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藤本 順一 DAILY NOBORDER 12月6日(土)10時8分配信
衆院選が2日、公示された。
「今回の選挙は与党として2年間政権運営に当たってきた安倍晋三政権の信を問う選挙だ」
菅義偉官房長官は前日の記者会見でこう述べた。大義なき解散に打って出てしまった以上、こう言うしかないのであろう。
菅官房長官は「経済再生、復興の加速、危機管理の徹底など全力で取り組んできたことを評価し、理解をいだだきたい」と続けた。
しかしながら、経済再生を謳ったアベノミクスは経済失速が明らかになったが故に消費税率引き上げを思い止まったのではなかったのか。また、復興加速の前提となる放射能汚染水など原発事故処理は遅々として進んでいない。さらに危機管理の要諦を成す安保法制の整備にいたっては、憲法解釈の見直しを閣議決定したとはいえ、肝心要の法案の中身がベールに包まれたまま。つまり、菅官房長官は今後4年間の白紙委任を国民に求めているのだ。
冗談じゃない。今年4月の消費税率8%への引上げは安倍首相が決断したことだ。それがどうだ。半年後にはアベノミクスの先行きに不安感漂い出しただけで消費税率再引き上げを先延ばししての解散総選挙である。
ほんの半年先の経済状況すら見誤る安倍首相にどうして国民有権者が今後4年間の長期にわたる政権運営を白紙委任できよう。
しかも安倍首相は同日行われた日本記者クラブの党首討論で自民、公明の連立与党で過半数となる238議席を勝敗ラインとする考えを示している。与党現有325議席から最悪、80議席以上を失ったとしても国民から白紙委任を受けたと言い張るつもりなのだ。
そうであれば、勘違いも甚だしい。仮に自公連立与党が過半数を得たとしても、それは国民有権者が自公連立政権の現状を追認したに過ぎず、どう曲解したとしても安倍首相に政権を白紙委任したとまでは言えまい。むしろ、自民党が失う議席の数だけ安倍首相は国民有権者から絶縁状を突き付けられたと理解するべきだろう。
幸い自民党には石破茂地方創生担当相をはじめ谷垣禎一幹事長、野田聖子前自民党総務会長、小池百合子元防衛相らポスト安倍の人材は余りある。
安倍首相が保守王道を歩む政治家ならば、分を弁え潔い身の振る舞いを心得ていようが、そうであればハナから「大義なき解散」の道は選ぶまい。エセ保守たる所以である。
ついでながら党首討論で安倍首相は消費税率引上げ先送りにともなう財源不足を理由に低年金生活者への月額5千円の給付金支給の延期に言及。多くの国民が期待する賃金上げについては「経団連会長が上げると約束した」と言い張るだけ。まるで他人事の国民生活なのである。
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