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次世代以外の野党が万歳を拒否する一方で、自民党は万歳をフライング(写真:Natsuki Sakai/アフロ)
「敵失」のおかげ?なぜか民主党に追い風 "アベノミクス解散"の行方
http://toyokeizai.net/articles/-/54146
2014年11月22日 安積 明子:ジャーナリスト 東洋経済
衆議院が21日、解散され、選挙戦が事実上スタートした。2012年12月以来となる衆院選は12月2日に公示され、同14日投開票の日程で行われる。
解散を待たずに、選挙に向けた動きは慌ただしい。19日には、みんなの党が解党を決議。その翌日には、同党所属の山内康一氏と中島克仁氏が民主党への入党を発表した。
小沢一郎氏が率いる生活の党から幹事長の鈴木克昌氏と小宮山泰子氏も離党して、民主党に合流することになっている。
鉄の結束を誇った小沢軍団が崩壊してしまうのか……。いやそうではないようだ。
■小沢一郎氏の笑顔の意味は?
本鈴が鳴った後の本会議場の廊下で、久しぶりに小沢氏を見かけた。小沢氏は地方紙の記者と談笑していた筆者の前で立ち止まり、にっこり笑っておどけたようにこう言った。
「女性のいるところで立ち止まっちゃったよ!」
小沢氏が極めて上機嫌なのには理由があった。筆者らは民主党の控室の前に立っていた。小沢氏はその中へ入る様子もなかったが、かつて自分が政権に導いた現場に立ち止まることで、おそらくは何かしらの感慨にふけっていたのではないだろうか。
本会議場のある本館2階の廊下は、野党議員と記者であふれていた。廊下で取材陣の質問に答える民主党代表代行の岡田克也氏を見かけた。勝算はあるのかと聞いてみると、一瞬の間をおいて「勝算はあります」と述べた。細野氏にも同じ質問をぶつけてみると、言葉を選びながら「久しぶりの上がっていく選挙だから、これ以上下ってはいけないと思う。大幅増を目指したい」と答えてくれた。
さらに踏み込んで述べてくれたのは笠浩史氏だ。「勝つために戦う。選挙の後に民主党中心の野党再編は十分にありうる」。
衆院が解散されたのは午後1時14分。開かれた扉から議員が次々と吐きだされると、記者たちが有力議員を取り囲んだ。もっとも多くの記者に囲まれたのは渡辺喜美氏だ。三谷英弘氏が渡辺氏をガードするように寄り添っている。渡辺氏の口から出るのは、解散よりも解党について。2日たった後も、その怒りは鎮まらないようだ。
「非常に残念な結末になった。しかしみんなの党のDNAは生かさなくては、地方議員や党員に申し訳ない。これからは(解党に)反対した議員を中心に、新党は選択肢のひとつと考えている。何をするかより誰と組むかが優先された今回の失敗を教訓にしたい」
しかし実際にはさほど仲間は集まってはいないようで、「政党要件を満たす5人も集まらない」と見られている。
■自民党議員の表情は暗かった
解散の後は各党が両院議員総会を開く。自民党の控室からは安倍首相の挨拶が聞こえてきた。
「全員が当選するための先導役になっていくことを約束する」
目標値を上げたのは、18日の会見で「与党で過半数」を責任ラインとしたことが批判されたためだろう。だがこの中でどれだけが戻ってくるのか。両議院総会が終わって控室を出る議員たちの顔は、気のせいかやや暗かった。
その後、民主党本部でポスター発表会と第一次公認発表に参加した。前職55名、元職75名、新人22名が公認された。田中真紀子氏の不出馬宣言が注目された新潟5区は空席になっており、蓮舫氏の出馬が噂された東京6区も未定のようだった。
6区は蓮舫氏ではなく、昨年の参院選で公認を取り消された大河原雅子氏になるようだ。この選択は手堅い。蓮舫氏が衆院に鞍替えすると参院補選が行われることになり、民主党は参院の1議席を失うリスクがある。一方で大河原氏の支持母体の生活者ネットワークは、昨年の東京都議選において世田谷区で2万1503票を獲得しており、6区で固定票を持っている。これに民主党支持票を加えると勝てる可能性が高まるというわけだ。
午後4時からの維新の党の第一次公認発表に参加しようと衆院第一議員会館に急ぐと、入口で見覚えのある女性が衛視に道を尋ねていた。
「目白へはどう行ったらいいですか」
たった今、新潟5区の公認を受けたばかりの生活の党の森裕子氏だった。おそらくはその報告と挨拶のため、田中邸に赴くつもりだろう。小沢氏は真紀子氏に事前に連絡をしているだろうか。院内で上機嫌だった小沢氏の表情が思い浮かぶ。
維新の党は大きな問題を抱えている。同党の第一次公認では、配布された一覧表の中に橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事の名前はなかった。彼らがいつ出馬表明するかについて、党代表代行兼国会議員団会長の松野頼久氏は「いつ結論を出すかはわからない」と述べ、不出馬もありうることを暗示している。
橋下氏が出馬するか否かは、今回の衆院選の大きな話題になっている。しかし、今年3月に大阪市長選と大阪府知事選をしたばかりだ。それなのに国政に転出し、またもや大阪市長選をせざるをえなくなることへの批判は根強い。仮に橋下氏が出馬をすれば、それこそ「大義がない」との批判が噴出するのではないだろうか。
一方で橋下氏らが出馬した場合、受けて立つ側の公明党からは余裕のコメントがあった。「我々には迎え撃つ準備は十分にできている。ただ粛々とやるだけだ」(公明党関係者)。静かな言葉の奥に、ちらちらと炎をのぞかせていた。
■空席が目立った首相会見
午後6時から開かれた総理会見では、安倍首相は「アベノミクス解散」と名付けた。懸命に争点を作ろうとしているが、カラ回りになりそうな予感もする。
実際にこの日の記者席は空席が目立っていた。数日前に会見をしたばかりであり、多くのメディアから「新味のある発言はない」と判断されたに過ぎないのだろうが、解散と同様に会見さえも大義がない、と批判されているようにみえなくもなかった。
突然の解散で、自民党は選挙への準備が十分ではない。党内からは今回の解散に反対する声が表面化していたこともあり、足並みの乱れが懸念される。一方の野党は、みんなの党は解党し、維新の党は大阪に不安要因がある。
こうなると、大きな問題を抱えていない民主党が、なぜか安定しているようにみえるから不思議だ。いわば「敵失」が相次いだことにより、意外に議席を大きく伸ばすかもしれない。
夕暮れの永田町は人影が消え、いちだんと寒さが身にしみた。今年もあと1月余りを残すばかりだが、年末までに政界の状況はがらりと変わっている可能性がある。
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