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自民党圧勝
自民圧勝後の野党は、どう対抗軸を立てれば生き残れるか?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41433
2014年12月15日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■自民党圧勝の理由はベースの経済政策の差
大方の予想通り、自民党が圧勝した。筆者が先週の本コラムで書いたとおり、経済政策の中の金融政策について、自民党と他党ではまったく勝負にならないことが野党の敗因である。
これだけベースの経済政策に差があると、アベノミクスと非アベノミクスにはそのパフォーマンスに決定的な差が出てしまう。
先週は雇用の就業者数の差のグラフを出したが、企業倒産にも差がある(下図)。
野党の金融政策オンチを物語る話として、金融政策について株価を釣り上げる手段くらいにしか思っていないことがある。現に野党は、金融政策について株を持っている金持ち優遇という言い方をする。
金融政策は広範な分野に効く、強力な政策手段である。金融緩和は、株価上昇も就業者増加も同時に起こしてしまう。
その証拠が、以下の図だ。これは、日経平均と6ヵ月先の就業者数が連動していることを示している。金融緩和で、実質金利が下がると、一方で株価が上昇するとともに、半年後には実物経済がよくなって就業者数も増やしているのだ。これは、金融緩和は、金持ちだけでなく、職のない弱者にも恩恵を与えていることを示す。
■アベノミクス継続は日本経済にいいこと
こう考えてくると、今回の総選挙で「アベノミクス」が継続されるのは、日本経済にいいことだ。安倍首相の最大の貢献は、金融政策という世界の標準ツールを日本にも導入したことだ。これまで、経済政策というと、財政政策や個別産業のミクロ政策しかなかった。
雇用にも関係する金融政策が重要だと、気がついた首相は安倍首相が初めてである。そして、それを活用して雇用を生み出した。未だに、金融政策が理解できずにいる政治家は多い。残念であるが、本来雇用確保の政策のために、金融政策を主張すべきである左派政党の党首がまったく金融政策を理解できないのであるから、選挙の勝負はやる前からついているのである。
それでは、衆院選後、民主党や維新の党など野党はどのように党勢を立て直し、存在意義を発揮することができるのだろうか。
今回の総選挙で、有力な第三極は苦しかった。大阪では、維新の党は逆風の中、かろうじて踏みとどまった。しかし、次回の総選挙で展開が開けたとは言いがたい。
■自民党の対抗軸はリベラルの結集しかない
政治学の理論でデュベルジェの法則がある。これは経済学のゲーム理論からも、かなり緻密に扱われているもので、一つの選挙区でn人の議員を選ぶという制度の場合、n+1の政党しか長期的には存続し得ないというものだ。
そのロジックは、たとえばn=1の小選挙区制だと、候補者が3人の場合、有権者の支持率が2番目の候補者はちょっとしたきっかけで1番目に勝てるかもしれないが、3番目の候補者の当選確率は、他の2人に比べてがたんと落ちる。
一番手でもなく二番手でもない第三極の政党は、もともと小選挙区制では存続するのは難しい。
もっとも、今の小選挙区制は完全なものではなく、小選挙区比例代表並立制なので、第三極の余地はある。それを踏まえて、政権可能性のある二つ政党以外で、あり得るパターンは、自民党の連立パートナーになる公明党タイプか、比例区狙いの共産党タイプしかない。
新しくできた政党の場合には現実は厳しい。この20年間で20以上の政党が誕生してきたが、そのうち衆参に議席があり、衆院任期の4年以上存続している政党は民主党しかない。要するに、比例狙いで細々と生きるのでなければ、民主党や維新の党など野党は、集結して自民党へ対抗軸になるか、または対抗軸にならずに自民党との連立を目指すしか、基本的には存続の可能性は少ないといわざるを得ない。
自民党の対抗軸としては、野党としてリベラルの結集がもっとも素直だ。もし保守系スタンスであれば、自民党との連立を目指したほうがいい。民主党にはこの路線しかない。この意味で、維新の党は、正念場になっている。保守系スタンスなのかリベラルで行くのかの決断が迫られる。
リベラルでは、労働者をコアな支持層とし、所得再分配について政府の介入度を高める方向となる。今の自民党との差別化でいえば、金融政策を重要視して日銀法改正でインフレ目標と雇用義務を加えること、歳入庁を創設し税・社会保険料を一体徴収し、不公平をなくし所得累進課税を強化する方向がいい。
所得再分配の強弱は、最高の累進課税税率の高低や資産課税の取り組みでみてもいい。自由貿易、規制緩和では、労働者の権利保護に配慮して、自由化一辺倒でない是々非々路線になる。エネルギー政策では、労働者の立場から、脱原発の方向で再稼働には慎重スタンス。外交防衛では、安全保障コストを下げるために集団的自衛権を限定容認しつつも、行使には何重もの条件を付して平和主義を追求するのもいいだろう。
■「成長重視」は共通、与野党の対立軸は別に
今、格差問題は世界的な流行になっている。例えば、世界中で100万部を超える異例のベストセラーとなっているフランスの経済学者トマ・ ピケティの「LE CAPITAL AU XXIe SIECLE」が『21世紀の資本』(山形浩生他訳、 みすず書房)として、日本でも出版されて、話題になっている。
ピケティ氏は、各国のデータから、資本収益率(ほぼ4〜5%)が所得成長率(ほぼ1%前後)よりも高いことを示した。このため、高所得者と高資産保有者がますます富んで、多くの国での格差拡大を説明したのである。
これへの対処としては、二通りある。所得成長率を高めるか、資本収益率を下げるかである。ピケティ氏は、資本収益率を下げることが有効と考え、資本課税の強化を主張しているようだ。
日本の現状では、所得成長率が低く、資本収益率も低いのが実情だ。サッチャー氏の「金持ちを貧乏人にしたところで、貧乏人が金持ちになるわけでない」という言葉があるが、1990年代以降、日本の経済成長率が世界でビリであることを考慮すれば、まず、求められるのは成長の底上げだ。
これまでの和製リベラルでは、成長はもう要らないという路線であった。戦後の左系知識人がしばしばこれに陥ったが、世界的な基準から見れば、ここ20年間程度の低い成長率に甘んじるというのであれば、社会保障を含めた経済社会の諸問題は解決できない。
何よりも、所得再分配政策を行うにしても、パイが大きくないとそもそも分けられなくなる。実質2%、名目4%程度の経済成長がないと、諸施策の自由度がなくなってしまう。
経済問題では保守もリベラルも大差がなく成長重視が望ましい。その上で、規制緩和、エネルギー政策、安全保障などで見解の相違をぶつけるようになれば、国民にとって、よい対立軸の提供になって、いいライバル関係になるだろう。
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