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師走の衆院選がスタートした。自分が心から支持する候補者に1票を投じる……それができれば一番いい。だが「自分が望む政策と同じ公約を掲げる党がない」「与党も野党も信用できない」「小選挙区に意中の候補がいない」……そんな時、棄権するしかないのか、何かできることはないのか。専門家に聞いた。【田村彰子】
◇アベノミクス「判断しなくてもいい」 党首の好き嫌いでもいい
今回、安倍晋三首相は「消費増税先送りの是非を問う」として、争点にアベノミクスの評価を掲げた。先送りには野党も賛成で、「解散の大義がない」と批判している。
北海道大の吉田徹准教授(政治学)は「今回の総選挙は争点の設定やタイミングなどすべてが現政権が有利になるよう非常によくできている」と指摘する。「アベノミクスに反対の人は増税にも反対の人が多いので、延期は望ましい。アベノミクスに賛成の人は、安倍政権を支持する。だから賛成の人も反対の人も与党に投票しやすい。しかも小泉(純一郎)元首相の時の郵政選挙とは違い、意見が分かれないので熱狂的な選挙にはなりにくく自民党に有利です」
野党側は集団的自衛権や原発再稼働への賛否など、意見の割れる「分断的争点」を作りだそうとしている。だが吉田さんは「各政党がばらばらに争点を言い出した時点で、実は有権者の判断は難しくなる」と話す。
混沌(こんとん)とした状況で、自分の1票を生かすにはどうしたらいいのか。考え方を整理するためまずは、ゲーム理論に詳しい早大の船木由喜彦(ゆきひこ)教授を訪ねた。
船木さんによると、自分が最も支持する候補者に1票を投じる、これをゲーム理論では「真実表明」と呼ぶ。そして、それ以外の投票方法を「戦略的投票」と呼ぶ。
典型的な戦略的投票の一例はこうだ。例えば小選挙区で、AとBの候補者がいて自分はどちらも支持していない。棄権をしたくなるが、こうした場合でも、どちらがより支持できないか、どちらがより嫌いかを考える。最も嫌なのがAなら、Aを倒すためにBに入れる。
ほかにも例えば、A、B、Cの候補者がいて、自分はAの候補者を支持しているけれどもとても当選しそうにないという場合。BとCを比較してよりAに近い考え方を持つBに投票する−−これも戦略的投票だ。船木さんは「人々は事前の支持率調査などを見て周囲の投票行動を予想しつつ、最も支持する候補者の当落を予想します。投票に行くことは、それだけで時間と労力のコストがかかるので、そのコストを勘案したうえで、自分の利益を最大にする、あるいは不利益を最小にする選択をすることがゲーム理論で言う『合理的行動』といえます」と話す。
棄権には意味がないのか? 「自分が支持する候補者が大勝すると分かっている時は、コストを最小にするため、投票に行かないことが合理的な行動になります。しかし、人は必ずしも合理的な行動を取るとは限りません」と説明する。
実際には私たちは、複数の物差しで、政党や候補者を選び出している。選挙制度に詳しい学習院大の平野浩教授は「有権者は主に▽政策に対する考え方が近い▽政権の評価▽党首の好き嫌い−−で選択する傾向があります」と話す。このうち最も重視されているのが「現政権の評価」だ。
「小選挙区制度の考え方は政権につく政党を選ぶこと。その過程では小政党は不利になるが、それでいいという考え方で、有権者が死票を避けようとすれば、必然的に『戦略的投票』をするシステムになっています。一方、政党がより大勢から支持を得ようとすれば、有権者の多くが望むことを訴えようとするので、政策が似てきます。政策に大差がなくなれば、現行の政治への評価が重要な決め手になります」と解説する。
そこで浮上するのがアベノミクスの評価だが、「アベノミクスは専門家でもまだ判断が分かれるのだから、有権者に判断を求めるのは酷だ」と吉田さんは言い切る。平野さんも「経済分野では、成功するかどうかはやらないと分からない。一般の有権者には分からないと思います」と同調する。
ならば、どうしたら? 吉田さんは「そもそもアベノミクスは定義もはっきりしない。有権者がその是非を判断する必要はありません。むしろ、現在の政治によって自分の生活が良くなっているか、将来的な不安が解消されつつあるかなど、自分の現状を踏まえて判断することが大事です」と訴える。平野さんも「現政権の2年間、特定秘密保護法成立や集団的自衛権の行使容認、沖縄の基地問題、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)などさまざまな政治的な問題がありました。自分にとって大事な争点を選び、政権が下した決定と現状を自分なりに評価してみてください」と話す。その結果、総じて与党が及第点だと思うのなら与党へ、そうでないなら対立軸となる野党に入れる。無党派層は5割前後もおり、決して影響は小さくない。
ところで、好き嫌いでの投票はどうなのか。平野さんは「政治心理学の視点で考えると、好きか嫌いかで選ぶのは間違いではない」と話す。人間はある人についての情報や事象に無数に接して、好き嫌いを決めている。例えば、安倍首相が集団的自衛権行使の問題でどんな発言をしたか、どんな外交をしたかなど、有権者は具体的に覚えてはいない。しかし、その都度「いい」か「悪い」かの感覚が残り、「安倍首相が好きか嫌いか」の感情が形成される、という。「特に党首が好きかどうかは、その党が政権を取った時に日本の首相になるので、大事なことと考えられます」
仮に自分が望む政策がまるでないなら、やはり棄権するしかないのか。吉田さんは「本来、政策はお上が示すものではなく、自分たちで作るもの。不満や問題点を、仲間と共に声を上げて直していくのが『政策』になる」と強調する。
日本人は、政治の話をあまり好まないと言われる。選挙以外にデモや集会に参加する「政治参加率」は、フランス43%、アメリカ36%に対して日本は14%。吉田さんは「決して個人が政策を合理的に判断し、投票するだけが理想ではありません」。例えば、仲間で考え方の近い候補者を探し「100票を集めて入れるので、この政策を公約に」と求めれば候補者は動く。
「民主主義は手間がかかる。でも、それを惜しむほど自分たちの理想と離れていき、不満と不信が降り積もります」
家族や友人と「誰に入れたいか」を話し合うことからはじめるしかない。
http://mainichi.jp/select/news/20141204k0000m010044000c.html
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