http://www.asyura2.com/14/senkyo175/msg/480.html
Tweet |
自民「50議席減」一気に倒閣へ 安倍総理恍惚と不安、二つ我にあり 真冬の大決戦!「12・14総選挙」を読み切る
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41264
2014年12月01日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
「会心の一手」のはずだった。だが、アベノミクス失敗が露呈し、景気後退が明らかになった今、安倍政権に分のある勝負ではなくなった。選挙は水物—。早くも風向きが変わってきた。
■消費税は5%に戻すべきだ
「私のアドバイスを聞き入れて、安倍晋三総理が10%への再増税を延期したのだとしたら、それは歓迎すべきことですが、そもそも4月に消費税を8%に増税していなければ、GDPはマイナスには陥らなかったはずです」
こう話すのは、米プリンストン大学教授のポール・クルーグマン氏だ。'08年にノーベル経済学賞を受賞した世界的経済学者は、本誌9月13日号などで「消費税10%で日本経済が終わる」と警鐘を鳴らし続けてきた。
今回、本人が改めて語るように、クルーグマン氏は11月6日に安倍総理と面談し、総理の増税延期の決断に大きな影響を与えた。クルーグマン氏が続ける。
「ただ、第1弾の消費増税の失敗がここまで響いていることを、安倍総理は深刻に受け止めるべきだと思います。すぐにでも元の5%に戻すべきです。
そうしないと、アベノミクスは失速してしまい、さらなる追加緩和をしても、十分な効果を挙げられないかもしれない」
クルーグマン氏と同様に「消費税を5%に戻すべきだ」と口を揃えるのは、世界的投資家のジム・ロジャーズ氏である。
「GDPがマイナス成長になったのは、当たり前です。日銀による巨額の金融緩和で円安になれば、日本が輸入している食料品や資源の価格が上がる。でも賃金は物価上昇に比べて上がっていない。そのために国民の生活は苦しくなる。やはり安倍政権は消費税を元の5%に戻すべきでした」
経済の「理論」と「実践」の分野で世界最高峰の二人が、こぞってアベノミクスの失敗を口にする。だが安倍総理は、それでも「アベノミクスは成功している」と強弁し、解散総選挙に踏み切った。
安倍総理は表向き、今回の解散の目的は「消費税10%を18ヵ月延期することの是非」について国民に信を問うことと説明する。しかし、GDPの2期連続マイナスという「景気後退」局面が明らかになった現在、消費税を予定どおり引き上げることに賛成する議員は与野党ともに、ほとんどいない。なぜこの忙しい年末に誰も反対していないことを争点に選挙をするのか、国民の間には白けたムードが漂っている。
だが、これこそが安倍総理の狙いなのである。
安倍総理は解散を決意してから、マスコミ各社の世論調査を注視してきた。女性2閣僚が「政治とカネ」の問題で辞任をしても内閣支持率は安定しているし、消費増税には7割の人間が反対している。いま、増税延期を大義名分にして解散にもちこめば、選挙で勝てる—そう踏んだのだ。
事実、自民党内にはある種の楽勝ムードが漂う。
「慌てている若手も多いけど、今は一強多弱なんだから、このタイミングで解散して正解だと思っている」(自民党ベテラン代議士)
「選挙をやる上で一番心配なのは、無党派層が『反自民』に回ること。といっても、民主党時代に戻りたい人もいないでしょうし、他の野党も力がないですから、まあ、大丈夫かなぁと思います」(同若手代議士)
国民が白けムードのまま、投票率が伸び悩めば、組織票を握る政権与党が圧倒的多数の議席を得ることは目に見えている。
そして安倍総理は選挙で勝利を収めた後、こう言い出すだろう。
「私がこれまでやってきた政治が、すべて国民の信を得た」と。
■小沢一郎の「嫌がらせ」
