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今朝方二つのテレビ局(フジテレビ・NHK)で放送された政党討論会でも、非正規労働者の増加によるワーキングプアの問題が大きく取り上げられていた。
安倍首相は、解散表明の会見やメディアから受けるインタビューなどでことあるごとに、アベノミクスで雇用者が100万人増えたことを実績の一つとして掲げているが、その数値は、正規労働者の減少(22万人)と非正規労働者の増加(123万人)の差し引きの結果であり、それほど胸を張って口に出せる内容ではない。
雇用者増加の中身が芳しいものではないことは、雇用者数が増加する一方、フルタイム労働で年収が200万円を下回るワーキングプアが30万人も増加していることでわかる。
非正規労働者の増加要因としては、賃金の増加が追いつかないなかで消費税増税があったことで家計のやりくりが苦しくなったことで、主婦層がパートタイマー就労に走ったことを上げられるほどである。
多数派国民のことを、支配的地位にあるものたちがより良く生きるための“手段”や“道具”だと思っている(思っていなくてもそうする政策を進めている)主要政党が、いくらそれを口にしようとも、ワーキングプアを本気でなくしていく政策を遂行することはない。
ワーキングプアを活用している張本人が、主要政党が消費税増税と法人税減税のセットで優遇しているグローバル企業だからである。
これまでも何度か説明してきたが、ワーキングプアになってしまう一つの形態である派遣労働者は、派遣労働の適用緩和だけで増加してきたワケではない。
中長期的に経営判断をするまっとうな経営者であれば、人材として将来の企業活動に貢献する忠誠心も技能獲得意欲も高い正規労働者のほうが望ましいと考える。
派遣労働者の活用に走ってきた要因として、デフレスパイラルのなかで(派遣労働者の利用に走ることそのものがデフレスパイラルに拍車をかけているのだが個別企業は愚かとはいわないがやむなくそうする)、コストを下げようとした動きを上げることもできる。
しかし、グローバル企業を中心に、02年から08年にかけての戦後最長の好況期においても、派遣労働者へのシフトは止まらなかった。その間そしてそれ以後も、グローバル企業は、内部留保を重ね、その額は300兆円に達しているのだから、派遣労働者にシフトしなければならないほどコストが逼迫していたとは言えないのである。
このような動きから見えるのは、日本を牽引すべき代表的企業であるグローバル企業が、何より短期(年度)の利益を優先した経営に傾いていることである。
派遣労働者の活用は、直接の雇用者よりも費用が安いことが表立った理由である。
野党も与党も、ワーキングプア問題を語るとき、同一労働同一賃金(均等賃金)の実現を口にする。それは真っ当な政策であるが、そうなったからといって、企業が雇用継続に責任を持つ無期契約の直接雇用者は増加しないだろう。
なぜなら、派遣労働者の増加は、消費税制度とも深く関わっているからである。
端的に言えば、直接雇用の人件費が消費税の課税ベースであるのに対し、労働者派遣会社に支払う費用は仕入なので消費税課税ベースを少なくする働きをするため、ハケンにしたほうが税負担で得になる。
スキルと勤務態度が同程度だという前提で、20億円の給与ないし支払いで500人に働いて貰うことを想定する。
まず、直接採用であれば、給与の他に社会保険などの会社負担分が上乗せされることになる。直接雇用の人件費は、おおよそ、名目給与の1.5倍になるといわれている。今回のケースであれば、企業の人件費は30億円ほどになる。
一方、労働者派遣会社に消費税転嫁分込みで20億円を支払うかたちであれば、派遣会社の取り分がいくらで労働者本人にいくら渡るかを含めて気にすることはない。派遣労働者は、社会保険などを自分で賄わなければならない。
これだけでも差は大きいといえるが、将来の人材を育成確保するという観点や国民経済の低迷による売上減少ということを考えると、中長期での損得はあやういものがある。
次に、この問題に消費税制度を加えて考慮する。
この企業の付加価値(荒利)である「売上−仕入」が50億円だとする。
直接採用のケースだと、50億円×8/108=3.7億円の消費税を納付しなければならない。雑ぱくな話だが、50億円から3.7億円の消費税を差し引き、さらに30億円の人件費を差し引くと16.3億円の利益が残る。
