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福井県立大教授・服部茂幸氏 アベノミクスの“手口”を暴く
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/155717
2014年12月15日 日刊ゲンダイ
■円安政策はマイナス効果の方が大きい
アベノミクスのゴマカシはいろいろあるが、「アベノミクスの終焉」(岩波新書)で有無も言わせぬ数字を突きつけたのが、この人だ。服部氏の著書の中にはアベノミクスを雨乞いに例えた話が出てくる。根拠のない雨乞いをして、本当に雨が降ってくれば、自分の手柄にする。降らなければ、雨乞いが足りないと言う。まさしく、安倍・自民党の手口である。アベノミクスで雨など降るはずがないのである。
――安倍政権は「アベノミクスの是非を問う」ということで、衆院を解散しました。安倍首相は「この道しかない」と言って、自民は圧勝しました。どう思われますか?
10月31日に日銀が追加緩和をしました。続いて安倍首相は10%への消費増税を1年半、先送りにすることを表明しました。普通の人が見れば、アベノミクスがうまくいかなかったと認めたことになると思います。
――だけど、日銀も政府も失敗を認めていませんよ。
景気が落ち込んでいるのは4月の消費増税の反動のせいである。円安にしても輸出が増えないのは世界経済が悪いからだと。こういう主張ですね。つまり、アベノミクス自体はうまくいっている。景気が落ち込んでいるのは別の理由であると。
――詭弁ですよね?
消費税を上げれば、消費が落ち込むというのは、一般論としてはそうです。でも総務省の資料では、家計消費の落ち込みは、1997年に消費税を3%から5%に上げたときには、0・5%くらいでした。今年は5%くらい落ち込んでいてケタ違いです。景気の落ち込みは消費増税だけのせいではないのです。
――異次元緩和をどうお考えですか?
日銀は2%の物価上昇を目標にして異次元緩和を続けています。しかし、IMFが為替の影響を受けない品目で物価動向を調べたところ、日本の物価はまったく上がっていなかった。私の本でも書いたように、現在の消費者物価の上昇は、輸入インフレの結果にすぎないのです。
――円安が日本経済のためになるのかどうか?
何のための円安政策なのでしょう? 輸出は増えず、輸入が増加し、貿易赤字は拡大した。輸出企業は利益を得たが、国内産業と家計は損失を被った。利益と損失を比べれば、マイナス効果の方が大きいでしょう。
――10月末の追加緩和後、その円安がさらに進んでいますね。
初めのうちは経団連に属するような大企業は円安を歓迎していました。しかし、日銀が追加緩和を決めたときに産業界出身の政策委員が反対しました。産業界でも現在の過度の円安は歓迎していないのです。
――安倍政権はアベノミクスの成果で株が上がった、雇用が改善したと威張っていますね。
確かに株は上がりましたが、その原因がアベノミクスであるかは微妙です。株高は年金資金の買い増しや外国人投資家の動向によります。有効求人倍率も改善しましたが、実は2009年半ばから改善していて、とくに新規求人数は2010年に急増しています。アベノミクスの前から雇用環境は良くなってきていたのです。
――アベノミクスの出だしは良かったように見えますが?
確かに2013年の前半は高成長でした。しかし、安倍首相が首相になったのは2012年12月で、景気の底は2012年の11月です。アベノミクスに効果があったとしても、その効果が出るためには、半年くらいかかります。単に安倍首相はタイミングが良かっただけです。
――消費増税でボロボロになり、今年度はマイナス成長必至ですね。
そもそも、2013年の経済がうまくいっていたというのが、間違いです。2013年の後半の経済を支えていたのは政府支出と、消費増税前の駆け込み需要で急増した民間住宅投資、耐久消費財の需要です。それを省くとマイナス成長となっていたことは、私が本で書いた通りです。したがって、増税後の景気減速は想定内ともいえます。私が本の原稿を書き終わった時、政府・日銀だけでなく、企業、マスコミも含めて、消費増税の反動減は小さいと言っていました。彼らが何を根拠にそう言っていたのか私には理解できません。
■危機が露呈するまで隠蔽し失敗の責任は押し付ける
――そうなると、アベノミクスの成果は何一つない。というか、2012年末からの景気回復を勝手に自分の手柄にしただけで、その後はボロボロ。アベノミクスで一時的に景気が良くなったかのように喧伝しているのはインチキ、詐欺的な話になりますね?
