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雨宮処凛がゆく! 第319回
「命より金」の安倍政権への審判。の巻
2014年12月10日up
投票日が週末に迫っている。
あなたはもう投票先を決めただろうか。
なんだか安倍政権が「女性の活躍」などと言ってそれが議論になっていた頃が既に懐かしい。看板政策をなげうってまでの解散、そして総選挙。「やっぱ女性の活躍とか、本気で考えてなかったのね」と嫌みのひとつも言いたくなるが、「国民の信」が問われるということは、私たちがこの2年間の安倍政権への審判を下す時が来たということだ。
ということで、ここで安倍政権がこの2年間にしてきたことを改めて振り返りたい。
2012年12月に発足した政権が真っ先に手をつけたこと。
それはここで何度も書いているが、生活保護基準の引き下げだった。この国で、もっともつましい暮らしをしている層への大打撃。このことを私は「弱者は見捨てますよ」という強烈なメッセージとして受け取った。実際、この引き下げを受けて生活保護受給者からは自殺者も出ている。「お前なんかいらない、と言われているような気がする」。引き下げの話が出てからずっと支援者にそう漏らしていたという男性は、自ら命を絶ってしまったのだ。
そのことを報告してくれた支援者は、言った。
「彼が自殺したという一報を受けた時、真っ先に浮かんだのはある自民党議員の顔でした」
私もある自民党議員の顔が浮かんだ。きっとその人が思い浮かべたのと同じ顔だ。
ただただショックだったけれど、同時に、思った。今回自殺してしまった人はこうして私たちがその死を知ることができたものの、引き下げを受けて誰にも何も告げずにひっそりと命を絶っている生活保護受給者は、実は全国に少なくない数、いるのではないか。
ある自民党議員は、生活保護について「昔と違って今は恥ずかしいという意識がないことが問題」というような発言をして物議を醸した。しかし、私の実感からすると、「恥」の意識は当事者にこそ、根強いものがある。このことと、生活保護受給者の自殺率が、それ以外の人たちの2倍という数字には深い関係があると思う。20代に至っては、7倍の自殺率だ。
生活保護受給者の内訳はというと、高齢化を受けて高齢者世帯が増えており、今年5月の時点で47.1%。次いで多いのは障害・傷病世帯で3割ほど。実に8割近くを「高齢、病気や障害で働けない人」が占めていることはここで書いてきた通りだ。
ちなみに「恥」の意識は制度を利用する際にも、大きな壁となって立ちはだかるわけだが、国連は今から遡ること62年前の1952年、「各国の公的扶助行政に関する報告」の中で、「手続きが人間的に、公平に、敬意ある態度で、人格を尊重するように、冷静に、迅速かつ効果的にすすめられるよう要求する権利」があると各国に示している。社会保障へは、アクセスしやすい仕組みがないと権利性が失われるという指摘だ。半世紀以上前に示されたセーフティネットの大前提を、与党議員が「恥の意識」を利用して率先して否定している国。本当に、「人権」とかを一から学んでほしいものである。
さて、安倍政権がやらかしてきたことはまだまだたくさんある。
廃案を求める人々の声をまったく無視する形で特定秘密保護法を可決・成立させ、同じように反対意見が渦巻く中、集団的自衛権の行使容認を閣議決定。一方で武器輸出も可能にし、労働法制の規制緩和や法人税減税などを盛り込んだ成長戦略を決定。そして川内原発の再稼働を推進しまくり、米軍新基地建設の工事に着工。
実現してはいないがやろうとしていたことは、残業代をゼロにし、カジノを作り、また「生涯不安定雇用」が増えると懸念される派遣法の「改正」である。
これらから見えるのは、「命より金」という徹底したスタンスだ。
解散・総選挙を受け、「アベノミクスの失敗」などが指摘されているが、そもそも庶民のほとんどはアベノミクスの恩恵など、一滴たりとも受けてはいない。私自身、「アベノミクスで豊かになった」という人には一人も会ったことがない。あなたは会ったことがあるだろうか? なんだか既に「都市伝説」の領域である。
