http://www.asyura2.com/14/senkyo176/msg/170.html
Tweet |
国内外からの観光客が集う京都・八坂神社前。休日の7日、古都に罵声が響く。「政府は朝鮮人を日本からたたき出せ」。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)のデモ隊が、ヘイトスピーチ(差別的憎悪表現)を繰り返した。
デモは「勧進橋児童公園奪還行動5周年」と銘打つ。5年前、隣接するこの公園を授業に使っていた京都朝鮮第一初級学校(現・京都朝鮮初級学校)に、「不法占拠だ」と圧力をかけた。「犯罪者に教育された子」「朝鮮半島へ帰れ」などと拡声機で学校周辺での街宣活動を繰り返し、授業で公園を使えなくなった。
街宣差し止めを求める裁判で、京都地裁は2013年10月、学校周辺の街宣は「人種差別」と判断。約1226万円の賠償とデモの中止を在特会側に命じ、二審の大阪高裁も在特会の控訴を退けた。上告して争っている。
この日のデモの参加者は20人ほどで、1年前の同種デモから半減した。会員で中部地方に住む30代の男性会社員によると、「朝鮮人を殺せ」などの発言を減らし、ソフト化を装うことで影響力を保持するような動きがあるという。もっとも、その主張が大きく変わったわけではない。参加者は「朝鮮人から領土(公園)を奪還しました」「朝鮮人は死ね」などと叫びながら、街を練り歩いた。このデモを伝える動画がネットにアップされると、たちまち「朝鮮人怖い」などの言葉とともに拡散されていった。
「5周年デモ」には数百人の反差別活動家が集まって在特会側に抗議の声をぶつけた。デモに遭遇した人の中には、ごくわずかだが、デモに声援を送る姿も見られた。物産店の男性(29)は「別に、良いんじゃないですか」と言った。
子供が朝鮮第一初級学校に在校中にヘイトスピーチに遭遇した金尚均・龍谷大教授は言う。「娘はショックを受け、『朝鮮人って悪いの』と聞いてきた。ヘイトスピーチは単なる不快な表現ではない。相手に自尊心を喪失させる、深刻な被害を生じさせる行為だ」(守真弓、高津祐典、今村優莉)
■遍路道、「日韓友情」への中傷
外国人を排除し、攻撃する動きが身近なところに広がりつつある。
「礼儀しらずな朝鮮人達が気持ち悪いシールを四国中に貼り回っています」
世界遺産入りを目指す四国八十八カ所の遍路道で今年4月、こんな中傷ビラが貼られていたことが発覚した。遍路に魅せられた韓国人女性が貼った韓国語の道案内シールが標的とされた。ビラはすぐにはがされたが、余波は続く。
香川県三豊市に11月、「遍路小屋」ができた。建設の中心になったのは、中傷ビラで攻撃された韓国人女性。日本や韓国などの遍路仲間から寄付を集めた。お茶の葉を模した屋根に、10人も座ればいっぱいになるベンチ。国道沿いにできたささやかな小屋は「日韓友情のヘンロ小屋」と名付けられるはずだった。
地元紙などに6月、小屋を建てる計画の記事が載ると、三豊市役所に抗議の電話8件、メール17通が届いた。「この国を韓国にするのか。香川終わったな」「一つ許せばどんどん汚される」。ネット上の掲示板には、似た数千件の書き込みが躍った。
非難を受けた後、小屋の名は「ヘンロ小屋茶処みとよ高瀬」に変わった。
屋根に建設されていた鳳凰の模様も、地元から「韓国風だと思われれば、トラブルになってまた人を傷つける」との声が上がり、取り外した。小屋を設計した建築家の歌一洋さんは「心ない批判に対して敏感になりすぎる必要はない」。だが、市職員は「一体どのくらいの割合の人がこう思っているのかはわからない。だから怖い」と語る。
徳島大の樋口直人准教授(社会学)はこの数年、数はごく一部だが、他民族に対し排外主義を主張するリポートを提出する学生が出てきたことに社会の変化を感じる。
「民族問題を考える」という1年生向けの授業。指定図書の感想に、ある男子学生はこう書いた。「在日韓国人のアイデンティティーは多様だ。ただ最近は反日的なので、在日外国人は日本から出て行ってもらうしかない」