まあ、そうです。
――だとすると、トリクルダウンも起こらない?
将来のことは不確実だという意味で、起こらないとは言い切れませんが、普通に考えると起こりません。日本経済はずっと沈んでいるように見えますが、2002年から戦後最長のいざなみ景気がありました。支えたのは輸出の拡大で、製造業の大企業は利益を急増させました。アベノミクスの円安で、製造業の輸出産業が利益を得たのと同じ構造です。ところが、この間、雇用者報酬はほとんど増加せず、1人当たりの実質賃金はむしろ低下したのです。米国でも同じで、1970年代半ば以降、男子フルタイム労働者(中位)の実質給与は増えていません。米国経済は1990年代以降、リーマン・ショックまでは好調だったとされますが、好調だったのは1%のスーパーリッチだけで、一般の労働者には恩恵がないのです。アベノミクスでトリクルダウンが起こると信じる根拠はありません。
――そもそも、問題は日本企業の競争力がないところにあるのではないですか? 新自由主義者のリフレ派が言うように、金融政策と規制緩和で手品のごとく、景気が回復するとは思えませんよ。
日本の輸入が増えて貿易収支が劇的に悪化していますが、少なくとも昨年度に関しては、原発が止まったことによる鉱物性燃料の輸入が増えたせいではありません。輸入増加の3分の2を占めるのは製品輸入で、かつて日本企業の輸出の中心だった一般機械や電気機器、輸送用機器の輸入が25%も増えているのです。それも中国、ASEANからの輸入です。円安にもかかわらず、日本の輸出はあまり増えず、逆に、日本の主力輸出品だったモノの輸入が急増しているのはなぜなのか。米国はプラザ合意で通貨を切り下げたが、貿易赤字は改善しませんでした。すでに米国の製造業は空洞化していて、一方、日本の製造業の競争力が強力だったからです。これと同じ現象が日本とアジアの間で起きているのです。
――それなのに、安倍政権は「この道しかない」とやっている。著書の「アベノミクスの終焉」では、米国で金融危機を引き起こした経済学がアベノミクスでゾンビのように復活したと指摘されている。金融緩和をして市場に任せておけば、トリクルダウンが起こるという経済学です。なぜ、こうした過ちが繰り返されるのでしょうか?
危機が本当に明らかになるまで危機を否定し、隠蔽する。失敗しても、失敗の責任は他に押し付け、成果だけを自分の手柄にしてしまう。失敗を犯しても、多数派の力で自らの責任を免責する。政治が有力集団と結びつき、その利益を擁護する。米国同様、日本でも、こういうことが今も行われているからだと思います。大多数の国民はアベノミクスの恩恵はないと答えていますが、成果が出るまで「時間がかかる」といって、失敗を認めません。現在の不況にしても、アベノミクスがうまくいかないのではなくて、消費増税のためにしてしまう。安倍政権の周辺のリフレ派の学者たちも、こうやって自分たちの失敗を免責し、間違った政策が続いていく。経済学と経済政策はさまざまな失敗を繰り返してきました。その都度、警告も繰り返されていたにもかかわらずです。それは失敗した人々が失敗を隠蔽し、ゴマカし、記憶を忘却させるからです。
▽はっとり・しげゆき 1964年、大阪生まれ。京大卒。「新自由主義の帰結」(岩波新書)など著書多数。「アベノミクスの終焉」(同)は大きな話題に。
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