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消費税の税率が高くなればなるほど、「軽減税率」が導入されればなおいっそう、“ワーキングプア”が増加するという論理
http://www.asyura2.com/14/senkyo175/msg/141.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 11 月 23 日 20:13:37: Mo7ApAlflbQ6s
 


 今朝方二つのテレビ局(フジテレビ・NHK)で放送された政党討論会でも、非正規労働者の増加によるワーキングプアの問題が大きく取り上げられていた。

 安倍首相は、解散表明の会見やメディアから受けるインタビューなどでことあるごとに、アベノミクスで雇用者が100万人増えたことを実績の一つとして掲げているが、その数値は、正規労働者の減少(22万人)と非正規労働者の増加(123万人)の差し引きの結果であり、それほど胸を張って口に出せる内容ではない。

 雇用者増加の中身が芳しいものではないことは、雇用者数が増加する一方、フルタイム労働で年収が200万円を下回るワーキングプアが30万人も増加していることでわかる。
 非正規労働者の増加要因としては、賃金の増加が追いつかないなかで消費税増税があったことで家計のやりくりが苦しくなったことで、主婦層がパートタイマー就労に走ったことを上げられるほどである。

 多数派国民のことを、支配的地位にあるものたちがより良く生きるための“手段”や“道具”だと思っている(思っていなくてもそうする政策を進めている)主要政党が、いくらそれを口にしようとも、ワーキングプアを本気でなくしていく政策を遂行することはない。
 ワーキングプアを活用している張本人が、主要政党が消費税増税と法人税減税のセットで優遇しているグローバル企業だからである。

 これまでも何度か説明してきたが、ワーキングプアになってしまう一つの形態である派遣労働者は、派遣労働の適用緩和だけで増加してきたワケではない。
 中長期的に経営判断をするまっとうな経営者であれば、人材として将来の企業活動に貢献する忠誠心も技能獲得意欲も高い正規労働者のほうが望ましいと考える。

 派遣労働者の活用に走ってきた要因として、デフレスパイラルのなかで(派遣労働者の利用に走ることそのものがデフレスパイラルに拍車をかけているのだが個別企業は愚かとはいわないがやむなくそうする)、コストを下げようとした動きを上げることもできる。
 しかし、グローバル企業を中心に、02年から08年にかけての戦後最長の好況期においても、派遣労働者へのシフトは止まらなかった。その間そしてそれ以後も、グローバル企業は、内部留保を重ね、その額は300兆円に達しているのだから、派遣労働者にシフトしなければならないほどコストが逼迫していたとは言えないのである。

 このような動きから見えるのは、日本を牽引すべき代表的企業であるグローバル企業が、何より短期(年度)の利益を優先した経営に傾いていることである。

 派遣労働者の活用は、直接の雇用者よりも費用が安いことが表立った理由である。

 野党も与党も、ワーキングプア問題を語るとき、同一労働同一賃金(均等賃金)の実現を口にする。それは真っ当な政策であるが、そうなったからといって、企業が雇用継続に責任を持つ無期契約の直接雇用者は増加しないだろう。

 なぜなら、派遣労働者の増加は、消費税制度とも深く関わっているからである。

 端的に言えば、直接雇用の人件費が消費税の課税ベースであるのに対し、労働者派遣会社に支払う費用は仕入なので消費税課税ベースを少なくする働きをするため、ハケンにしたほうが税負担で得になる。

 スキルと勤務態度が同程度だという前提で、20億円の給与ないし支払いで500人に働いて貰うことを想定する。

 まず、直接採用であれば、給与の他に社会保険などの会社負担分が上乗せされることになる。直接雇用の人件費は、おおよそ、名目給与の1.5倍になるといわれている。今回のケースであれば、企業の人件費は30億円ほどになる。
 一方、労働者派遣会社に消費税転嫁分込みで20億円を支払うかたちであれば、派遣会社の取り分がいくらで労働者本人にいくら渡るかを含めて気にすることはない。派遣労働者は、社会保険などを自分で賄わなければならない。

 これだけでも差は大きいといえるが、将来の人材を育成確保するという観点や国民経済の低迷による売上減少ということを考えると、中長期での損得はあやういものがある。

 次に、この問題に消費税制度を加えて考慮する。

 この企業の付加価値(荒利)である「売上−仕入」が50億円だとする。

 直接採用のケースだと、50億円×8/108=3.7億円の消費税を納付しなければならない。雑ぱくな話だが、50億円から3.7億円の消費税を差し引き、さらに30億円の人件費を差し引くと16.3億円の利益が残る。

 一方、派遣労働者を活用しているケースだと、派遣会社に支払った20億円は仕入となるので、付加価値額50億円からその額を控除できる。
 それにより、消費税の課税ベースは30億円になり、納付すべき消費税額は、30億円×8/108=2.2億円になる。

 同じ売上実績であるにもかかわらず、派遣労働者を利用したほうが、直接採用のケースよりも消費税が1.5億円も少なくなる。
 さらに、付加価値から「消費税+人件費」を差し引いた残りの利益は、27.8億円と11.5億円も増加(得)する。