樋口准教授は「本で多様性を学んでも、真面目にネットで調べる学生ほど、すぐに誤ったネット情報に戻ってしまう。近隣諸国と関係改善し、ネットからネガティブな情報が減らないと、どうにもならない」。無関心な人がネット検索を繰り返すうちに、自然と排外主義的な情報に接してしまう状況を懸念している。
在特会の立ち上げ当初から会員の横浜市内の男性契約社員(40)が10年ほど前、韓国に関心を持ったのもネットだった。
「日本の自虐史観を憂う」と書かれていた。「歴史の勉強は暗記ばかりだった。サイトを見て、自分の頭で考えることができるようになった」と話す。在特会の過激な方式には抵抗を覚えるが、「ヘイトデモをされる原因は在日朝鮮人にある。我々日本人の方が被害者」と主張する。
2009年ごろ、当時住んでいた川崎市で市民団体を立ち上げ、外国人参政権付与に慎重に対応することを地元の政治家らに訴える。
取り次ぎ大手のトーハン発表の「年間ベストセラー」は、新書・ノンフィクション部門1位が「これでもまだあの国につき合いますか」と帯をつけた「呆韓論」。閣僚が在特会の元幹部と写真撮影していたことが発覚しても、国内に大きな批判が起きることもなかった。
在特会を取材してきたジャーナリストの安田浩一さんは言う。「生活保護を受けている外国人は国に帰れ、という言葉を著名人らが平気で口にする。差別や偏見を助長する土壌が社会に広がっている」(守真弓、高橋末菜)
■政治は黙認するのか
きょう12月10日は、世界人権デー。「ヘイトスピーチ、許さない」。法務省は11月、人権週間を前に新聞広告を出した。
だが、いまの日本は、ヘイトスピーチを許さない状況にあるのか。
在特会が在日韓国人らに「死ね」「殺せ」と連呼している映像は、世界に驚きを与えた。国連人種差別撤廃委員会は、公然とした人種差別などに毅然(きぜん)と対処するよう日本政府に求めた。
処罰の法制化を求める国連の人種差別撤廃条約を、日本も批准している。だが政府は「人種差別思想の流布や人種差別の扇動が行われている状況にない」と、法制化を進めていない。
今秋の臨時国会で安倍晋三首相は「ヘイトスピーチとはいえ表現の自由とも関わりがある問題。各党との検討や国民的な議論の深まりを踏まえて考えていく」と答えるにとどまった。安倍首相のフェイスブックには「釜山からソウルまで、焦土にすべき」などのコメントが寄せられ、9日夜現在、削除されずに残る。
ドイツや英国、カナダでは、法律でヘイトスピーチを取り締まっている。米国では禁止法こそないが、差別的な言動をすれば厳しい社会的批判にさらされる。
民主、維新、共産、社民の各党は法規制を公約に掲げた。自民党は公約では触れていないが、党内で対応を検討している。
表現の自由との関係から、ヘイトスピーチの法規制には賛否の議論がある。しかし、外国人に対する差別的で暴力的な意識が広がる深刻な状況を見れば、現状は政治がそれを黙認しているとしか思えない。直ちに対策に乗り出さなければ、ヘイトスピーチを生む連鎖は断ち切れない。
■ヘイトスピーチをめぐる動き
2006年12月
在日特権を許さない市民の会(在特会)発足
09年12月4日
在特会員らが京都朝鮮第一初級学校周辺で街宣
13年4月
東京・新大久保や大阪・鶴橋でヘイトスピーチデモが激化。在日韓国・朝鮮人の団体が抗議声明
7月1日
日韓外相会談で韓国側が反韓国デモへの対応要請
10月7日
京都朝鮮第一初級学校周辺の街宣をした在特会員らに京都地裁が高額賠償を命じる。14年7月に大阪高裁が一審判決を支持。在特会側は上告
14年7月24日
国連規約人権委員会、政府にヘイトスピーチ禁止を勧告。法規制の必要性にも言及
8月28日
自民党がヘイトスピーチ対策等に関するプロジェクトチームの初会合
http://digital.asahi.com/articles/ASGD977CWGD9UCVL02G.html?iref=com_rnavi_arank_nr01
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK176掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。