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千葉県・市川市で遊説する安倍首相。野党の重点地区は自民党の重点地区でもある。自民党の「勝利の方程式」とは?(撮影:尾形文繁)
「自民党300議席突破」は本当なのか 「情勢調査」から見えてくる、衝撃の選挙実態
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2014年12月06日 有馬 晴海:政治評論家 東洋経済
全国紙各紙が、衆院選の情勢調査を報じている。直近では、各紙とも「自民300議席を超す」と具体的な数字までが躍り、今回の選挙でもなお「自民党1強と野党の多弱ぶり」が浮き彫りになった。仮に今が投票日なら、自民党は前回の294議席を超える勢いだという。
■聞きなれない「情勢調査」とは?
この情勢調査は、12月2〜3日に実施された世論調査の実数(永田町用語で『生の数字』という)をもとに、各陣営の取材や選挙区の事情を加味(同、『生の数字』に対して『加工の数字』という)して、記事化される。
予算の都合上、一つの選挙区でのサンプル数が約1000(このうち不在などで聞き取りができるのが50%の500程度といわれている)と限られる。そのため、少し偏った数字になる場合があり、そのままの実数を鵜呑みにはできず多少の是正がなされるのだ。それでも統計学上サンプリングで大体の傾向が出ると考えられ、これまでの経験からみて、情勢調査は「信じるに値する」ものととらえていい。
調査結果を見た読者は、「へー」「やっぱり」「そうなんだ」ということになろうが、候補者や政党、さらには熱心な支持者にとっては、「実情がわかった。これからが勝負」と、ふんどしをひきしめる。
政党の幹部ともなると、実数を知りえる立場にあるが、その一人と調査結果を材料に面談した。
筆者としては、全体の状況は、予想通り。ただ、自民党大勝の数字には驚いたし、野党大物議員の苦戦ぶりには、いささかとまどうものがあった。
■野党協力で自民増加の皮肉、低投票率で共産倍増?
「予想通り」だったのは、前回、この欄で述べたように、野党が選挙調整に走った煽りで、民主党が264人から178人に、維新の党が151人から77人というように、野党各党の候補者は激減した。
その結果、相対的に比例代表での得票が望めず苦戦するということ。その分、自民党が比例代表で大幅に議席数を増やしそう、ということだ。
それから、野党の旗色がわかりにくくなった結果、投票率がかなり低くなることも予想したが、これで一定の固定票をもつ日本共産党の議席が、2倍近くになるのではないかということだ。
「衝撃的な部分」は、案外辞任大臣が強いということ。選挙では、お詫び行脚はマイナスといわれるが、それが案外致命傷になっていない。逆に、持論を訴えて大政党を割って出た大物議員が、軒並み苦戦を強いられている。
さて、この調査結果を踏まえて、各党は選挙戦術の立て直しを図る。
野党民主党は、当選の可能性が高い選挙区を重点地区と位置づけ、1人でも多くの当選者を増やすため、党をあげてバックアップ体制を図る。
だが、それもかえって応援に回る幹部自身の選挙区が危うくなり、応援に力が入らない。
■余裕の自民が、民主党の重点地区でとる戦術とは?
しかも、野党の重点地区は、自民党にとっても重点地区だ。調査の結果を見る限り、自民党はほとんどの選挙区が当選圏内の選挙区が多いため、数少ない重点地区に、集中的に「顔」である小泉進次郎、丸川珠代、片山さつきを応援にやり、さらには幹部や官僚を送り込み、連日とっかえひっかえ投入。さらには安倍首相が入り、ダメを押す。自民党の伝統的な戦術だ。
正直、苦戦候補がこの段階でやれることは限られる。今さらじたばたしても始まらないと、これまでのスタンスを変えない候補もいる。どうにか「比例で救って」と、すでに同情票に頼る候補もいる。横一線だが、与党のライバル候補に連日大臣の応援が来ると泣きを入れ、さらなる支援をネットで訴える者もいる。
情勢調査は、見えないものを見せてくれ、それによって戦略の立て直しができるから候補者にとってはありがたい。だが、相手にとっても同じ条件だ。それを踏まえ、的確な戦術を打って出るだけの持ち駒などのゆとりがあるかどうかが、勝敗の分かれ目となる。
当選すれば、国が国民の税金から毎月の給料(歳費という)を保障し、3名の秘書も国家予算で賄ってくれる。だが、落選すれば、失業者である。次の選挙でリベンジしようにも、明日から路頭に迷い、生活費や活動費の金策に走らなくてならない。
候補者たちは、「人生を賭けた大博打」に、残りの数日をかける。やりようによってはまだひっくり返せる選挙区もあろう。
「火事は最初の5分、選挙は最後の5分」
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