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「野党よりマシでしかない。」ので自民党へ投票という有権者も、いたようだ photo Getty Images
「投票棄権」の47%が「行ったら共産党に入れた」 毎日放送リスナー調査が示す「本当の民意」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41439
2014年12月16日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
第47回衆議院議員選挙は12月14日、投票が行われ、自民、公明の連立与党の圧勝に終わった。公示前の「自民党だけでも30議席は減らすだろう」といった予想を覆し、両党合計で改選前と同数の326議席を維持し、参議院で否決された法案を再可決できる衆院の3分の2超の議席の確保に成功したのである。
■総選挙に反映されなかった別の民意があった
12日間の選挙戦で目立ったのは、もともとやる気のなさがミエミエだった来年秋の消費増税を1年半先送りすることの「信を問う」という安倍政権・連立与党の練りに練った選挙戦術の群を抜くしたたかさだ。
原子力発電所の再稼働や集団的自衛権行使を巡る解釈改憲など議論の割れる問題にはできるだけ踏み込まず、準備不足の野党各党を圧倒した。
だが、開票の夜、私がコメンテーターを務めた大阪の毎日放送(MBS)のラジオ番組『2014総選挙開票特番 センセイこれからどうするの? 今夜、聞きまくります』が、リスナーを対象に実施した調査で、アベノミクスを支持しない人が支持する人の2倍に達するなど、総選挙に反映されなかった別の民意がくっきりと浮かび上がった。
この調査は、圧勝に沸く安倍政権・与党や消沈する野党だけでなく、広く国民に知ってもらい、考えてみてほしい内容に富んでいる。今回はその調査を紹介したい。
調査は「テレゴング」という名の携帯電話を使ったラジオ独特のもので、番組がリスナーに呼びかけた。呼びかけから集計まで早いものでは、数分間しか時間をかけず、たっぷり時間をかけて無作為のサンプルを調査する「世論調査」とはまったくの別物だ。早い話が、MBSラジオの開票特番のリスナーに対象が特定されているので、偏りがないとは言えない。しかし、そうした前提を差し引いても、この調査の結果は驚きに満ちていた。
■棄権しなければ「共産党」に投票
まず、番組の冒頭で行った「第1の問い」(投票に行かなかった方にお聞きします。もし投票するなら比例は何党ですか?)の結果が衝撃的なものだった。その結果は、
共産党 47%
自民党 26%
維新の党 21%
民主党 5%
公明党 0%
次世代の党 0%
社民党 0%
新党改革 0%
となったのだ。
今回の総選挙は、投票率が52%前後(小選挙区)と前回の59.32%(同)を下回り、戦後最低を更新した。ほぼ2人に1人が投票権を放棄する関心の薄い選挙だった。しかし、番組の調査がある程度全国的な傾向を反映していて、その人たちが投票に行っていたとしたら、連立与党の圧勝という実際の総選挙とまったく違った結果が出ていてもおかしくない。
投票率が結果を大きく左右することは、過去の選挙が示している。例えば、自民党が政権を奪回した前回(2012年)の総選挙では、投票率(小選挙区)が59.32%とその前(2009年)に比べてほぼ10ポイント低下した。その結果、最も大きく得票数を落としたのが、その前の選挙で得票率の上昇をテコに政権交代を成し遂げたばかりだった民主党だ。同党は4009万票も得票数を減らした。
そのため、得票数の減少が384万票程度だった自民党にまんまと政権を奪還されたのである。
そこで、MBSの携帯調査の結果だ。それによると、共産党の潜在的な支持率は、実に棄権者のうちの47%と圧倒的に高い。もし、今回の総選挙の投票率が高かったら、どんな選挙結果が生まれただろうか。
今回、共産党は公示前に比べて13議席増やして21議席を獲得する大躍進を見せた。しかも、投票率がかなり上がり、潜在的な支持率通りの投票が実現していたら、共産党がいきなり政権を伺うような立場に立った可能性がなかったとも言い切れない。その可能性を携帯調査は示したと言えなくないのだ。