 ここまでは、消費税をまっとうに納付している企業に当てはまる話だが、「輸出免税」の特典がある輸出企業の場合は、企業収益にもっと大きく影響する。

 20億円・500人が輸出専門企業で労働に従事しているとイメージしてほしい。

 輸出で稼いだ50億円の付加価値は「輸出免税」なのでゼロ%課税である。
 さらに、仕入である労働者派遣会社に支払う20億円に8/108を乗じた金額が消費税から控除される。(直接採用の人件費だと控除されない)
 これにより、この企業は、消費税をまったく払わないだけでは終わらず、1億48百万円(20億円×8/108)の消費税還付を受けることになる。

 ということで、50億円の付加価値から「消費税と人件費」を差し引いた残る金額は、31億48百万円となる。


 怖いことに、この企業の消費税還付金は、消費税税率が高くなればなるほど多くなるのである。

 失業者やワーキングプアが多ければ、派遣会社に支払う金額が増える可能性は低いから、消費税が15%になったときも、20億円・500人で同じ額の付加価値を輸出で稼いだとする。

 消費税はむろんまったく納税しないで済むが、消費税還付金は20億円×15/115=2.6億円に膨らむ。
 手元に残る付加価値はさらに増えて、32億6千万円になる。

 多くの企業は10万円20万円の荒利(付加価値)を増やすために汗水垂らしているのに、この企業は、消費税の税率があがったことだけで付加価値を2.6億円も増やしたわけである。これを、濡れ手に粟、国家が主導する詐欺行為と言わずになんと言う。


 最初に持ち出した今朝のテレビ討論会で公明党の出席者(斉藤鉄夫氏)は「軽減税率」の導入を積極的に主張したが、他の政党は、賛成もしなければ、反対も口にしなかった。
 この間に「軽減税率」反対を公言した政党幹部は、私が知っている限り、橋下徹維新の党共同代表だけである。

 「軽減税率」は、何度も言うように適用された品目(必需品)の価格が引き下がるというようなものではなく、適用品目を事業対象とする事業者の消費税負担を軽減するものである。

 わかりやすく言えば、「軽減税率」と「輸出免税」は、適用対象と適用乗数(税率)が違うだけで、課税論理としては同じものである。

 「軽減税率」は、国内市場で販売される適用品目について「売上に係わる消費税額」を算出する係数を標準税率(消費税税率)よりも低くするもので、「輸出免税」は、輸出分の「売上に係わる消費税額」を算出する係数をゼロにするものである。

 「軽減税率」としてゼロ%が適用される品目であれば、その品目の「売上に係わる消費税額」はゼロ円となり、消費税的には、「輸出免税」と同じ扱いを受けることになる。

 このような意味で、「軽減税率」が導入されると、新聞社などが派遣労働者への切り替えを進めていく可能性が高い。
 そして、「軽減税率」と標準税率の落差が大きければ大きいほど消費税制度を通じて得られる利益が大きくなるため、適用で潤う企業は消費税のさらなる税率アップを強く望むようになる。

 「軽減税率」がどれほどあくどい制度なのかは、「軽減税率」がゼロ%のケースを考えるとわかりやすい。上述の輸出専門企業の説明がそのまま通用するからである。

 5%や8%といった「軽減税率」は、あくどさやえぐさを少し和らげるものでしかない。

 減らすという見得は切れないが、ワーキングプアの増加を抑制する一番の近道は、消費税の廃止なのである。
 消費税の税率引き上げや「軽減税率」の導入は、企業経営者の経営判断を派遣労働者活用に誘引するものであり、非正規労働者やワーキングプアの増加に拍車をかけるものである。


※ 関連参照投稿

「「軽減税率」はお好きですか?:“受益者”でもないのにお好きなら詐欺にご用心!」
http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/543.html

 

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コメント
 
01. 2014年11月23日 23:18:52 : QQN3T5KjLE
たとえば下のような提案とは正反対な方向に促進してしまう制度なんですね

「法人税を下げるならば、国内に投資して、国内の正規社員を雇えば減税するという投資減税を取ればいいと思います。」(菊池英博)

第180回国会 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会 第8号(参議院 2012年7月26日)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/180/0159/18007260159008a.html


02. るってん 2014年11月24日 16:49:00 : 0oYmUA0TMTqjU : RRk1W9KhEI
失礼ながら、説明が必要だと思う点として書かせて頂きます。
投稿の例では20億円ですが、例えば、派遣会社への支払いが直接雇用と同じ人件費の30億円であったとします。また単純に、親会社が支払う30億円そのままが派遣会社の売り上げだったとします。
派遣会社が支払う消費税分8%までプラスして30億円×1.08=32億4千万円支払えば、親会社は派遣会社を使っても、還付を受けた最終利益は変わらないとも、考えられるでしょう。
現実には、派遣料の支払いを値切るのでしょうが、もし値切らなければ還付制度があっても利益は変わらないのだから、消費税は派遣の増加に影響を与えないという反論も考えられます。
輸出する親会社が子会社に対して消費税分も含めて支払っているという反論と同系列の反論でございます。

