02. 2014年12月02日 07:03:21
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ネット選挙、「期待はずれ」の汚名返上なるか 2014年12月2日(火) 齊藤 美保 12月2日、衆院選の選挙戦がスタートした。今回はインターネット選挙解禁後初の衆院選となる。事前の関心に反して盛り上がりに欠けた昨年の参院選。2度目の国政選挙となる今回は、ネット企業も一丸となり支援していく。他の先進国に比べて遅れを取る日本のネット選挙だが、「期待はずれ」の汚名返上となるか。 「衆院選初のネット選挙です。思いの丈をネットの中のユーザーに述べてください」 11月29日夜8時、司会者のこの言葉で「ネット党首討論」がスタートした。場所は六本木のライブハウス「ニコファーレ」。自由民主党の安倍晋三総裁や民主党の海江田万里代表など、8つの党の党首が集結し、「アベノミクスの評価」や「経済政策」、「安全保障政策」などについて白熱した議論を繰り広げた。 討論会の様子は「ニコニコ動画」と「Ustream」に生放送されている。視聴者は生放送を見ながら、各々感じたことなどを自由に書き込むことが可能だ。 「国民の声をわかっていない」「言っている意味が分からない」「0点だ」 ニコニコ動画の画面を見ていると、賛同するコメントから辛辣なコメントまで様々な視聴者の声が矢継早に流れてくる。会場にいる各党首は、その場では何を言われているのかは分からない。帰宅してから生放送の動画を再生して落ち込んだ党首もいるかもしれない。 リアルタイムの閲覧数は約20万人(ニコニコ動画とUstreamの合計)。書き込まれたコメントは24万件を超えた。 リアルタイムで矢継早にコメントが書き込まれ流れてくる。ちなみに8が連続している「888888」とは、「パチパチパチパチ」と読み拍手を意味している。 「昨年の参院選以上に、ネット選挙を盛り上げていきたい」。討論会の開催企業の担当者はこう切実に語る。
記憶に残っている読者も多いかもしれない。ネット選挙解禁後初の選挙となった昨年の参院選では、ネットを活用した選挙活動は事前の関心の高さに反して「期待はずれ」に終わってしまったのだ。 ネット「参考にした」は1割のみ 昨年5月に公職選挙法が改正され、2013年7月の参院選で初めて解禁されたネット選挙。これによりツイッターやフェイスブックなどのSNS(交流サイト)、動画配信サービスなどを活用した選挙運動が一部で解禁された。ニコニコ動画での党首討論会は2012年から開催しているが、選挙期間中でも演説の告知や投票の呼びかけなどが動画を通じてできるようになったのだ。 欧米や韓国などでは既に定着しているネット選挙だが、日本では誹謗中傷やなりすましなどを懸念する慎重論が多くこれまで禁止されていた。そのため、昨年の法改正後は日本の選挙活動が激変するのではと大きな関心を集めた。 しかし、蓋を開けてみれば前述の通り期待はずれに終わった感は否めない。各党手探りだったことに加えて、誹謗中傷などの炎上を恐れてネットでの情報発信を抑える動きもあった。曖昧な制度にも批判が集まった。 共同通信の出口調査によると、ネットの情報を投票の「参考にした」有権者は約1割。若年層を中心に選挙への関心向上にもつながるとも期待されたが、たとえネットであっても政治に興味がない層はページをクリックしようとはしない。期待された投票率も、52.6%と戦後3番目の低さにとどまった。 前回の反省も踏まえ、ネット企業各社は今回の衆院選でネット選挙の支援を強化している。 ネット企業7社が連携 実は、今回のネット党首討論会の閲覧者数は、参院選前の昨年6月に開催した討論会に比べて2倍に増えている。昨年6月のネット党首討論会はドワンゴの単独開催だったが、今回はネット事業者7社(サイバーエージェント、スマートニュース、ツイッタージャパン、ドワンゴ、ヤフー、Ustream Asia、LINE)が共同開催した。昨年も「わっしょい!ネット選挙」と題して複数のネット事業者が連携してネット選挙を支援していたが、今年は昨年より早い段階から各社連携し動き始めている。生放送の配信先がニコニコ動画だけでなく、Ustreamが追加されたことも大きい。 また、ネット選挙支援サービスを提供する企業も増えている。メディア制作のオフィス・ストレイキャット(東京・足立)では、街頭演説の生中継や政見主張番組の制作などを手掛けている。「来年の統一地方選で需要が増えると思ったが、今回の衆院選を前に『具体的な支援内容の話を聞かせてほしい』という問い合わせが増えている」(同)という。 下がる20代の投票率低下 今回ネット党首討論会を見ていると、「テレビより面白い」「他のユーザーの生の声も聞けて面白い」といった声が大きく聞こえた。討論会終了直後の調査によると、視聴者の5割が30代以下だった。 下記のグラフは、日本の衆院選の投票率の推移だ。20代の投票率は1990年以降大きく減少傾向にある。次の日本を担う層が政治から遠のいていることは間違いない。 衆院選の年代別投票率の推移 (出所:明るい選挙推進協会) 「ネットに資金と労力をかけるよりも、リアルな演説に力をいれていきたい。ネットには頼らない」。今回ネット選挙の取材をしていると、ある議員がこんなことを話していた。確かに、1割にしか響かないのであれば、残りの9割に訴えかけるために街頭演説やテレビ出演に力を入れたほうが得策かもしれない。 しかし、1割の中には30代以下の若年層が多いだろう。1割にしか響かなかったと考えるか、1割にも響いたと考えるか。「期待はずれだった」と一蹴して政党がネット選挙から遠ざかってしまえば、長期的に大きな票の損失につながりかねない。候補者は企業の支援も追い風にし、今こそうまくネット活用を進めていくべきではないか。時間はかかってしまうかもしれないが、日本でネット選挙が根付くことを期待したい。 ネット党首討論の最後に握手をする各政党の党首
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