。空爆には限界がある。地上戦は時間の問題とされる。戦いにはすでに多くの国が参加している。協力を求められた時、日本はどうするのか。

 閣議決定で決めた集団的自衛権には「三要件」が付けられた。(1)我が国に対する急迫不正の侵害、(2)他の適当な手段がない、(3)必要最小限度の実力行使、である。この三要件がある限りイスラム国への武力行使に参加できない、というのが政府の考えだ。その通りに行くだろうか。戦闘の参加できなくても、後方支援という協力がある。

 イラク攻撃の時、日本は輸送機による兵員輸送や艦船への給油、サマワでの給水事業など後方での支援に参加した。今度は自ら集団的自衛権に加わりながら、安倍首相は米国に「何もできません」と言えるだろうか。小泉首相はブッシュ大統領に頼まれ「自衛隊のいるところは非戦闘地域」という珍妙な説明で自衛隊を派遣した。

 後方支援でもイスラム国と闘う有志連合に日本は加わることになる。イラクと違い、イスラム国の戦闘員は世界各地に潜んでいる。後方支援すれば自衛隊は標的にされるだろう。大使館など世界各地の日本の施設が狙われるかもしれない。

「私が安倍さんの立場なら後方支援に自衛隊を出すでしょうね」

 外務官僚だった孫埼亨氏はいう。イスラム国との戦闘は後方支援でも危険だ。自衛隊員に犠牲者が出たら、日本の世論は武力攻撃へと傾くのではないか。日本人が狙われる事態になったら三要件など吹っ飛びかねない。それこそ安倍政権の狙い、と孫埼氏は言う。

 日本は欧州や米国のように中東で手を汚していない。中東を傍観するゆとりのある国だが、後方支援に参加すれば当事者となる。集団的自衛権で米国との同盟が強化され、空文化された憲法の精神は立ち枯れる。

 圧倒的戦力を投入すればイスラム国を蹴散らすことは容易だろう。だがそれは火種を世界にばらまくだけだ。世界の覇権構造、先進国に蹂躙された中東の歴史、市場経済がもたらす格差・貧困、石油権益、宗教対立。世界の矛盾を煮詰めたようなイスラム国の存在は、武力では解決しない。イラクでもアフガニスタンでもそうだった。

 戦火がくすぶる中で米国の次期大統領選が動き出す。共和党大統領でも誕生したら安倍政権は要請を断れないだろう。

 外遊好きの首相は行く先々で「価値観を共有する国家の連帯」を表明する。その「こころ」は米国を軸とした対中包囲網だが、オバマ政権にその気はない。そもそも日米は「共通の価値観」だろうか。民主主義・法治国家・市場経済などお題目を羅列するが、中味はだいぶ違う。そもそも国柄が根本的に異なる。

 米国は「国際紛争を武力で解決する国」。日本は「国際紛争の解決を武力にもとめない国」と憲法で決めている。集団的自衛権は日本が「米国の国柄」に染まることではないのか。「イスラム国」にどう対処するか。歴史的選択が安倍政権で問われるだろう。

市場が狙う日本の財政問題

 内政の重要課題は財政問題だろう。税と社会保障の一体改革は崩壊寸前だ。もともと安倍首相は、財務省の描く財政健全化シナリオに懐疑的だ。財政再建は増税より名目GDPの拡大が有効、と考える新自由主義の経済学者がブレーンを占める。財政再建より目先の景気が重視される。

 消費税増税の先送りもこのラインによって決まった。タイミングを合わせたように米国の格付け会社ムーディースは「日本国債の格下げ」を発表した。日本政府の信用は中国・韓国より下位に落ちた。もう一つの格付け会社フィッチも「格下げの方向で見直す」と表明した。

 四半期成長率が4〜6月に続き7〜9月も二期連続のマイナスになった。円安株高が進んでも日本経済は回復しない。その結果、増税を先送りせざるを得なくなり、アベノミクスへの冷ややかな評価がウォール街にも浸透している。投機筋は、日本経済や財政のことを心配しているわけではない。考えているのは市場の次のテーマである。

