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2年前同様、また失敗か photo Getty Images
民主党は票を減らすのではないかーー野党の存在意義も問われる衆院選の見方
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41246
2014年11月28日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
安倍晋三政権は今回の総選挙を「アベノミクスに対する国民の審判」と位置づけている。
■民主党は2年前の反省を生かせるか
だが、政治の大きな流れを俯瞰すると、むしろ野党、とりわけ「民主党に対する国民の審判」になるのではないか。はたして民主党は変わったのか。公約を見る限り、変わっていない。それどころか、ますます混迷を深めている。
国民が「政党に期待するもの」ははっきりしている。それは、国の平和と安定を守る外交安全保障政策、それと暮らしを豊かにする経済政策だ。けっしてイデオロギーではない。ところが、民主党の公約はどちらの分野でも立場がはっきりしていない。
まず外交安保政策はどうか。焦点はもちろん集団的自衛権問題である。公約は「集団的自衛権の行使一般を容認する憲法の解釈変更は許しません」と書いている。「行使一般」という点がミソで「場合によっては行使を認める場合もある」と読める。
どうしてこうなったかといえば、前原誠司元代表や長島昭久元防衛副大臣、渡辺周元防衛副大臣らのように、民主党内には「行使を容認すべきだ」という意見もあるからだ。集団的自衛権を認めるのか認めないのかと迫られると、党内で意見対立が生じてまとまらない。それで「行使一般は容認しない」と逃げているのである。
経済政策もそうだ。公約は「厚く、豊かな中間層を復活させる」とうたっている。それはもちろん重要である。問題は「どうやって豊かな中間層を復活させるのか」が問われているのだが、具体的な政策の中身となると、これまた首を傾げざるをえない。
アベノミクスの3本の矢にならったのか「柔軟な金融政策」「人への投資」「未来につながる成長戦略」という3分野に整理しているが、まず「柔軟な金融政策」というのは当たり前の話である。いま景気後退がはっきりしている中、このまま金融緩和を続けるのか、それとも一転して緩和はもう必要ないというのか、そこが問われている。
もしも緩和をおしまいにして引き締めに転じるというなら、景気が一層悪くなるのは確実である。中小企業など円安で困っている部分があるのはたしかだが、それと金融のマクロ政策は別だ。中小企業を支援するミクロ政策と日本経済全体への効果を考えるマクロ政策がしっかり区別できていないから、議論が混乱する。
■民主党の間違い
「柔軟に」とあいまいに政策を語るのは、自分たちがどうしたらいいか分からないからだろう。反論があるなら、ずばり「こうすべきだ」と主張してもらいたい。民主党には金融政策をきちんと理解していて、緩和続行に賛成の議員もいるだろう。党内で議論し始めたら、これまた意見が分かれてしまうに違いない。
「人への投資」とは何を指すのか。公約は子育て支援や農家への戸別所得補償、所得制限のない高校の無償化などを掲げている。原資はいずれも税金である。ここに民主党政策の核心がある。税金を原資にした所得再分配こそが政府の役割と考えているのだ。
子育て世代や農家、高校生を抱えた家計に税金を配ることで「厚く、豊かな中間層」を拡大できると考えている。実は、これらの政策は2013年7月の参院選で惨敗した当時の政策とまったく変わっていない。
当時のメルマガコラムや別コラムでも指摘したが、家計への所得再配分をいくら手厚くしても、民間企業部門が成長しなければ、経済は全体として成長しない。経済成長のエンジンは政府や日銀でもない。民間企業部門である。
政府や日銀にできるのは、短期的に景気が落ち込んだときに財政支出の拡大や減税、あるいは金融緩和で下支えする程度だ。中長期的な経済成長を目指すには、民間企業が自由闊達に事業を展開できるように、規制改革で環境を整える。それが、まさしくアベノミクス第3の矢でもある。
こんな話は経済学のイロハであり、とりわけ先進国では世界共通の政策なのだが、民主党はそこが分からない。野党だった2年間に何を学んだのかといえば、何も学ばなかったと言わざるをえないのだ。私が知るかぎり、民主党にも経済学と経済政策が分かる人はいると思うが、残念ながら、彼らは議論の主導権を握れていないのだろう。
他の野党はどうか。維新の党は民主党よりはるかにいい。「『稼げる国』へ、徹底した競争政策」を掲げて、新規参入規制の撤廃・緩和による医療福祉や農業の成長産業化をうたっている。とりわけJA全中の抜本改革やJA全農の株式会社化は安倍政権の方向性とまったく同じである。
■野党にとっても勝負の時
安倍政権の路線にことごとく真っ向から反対しているのは、日本共産党だ。消費税10%の引き上げ中止はもちろん、原発再稼働にも集団的自衛権の見直しにも、沖縄の辺野古基地移転にも反対である。政策の妥当性はともかく、分かりやすさでは野党随一だ。
こうしてみると、外交安保でも経済政策でもあいまいな民主党は右からは維新の党に、左からは共産党の挟撃に遭って票を減らすのではないか。維新の党とは一部の選挙区で候補者調整を進めたが、それ以外は票の取り合いになる。実際、維新幹部からは「私たちが戦う相手は自民党ではない。民主党だ」という声が聞こえてくる。
そうだとすると総選挙後には、与野党の新たな対立軸が浮かび上がる可能性がある。
これまでは、とにかく政府与党に反対するのが野党の仕事だった。その役割は、これから(これまでもそうだったが)共産党が担う。これに対して、維新の党が票を伸ばすとすれば、維新の役割は反対だけにとどまらない。自民党が力不足で進めきれない改革を促進する役割もあるのではないか。
維新の党の江田憲司共同代表は「第3の矢である規制改革は、既得権益まみれの安倍自民党には絶対できない」と主張している。「だからオレたちの出番だ」という話なのだが、見方によっては、それは政策の基本的方向が同じなのだから、自民党が掲げるアベノミクスの応援歌にもなる。
これは、実はみんなの党が分裂する原因になった路線対立そのものである。当時の渡辺喜美代表は自民党への接近を図ったが、同じく江田憲司幹事長は野党路線を唱えた。政策の方向感が同じであっても改革を実現する道筋やスピード感が異なると、現実政治の中では与党に近づくケースと野党にとどまるケースの2通りの選択肢がありうる。
いまの政治状況に照らして言えば、与野党の新しい対立軸は「改革の道筋とテンポ」になるだろう。維新の主張は「自民党は遅い、オレたちに任せれば早い」という話である。方向は同じでスピード感を競う。そうだとすれば、野党は国民に対して「オレたちに任せれば改革が進むよ」と信頼させられるかどうか、が勝負の分かれ目になる。
国民は似たような話を一度、民主党政権で経験した。それは見事に失敗した。だから、いま野党を見る目は厳しい。政策を霞が関任せにして成長できる時代ではないから、改革は必要だ。だからといって、現実離れした理想主義に大きな支持は集まらないだろう。
ここは安倍政権だけでなく、野党にとっても勝負の時である。
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