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アベノミクス失敗の本当の理由は「第2の矢」=バラマキのミスだ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41201
2014年11月25日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
「私たちが進めてきた経済政策を前に進めていくべきか、この政策が間違っているのか、そのことをしっかり訴えていこう」−−。先週金曜日(11月21日)、衆議院の本会議で解散・総選挙が宣言されたことを受けて、安倍晋三首相は自民党本部で所属議員たちにこう呼びかけたという。
だが、ちょっと待ってほしい。自民、公明、民社3党の合意に基づき法律で決まっていた消費増税の来秋実施を「経済が悪いから」と言って反故にする一方で、すでに2年間も続けてきた自身の経済政策アベノミクスは「成果をあげており、続けるべきだ」というのは、論理的におかしくないだろうか。
そんな疑問を踏まえて、今回はアベノミクスの「3本の矢」を改めて検証しておきたい。失敗の本当の理由を探る試みと考えていただいても結構だ。特に怪しいのは「第2の矢」(機動的な財政政策)である。
■アベノミクスは失敗に終わった
グラフ1「2期連続のマイナス成長」
まず、前提となる経済だ。
内閣府の先週月曜日(11月17日)の発表によると、今年7〜9月期の実質GDP(国内総生産、季節調整済み)の伸び率(第1次速報値)は前期比でマイナス1.6%にとどまった。これはプラス成長への回復を見込んでいたエコノミストたちの期待を裏切るショッキングな結果だ。
添付したグラフ1を見れば明らかだが、世界経済がリーマンショック後の落ち込みの増幅に揺れた2009年1〜3月期(マイナス15%)以来の大幅な減速となった今年4〜6月に続く、2期連続のマイナス成長でもある。
これを逆手にとって、選挙向けのお手柄として演出しようとしているのが、安倍政権の消費増税の先送りと、その是非を国民に問うことを「総選挙の大義」とした今回の解散・総選挙だ。
実際、安倍首相は、四半期ベースでGDPが2期連続のマイナス成長に陥ったとの発表があった翌日(18日)の夜の記者会見で、「総合的に勘案し、デフレから脱却し、経済を成長させる『アベノミクス』の成功を確かなものとするため、消費税10%への引き上げを、法定通り、来年10月には行わず、18ヵ月延期すべきである、との結論に至りました」と表明した。
だが、ちょっと都合が良すぎないだろうか。安倍政権の発足は2012年12月26日のことだ。同政権の経済政策の1枚看板であるアベノミクスもスタートからすでに2年の歳月を経過している。われわれ有権者は、成否の審判を下すまでに十分な猶予を与えたと言ってよいだろう。この段階で、GDPの伸び率が四半期ベースで2期連続のマイナスに陥ったという結果に、われわれは「アベノミクスは失敗に終わった」との烙印を押さざるを得ない。
■「第2の矢」が失敗を助長
では、なぜ、アベノミクスは失敗したのだろうか。当初からよく批判されるのは、「3本の矢」のうち「第1の矢」と呼ばれる“異次元の金融緩和”と「第3の矢」と呼ばれる「成長戦略(規制緩和)」の問題だ。
異次元の金融緩和では、理論的な支柱であるリフレ派の経済学者の主張(通貨供給量を膨張させれば、デフレを脱却できる)に関して、理論的に間違っているといった批判が今なお根強い。加えて、どちらかと言えば副次的な効果である円高是正についても、「製造業を中心とした産業の空洞化が進んだ近年の状況では輸出拡大が期待するほど見込めない」とか、「化石燃料や食品、鉱工業品の輸入コストを押し上げて悪性インフレを招きかねず、副作用が大き過ぎる」といった批判が早くから何度も繰り返されてきた。
また、成長戦略については、「掛け声だけで、既得権者の反発を抑えて痛みを伴う改革を行う指導力・実行力が足らない」という指摘がよく聞かれる。これも尤もな指摘だろう。判例で自由になったはずの薬のインターネット販売で厚生労働官僚の手練手管にしてやられて新たな規制を導入してしまうなど、期待とは逆の結果に終わったものもあるほど、成長戦略は脆弱だ。もともと効果があがるまで長い時間のかかる施策だが、この調子では、今後もたいした期待はできないだろう。