実は、これこそが今回の総選挙の真の争点なのだ。増税の有無にかかわらず、アベノミクス全体の是非。そして原発の再稼働、集団的自衛権の行使容認、さらには憲法改正。安倍総理は12月14日の総選挙で、それらすべてを「白紙委任」される権利を狙い、時期外れの解散に踏み切った。
再び選挙に勝ってしまえば、その後にいくら野党が反対しても、「安倍政権は国民の信を得ている。それに反対するのは国民への裏切りだ」と言われてしまえば、言い返すことができない。「果たしてそれでいいのか」、有権者はそこを問われることになる。
その意味で、今回の選挙は安倍総理にとっても大きな「賭け」だ。安倍総理の独断で打った解散総選挙で予想以上に与党が議席を減らせば、立場が危うくなるのは総理である。
政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう分析する。
「常識的に考えれば、与党は議席を減らします。前回の'12年の衆院選で自民党は大勝しましたが、実は小選挙区での得票率は、大惨敗を喫した'09年の衆院選に比べて、わずか4%強しか増えていません。それだけで民主党との間に235議席もの差が開いたのです。自民党が圧勝したのは、野党が乱立し、共倒れになった『漁夫の利』を得ただけ。
今回の選挙では野党の候補者調整がうまくいけば、自民党の負ける小選挙区が出てきます。もし40議席から50議席を減らすことになると、安倍政権の先行きに暗雲が漂い、来年9月の総裁選での再選に暗い影を落とすでしょう」
野党間の選挙協力も急ピッチで進む。小沢一郎氏が率いる生活の党は、小沢氏を除いた全員が民主党に合流する道も模索しているという。これを小沢氏の「最期」と笑う自民党関係者も多いが、「豪腕」の狙いは別のところにある。
前回の衆院選で野党同士が食い合った選挙区での立候補者の調整がうまくいけば、自民党対野党の構図がはっきりし、自民党が苦戦する可能性が高まってきた。これは、小沢氏が政治家人生を懸けて仕込む「安倍総理への最後の嫌がらせ」ということだ。
解散を選んだ安倍総理自身にも不安はあったのだろう、当初、安倍総理は選挙の「勝敗ライン」を「自公で過半数」の238議席に設定した。
現在の与党は326議席という圧倒的多数を形成している。安倍総理の言う勝敗ラインだと、仮に与党で88議席を減らす大敗でも、「勝利宣言」ができる。
だが、総理が掲げたハードルに自民党内から弱気すぎると異論が噴出。それに突き上げられるように、自公の執行部は改めて勝敗ラインを与党で絶対安定多数を超える「270議席プラスα」に設定し直した。
これは「自己都合で解散したのだから、50議席を失えば、安倍総理、あなたの責任を追及しますよ」という、党サイドからのメッセージだ。その場合、たとえ形だけ選挙で勝利を収めたとしても、その後、与党内では安倍総理が求心力を失い、倒閣運動が起こりかねないことを示唆している。
〈選ばれてあることの恍惚と不安と二つ我にあり〉
これは作家・太宰治が『晩年』で引用したフランスの詩人、ポール・ヴェルレーヌの詩の一節である。神に選ばれて、芸術家としての天賦の才能を授けられた人間の、矛盾した心境を表したものと解されている。
安倍総理の胸に去来するのもまた、「恍惚と不安」に違いない。有権者に選ばれて国政のトップに立ち、最高権力者にのみ許された「伝家の宝刀」たる解散権を行使した「恍惚」と、その結果次第では、党内からの反発によって自らの地位を失うかもしれないという「不安」—。
そんな安倍総理の不安を煽るかのように、自民党内の「アンチ安倍」勢力が選挙後の安倍総理の求心力低下を見越して、反旗を翻すタイミングを、今か今かと手ぐすねを引いて待ちわびている。
「その筆頭として名前が挙がるのが、野田聖子前総務会長です。野田氏は雑誌『世界』で安倍総理の集団的自衛権の議論に真っ向から異を唱え、逆鱗に触れた。その結果、9月の内閣改造で無役となっていて、失うものは何もありません。
