http://www.asyura2.com/14/senkyo175/msg/197.html
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「gczbERW2nAさんへ:消費税制度の基本に関する説明:「事業者区分としての課税・非課税」「輸出免税」「還付金の性格」」
http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/811.html
のコメント欄に経済素人さんからいただいたコメントへの返信です。
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経済素人さん、コメントありがとうございます。
【引用】
「軽減税率導入の場合(仮に税率5%として)
○軽減税率対象外の品目の売上→A
○軽減税率対象の品目の売上 →B
(Ax0.09+Bx0.047)−仕入額x0.09=消費税額
という式になるという事ですか?
仕入額が軽減税率対象品目に対する仕入れかそうでないか細分化されなければ、結局、軽減税率対象外の商品も軽減税率対象の商品もまとめて計算されるので、
「軽減税率が価格転嫁されることはない」
もしくは
「軽減税率が価格に転嫁されるのは事業者の善意による」
と言う事でしょうか?」
【説明】
消費税の標準税率が10%で特定の品目に5%の軽減税率が適用されたというケースですね。
恐縮ですが、問いに対する直接的な説明の前に、「軽減税率」制度を再確認させていただきます。
■ 消費税制度と「軽減税率」制度の関係と仕組みの確認
まず、貴殿が提示された式は、「輸出免税」のケースにもそのまま援用できるものです。
「軽減税率」制度と「輸出免税」制度の違いは、適用取引の基準が売上先(輸出)か品目なのかだけですから、「輸出免税」に適用されている税率ゼロ%は、「軽減税率」におけるゼロ%と同じものと考えることができます。
[軽減税率5%]
(Ax0.09+Bx0.047)−仕入額x0.09=消費税額
↓
[軽減税率0%:輸出免税]
(Ax0.09+Bx0)−仕入額x0.09=消費税額
「軽減税率」と「輸出免税」で特徴的な違いは、「軽減税率」が適用された品目を同じように扱っていても、事業者のポジションによって消費税の算定式が異なることです。
新聞を素材に考えてみます。
新聞に「軽減税率」が適用された場合新聞を扱う事業者として、新聞社と新聞販売店(スタンド売りも)を想定することができます。
新聞社は、紙やインクそして輪転機など標準税率の品物を仕入れ、新聞を発行し販売しますが、新聞販売店は、新聞を仕入れ、仕入れた新聞を消費者に販売します。
新聞販売店のポジションでは、新聞社と違って、売上と仕入の両方に「軽減税率」が適用されます。このケースが、人々がイメージしている「軽減税率」に近いのかもしれません。
新聞社と新聞販売店の違いを説明します。
標準税率乗数:10/(10+100)=0.09
「軽減税率」乗数:5/(5+100)=0.047
○軽減税率対象外品目の売上→A
○軽減税率対象品目の売上 →B
○軽減税率対象外品目の仕入→C
○軽減税率対象品目の仕入 →D
1) 新聞社
新聞社は、貴殿がご提示された
(Ax0.09+Bx0.047)−Cx0.09=消費税額
の式が、基本的に当てはまります。(新聞社が新聞などの「軽減税率」適用品目を仕入れることもあるでしょうが考慮外とします)
さらに、売上を「軽減税率」が適用される新聞や書籍などの売上に絞ると、
Bx0.047−Cx0.09=消費税額 式1
式1でわかるように、新聞社は、消費税額算定過程でプラスの要素である「売上に係わる消費税額」を求めるための乗数が、マイナス(控除)の要素である「仕入に係わる消費税額」を求めるための乗数より小さいことから、算定される納付すべき消費税額がマイナスになることもあります。
2)新聞販売店
(Ax0.09+Bx0.047)−(Cx0.09+Dx0.047)=消費税額
チラシ折り込み代などの「軽減税率」適用外の売上と備品や消耗品などの「軽減税率」適用外の仕入を考慮外とし、新聞の売上と仕入に絞ると、
Bx0.047−Dx0.047=消費税額 式2
新聞販売店は、「軽減税率」の適用を受ける新聞を扱っても、控除側(マイナス要素)である仕入にも同じ「軽減税率」が適用されるので、新聞社ほど利益を享受しません。
新聞販売店は、新聞の販売分についてのみ、消費税の税率が「軽減税率」レベルに下がったことになります。それでも、稼いだ荒利から10%を消費税として納めるのと5%の消費税で済むのとでは経営面で大きな違いがあります。
※ 「軽減税率」が絡むもう一つの計算式
次の投稿で説明しようと思っている問題ですが、「軽減税率」の導入で大きな不利益を被るケースがあります。
Ax0.09−Dx0.047=消費税額 式3
新聞社と真逆で、消費税算定式でプラス要素の乗数のほうがマイナス要素の乗数より大きいというケースです。
詳細については、新たな投稿で説明させていただきます。
■ 営業で利益が出せなくても消費税を通じて利益が得られる「軽減税率」制度
「軽減税率」の内実を知るための思考実験としてわかりやすいのは、仕入と売上の金額が同じというケースです。とりあえず、500円で仕入れたものを500円で販売するといったツーツーの商売をイメージしてください。
