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THE PAGEに <総選挙 私はこう見る>「『安倍晋三 2.0』 ── 戦略的解散の成功と憂鬱」(逢坂巌)という実に興味深い記事が載っていた。(・・)
この記事に記された逢坂氏の見方は、mewと8〜9割がた重なっているようにも思える。
今回の選挙や今後の安倍政権の政治運営を考える上で、めっちゃ参考になると思うので、ここに記事全文をアップしておきたい。(引用元コチラ。尚、mewの判断で、小見出しに☆印をつけたです。)
http://thepage.jp/detail/20141211-00000012-wordleaf
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『 <総選挙 私はこう見る>「『安倍晋三 2.0』 ── 戦略的解散の成功と憂鬱」 逢坂巌
THE PAGE 12月11日(木)19時26分配信
☆ 安倍晋三 2.0
帰ってきた男は逞しくなっていた。
先月14日、首相官邸で解散の記者会見に臨んだ安倍首相に、まさにその場所で2625日前に晒したイメージを重ねる者は誰もいなくなっていた。痩せた身体をダブダブのスーツに包み、丁寧に撫で付けた7・3分けの髪型で、どこが不安げに「本日、総理の職を辞することを決めました」と切り出した、あのイメージ。マスメディア、そして全国民の驚きと、嘲笑・軽侮を引き出したあのイメージのことだ。
おそらく安倍晋三は、世界中の誰よりも現代のメディア政治を体感した人物である。20世紀末から欧米をはじめとする先進デモクラシーの世界では、政治のメディア化(mediatization)が進行中だ(※1) 。これは、政治に対してメディアの影響力が大きくなっていることを意味し、特にメディアの論理(media logic)が政治の論理(political logic)を浸食している状況を指す。
日本においても、この政治のメディア化が進行したのは、読者のご存知の通り。我々は安倍・福田・麻生という3人の「おぼっちゃん」総理たちを、空気が読めない「KY」総理などと渾名し、マスメディアの嘲りとともに葬り去ってきた。なかでも、安倍氏は元祖KYであり、国民が経済を心配しているのに憲法改正をやろうとしているとか、マイナスの意味でキャラ立った大臣(故松岡利勝氏や赤城宗徳氏)を守り通そうとしたことなどが批判され、その弱々しさやおぼっちゃまぶりのみならず、果ては「お腹が痛くなったから辞める総理w」、「ゲリピー総理」などとインターネット上でも徹底的にからかわれて、いわば「一億総軽蔑」のなかで退陣していったのである。
しかし、それから7年後、同じ場所で衆議院の解散を宣言する安倍は、全く違ったキャラになっていた。「安倍晋三 2.0」である。
☆ チーム安倍のリベンジ
安倍首相の「新キャラ」づくり。面白いのは、それをサポートしている官邸の広報回りのスタッフを、第1次安倍政権、あの屈辱を共にした昔の部下たちが支えていることである。政治家では、ボストン大学大学院で企業広報を学び、第1次政権で広報担当の首相補佐官だった世耕弘成が官房副長官として再び官邸入りし、今回の選挙では自民党の「コミュニケーション戦略会議」でも活躍しているという(※2) 。また、政治家以外では、第1次政権で首相秘書官として広報を担当した経産省の今井尚哉氏が政務秘書官として官邸にカムバック。かつての部下をスピーチライターとして引き連れて「安倍晋三 2.0」を支えている。
再結集した彼らはどのような思いでいるのか? おそらくは、プライド高き彼らにとって第1次政権での政権広報の失敗は安倍首相本人と同じく、堪え難い屈辱として胸中に刻まれたのではないか。「安倍晋三 2.0」は、政権を葬り去ったマスメディアと世論・大衆への「チーム安倍」による復讐劇とも見て取れる。
実際、彼らは良い結果を残している。「ゲリピー総理」は、「保守的で経済重視、海外を飛び回る頼もしい首相」とキャラを変え、「大義なき解散」は「アベノミクス選挙」になり、300議席超えをうかがっている。
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☆ 戦略的解散
今回の解散、ジャーナリズムは、それが非常によく練られた戦略的解散であったことを報告しているが、興味深いのは、その過程で安倍首相が自らの「経験と挫折」のみならず、戦後政治の故事からいろいろと学習しているとされることである。読売新聞は、安倍は今回の解散にあたり中曽根康弘の「死んだふり解散」(86年のダブル選挙を行った際の解散)を参考にしたと指摘し(※3) 、朝日新聞は、安倍首相が祖父・岸信介の証言録を読み込みつつ、岸が行おうとして実現できなかった「60年解散」について、第2次政権発足直後から側近や閣僚たちに折にふれて話していたことを明らかにしている(※4) 。安倍首相本人も、政局運営、そして政治コミュニケーションのやり方を謙虚に過去から学ぶ。それが「安倍晋三 2.0」なのだ。
