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http://toyokeizai.net/articles/-/56082
http://toyokeizai.net/articles/-/56082?page=2
エラ・スミス(Sheila Smith)●外交問題評議会 (CFR) の日本研究部の上級研究員。2007年から2008年には慶応大学で客員教授を務め、中国に対する日本の外交政策を研究。日本の外交・安全保障に関する2つの重要なシンクタンク (日本国際問題研究所および平和・安全保障研究所)、ならびに東京大学および琉球大学で客員研究員を務めた。ジョージタウン大学のアジア学科では非常勤教授として教鞭を執り、同大学のアジア問題ジャーナルで理事を務めた。コロンビア大学で政治学の修士号と博士号を取得。
――今回の総選挙で自民党は数議席を失いました。安倍首相は選挙からどのような利益を得たのでしょうか。
狙いは、自民・公明が政権を握っている期間を延長することで、その点で安倍首相は成功しました。それは同党が今後の数年間 は選挙のことを考えなくてよくなることも意味します。連立与党は、来春の次回地方選挙まで政策の優先課題に集中できます。解散時に非常に低い目標を設定したことで、解散前と同じ程度の勢力を獲得したに過ぎないのに、大勝利の印象を作ることに成功しました。
――12月に入ってから自民党が相当数を獲得する予測があったことを考慮すると、同党が数議席を失ったことに何らかの意味があるでしょうか。
解散時点では、多くの人が、自民党はもっと多くの議席を失うと考えていました。選挙のタイミングに皆が驚き、この解散総選挙が当初、消費税に関連して行われたことを考えればリスキーでした。でも選挙は、いつかは行われたはずであり、その時期だけが問題でした。春では地方選挙とぶつかり、それより後になれば自民党、そして安倍首相にとってさらに具合が悪かったかもしれません。首相は早期に選挙を実施し、その計算は当たりました。今や自民党と公明党は、今後4年間の政権を手中にしました。
公明党は自信を深めた
――公明党が数議席を増やしたことで、集団的自衛権や原発再稼働のような、論争の余地がある問題に対する、連立政権の対処の仕方を複雑にするでしょうか。
公明党は今や、連立における自らの役割に自信を深めたはずです。集団的自衛権について公明党はすでに成果を出しています。全般的に、再解釈を行える幅が制限されるように物事を設定しました。来年、この法律が再検討される間、公明党がその役割を果たし続けるでしょう。
同じように、公明党は地方の問題に対処することでも重要な役割を果たすことになります。公明党は沖縄問題でも注目されます。公明党の支援なしには誰も知事選で当選できません。したがって公明党の翁長雄志知事との関係も注目されます。
――公明党は政権内における実質的野党なのでしょうか。
いいえ、典型的な連立政権の役割を果たすと思います。政権を運営するうえで、公明党の影響力が、より大きな自民党の政策上の優先課題で力を及ぼすことはありません。しかし、公明党に配慮する必要はあり、この1年間に集団的自衛権に関して見られたとおり、公明党はその暗黙的な拒否権を通して、意思形成において大きな力を発揮できます。
その真の力はもちろん選挙における価値にあります。自民党と公明党の共益関係は選挙時に発揮され、今回の選挙のタイミングに関する駆け引きは、来春の地方選挙とかち合うことを避けたい公明党の考えを反映していました。小選挙区の自民党候補のほとんどが今日、公明党とその関係団体の創価学会の動員能力に大きく頼っています。難しい局面では、勝つために公明党の助けが必要です。とてもではないが自民党は公明党から離れられません。あまりに互いに依存し合っているからです。
――日本共産党が大きく躍進しました。
理由は2つあります。1つは、政府の方針に対 する信頼できるブレーキという新しい役割への期待です。そのことは東京知事選においても見てとれました。多くの日本人が、民主党をはじめとする野党が自ら 主張を行い、強力な存在となった自民党と対抗できないでいることに失望していました。しかし、共産党は、原発再稼働に対しても、消費税に対しても、集団的 自衛権に対しても、明確にノーと言えます。
第2に、選挙における戦術的な問題です。共産党は、ほとんどの小選挙区で候補者を立てることによ り、今回の選挙で重要な役割を果たしました。つまり、本当に張り合えたわけでないにしても、自民党に反対を表明したい人たちの票の受け皿になったのです。 その結果、同党は小選挙区で初めて勝利を収め、比例代表選では20議席も獲得しました。
共産党は議席を大幅に伸ばし、今や同党単独で国会に法案を提出できるようになりました。衆議院においては、実質的な反対勢力として期待されます。
――その一方で次世代の党が壊滅的な敗北をしました。
これは今回の選挙結果でもっとも興味深いこと です。その名称とは反対に、実際のところ、同党は革新的というより非常に時代錯誤的でした。小さな政党で、日本について特異なビジョンを持った若干の政治 家から構成されていました。今回の選挙で、同党が日本の世論から非常にかけ離れていることが明らかになりました。
民主党ブランドは死んでいない
――民主党の課題は?
民主党は今回の選挙で立派な成果を収めましたと思います。しかし主要メンバーの何人かは落選しました。海江田万里氏の落選は、象徴的な重要性を持ちますが、党代表選への道を拓きました。今後、民主党がとる方向を確認するためには、党代表選を見守らなければなりません。民主党内で、党のアイデンティティについて活発な議論が行われることを期待します。
つまり、民主党とは何か、何になりたいのか、回復するために、その野心をどう一元化したらよいかです。民主党ブランドはあまりに落ちぶれたと考える人たちもいますが、私はそうは思いません。今こそ気を取り直して、理想のために闘うときだと思います。そのためには、集中すること、とりわけ目標を一致させることが必要です。したがって、党代表選挙は極めて重要です。
――記録的な低投票率は、何らかの悪影響を与えると思いますか。
これは自民・公明の大勝利の主張に水を差す事態です。勝利したとはいえ、有権者の半数しか意見を表明しなかった事実は考慮されなくてはなりません。自民・公明連立政権は52%の投票率の一部しか獲得できなかったのであり、日本国民の大部分は政府のリーダーシップを明確に支持しているわけでありません。
――原発再稼働は前進すると思いますか。
日本のリーダーの誰一人として一気に推進できるとは思えません。原子力に関しては、新しい規制機関、安倍政権および各地域の間で議論が行われるでしょう。それは漸進的なプロセスであり、実証可能な安全性の向上を求める国民の当然の要求のために、慎重に進められるはずです。
――日本政府は沖縄に対するアプローチを変えるでしょうか、それとも辺野古の普天間代替施設の案をそのまま推し進めるでしょうか。
予想するのが非常に難しい問題です。日本政府が方針を変えるとは思えませんから、すべての関心は翁長知事、そして今回の選挙が知事のアプローチにどう影響を与えるかに集まることになります。知事は辺野古埋め立て承認の撤回を求めるかを決める必要があります。知事選を通じて沖縄の方針は変化しましたが、政府の計画が実行されるかを決めるという点で、重要なのは知事だと思います。安倍内閣と知事の話し合いでは、引き続き菅義偉官房長官が重要な役割を果たすでしょう。
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