しかし、筆者は、もう一つ、アベノミクスの失敗を助長した大きな問題があると考えている。これまでほとんど批判の対象になっていない「第2の矢」、つまり財政政策の問題だ。「3本の矢」のうち、政府がばら撒くだけの財政政策は、最も即効性の期待できる政策だ。だが、安倍政権は、そのバラマキのタイミングと金額を間違えたのではないだろうか。
■補正予算の支出を半分強に減らすという“暴挙”
具体的に見ていこう。安倍政権が「第2の矢」として行った最初の財政政策は、2012年度補正予算だ。政権発足から20日後の2013年1月15日に閣議決定し、翌2月26日に成立したもので、規模は10.2兆円。これは、2009年度の第1次補正(14.7兆円)に次ぐ史上2番目の大規模補正だ。この補正を2013年度当初予算(92.6兆円)とあわせて「15ヵ月予算」と称して経済を刺激する施策をとったのだった。この政策はそれなりに功を奏した。日本経済は2013年1〜3月期から翌2014年1〜3月期までの間、5期にわたって概ね順調な成長を維持できた。GDPの伸び率は、順に、5.6%、3.2%、2.4%、-1.6%、6.7%となっている。
問題はこの後だ。財政再建下での厳しい予算編成であり、決して油断したわけではあるまいが、安倍政権は2013年度補正予算を5.5兆円と前年度補正より5兆円近く減らした。5兆円と言えば、日本のGDP(実額、2013年度で529兆円)の1%弱に相当する。2014年度の当初予算と合わせた15ヵ月予算ベースで見ても、政府支出が大きく落ち込んだ。
これではひとたまりもない。5%から8%への税率引き上げが決まっていた2014年4月の消費増税を前に、駆け込み需要が見込まれる中で史上2番目の財政支出(バラマキ)を行い、経済のエンジンをふかした以上、いきなり政府支出を減らすのはリスクが大きいからである。
ところが、安倍政権は、実際に増税が行われて駆け込み需要が消滅するうえ、上がったばかりの高い税率を嫌って節約ムードが高まり買い控えが起こって、個人消費や企業の設備投資が落ち込むのが確実な時期に、政府部門が補正予算の支出を半分強に減らすという“暴挙”に踏み切ったのだ。「機動的な財政」とは正反対の財政政策を繰りだしたと言い換えてもいいだろう。これが、2014年4〜6月期のGDP伸び率が歴史的な落ち込みとなっただけでなく、続く7〜9月期もマイナス成長から抜け出せない原因であり、“氷河期”を招いてしまった元凶なのだ。
年度ベースのGDPの動き
もうひとつのグラフで、年度ベースのGDPの動きをみれば、その失敗ぶりがさらにわかり易い。東日本大震災後3年目に入っていた経済の回復・拡大期にあたる2013年度に積極的にばらまき、消費増税の悪影響が出る2014年度にバラマキを半分近くに減らした格好なのである。
ざっくりした計算で言えば、もし前年度並みの補正を2013年度も確保していれば、2014年4〜6月期のGDP伸び率のマイナスは半分以下に収まったし、同じく7〜9月期は2.0%強のプラス成長に浮上していた可能性もあると筆者はみている。
■次の駆け込み需要が遠のく
念のために申し添えておくが、こうした財政政策の問題は今後も繰り返されるだろう。というのは、消費税の再増税を睨んで不可欠とされ、規模が3、4兆円前後に達するとみられていた2014年度補正が、1、2兆円程度削減されるのが確実になっているからである。
原因は、安倍首相が来秋からの消費税再増税を見送ったことである。それに伴い、将来の歳入が減るので、大盤振る舞いはできないという理屈が背景にある。確かに、事実上の対外公約にもなっている財政再建目標の達成に黄色信号が灯った以上、補正予算の圧縮は避けられない。
しかし、問題はそれにとどまらない。消費増税の先送りには、増税を睨んだ次の駆け込み需要の発生を遠のかせる問題もある。皮肉なことに、消費増税の先送りが、経済の回復の足取りを鈍らせる面もあるといわざるを得ない。
機動的な財政政策の出動のタイミングや規模を間違えず、予定通り消費増税をできていた場合との差はあまりにも大きい。どうみてもアベノミクスは失敗ではないだろうか。
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