一方、派遣労働者を活用しているケースだと、派遣会社に支払った20億円は仕入となるので、付加価値額50億円からその額を控除できる。
それにより、消費税の課税ベースは30億円になり、納付すべき消費税額は、30億円×8/108=2.2億円になる。
同じ売上実績であるにもかかわらず、派遣労働者を利用したほうが、直接採用のケースよりも消費税が1.5億円も少なくなる。
さらに、付加価値から「消費税+人件費」を差し引いた残りの利益は、27.8億円と11.5億円も増加(得)する。
ここまでは、消費税をまっとうに納付している企業に当てはまる話だが、「輸出免税」の特典がある輸出企業の場合は、企業収益にもっと大きく影響する。
20億円・500人が輸出専門企業で労働に従事しているとイメージしてほしい。
輸出で稼いだ50億円の付加価値は「輸出免税」なのでゼロ%課税である。
さらに、仕入である労働者派遣会社に支払う20億円に8/108を乗じた金額が消費税から控除される。(直接採用の人件費だと控除されない)
これにより、この企業は、消費税をまったく払わないだけでは終わらず、1億48百万円(20億円×8/108)の消費税還付を受けることになる。
ということで、50億円の付加価値から「消費税と人件費」を差し引いた残る金額は、31億48百万円となる。
怖いことに、この企業の消費税還付金は、消費税税率が高くなればなるほど多くなるのである。
失業者やワーキングプアが多ければ、派遣会社に支払う金額が増える可能性は低いから、消費税が15%になったときも、20億円・500人で同じ額の付加価値を輸出で稼いだとする。
消費税はむろんまったく納税しないで済むが、消費税還付金は20億円×15/115=2.6億円に膨らむ。
手元に残る付加価値はさらに増えて、32億6千万円になる。
多くの企業は10万円20万円の荒利(付加価値)を増やすために汗水垂らしているのに、この企業は、消費税の税率があがったことだけで付加価値を2.6億円も増やしたわけである。これを、濡れ手に粟、国家が主導する詐欺行為と言わずになんと言う。
最初に持ち出した今朝のテレビ討論会で公明党の出席者(斉藤鉄夫氏)は「軽減税率」の導入を積極的に主張したが、他の政党は、賛成もしなければ、反対も口にしなかった。
この間に「軽減税率」反対を公言した政党幹部は、私が知っている限り、橋下徹維新の党共同代表だけである。
「軽減税率」は、何度も言うように適用された品目(必需品)の価格が引き下がるというようなものではなく、適用品目を事業対象とする事業者の消費税負担を軽減するものである。
わかりやすく言えば、「軽減税率」と「輸出免税」は、適用対象と適用乗数(税率)が違うだけで、課税論理としては同じものである。
「軽減税率」は、国内市場で販売される適用品目について「売上に係わる消費税額」を算出する係数を標準税率(消費税税率)よりも低くするもので、「輸出免税」は、輸出分の「売上に係わる消費税額」を算出する係数をゼロにするものである。
「軽減税率」としてゼロ%が適用される品目であれば、その品目の「売上に係わる消費税額」はゼロ円となり、消費税的には、「輸出免税」と同じ扱いを受けることになる。
このような意味で、「軽減税率」が導入されると、新聞社などが派遣労働者への切り替えを進めていく可能性が高い。
そして、「軽減税率」と標準税率の落差が大きければ大きいほど消費税制度を通じて得られる利益が大きくなるため、適用で潤う企業は消費税のさらなる税率アップを強く望むようになる。
「軽減税率」がどれほどあくどい制度なのかは、「軽減税率」がゼロ%のケースを考えるとわかりやすい。上述の輸出専門企業の説明がそのまま通用するからである。
5%や8%といった「軽減税率」は、あくどさやえぐさを少し和らげるものでしかない。
減らすという見得は切れないが、ワーキングプアの増加を抑制する一番の近道は、消費税の廃止なのである。
消費税の税率引き上げや「軽減税率」の導入は、企業経営者の経営判断を派遣労働者活用に誘引するものであり、非正規労働者やワーキングプアの増加に拍車をかけるものである。
※ 関連参照投稿
「「軽減税率」はお好きですか?:“受益者”でもないのにお好きなら詐欺にご用心!」
http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/543.html
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