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自民党の「報道圧力」文書の裏に安倍サンの猜疑心アリ!?
http://no-border.co.jp/archives/29172/
2014年11月28日(金)【イッシン 山口】 NO BORDER
自民党が在京テレビキー局各社に対して、報道圧力ともとられかねない文書を送っていたことが26日、ノーボーダーの報道によって明らかになった。
大手メディアは当初、沈黙していたが、28日になってようやく新聞各紙も後追いした。
だが、肝心なことが(そもそも取材していないのだと思うが)書かれていない。この文書が出された背景についてだ。
ノーボーダーが入手した問題の文書を見て、私はおもわず吹き出してしまった。「あの男、よっぽど根に持つタイプなんだな。それにしても、なんとケツの穴の小さいことよ」と。
「あの男」とは、いわずと知れた安倍晋三首相のことだ。
問題の文書との関連でいえば、送りつけた自由民主党の総裁ということになる。一応、部下の萩生田光一・筆頭副幹事長と福井照・報道局長の連名になっているが、安倍サン本人の強い意向が影響していることは明らかだ。
というのも、申し入れ事項の中にわざわざ〈街頭インタビューなどの映像で偏った意見にならないよう公正を期すこと〉という文言が入っていたからだ。
文書は20日付で送られている。実はその2日前の18日、解散表明の会見を終えた首相はテレビ各局に出演し、そのうちのひとつTBS「NEWS23」の番組中にこんなことがあったのだ。
「アベノミクスで景気回復を感じているか」という街頭インタビューのVTRが流れ、最後に紹介された主婦と思しき2人の女性が代わるがわるに、
「全然、アベノミクスは感じてない」
「大企業しか分からへんのちゃう」
としゃべったところでスタジオに戻った。すると安倍サンが突如顔色を変え、キャスターの岸井成格さんの発言を制してこんなことを言い始めたのだ。
「こ、これはですね。街の声ですから、みなさん選んでるんだと思いますよ……」
要は、TBSがアベノミクスに批判的な声を選んでVTRを編集したと言いたいのだ。あげくの果てに、
「だってね、いろんな方がいらっしゃいますが、中小企業のですね、小規模事業者の方がテレビで、名前を出して、『儲かってます』というのは相当の勇気がいるんですよ……」
とまで言い出すしまつ。本当にこの人、大丈夫かいな。
街頭インタビューというのはまさしく街の声、世の中の人がどう思っているかを生の声で伝えるものだ。「偏っている」かどうかは、世論を反映しているかどうかにかかっている。
例えば、TBSがキー局のJNNが11月1日、2日の両日に行った世論調査では、アベノミクスによる景気回復について89%の人が「実感がない」と答えている。産経新聞社とFNNの合同世論調査でも81.0%が、やはり「景気回復を実感していない」答えている。つまり、ほとんどの人が景気回復など実感していないということだ。
一方、安倍首相がムキになって反論したVTRには6人が登場し、うち3人が「誰が儲かってるんですかね。僕は全然、感じない」と完全否定で、1人が「株価も上がってるし、効果あったんじゃないですか」とアベノミクスを肯定した。残り2人のうち1人は、給料が上がった実感はないが「仕事は増えてきた」と言い、もう1人は、いまのままでは景気も良くないので「解散・総選挙で問い直すのはいいんじゃないですか」と解散を評価していた。
あえていえば、「◯」が1人(16.6%)で「×」が3人(49.9%)、「△」が2人(33.3%)ということになる。世論調査の数字と比較すると、むしろ「安倍寄り」ではないか。もし、「景気回復で儲かってますよ」という意見ばかり紹介したら、それこそ偏向になってしまう。
ところが狭量な安倍サンは最後の女性2人が許せなかったようだ。
その後も延々と反論を続け、「事実、6割の企業が賃上げしているんですよ」「全然、(VTRに)反映されてないじゃないですか」「おかしいじゃないですか」などとまくし立てたのだ。
見ていて正直、悲しくなった。こんな男が「美しい国」日本のリーダーなのかと。佐賀の『葉隠』を読んで欲しい。もっと武士道を学んで欲しい。
このことから導き出される問題点はいくつかある。
まずは安倍サンのリーダーとしての器の小ささだ。
たかが、と言っては失礼だが、街角インタビューだ。赤子を抱いた子育て母の言葉をしっかり受け止め、「これは私の不徳のいたすところ。1日も早く、1人でも多くの人が、アベノミクスの恩恵を実感できるよう、引き続き政策を進めたい」くらいのことが言えないのか。
次に、一国の宰相でありながら世論の動向を把握していない。
リーダーたるもの自分にとって都合のいい情報ばかり聞くのではなく、むしろ不都合な情報ほど耳をそば立てなくてはならない。各種世論調査の結果も知らなかったのだろうか。景気回復を実感していない人が圧倒的多数なのは明らかだ。まず、それを把握していなければ「次」の一手は打てまい。
さらにいえば、町の声に逆ギレしたぶざまな姿が世界中に流れてしまうことの危機意識もない。TBSが意図的に編集したのではないかという発想も幼稚だし、その猜疑心の強さは人格さえも疑いたくなる。そしてダメ押しが、今回の文書である。
せっかくの選挙である。有権者としては、政策はもちろんだが、こうしたトータルな「安倍サン」を信任するべきかどうか、真剣に考えた方がいいだろう。
(イッシン山口)
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