売上すべてが新聞で仕入すべては標準税率品目として、ある新聞社の仕入が千億円で売上が千億円だとします。
式1に当てはめると、
千億円x0.047−千億円x0.09=マイナス43億円
結果の消費税額はマイナスですから、この新聞社は、43億円の消費税還付を受けることになります。
新聞に「軽減税率」の適用を受けた新聞社は、営業的にはマージンがなくても、消費税制度を通じて利益を得ることができたわけです。
売上千億円に対して消費税還付金(荒利)が43億円ですから、荒利率として考えると、4.3%に相当します。
この新聞社が消費税制度を通じて得る利益は、ノーマージンのときが最大です。
ただし、問題はマージンと消費税を合わせた結果手元に残る利益の大きさですから、売上>仕入というちゃんとした商売のほうが得になります。
新聞に「軽減税率」の適用を受けた新聞社は、「営業を通じて得た利益」と「消費税を通じて得た利益」という二つの利益の源泉を持つことになるわけです。
「軽減税率」の乗数はそのままで、標準税率が続々と引き上げられて20%になったとします。売上・仕入の金額は変わらないとします。
標準税率乗数:20/(20+100)=0.167
「軽減税率」乗数:5/(5+100)=0.047
千億円x0.047−千億円x0.167=マイナス120億円
「軽減税率」が5%のまま標準税率が20%になると、なんと、消費税を通じて12%の荒利率に相当する利益120億円を消費税還付として政府から受け取ることができまます。
新聞社が受け取る消費税還付金は、「軽減税率」の導入に賛成した国会議員や制度を運用する政府の官僚たちが自分の財布から出すわけではなく、きっちり消費税の適用を受ける事業者が汗水垂らして働いて稼いだ荒利(付加価値)から納付した消費税が原資です。
消費税と同じ課税論理の付加価値税として20%前後の税率を採用している欧州諸国は、新聞や書籍に5%やゼロ%の「軽減税率」を適用しています。
欧州諸国の新聞社は、ここまで説明してきたような利益を付加価値税(VAT)制度を通じて得ていることになります。
そして、他の事業者が納付した付加価値税を原資として、利益(還付金)が供与されているために付加価値税の実効税率が低くなり、そのために、標準税率を引き上げなければならなくなるというイタチごっこが続いているわけです。
「軽減税率」や「輸出免税」の適用を受ける事業者は、標準税率が上がれば上がるほど得になるので、意図的にイタチごっこを弄んでいます。
(欧州諸国は、総付加価値に対する税収率が低い(実効税率17%ほど)。それも、輸入に課す付加価値税でカバーした値というのが現状)
だからこそ、17年4月に標準税率10%への引き上げと同時に「軽減税率」を導入すると表明したとき、人々の考え方や判断に影響を与えるメディアに対する買収工作だと指弾したのです。
新聞は寡占状況で発行・販売されているので、拡販競争はあっても(というか拡販キャンペーンの原資を確保するためにも)、購読価格はカルテル的なラインで並んでいます。
さらに言えば、新聞は再販指定商品です。新聞社が決めた小売価格が小売段階でも通用するかたちになっているので、販売店相互の競争で値崩れが起きるようなこともありません。
※ 参照投稿
「10%引き上げと同時の「軽減税率」導入表明は、選挙史上最大(金額規模)かつ最悪(国民の金を使って)の買収工作である!」
http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/837.html
■ 問いに関する説明
直接の問いではない部分を長々と説明してしまい申し訳ありません。
貴殿の問いである
「仕入額が軽減税率対象品目に対する仕入れかそうでないか細分化されなければ、結局、軽減税率対象外の商品も軽減税率対象の商品もまとめて計算されるので、
「軽減税率が価格転嫁されることはない」
もしくは
「軽減税率が価格に転嫁されるのは事業者の善意による」
と言う事でしょうか?」
についての説明に移ります。
まず、「仕入額が軽減税率対象品目に対する仕入れかそうでないか細分化されなければ、結局、軽減税率対象外の商品も軽減税率対象の商品もまとめて計算される」という部分は、これまでの説明でおわかりいただけたと思いますが、「軽減税率」が最終消費者価格に影響をあたえるかどうかとは直接の関係がありません。
売上と仕入を標準税率と「軽減税率」で区分したとしても、「軽減税率が価格転嫁されることはない」と言えます。
そして、消費税制度を通じて増えて利益を販売価格の引き下げというかたちで消費者や販売先に還元するかどうかは、「事業者の善意による」ことになります。
消費税の税率は、本来、総額の販売価格を決定するものではありません。
商売は、品質基準に合った必要なモノをできるだけ安く仕入れ、できるだけ高く売ってできるだけ多くの利益を得ようとする活動です。(家族経営など儲けにそれほどこだわらない事業者もいますが)
消費者は、品質基準に合った必要なモノをできるだけ安く仕入れる(買う)立場ですから、できるだけ高く売ってできるだけ多くの利益を得ようとする事業者とせめぎ合うことになります。
そのような関係性のなかから、消費税など何が含まれているかは無関係に総額の価格が決まります。
(これが、モノが売れなくなった8月や9月のほうが4月や5月より総額価格が下がった要因です。消費者物価指数は円安が進むなかで4月よりさがっています)
