01. 2014年11月26日 07:52:43
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日本の総選挙:同じレース、同じ馬 2014年11月26日(Wed) The Economist (英エコノミスト誌 2014年11月22日号)安倍晋三首相は権力基盤を固めるために解散総選挙に踏み切った。有権者は首相にもう1度チャンスを与えるべきだ。 安倍首相、消費増税延期を表明 21日に衆院解散 11月18日に首相官邸で記者会見し、消費増税の延期と衆院解散の方針を表明する安倍晋三首相〔AFPBB News〕 安倍晋三氏が2012年の暮れに、自分こそが経済を救い、日本を再生させる人間だと訴えたとき、有権者は彼に総選挙での地滑り的勝利を与えた。 それからわずか2年。首相は衆院を解散して12月14日に総選挙を実施すると宣言し、「私たちはこのチャンスを決して手放すわけにはいかない」と言い切った。 驚くまでもなく、多くの日本人は、自分たちは同じ馬を2度買うよう求められていると考えている。 政治的な計算は明白だ。安倍氏の支持率は、今秋まで同氏が謳歌していた重力に抗うような高さから急落した。であれば、国防政策や停止中の原発の稼働再開を巡る来年の戦いの前、さらに言えば自民党内で安倍氏に対する不満の声が高まる前に、今、あと4年間の任期を目指した方がいい、というわけだ。 野党は混乱状態にあり、選挙に向けて十分な数の候補者を擁立することさえままならない。観測筋は、連立与党は30〜40議席減らすが、それでも、かなりの過半数を維持すると見ている。安倍氏の側近の中には、自民党が実際に議席を増やし、連立相手の公明党の助けなしで日本を統治できると期待する人もいる。 景気後退に逆戻りした日本経済 だが、これを避けて通る道はない。安倍氏が経済を再生させるという公約を掲げて選挙を戦うのは、経済再生に向けた同氏の最初の試みが概ね失敗したためだ。 安倍氏は幾度となく、長年のデフレに終止符を打ち、経済を再生させていると主張してきた。本誌(英エコノミスト)は、「アベノミクス」――急進的な金融緩和と政府支出の拡大、広範にわたる構造改革を促進する、巧みに打ち出されたキャンペーン――を承認することで、安倍氏を大目に見た向きの一員だ。 よく知られているように、政権の座に就いてすぐ、同氏は「Japan is back(日本は戻ってきた)」と宣言した。11月17日に発表された第3四半期の悲惨な国内総生産(GDP)統計が浮き彫りにしたように、首相は半分正しかった。日本は確かに戻った――だが、景気後退に逆戻りしたのだ。 そして、賃金が物価に追いつかないため、日本の多くの家計が圧迫されているように感じている。 効果が薄れるアベノミクスの2本の矢 日銀、8兆円を即日供給 日経平均終値8605円15銭 日銀が大規模な量的緩和に踏み切っていなければ、日本経済がどこまで深刻な不況に陥っていたか分からない〔AFPBB News〕 では、アベノミクスはすべて実行不能だったのだろうか? すべてがそうだったわけではない。 日銀の大規模な量的緩和がなかったら、日本経済がどこまで深く不況に落ち込んだか分からない。2013年の量的緩和第1弾は実際、予想インフレ率を若干押し上げた。 10月末の第2弾も正しかった。なぜなら、経済の動きが止まる一方で、2%という日銀のインフレ目標に向かって上昇していたコア・インフレ率が落ち込んだためだ。 財政政策について言えば、問題は緩和の度合いが足りなかったことだ。あとから振り返ってみると、政府が長年計画を温めてきた5%から8%への消費税引き上げを4月に実行に移したのは間違いだった。増税は経済に大打撃を与えることになった。 安倍氏が先日、次回の増税計画を2015年10月から2017年4月に先送りすると宣言したのは正しかった(もっとも、先送りするためには有権者から新たな信任を得る必要があると述べたのは、誠意を欠いていた)。景気が低迷しているときには、財政再建を景気回復より優先させることは、破滅的な結果を招く恐れがある。 安倍氏が再選されたら、金融政策と財政政策の緩和が続くだろう。だが、アベノミクスはパンチ力を失うかもしれない。ある側近の言葉を借りるなら、恐らくアベノミクスの最大の狙いは、株式市場を押し上げ、日本の家計と企業を悲観的なデフレ心理から抜け出させるための「心理マネジメントの実践」だった。 その効果は、何度も繰り返すことができない。日銀は一段と大胆な対策を講じることができるが、いわゆる衝撃と畏怖をもたらすのは以前より難しくなる。 残る構造改革は? 結果として残るのは、日本の長期的成長率を引き上げる計画の3つ目の側面である構造改革だ。 ここでは、前宣伝が実体よりだいぶ先を行っていた。政府は、硬直的な雇用制度の改善、市場の開放、さらには移民受け入れの拡大に向けた聞こえのいい提案を発表した。いくつかは実を結んだ。例えば、社外取締役を増やせるようコーポレートガバナンス(企業統治)が見直されているし、働く女性が増え、農業が以前より自由になった。 だが、全体としては、構造改革には緊迫感がなかったし、優先度は高くなかった。 安倍氏の顧問らは、2期目は異なるものになると話している。安倍氏は農家の保護を巡り米国との通商交渉の行き詰まりを打開する。労働改革を推し進める一方、雇用創出に拍車をかけ、支出を刺激するために税制を変更するという。 さらに、経済から多少の助けも得られるかもしれない。円安で得た利益のおかげで、大企業の年末のボーナスは手厚いものになる可能性が高いからだ。 また、在庫と労働市場は驚くほど逼迫している。例えば名古屋では、建設会社がこぞって臨時労働者を採用したため、バーや飲み屋で働く労働者の賃金がこの1年間で2倍に跳ね上がった。 偉大な指導者はリスクを取る しかし、長期的には、旧来のやり方を覆すような変化を起こす覚悟を持った指導者がいて初めて、日本は成長ペースを速めることができる。 安倍氏は急進的なアイデアを持っているが、それを実行に移すために自身の政治的資本を費やすのを嫌いすぎる。偉大な指導者というものは、リスクを取らねばならない。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42289
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