03. 2014年12月08日 20:17:20
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高橋 洋一高橋洋一「ニュースの深層」 2014年12月08日(月) 高橋 洋一 各党の金融政策を比較すれば明らか 「自民党圧勝」予測は覆らないだろうバンドワゴンかアンダードッグか photo Getty Images 最近発表された新聞各紙の選挙予測は、自民党が300議席を超える勢いとなっている。また、yahooがやっている選挙予測は面白い。「Yahoo!検索」データから得票数の推定するものだ。投票率50%台前半でも、自民党300議席と予測されている。 お灸をすえる党首がいない どうも、これだけ、いろいろなソースで300議席という予測結果なので、そうなる公算が高い。 筆者の1ヵ月前の予測では270議席程度なので、その後、自民党の投票する人が加速しているようだ。 こうした動きは、政治学でバンドワゴン効果と呼ばれる。時流に乗る、勝ち馬に乗るという有権者の行動だ。 バンドワゴン効果の逆に、アンダードッグ効果というものもある。いわゆる判官贔屓である。しばしば、1996年の衆院選、2000年の衆院選がその典型と言われている。安倍首相も、自民党の楽勝ムードを戒め、1996年の衆院選をあげて、楽勝の報道が出たが結果として結果として勝てなかったといっている。 アンダードッグ効果は、ある政党が大勝すると不味いからお灸をすえるという意味がある。ところが、今回の党首の論戦を見ているかぎり、野党党首は完全に論戦に負けている。これでは、お灸の役目を果たさない。 なお、この点はこれまでの各党首の言動を見れば明らかなのだが、1ヵ月以上前に書いた本コラムで既に予測しており、筆者にとっては珍しいものではない。 金融政策が雇用政策であることを初めて理解した首相 どうして、各党党首が安倍首相にまったくかなわなかったのか。おそらく政治記者はわからないだろうが、たった一つ金融政策への理解度がまったく違うからだ。 2年前の総選挙でもまったくかなわなかった。それが今まで続いている。金融政策が雇用政策であるという点について、野党党首はまったく不勉強としかいいようがない。 難しい理論はわからなくてもいいが、政治家たるもの、金融政策で失業をなくせるとだけ覚えておけばいい。現に、米国FRBは、雇用者数を増やしたり、失業率を下げるために金融政策をしている。これは米国だけではなくどこの先進国でも同じである。 日本では、日銀は雇用問題が苦手なので、マスコミにまともなレクをしない。このため、マスコミも金融政策が雇用政策であることをまったく理解していない。それと政治家も同じレベルなのだ。 安倍首相は、金融政策が雇用政策であることを初めて完璧に理解した首相だ。筆者の感じをいえば、安倍首相は、金融政策について、@多方面に大きな影響があること(マクロ経済政策の重要性)、A日銀人事をしっかりやった後は任せられること(日銀の手段の独立性)、B左派政策を取り込めること(政治的優位性)から、その重要性をしっかり理解していた。 だから、安倍首相は、2012年の自民党総裁戦でも、劣勢と言われながらも、勝利した。2012年12月の総選挙では、本来自民党よりも金融政策を理解して雇用政策を行うべき民主党を負かすのは簡単だった。 そして、今回は、今年4月からの消費増税の政策失敗はあったが、2015年10月からの消費増税はすんでのところでとどまった。金融政策による雇用創出効果は、遅行指標でタイムラグがあり、今のところまだ4月からの消費増税の影響は少ない。おそらく、来年春頃になると、良かった雇用も陰りが出てくるだろう。その前に、解散・総選挙を行ったのはまったく合理的である。 いかに各党が金融政策を理解していないかは、公約をみればわかる(下図)。 拡大画像表示 自民党以外は、落第である。特に、左派政党である民主党、共産党、社民党、生活の党は国際的な観点から見て、ちょっと酷すぎる。どこか、日銀法改正して、雇用義務を盛り込むなどの左派政党らしい、まともな政策がいえないのだろうか。 就業者数100万人増 安倍政権の押してきた金融政策の実績は文句をつけようがない。一番重要な経済指標をあげるとすれば、就業者数である。これが民主党政権と安倍政権では雲泥の差がある(下図)。 拡大画像表示 傾向線でいえば、民主党政権時代に50万人弱減少したが、安倍政権では逆に100万人程度増えたのだ。これに対して、民主党などは、非正規が増えたので正規でないという。まったく反論になっていない。正規でも非正規でも職があるほうが、無職よりいいのは自明だ。それに増加に転じる時には非正規がまず増える。この意味で言い方向であることは間違いない。 野党はなかなか攻めきれず、野党の自民党攻撃は、やや小ぶりの局所戦になっている。例えば、株価の上昇に着目して、資産家だけがいい思いをしている。円安等に着目してアベノミクスで潤ったのは大企業だけで中小企業に恩恵は回っていない。公務員給与は早く回復したが、民間企業ではまだできていないところもある。これらは、一部のところには恩恵が出ているが、まだ出ていないところもあるという反論だ。 たしかにそれは一面の事実だ。異次元金融緩和の後、2年くらいすれば本格的な景気回復であっただろうが、1年の道半ばのところで、消費増税してしまったので、波及が遅れた。 また、雇用についてみても、就業出来た人は、新卒者や解雇されていたパートが復職出来た場合などであり、正規に人には関係ない。賃金も非正規の人はかなりの急ピッチで上がるが、正規の人ではまだら模様だ。賃金では、平均賃金を算出するとき、職を得ている人で計算するが、無職から有職になったわけで、すべての人の賃金を合算すれば大きくなっている。 パイの拡大が多くの経済問題を解決する 消費も、資産効果で一部の金持ちが活発になっているが、消費増税の影響を受けた低所得者層は苦しい。こうした「限界的なところ」で恩恵があるのは事実だ。 ただし、他人が良くなって、自分が現状維持の時に、やっかむ話なのだろうか。上に掲げた反論は、自分が悪化していないのに、他人が良くなることをねたんだ話だ。 サッチャー元首相が「お金持ちを例え貧乏にしても、それで貧乏な人がお金持ちになるわけでない」といったが、どうも、今回の選挙では、格差といいながら、やっかみ話が多い。 パイが拡大しているのに、自分のところがまだかという愚痴のようなものだ。パイの拡大が多くの経済問題を解決する。 恩恵を受けている層は、新卒者などの雇用弱者・非正規雇用と金持ちであるが、これは金融政策から予想されたことで、政策が正しい方向であることを示しているにすぎない。政策波及経路が間違っていなければ、その政策を進めるだけになる。 金融政策による雇用の増加は、自殺率の低下、強盗率の低下、生活保護率の低下にもなる。こうした社会環境に大きな影響を与える金融政策について、左派政党は早く目覚めないと、左派の受け皿がなくなってしまう。 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41362
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