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消費増税で経済危機、低所得層に深刻な打撃判明 衆院選で安倍首相に下された“ノー”
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141215-00010007-bjournal-bus_all
Business Journal 12月15日(月)15時14分配信
安倍晋三政権の2年間の成果を問う衆議院選挙が終わった。結果は自民党291議席・公明党35議席となり、与党自公は参議院で否決された法案を衆議院で再可決可能な3分の2の議席を確保した。対する野党陣営は、維新の党41、共産党21、次世代の党2、生活の党2、社民党2、という議席数であった(ほかに無所属8議席)。与党はその勢力を微増させ、安倍首相の政治的求心力が増すことになった一方、野党では民主党や維新の党が反自民票を吸収することができず伸び悩んだ。ただ共産党の躍進は、野党勢力の中で反自民の受け皿として一定の成果をあげたことを意味しており興味深い。自民党よりも右寄りとされる次世代の党は壊滅的打撃を受けた。
筆者が目にしたところでは、この結果を受けてリベラル系や左派系の識者の間に大きな失望感が広がっている。なかには次の政治的主戦場を憲法改正の国民審査にまで求める発言も聞かれる。確かに選挙での勝利を受けて安倍首相は念願である憲法改正に言及したが、憲法改正が直近の政治的課題になったとはとてもいえないだろう。むしろいわゆる「保守化」への傾斜に大きなブレーキがかかっている状況だといえる。
その兆候は少なくとも3つある。
1つめは、自民党単独では公示前とほとんどその議席数が変化していないこと、そして投票率が極めて低いことだ。国民の多くが今回の選挙の争点に関心を持てなかったのか、あるいは支持すべき政党を持ちえなかったからではないか。公明党は憲法改正については自民党の改憲姿勢と同じではない。維新の党など野党との調整も難航が予想される。つまり憲法改正については、自民党は単独で衆参両院で3分の2を占めることが必要になってくるだろう。
この条件をみたすためには2016年7月に予定されている参議院選挙で3分の2以上の議席を獲得し、さらに同日選かあるいはその前後に行う衆議院選挙でも大勝し同様となることが必要になる。しかし、今回の選挙結果より、国民は自民党に憲法改正のゴーサインを出していないどころか、憲法改正が政治的に緊急の課題だとみなしていないことが明らかとなった。もし国民の理解が得られていれば投票率はもっと上がったであろう。それだけ国民の自民党への姿勢はクールだったといえる。
●沖縄での大敗が意味するもの
2つめは、沖縄の全選挙区で自民党が大敗したことである。米軍基地の移設問題がこじれてしまい、それによって政府と沖縄県民との政治的対立が先鋭化してしまった結果である。安倍首相はこの問題について選挙後の記者会見で「県民との対話」姿勢を強調したが、その行方はかなりの困難が予想される。沖縄の基地移設問題が、かつての民主党政権がそうだったように政治的蹉跌にもなりかねない。少なくとも「保守化」という観点からいえば明確に沖縄はノーだった。その声を無視することは不可能だ。
かつて経済学者の宇沢弘文氏は、経済学者ジョン・メイナード・ケインズ氏の高弟アバ・ラーナー氏が語った次の「対話の作法」を紹介している。
「むかし、あるところに一人のラビ(ユダヤ教の教師)がいた。Aという人が相談にきたところ、ラビはお前のいうことはもっともだといった。つぎに、Aと争っているBという人がやってきたが、ラビはBに対してもお前のいうことはもっともだといったわけである。この経緯を傍で聞いていたラビの奥さんはいった。あなたはAに対しても、Bに対してもお前のいうことはもっともだといった。ところが、AとBとは争っているわけで、あなたのいうことはまったくおかしい。そこでラビは奥さんに向かっていった。お前のいうことはもっともだ」(『「成田」とは何か』<宇沢弘文/岩波新書>より)。
社会的な分断をはらむ問題には、このような心構えと、対立した意見を聞く場の再構築が求められるだろう。
第3に、自民党よりも「右傾化」していると評価されていた次世代の党の惨敗である。議員数の激減もそうだが、今回の選挙の目玉だった田母神俊雄氏も思ったほどには得票を伸ばすことができず、選挙区立候補者の最下位に甘んじた。評論家の古谷経衡氏は自身のツイッターで、「次世代の党的主張への同調を『右傾化』と表現するならぱ、日本と、多分若者は右傾化していない、という事が明らかになった。(略)有権者は良くも悪くも現実路線を選んだ」と指摘した。古谷氏の指摘は正しいだろう。
以上の観点から極端な「保守化」に一定のブレーキがかかる結果になった、と筆者は推論している。もちろん安倍首相の政治的な最終目的が憲法改正にあることは、誰の目にも明らかである。経済学者の松尾匡氏が指摘しているように、今回の解散総選挙が憲法改正を目的として周到に練られた「合理的計画」の一部である可能性は否定できない。ただその計画を実現できるかどうかは、最終的な決定権者である国民にあることを、安倍首相も我々も自覚しなければならない。
●機動的かつ効果的な財政政策の必要性
では、安倍政権がまず取り組むべき政策とは何か。それはなんといってもデフレ脱却を核にした経済対策だろう。この点で、政権は現在最大の危機を迎えている。もちろんそれは4月の5%から8%への消費増税の悪影響が深刻なことにある。消費増税による消費の減少、つまりは生活の苦しさは、低所得層であればあるだけ大きい。
年間所得収入を5階層に区分し、その下から数えて2割になる第1分位に属する人たちは、非正規雇用者が多い勤労者世帯である。この世帯の実質消費は消費増税の影響により10%以上も減少してしまった。この事態に対応して、早急に財政政策で対応する必要がある。筆者は低所得者層を中心にした10兆円規模の所得給付を行うべきだと考えているが、政府は相変わらずの公共事業支出を中心に対応するようだ。
だが、公共事業支出の景気刺激効果は現時点でかなり制約されている。また日本銀行も追加緩和を早めに行うべきだが、金融緩和は株価や為替レートへの影響は早く出るが、実体経済への影響が出るには半年以上のラグ(遅れ)が生じる。よって、財政政策をいかに機動的かつ効果的に行うかが当面のカギになる。この点で安倍政権には、当面は消費増税の悪影響を取り除くことに尽くすこと、そして、より実効性のある財政政策の出動を行うことを期待する。
田中秀臣/上武大学ビジネス情報学部教授
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