しかも野田氏の後見人には、同じく集団的自衛権の行使容認に批判的な元宏池会会長の古賀誠氏がいます。すでに政界を退いている古賀氏ですが、まだ影響力は大きく、今年3月には安倍総理のことを『愚かな坊ちゃん』と罵倒するなど、以前から安倍総理のことを苦々しく思っている。
その古賀氏がかつての盟友、二階俊博総務会長に野田氏の後ろ盾を頼んでいるんです。実際、野田氏が総務会長のときに総務会長代行のポジションに二階氏がつき、得意の党内調整の作法を伝授していました」(自民党ベテラン議員)
すでにその野田氏の足元から安倍政権への叛乱の狼煙が上がり始めている。
彼女のお膝元、岐阜県の自民党県連は年内の解散総選挙に「反対」する決議を採択したのだ。採択の場こそ、「公務のため」と称して欠席したが、野田氏が「日本初の女性総理」として「ポスト安倍」を目指しているのは間違いない。
■財務省が仕掛ける「罠」
そして来る総選挙では党幹事長として現場を取り仕切る谷垣禎一氏もまた、安倍総理に面従腹背をしつつ、総理の椅子への執着を捨てていない男の一人だ。
「自民党の長い歴史のなかで総裁になりながら、総理になれなかったのは、谷垣さんと河野洋平さんの二人だけ。もちろん、色気はあります。選挙戦に入れば、安倍総理は自民党のトップとして全国を飛び回る激務を強いられ、体調を壊す可能性がある。選挙で敗れれば、与野党、国民からの批判が高まり、ストレスと心労から病気が再発するかもしれない。安倍総理に『健康問題』が生じたら、谷垣幹事長は高らかに『ポスト安倍』の名乗りを上げるはずです」(前出とは別の自民党ベテラン議員)
谷垣氏の総理就任は、消費増税延期で煮え湯を飲まされた財務省にとっても願ってもない展開だ。
「谷垣幹事長は財務省にとって、総裁時代に『税と社会保障の一体改革』の三党合意にこぎつけた立て役者。振り付けがしやすい上に増税の必要性は十分に理解しているし、'17年4月の10%は必ず実現してくれると、財務省は思っています」(全国紙経済部記者)
財務省は、安倍氏の次に誰が総理になっても消費税を2ケタに乗せるための用意を終えた。
それが「景気判断条項」の撤廃だ。景気の状況次第では増税を停止することができる条項が定められていたが、財務省は増税延期を呑む代わりにこの条項を取り除くことに成功。'17年4月から消費税は、自動的に10%に引き上げられる。与党が選挙に負けても、安倍総理が辞任しても、この流れは止められないのだ。
さらに、今回の件で安倍政権とは深い溝が生じた財務官僚たちは、別の「ある仕掛け」も施した。
「安倍政権は来年度から社会保障を充実させるための目玉政策として『子ども・子育て支援新制度』に総額1兆円、消費増税分から7000億円を充てるとしてきました。しかし、消費増税を延期したことで財源が不足することに。
その財源として『つなぎ国債』を使うのです。これは将来確実に償還される財源がある場合にしか発行できない国債で、'17年4月の消費増税分を返済に充てる。要は1年半後に政府が『必ず』消費再増税を実行せざるをえないように、法律で手を縛ったのです」(主計局中堅官僚)
そもそも、財務省は消費税10%で満足する気などさらさらない。
「将来的には欧州並みの20%を目指しています。今回、安倍総理は記者会見で『'20年度の財政健全化目標も堅持していく』と表明。はからずも、財務省が描く『消費大増税計画』が政治日程に乗ったわけです。
同省では総理の『お友だち』である田中一穂次期次官(現主計局長)を中心に『新たな社会保障と税の一体改革案』と称して、水面下で年金の支給開始年齢の引き上げ(社会保障費の削減)と、消費大増税の検討に着手しています。
肉を切らせて骨を断つ。財務省は目先の消費増税の延期と引き換えに、将来の大増税の道筋を描くことに成功したのです」(全国紙経済部デスク)
もちろん、増税に反対する庶民やマスコミ対策にもぬかりがない。
「今回の選挙の公約に自民党は軽減税率を盛り込む予定ですが、欧州の例を見れば、これは想定内。むしろ軽減税率を入れれば、低所得者への対策になるうえ、新聞・書籍などへの適用で、マスコミもさらなる増税に反対できなくなる。