 金融関係者によると「アベノミクスでは儲けさせてもらったが、どうもうまくいっていないようだ」と突き放して見るファンドが少なくないという。「格下げ」は市場の関心事の反映でもある。次のテーマに日本の財政問題が浮上している、という。

 消費税率10%を1年半先延ばししたことで政府が掲げていた「2020年基礎的財政収支黒字化」の目標は絶望的になった。

 政府借金1000兆円を抱える財務省は、歳出から国債費(国債の利払い・元本返済)を除いた額を税収など国債以外の財源で賄うことを目指している。そのためには消費税10%でも足らない。2015年秋に10%にして時間をかけて15%程度まで引き上げを検討していた。10%税率が2017年になったのでは、さらなる増税を20年までに断行するのは難しくなった、と財務省幹部はいう。

「消費税収入は社会保障に充当」と言いながら安倍政権は景気対策に気前よくカネを使い、膨張財政を支えているのは国債だ。国債の膨張は金利上昇によって歯止めがかかるとされてきた。そうならないのは日銀が猛然と国債を買い上げているから。金利は下がり、節度無き国債発行が続いている。

 12月14日の日経新聞に日銀の国債保有が600兆円に達した、という記事が載った。政府が新たに発行する国債の額より、日銀が銀行から買い上げる国債の額が大きい。つまり日銀資産はどんどん膨らむが中味は国債。お札と国債の交換で日本の財政は維持されている。日銀が輪転機を回して国家の生業を支える「キツネの小判」現象が定着化した。

 消費税繰り延べで、黒田日銀総裁が珍しく政権への不満を表明した。「異次元緩和」、「国債大量買い上げ」など危ない橋を渡るのは「財政規律を保つ」という約束があったからだ、というのが黒田総裁の思いだろう。

やめられない量的緩和の先にあるもの

 政権の足元で財政を巡る力関係が変わりつつある。財政健全化を叫ぶ財務官僚は遠ざけられ、インフレ政策を主張する側近が力を増している。

 今回の解散・総選挙は、アベノミクスを掲げる改革派の首相と、増税に固執する守旧派の官僚の対立から生まれた、という解説が首相周辺からしきりに流された。財務省が自民党にまで手を回し「増税延期」を封じようとしたから首相は対抗策として解散を決意した、いう筋書だ。安倍の勝利で財務省は力を失う、という。

 大統領制の米国ではホワイトハウスの補佐官が行政を統括する。議会民主制の日本は、首相官邸の力が強まったとはいえ、官僚機構と対立する側近が行政を仕切るのは無理がある。野党もメディアも抑え、大統領のように振る舞う安倍首相の足元に経済政策を巡り亀裂が生じている。

 劇薬のはずだった国債の大量買い上げが、常備薬になったが、金融の量的緩和は永遠に続けることはできない。米国も10月末に量的緩和を打ち切った。日本はその目途さえ語れない。予定では2015年4月までに黒田日銀は「2%の物価上昇」を達成する約束だが、実現は難しい。量的緩和は引き続き維持されるだろう。

 2016年には参議院選挙がある。場合によってはダブル選挙になるかもしれない。政治の季節に金融緩和をやめるのは至難の業だ。2017年には消費税が10%になる。本当に増税に踏み切ることができるか定かではないが、いずれにしても景気対策が求められ、緩和打ち切りはここでも難しい。ずるずると日銀が国債を買う日々が続き、財政節度は霞んでゆく。2020年、宴の後に破局が訪れることを心配する人もいる。

 危機の引き金は国内とは限らない。原油の値下がりはロシアをデフォルトの危機に陥れた。やがて始まる米国の金利上昇がグローバルマネーの逆流を起こすかもしれない。中国はじめ新興国の危機も夢物語ではない。過剰流動性と呼ばれるマネーの乱流は世界各地で危機を頻発させてきた。

 デフレの海に沈みながらGDPの2倍を超える負債を貯めた日本の財政は、世界での図抜けた火薬庫である。火をつけるのはインフレ政策か。投機筋の日本売りか。

「日本の国債は返済できない」と市場に思われた時、皆が寄りかかっているシステムが音をたたて崩れる。選挙で手にした4年間、首相は地雷原を行く覚悟が必要だろう。
http://diamond.jp/articles/-/63902


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