学習の効果があったのか、今回の解散劇は見事だった。そのタイミングは、政界、そして有権者の虚を衝き、野党はほとんど準備が整わないまま選挙戦へとなだれ込まざるをえなかった。
解散宣言後のPRにも学習効果はみられ、第1次政権とくらべると格段に進化している。例えば、第1次政権下でおこなわれた参院選では、そのテレビCMで「医療不足の解消」「年金制度の再構築」「環境へ主導力を示す」「公務員制度改革」「新憲法制定の推進」「教育再生」の「6つの約束」を訴えたことに象徴されるように、「安倍1.0」はいろんなことをやる、もしくはいろいろなことが出来る内閣であることをアピールしようとした。しかし、わずか30秒の間に6つも約束を盛り込むことに対しては(※5) 、広告関係者からも「いくらなんでも詰め込み過ぎだ」と失笑を買った。
しかし、今回はまったく異なる。安倍は「この道しかない」と、争点を経済のワンイッシューに絞り込み、解散宣言からテレビCM、そして選挙演説においても経済政策・アベノミクスを重点的に訴えている。この作戦は成功し、安倍の思惑通り、主要な争点は経済となった。野党、マスメディア、そしてネット上の議論の多くが、アベノミクスをどう捉えるかを語って、23日間しかない解散から投票日までの短い期間が過ぎていくことになる。アベノミクスに対抗しうる経済政策を準備できていない以上、この争点設定は野党各党にとっては初めから負けるための土俵であった。
野党は、このような安倍首相の仕掛けに対して、安倍は立憲主義がわかっていないとか、集団的自衛権の閣議決定が問題だなどと攻撃はしてみるものの、このような批判は有権者の心にはあまり響かない。なぜならば、有権者のど真ん中の関心は景気や社会保障であり、安倍が設定しようとした経済にあるからである。『地方消滅』といった本がベストセラーになっているように、地方の困窮はある意味限界に達している。そして、田舎だけでなく、東京の郊外でも高齢化と人口減少が目立ちはじめ、長期的な衰退が多くの人々に認識されるようになっている。
その中で、国債を日銀が大量に引き受けるという「奇手」を用いているなどとの難しい批判はあるのかもしれないが、とりあえず株価を上昇させ、様々な経済指標も好転させているとされる安倍首相は、衰退を潜在的に意識しはじめている多くの「普通の人」にとっては「福の神」であり、つい10年前には無駄なモノ、税金の無駄遣いと怒っていた公共事業も、なんとなく許せるものになっている。いわば、背に腹はかえられない状況が蔓延しつつあるのであり、そのなかで、自民党が唱えはじめた「地方創生」は、この選挙区から自民党の議員を選出しなければ、生き残るための最後のチャンスにありつけなくなる恐怖心をあおる効果をもっている。
このような構造のなか、安倍の演説を前にして聴衆は、胸の前に手を握り、あたかも祈るような姿で、最後の「福の神」らしき人物の演説に聴き入るのである。今回の選挙にあるのは、「期待」というよりも、最後の希望らしきものに対する「祈り」であるように思える。
☆ 「福の神」の誤算
しかし、聴衆の「祈り」の対象となった「福の神」、リベンジマシーンである「安倍晋三 2.0」を信用してしまうのには、危うさを伴う。なぜならば、彼は看板の経済政策の判断で、すでに大きな「失敗」を犯しているからだ。
ここで指摘したい「失敗」とは、アベノミクスそのもののではない。専門の経済学者ですら議論がわかれる問題に、門外漢の筆者が嘴を挟むことは差し控えたい。筆者が指摘したいのは、そうではなくて、もし安倍氏のいうように「この道」しかないとしても、安倍氏自身が「この道」を傷つける大きなミスジャッジをしていたということである。すなわち、去年10月の消費税導入の「決断」である。
実は安倍首相は迷っていた。昨年、10月に放送されたNHKスペシャル「消費税増税の2ヵ月の攻防」(※6) 。番組は、安倍が経済ブレーンの浜田宏一や本田悦郎が景気の腰折れ懸念から増税延期を進言していたのに対して、彼らの議論を振り切って、安倍首相本人が、甘利明経産相や麻生太郎財務相が唱える増税路線を進むことを自らの意志によって決断したと伝えるものだった。放送当初は、この番組は、経営委員長が「安倍派」に変わったNHKが、安倍の決断を後押しするヨイショ番組だ、などと言う向きもあったが、いま、見直してみるととても興味深い。安倍首相が、この増税の決断について、次のように語っている。
「総理大臣はですね、最終的な決断をするのがその仕事の大部分だと言ってもいいと思いますね。そして、その決断が間違ったものであってはならない。特に消費税っていうのは後々の経済、国民生活に大きな影響を与えますから、そういう意味においてはですね、この2ヵ月間、本当に毎日毎日考え続けてきました」
しかし、結果として、「国民生活に大きな影響」が生まれた。消費税増税から2期連続でGDPはマイナスとなった。アベノミクスを推進する安倍首相は、「この道」の「成功」を大きく傷つける「間違った決断」をしたかもしれないのである。
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☆ もし選挙なかりせば