■80%が、「投票したい人がいない」
やはり選挙に棄権は禁物だ。共産党政権を実現せよという気は毛頭ないが、政治に失望するよりも、自分の1票をきちんと行使すべきである。今回、棄権した人々には、次回から考え直していただきたい。
ただ、この問題を単純に有権者の責に帰すことができないことも、携帯調査は浮き彫りにした。それが、番組の中盤で訊ねた「第6の問い」(投票したい人がいないと感じますか?)に対するリスナーの回答だ。「はい」が80%と、「いいえ」の20%の実に4倍に達した。
事態を改善するには、有権者を惹きつけ、信頼を得られる政治家の登場を待つだけでは不十分だろう。
「第1の問」で、「もし投票に行ったとしたら、投票した」という人がわずか5%しかいなかった民主党などは、すでにほぼ限界まで支持者を掘り起こしており、将来へ向けた伸びしろがほとんどないと宣告されたようなものである。党の解消や他党との再編など、よほどの荒療治をしないと、政権を担えるような責任政党への復活は望めないかもしれない。
携帯調査は大勝した自民党にも、総選挙で同党が信任を得たと胸を張るには厳しい注文を突き付けた。以下に列挙すると、
「アベノミクスを支持しますか?」
支持する 33%
支持しない 67%
「アベノミクスで生活はよくなると思いますか?」
生活はよくなると思う 18%
生活はよくならないと思う 82%
「自民党に投票した方に聞きます。自民党の政策で支持できないものはありますか?」
消費税増税 37%
原発政策 25%
アベノミクス 12%
TPP 12%
集団的自衛権行使容認 12%
労働規制の緩和 0%
憲法改正 0%
全部支持できる 0%
といった具合だ。
■民意を聞かず、頑なだった安倍首相にリスナーが猛反発
安倍政権の1枚看板であるアベノミクスに関する2つの質問では、支持しないリスナーが支持するリスナーの2倍に達しているばかりか、生活がよくなると思えない人が8割を超えている。この結果を見ると、公示期間中に情緒的なスピーチを繰り返すばかりで、体系的かつ具体的な経済政策を打ち出せなかった野党各党に比べればマシという程度の感覚で、連立与党に1票を投じた有権者が多いことを暗示しているのかもしれない。
消費増税の2017年4月への先送りを打ち出した自民党に投票した人の中で、37%が消費増税そのものに反対している事実や、25%の人が原子力規制委員会を隠れ蓑にした安倍政権の原発政策に反対を表明していることにどう対峙するのか、連立与党は鼎の軽重を問われている。
携帯調査では、自民党の盟友、公明党にリスナーが懐疑的なこともわかった。同党が憲法改正や原発政策で自民党のブレーキ役を自称しているにもかかわらず、「公明党は安倍政権の政策にブレーキをかけられると思いますか?」との問いに対して、「かけられると思う」がわずか11%しかおらず、「かけられないと思う」が89%に達したのだ。公明党が信頼を得るためには、相当きつく褌を締め直す必要があるだろう。
最後に、多くのリスナーが安倍首相個人の資質に首を傾げていることも指摘しておかなければならない。「安倍さんの話を聞いて期待できると思いますか?」との問いに、「期待できる」と応えたリスナーがわずか15%と「期待できない」の85%を大きく下回ったからである。
この数字は、番組が総選挙の開票中に安倍首相の単独インタビューを行い、沖縄の4選挙区すべてで、普天間基地の辺野古への移転を反対する候補に自民党候補が敗れた事実を見て、沖縄問題での姿勢を転換する考えの有無や、公明党の主張に配慮して集団的自衛権の問題を慎重に再考する気があるかを質したところ、頑なに従来の姿勢を貫く言動をしたことに対して、リスナーたちが感じたままを表明したものだ。
総選挙の結果を拡大解釈したり、我田引水の政策の正当化に利用することは御法度と、リスナーたちが明確に釘を刺したと言っていいだろう。首相に限らず、政権と連立与党には、こうした民意こそ大切にしてほしいものである。
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