結局、誰が総理でも私たちのやることは一緒。消費税率を20%にまで高め、かつ社会保障費を削って財政を健全化することが至上命題なのです」(主計局幹部)
■総理の言動がおかしい
選挙後に安倍総理を待ち受ける、党内からの反発と財務省による足枷—。
政権運営が行き詰まるとともに、アベノミクスの失敗が誰の目にも明らかになれば、今回の安倍総理の「決断」は壮大な自爆行為として戦後政治史に記録されることになるだろう。
「アベノミクスの円安政策は、輸出企業の競争力を高めて、国内の工場の稼働率を上げ、そこで働く労働者の雇用や賃金を増やし、景気を好くしようという目論見でした。
しかし、実際はまったくそうなっていません。円高時代に輸出企業はすでに多くの工場を海外に移して、現地調達、現地生産、現地販売を広げています。そこで円安にしても輸出は大して伸びない。その一方で海外から入ってくる材料などは円安の影響で一律に高くなるのですから、内需企業はジリ貧となります」(RFSマネジメント・チーフエコノミストの田代秀敏氏)
ところが安倍総理は、こうした痛いところを突かれるとすぐに逆ギレして「それは間違っている!」「捏造だ!!」とイライラした口調で騒ぐだけだ。
「解散総選挙を決断してからというもの、総理には異常な言動が目立つ。精神的に不安定なんじゃないか」
と、安倍総理を古くから知る自民党のベテラン秘書も指摘する。
たとえば、衆議院の解散を発表した会見の後に出演したテレビ番組では、安倍総理はこんな暴言を口にした。『NEWS23』(TBS系)で街頭インタビューが紹介されたときのことだ。
「誰が儲かっているんですかね、株価もいろいろ上がっていますけど。僕は全然恩恵受けていない。お給料も上がってないですね」
「アベノミクスは感じてない。大企業しか分からへんのちゃうか」
というアベノミクスに否定的なVTRが流されるや、安倍総理はムキになって、こう反論したのだ。
「街の声ですから、みなさん(番組の人間が)選んでおられると思いますよ、もしかしたらね。
ミクロで見ていけば、色んな方々がおられますが、中小企業の方々たちは名前を出してテレビで儲かっていますって答えるのは、相当勇気がいるんですよ。それは納入先に『それだったらもっと安くさせてもらいますよ』と言われるのが当たり前ですから。しかし、事実6割の企業が賃上げしているんですから。これ全然、(VTRに)反映されていませんが、おかしいじゃないですか」
だが一部の輸出企業のサラリーマン、公務員、株を持っている資産家などを除き、国民の大半はアベノミクスによる景気回復など、ほとんど実感していない。だいたい景気が回復しているのなら、総理が増税を延期する理由もない。
それでも国民が白けムードのまま、総選挙の投票率が上がらず、自公が「絶対安定多数」を確保すれば、安倍総理はこれまで以上のスピードでアベノミクスを進め、自分たちに都合がいい政策をゴリ押ししてくるはずだ。
前出のジム・ロジャーズ氏が問いかける。
「日銀の黒田東彦総裁は追加の金融緩和を行い、さらなる円安に誘導しました。でも、円安になって儲かるのは大企業と一部のトレーダーだけです。円安のせいで物価が上がって庶民の生活が苦しくなっているのに、中小零細企業は賃金を上げないからです。いや、企業のほうにも賃金に回す余裕がないのです。
安倍総理はアベノミクスを正当化するために株価や雇用統計、円安の効果などの数値を出しますが、国民の生活がどんどん厳しくなっているのに、そんな数値に何の意味もありません。安倍総理はどこまで国民を苦しめたら気が済むのでしょうか?」
安倍総理の思惑にまんまと乗り、したい放題の政権運営を許すのか、否か—。すべては有権者一人ひとりの選択に委ねられている。
「週刊現代」2014年12月6日号より
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK175掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。