もし選挙がなかりせば、今頃はアベノミクスの「失敗」がマスメディアで大きく喧伝され、「消費税増税」をめぐる新たな決断についての議論が喧しくなっていただろう。安倍首相の1年前の増税の「決断」の是非が問われ、アベノミクス派からもその失敗が指摘され、一方で「良識派」は、社会保障の財源のための増税の決断を求めて、議論は緊張していたことだろう。そこで、4〜6月のGDPのマイナス成長が発表されて、低落しつつあった内閣支持率をいっそう押し下げ、支持と不支持の割合は逆転していたかもしれない。マーケットは議論の混乱や支持率の低下を嫌って、日本株を手放しはじめる……。
以上は、あくまで想像上の話だが、マスメディアと世論に傷つけられた経験をもつ安倍首相にとっては、とても恐ろしいシナリオだろう。マスメディアと世論は、調子がいいときは従順な顔をみせるが、いったん「空気」が変わると、いかに両者が手のひらを返し、牙を剥いてくることか。それを、まさしく体感したのが安倍首相であり、その獰猛さは、トラウマレベルの傷となって心に残っているのではないか。今回の選挙戦、TBSの番組に出演した際、街頭インタビューの編集の仕方にまで噛み付いた安倍首相の苛立ちは、そのことを物語っているように思われる。
ともあれ、安倍首相はそのような悪夢のシナリオを、自らの解散で吹き飛ばした。そして、前述のように非常に洗練され計算されたパフォーマンス、「安倍晋三 2.0」によって、大勝すらもぎ取ろうとしている。
☆ 選挙後の憂鬱
しかし、果たしてその大勝は、安倍首相が望んでいるような力を政権にもらすのだろうか? 選挙で勝ったところで、経済は必ずしも好転するものでもない。増税見送り発表前、テレビ番組で浜田宏一と議論をした榊原英資元財務官は、司会者に「1年半、消費税を先送りすると、2%増税に耐えうるだけの体力が日本経済につくのか」と尋ねられると、「僕はそう思いませんね」といい切った。「IMFも言っているように、おそらく1%成長に落ちてくる。今の状況よりも悪くなる可能性の方が高い」(※7) 。
安倍が参考にした中曽根の「死んだふり解散」。自民党は300議席の大台を獲得し、中曽根は「左にウイングをのばした」「グレーゾーン(都市近郊の浮動票)を手にした」と結果を誇った。しかし、選挙後に中曽根が「売上税導入」を唱えだした途端に支持率は急落。結局、「風見鶏」と言われた彼は、導入を断念して支持率を回復させた。思えば、彼もまた、青年代議士時代から「憲法改正の歌」を歌って訴えるなど、「戦後レジーム」の見直しに取り組んできた。しかしながら、その治世においては、アメリカとの同盟を強化し、「日本は米軍の不沈空母である」といった発言で、媚米とも揶揄される。残した業績は憲法改正とは程遠い、三公社の民営化であった。
安倍首相はどうだろうか。初心にたがわず、憲法改正に持ち込めるのか。それとも、アベノミクスの成功者、いや、失敗者として歴史に刻まれるのか。株価とGDP、そして何より支持率が、彼の新たな「決断」を促していく。
「安倍晋三 2.0」は依然、憂鬱の中にいる。
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逢坂巌(おうさか いわお)
立教大学兼任講師。専門は現代日本政治、政治コミュニケーション。著書に『日本政治とメディア』(中公新書、2014)。共著に『テレビ政治』(朝日新聞社)、『政治学』(東大出版会)など。
※1 Mazzoleni,G.,& Schulz,W. (1999) Mediatization of Politics: A challenge for Democracy? Political Communication, 16(3),247-261
※2 「スクープ入手 安倍自民が大新聞トップ記事に“指導”証拠文書を公開」FRIDAY、 2014年12月19日号
※3 「『巨大与党』批判作戦 衆院選 野党が戦略見直し」読売新聞、2014年12月7日
※4 曽我豪「(ザ・コラム)総理の解散 祖父の眠れぬ夜、真意は」朝日新聞、2014年11月27日
※5 15秒CMには年金、環境、新憲法の3つ。詳しくは、拙稿「「2007年参院選のテレポリティクス(上)小沢一郎の「旅」 民主党のテレビCMキャンペーン」『朝日総研リポートAIR21』208号、2007
※6 NHKスペシャル「消費税増税の2ヵ月の攻防」http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/1005/
※7 BSフジ『プライムタイム』2014年11月3日』
以上
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まあ、mewにしてみれば、安倍2.0が復活して来たこと自体、また今回の戦略的解散やその成功こそが、まさに憂鬱なだけど・・・。
でも、この選挙が終わったら、今度はどう見ても難題ばかりの憂鬱な政権運営に直面せざるを得ない安倍2.0を追い詰めて、何とか日本が安倍のアブナイ道に突き進むのを阻止したいと、ひそかに戦略を練っているmew(2.0)なのだった。(@@)
THANKS
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