話は変わって、下記の投稿に関して自分なりに考えると
日高見連邦共和国さんへ:消費税は付加価値税で法人課税の一種:社会保障制度との関係では何よりも親和性が劣る消費税
http://www.asyura2.com/14/senkyo175/msg/103.html

軽減税率を適用された企業は利益を増加させますが、その利益が、商品の値段を下げるとか、従業員の給料を上げるとか、還元されるとは限らない。そして、軽減税率を適用された企業は、消費税を負担しないか軽減されるわけですから、その他が負担している消費税を原資に、その企業に補助金を与える事と同視できると思います。この「補助金」が低所得者に回るように期待するのは、遠回りであり、確実でもないですよね。その意味で軽減税率は、低所得者対策としてふさわしくないと思いました。
ちなみに、この「補助金」がいずれ庶民に回るという考え方は、いわばトリクルダウン理論と同じだと思います。

また今さらかもしれませんが、一連の投稿で理解できたのは、赤字の企業まで支払うという点で、消費税は外形標準課税と同じという事です。赤字企業の負担で輸出企業を助成している形になっているのですね。
以前、ハンドル名つけてない頃、あっしらさんにお聞きましたが、円安に加えて、消費税で輸出企業に恩恵を与えて、さらに法人税減税の話も出てきて、政府は輸出企業や黒字企業ばかり助けて、一体どういうつもりなんでしょうね?


03. 2014年11月24日 18:59:07 : C3XNkvXnlg
横から失礼。
同じような話の出てくる鼎談があった。
企業や税理士なんかにとってはきっと当たり前のことなんだろうね。
下の引用で「消費税の納税額は売上×消費税率で試算される」というのははしょって言ってるのかな。

岩本氏: 消費税の納税額は売上×消費税率で試算されるので、いかに売り上げを減らすかが企業としては死活問題となる。その売上げから、実は派遣社員の費用というのは差し引くことができる。税理士の方は企業側への最も簡単な消費税対策として、まずは正規雇用を減らし派遣社員など外注するようアドバイスされるという話を湖東先生からお聞きしましたが、消費税には国内雇用と直結する大きな問題があるわけですね。
(堀茂樹×湖東京至×岩本沙弓 「現代社会の象徴「消費税」」 プロフェッショナル談 2014/05/22)
http://www.pro-dan.net/theme249.html


04. 2014年11月24日 19:50:58 : C3XNkvXnlg
03で「同じような話」といったのは不適切だった。
この記事のテーマは軽減税率の問題なのだった。
私はそれ以前の消費税の基本的なところでびっくりしている。
程度の低いコメントご勘弁のほどを。

05. 2014年11月27日 15:34:14 : aA2majOB8E
17年4月に軽減税率、増税前も社会保障充実=公明党マニフェスト
2014年 11月 27日 14:32 JST
http://jp.reuters.com/news/pictures/articleslideshow?articleId=JPKCN0JB09Q20141127&channelName=topNews#a=1
1 of 1[Full Size]
[東京 27日 ロイター] - 公明党は27日、衆院選に向けたマニフェストを発表し、2017年4月の消費税率10%への引き上げと同時に食料品などへの軽減税率の導入を目指すと明記した。

2017年度からの導入に向け、早急に具体的な検討を進めるとした。一方、消費税率再引き上げまでの間も年金、子育てなど社会保障の充実を進める考えを示した。

マニフェストでは、消費税率再引き上げまでの間に経済の腰折れリスクを回避し、デフレ脱却・経済再生に万全を期すとし、経済の好循環を確かなものにしていく考えを示した。緊急経済対策により中低所得世帯への家計支援や住宅取得支援などを行うほか、経済の好循環を創出するため、企業収益を賃金上昇や雇用確保につなげる環境整備を進めるとした。また、寒冷地や過疎地のエネルギーコスト負担軽減への支援を強化するとしたほか、原材料やエネルギーコスト高騰に苦しむ中小・小規模事業者のため、セーフティネット貸付・保証などを拡充すると訴えた。

一方、消費税率を引き上げる2017年4月までの間も、年金、医療、介護、子育て支援などの充実を着実に進める方針を示し、来年4月から予定されている「子ども・子育て支援新制度」を確実に実施し、可能な限り早く待機児童を解消するとしている。

東日本大震災からの復興に関しては、最優先で取り組むとし、2015年度までの「集中復興期間」以降についても、将来に向けた施策を展開できるよう必要な財源確保に努めるとした。

政治改革・行財政改革では、公職選挙法の改正で選挙権年齢を18歳以上に引き下げ、16年参議院選挙から実施するとしたほか、財政健全化を着実に進めるため、公会計改革による「財政の見える化」を進めていく方針を示した。

外交では日中、日韓関係の改善に取り組む考えを示し、経済連携では環太平洋連携協定(TPP)交渉で国益の最大化に努めるよう求めていくとした。

原発については、新設を認めず、40年運転制限制を厳格に適用すると明記。原発への依存度を可能な限り減らし、「原発に依存しない社会・原発ゼロ」を目指すとした。

(石田仁志)

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0JB09Q20141127?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+reuters%2FJPTopNews+%28News+%2F+JP+%2F+Top+News%29&sp=true


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