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文=編集部、協力=服部孝章/立教大学社会学部教授
安倍政権、危険な恫喝&言論弾圧体質が露呈 自民党の選挙報道“要望”に屈するテレビ局
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141130-00010003-bjournal-soci
Business Journal 11月30日(日)14時59分配信
自民党がNHK及び在京民放テレビ局に対し、衆議院解散前日の11月20日付で要望書「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」(同党筆頭副幹事長・萩生田光一氏および報道局長・福井照氏の連名)を渡していたことが判明し、波紋を呼んでいる。その内容は「出演者の発言回数や時間」「ゲスト出演者の選定」「テーマ選び」「街頭インタビューや資料映像の使い方」など詳細にわたる「異例のもの」(テレビ局関係者)で、編集権への介入に該当する懸念も指摘されている。
そのような中、当初は各党議員と政治家以外のパネリスト数人が討論するという構成であった討論番組『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系/11月29日放送)が、放送日直前に議員のみの出演に変更されていたことが明らかとなった。出演予定者だった評論家の荻上チキ氏のTwitterによれば、放送日2日前の27日に番組スタッフから電話があり、「ゲストの質問によっては中立・公平性を担保できなくなるかもしれない」との理由で議員のみの出演に変えると伝えられたという。
「番組スタッフに『誰かが何か言ってきたりしたんですか?』と確認しましたが、あくまで局の方針と番組制作側の方針が一致しなかったため、とのことでした。番組スタッフも戸惑っていた模様です」(荻上氏のTwitterより)
●安倍首相、放送前の番組に口出し
自民党の要望が早くもテレビ局の番組制作に影響を与えている様子がうかがえるが、立教大学社会学部教授(メディア論)の服部孝章氏はまず、安倍政権の政治運営における「公平中立さ」に疑問を投げかける。
「安倍晋三首相は、かつて次年度のNHK予算案を説明しにきた同局幹部が放送前のテレビ番組『ETV2001 戦時性暴力を問う』の内容に触れた際、番組内容について『公正公平に』と発言したことを認めている。放送法にも明記されている『公正』『公平』をテレビ局幹部に求めることは問題ないとしても、放送前の番組について発言することは政治家の行動として許されるものではない。当時安倍氏は政権政党であった自民党執行部の一人であり、政権の中枢に身を置く人物の行動ゆえに事は重大であり、少数野党の政治家であっても認められるものではない。
今回の文書には『公平中立、公正』という用語が6回も表記されているが、安倍政権はこれまで『公平中立、公正』な政治運営を行ってきたのか。例えば、政権公約になかった特定秘密保護法を提出し十分な審議をすることなく成立させ、細部を検討することなく12月に施行させた。また、集団的自衛権を閣議決定するなど、公正さを疑われるような政治運営を展開してきた」
また、服部氏は、同文書を渡されたテレビ各局の対応について、次のように問題視する。
「テレビ各局は同文書を受け取った当初、その事実を報道していなかった。11月27日になってその事実を知った朝日新聞、毎日新聞、西日本新聞、共同通信などが取材報道を始めたが、この時点で文書がテレビ局に渡ってからすでに1週間が経過していた。その間にテレビ各局は『自粛』を検討していたであろうか。実際に、これまで天皇制や差別などタブー視されがちなテーマに果敢に取り組んできた『朝生』ですら、民間識者の出演がキャンセルされるという事態が起こっている。
同文書には『過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、それを事実として認めて誇り、大きな社会問題となった事例も現実にあったところです』との記述がある。これは1993年のテレビ朝日の総選挙報道が国会証人喚問に発展した『椿問題』を指しているとみられるが、当の同局は現時点では無反応の姿勢であり、報道機関としての姿勢が問われている」
●「言論の自由」を脅かす懸念
さらに服部氏は、今回の自民党の行為は、今後具体化が予想される憲法改正論議などへ悪影響を及ぼすばかりか、「言論の自由」を脅かしかねない懸念を指摘する。
「同文書の要請内容は、出演者の発言回数・時間、ゲスト出演者選定、特定の立場から特定政党出演者への意見集中の回避など細部にわたる。街角インタビューについては、資料映像で一方的な意見に偏ることがないように、という要請までなされているが、こうした要請自体『不遜』である。
今回の文書により安倍政権は、市民や報道機関による批判に不寛容で、批判や反論を受けて応対する度量を持たないことを国内外に発信した。実態はテレビ局への恫喝であり、偏向報道と決めつけるのはまさに捏造である。公党がこうした文書を出したこと、そしてそれを受け取ったテレビ局の沈黙から、私たちは政治的貧困とメディアの鈍感さを認識する必要がある。でなければ、今後憲法改正論議が具体化した際に意見表明するメディアを失い、『言論の自由』を絵に描いたお題目にしてしまうだろう」
今回の自民党の要望書がメディア報道に委縮をもたらし、有権者が多角的な情報を入手する機会を損なわせるとしたら、同党の行為は批判を免れ得ないものといえ、今後大きな議論に発展する可能性もあるだろう。
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