何しろ、実質賃金は16ヶ月連続で下がり続け、貯蓄ゼロ世帯は3割超と過去最悪。有効求人倍率が22年ぶりの水準と言っても、内実は非正規が中心だ。また、安倍政権発足当時から、正社員は22万人減り、非正社員は123万人増えている。
そんな「命より金」がスローガンの安倍政権だが、私がもっとも問題だと思うのは、「当事者の意見を一切聞かない」という点だ。
生活保護の引き下げに関して、彼らは一度でもこの制度の利用者に話を聞いただろうか? 例えば今回の切り下げの数年前に老齢加算が廃止されていた高齢者世帯からは、こんな悲鳴のような声が今も上がっている。毎日の食事の回数を減らしている。兄弟や親戚が病気になっても交通費がないからお見舞いにも行けず、近所でお葬式があっても香典がないから行けずに「冷たい人間だ」と誤解され、孤立している、等々。また、今回の引き下げを受け、電気代節約のため夏でもエアコンをつけずに体調を崩したり、入浴回数を減らしているという声も上がっている。
話を聞くべきは生活保護受給者だけではない。派遣法「改正」にあたって、政権の人間は派遣で働く人の声を、少しでも掬い上げようとしただろうか。原発の再稼働に至っては? 福島県内外で避難生活を強いられている人たちの声に真摯に耳を傾けていたら「再稼働」などと言えるだろうか? そうして沖縄の人たちの声に、ちゃんと耳を傾けてきただろうか?
もうひとつ、集団的自衛権の問題で書いておきたいことがある。
現在発売中の『創』1・2月号に「『知らない』では済まされないイラクの今、そしてイスラム国」という原稿を書いた。11月に開催された「イラク戦争、集団的自衛権を問う」と題されたシンポジウムでイラク帰還兵のロス・カプーティさんと高遠菜穂子さんの話を聞き、非常に感銘を受けて書いた原稿である。
集会で印象的だったのは、集団的自衛権云々を問う前に、日本に住む私たちは、圧倒的に世界情勢を知らないということ。たとえば現在、日本の報道は「イスラム国」ばかりにフォーカスしているが、実情はどうなのか。私自身、集会に行くまで恥ずかしながらまったく知らなかったのだが、イラクには現在、180万人の国内避難民がいるという。うち半分は、ざっくり言うとキリスト教徒やヤジディ教徒で、イスラム国から改宗を迫られ、拒否したら殺されるなどの迫害を受けての避難民。しかし、あとの半数はというと、イラク政府軍による空爆から逃げ出してきた人たちだという。こういったことや「イスラム国」がなぜ台頭してきたかの背景を、この国に住む私たちはおそらくほとんど知らない。というか、安倍首相は知っているだろうか?
また、高遠さんたちがイラクで拘束された時、まずされたことは「国籍確認」。既に自衛隊がイラク入りしていた当時、イラクの人々は「日本人」と聞くと殺気立ったそうだ。そうして高遠さんたちが解放されて数ヶ月後、香田証生さんが殺害される。彼を殺害したのは現在のイスラム国の前身の「イラクアルカイダ」。彼の遺体はアメリカ国旗の上に載せられ、バグダッドの路上で発見された。
アメリカに加担する日本への激しい憎しみが伝わってくる。
イラク戦争当時、この国の政府は「大量破壊兵器保有」というアメリカの誤った情報を信じて真っ先に戦争を支持した。そんな「過ち」は、今に至るまでまったく検証も何もされていない。それなのに、集団的自衛権の行使容認はこの夏、怒濤の反対の声をまったく無視して閣議決定されてしまった。高遠さんとロスさんの話を聞いて、改めて、あの閣議決定はトンデモないことだったのだと、愕然とした。詳しいことは、ぜひ『創』を読んでほしい。
最後に、思い出してほしいことがある。
2年前の選挙で、自民党は特定秘密保護法には何ひとつ言及せず、集団的自衛権についてもマトモに問わず、TPPに至っては「断固反対」と言っていたことだ。
そんな人たちが問うという「信」。
これ以上、「命より金」な人たちに好き勝手させないために、私は投票所へ行く。
※「さよなら安倍政権 自民党議員100人落選キャンペーン」のサイト。参考になるかも☆
http://www.magazine9.jp/article/amamiya/16824/
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