企業経営者は、生産従事者の人件費や“転嫁されたと言える”仕入先の消費税を含む原価をコストと考えますが、それをベースにした「売上−原価」(付加価値・荒利)の額がどれくらい必要かという計算では、販売管理費(営業や事務方の人件費・事務所費・広告宣伝費など)に加え、消費税のみならず固定資産税や外形的な部分の地方法人税さらには債務履行費(支払い利子・返済元本)などから構成される全経費を捻出できるように考えます。
コストは与件ですから、どれだけ付加価値を稼げるかは、販売価格(単価)と売上数量の問題になります。
そして、付加価値から消費税制度で仕入としてみなしてもらえる経費を差し引いた金額に8%(現在)の消費税がかかると想定し、それを差し引いたあとに、全経費及び目指す最終業利益額が稼げるようにします。
何を言いたいかと言えば、消費税を含む総額価格は、「本体価格+消費税」で決まるものではないということです。
総額の販売価格は、ざっくり説明した事業計画や販売計画によって決められるもので、外税方式的な価格表示は、総額から逆算して付けられたものと言えます。
どうしても総額980円以上の値段で売りたいから、本体価格を915円(税別)とし、消費税73円を加え総額988円にするといった感じです。
消費税を本体価格に上乗せする外税方式は、消費税を負担する事業者が、できるだけ高い値段で売れるよう、本体価格を超える分は私どもの儲けではなく消費税分なんですと言えるよう政府が配慮した“浅はかな”仕掛けです。
(浅はかと言うのは、そのために、消費税増税の重みを消費者に感じさせ、消費の一段の低迷を招いたからです)
「軽減税率」の適用を受けた“必需品”の価格が下がる保証がないのは、法人税を減税したからといって法人税を納付している企業が販売する品物の価格が下がる保証がないのと同じ理屈です。
法人税を減税したらモノの価格が下がるというのなら、「軽減税率」の適用を受けた品目(仕入は標準税率)も価格が下がると言えます。
なぜなら、法人税の課税ベース(課税対象範囲)は、消費税の課税ベースからさらに「人件費+利払い費」を差し引いたものだからです。(経費(仕入)の扱いや減価償却費などの扱いが消費税と法人税では異なるのでざっぱくな説明です)
「軽減税率」は消費税の負担を軽減することで適用を受ける事業者の利益を増加させ、「法人税減税」は経常利益に課される法人税の負担を軽減することで事業者の利益を増加させるという違いはありますが、どちらも、特定(法人税は黒字法人だけ)の事業者の最終手取り利益を増加させるための税制の変更です。
企業活動の目的が、最終利益を最大にすることだとすれば、税制の変更によって利益が増加したのに、販売価格を下げてわざわざ利益を減らすということは考えにくいと言いことができます。
価格を下げるのは、貴殿が示した「事業者の善意による」か、価格を下げたほうが販売数量との兼ね合いで利益が大きくなると判断したときか、 価格を下げなければ思うように売れない状況に陥ったときではないでしょうか。
これまで、説明の都合で、そう思わせるような想定をしながら説明をしてきた身としては実に恐縮ですが、「軽減税率」を含め消費税の問題を考えるときは、仕入価格や販売価格に含まれる(上乗せされる)消費税額といった価格の内訳には意味がないことを抑えておく必要があります。
消費税が販売価格や仕入価格に含まれているように考えると、消費税の内実が見えにくくなります。
外税方式がはびこっているのでわかりにくいのですが、消費税は、販売時の価格に含まれているわけではなく、決算時に算定されるものという理解が重要です。
決算時に消費税が算定されたのち、意味はないけど試しに計算すると、ある品物の価格に転嫁されていた消費税がいくらなのかわかるといった性格のものです。
数百万円という価格もある自動車を例にすれば、外税か内税かに関わりなく、自動車の小売価格には消費税は含まれていません。
なぜなら、輸入車は別として自動車業界はトータルとして消費税を納付していないどころか、逆に還付を受けているからです。国内向け販売の自動車ディーラーは消費税を納付していますが、ディーラーのトータル納税金額よりも、メーカーが受けている消費税還付金のほうがずっと大きいのです。
自動車業界トータルで結果的に消費税の還付を受けているということは、消費者が本体価格250万円+消費税20万円とか税込価格270万円といった金額を支払ったとしても、実のところ、価格に転嫁されている消費税は1円も含まれていないことを意味します。
じゃあ、何が転嫁されているのかと言えば、利益(マージン)です。「消費税の負担をお願いします」と言われて支払うお金は、実のところ、追加の儲けになっているわけです。(ディーラーというよりメーカーの儲け)
このような理解は「軽減税率」制度を考えるときにも重要です。
新聞社のように、消費税の算定でプラス要素である売上の乗数として「軽減税率」(5%)が適用され、マイナス要素である仕入の乗数として数値的に大きな標準税率(10%)が適用されるケースでは、算定結果の消費税額がマイナス(還付を受ける)になることもあるので、「軽減税率が価格転嫁される」といった論理は成り立ちません。
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