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2014年11月22日
本日のご挨拶のひと言は“解散総選挙”なのだが、争点がないようで、実はあり過ぎる選択選挙なのだと思う。何が秘密かさえ判らないブラックボックスだらけの特定秘密保護法。日本が積極的平和主義で海外派兵を行えるように、たかがヘッポコ内閣で閣議決定した集団的自衛権容認決定。貧乏人を益々貧乏にし、働く者をマネーの奴隷として、官制相場で株式だけ上げたアベノミクス。安倍晋三自身が「アベノミクス解散」と言ったのだから、安倍的なすべてを込々でゴチャマゼにして、YES・NOを選択してくれ、と言っている選挙なのだろう。つまり、安倍で良いのか悪いのか、それだけを考えればいい選挙だ。この際、自民・公明以外で当選可能性のある候補を探して、なに党でも構わないから、選択する選挙と云うことだ。皆様方の選挙区に、該当する候補者がいることを祈る気持ちになる選挙である。
『これからの日本の論点 日経大予測2015』と云うのが、正式な名称。内容紹介には…。
≪厳選26テーマで未来をつかむ! アベノミクスは踊り場を抜けられるのか。業界を超えた再編の波はどこまでひろがるのか。緊迫する国際情勢の行方は──。 日経の編集委員が大胆かつ丁寧に、それぞれの専門分野でこれからの動きを予測します。
論点01 正念場のアベノミクス、失速への懸念は?
論点02 電力自由化が加速する「エネルギー大再編」の行方
論点03 迷走続くTPP交渉、日本は試練を乗り越えられるか?
論点04 迫る耕作放棄地激増の危機。日本の農業の将来は?
論点05 人口「1億人維持」は達成可能か?
論点06 消費税率は20%台まで上がるのか?
論点07 「人手不足」は日本の働き方をどう変えるか?
論点08 日銀首脳も警鐘、異次元緩和に「意外な結末」?
論点09 経常赤字は定着するのか、日本にとっての意味は?
論点10 日経平均株価は2万円を超えるか?
論点11 「自動車の呪縛」を振り切った日本企業、M&Aは加速するか?
論点12 「ジャパン・イズ・バック」──企業業績は好調を維持できるか?
論点13 フラット化する自動車産業、グーグルカーのインパクトは?
論点14 次の本命「IoT」、市場はどこまで拡大するか?
論点15 「つながる世界」で生まれるネットビジネス、日本発の新サービスも
論点16 伸びるネット通販、「ショールーミング」の次のターゲットは?
論点17 コンビニ神話はいつまで続くのか?
論点18 東京五輪を観光立国にどうつなげるか?
論点19 安倍首相は「長期政権」を実現できるか、2015年は勝負の年
論点20 日本を待つ「3つの嵐」、ふりかかる米ロ大げんかの火の粉
論点21 漂流するEU、どこへ向かうのか?
論点22 泥沼のウクライナ介入、追い詰められるプーチン大統領
論点23 「アラブの春」後に続く中東の混迷、国家分裂の連鎖
論点24 揺れる新興国経済、BRICsはどうなる?
論点25 民営企業の時代の幕開け 中国経済大改革の行方は?
論点26 米国で勢い増す「長期停滞説」、成長のカギは?
上記、26の論点を眺める限り、チョッと読んでみたくなる。ところが、日経新聞は何を思ったのか、その本の一部を抜粋して電子版で配信していた。これが、困ったことに、官邸ヨイショ、関係官庁のレクチャーと米国市場原理主義勢力の思惑そのものを通り一遍になぞっただけで、大胆さなどは微塵もないのには驚いた。これが我が国の経済全国紙なのだから、絶望的気分になる。
欧米と言わず米欧と云う表現からも判るように、アメリカ一辺倒依存経済が最善だと思い込んで新聞を編集しているとしか思えない。歴史的俯瞰感覚がゼロで、この新聞社が信じる、米欧至上主義が永遠に続く前提ですべてが書かれているようだ。やはり、出版社が、それぞれの書き手に委ねた大胆予測から見ると、金太郎飴予測になっている。敢えて、こういう特集を組んだのは、推測だが、全然売れていないのかもしれない。
引用しておいてケチをつけるのは気が引けるが、本当だから致し方ない。しかし、いまでも、この日経新聞の記事やコラムを信じて経済界は動くし、そこに勤める、役員も幹部社員も、まずは日経を読むのだから、日本経済が飛躍的に変貌することはあり得ないだろう。結局、読んでみて、絶対に確実なことは、GPIFとTPPが今後の日本経済の牽引力だと言っている。つまりは、国家なんかいらない。マネーが自由に動ける環境整備が、日本に未来を決定づけると言っているようだ。まあ、時間のある方は、引き続き、以下引用の3本のコラムを読んでいただきたい。
≪ 正念場のアベノミクス、失速への懸念は? 〜日経大予測2015(1)
編集委員 滝田洋一
【2015年の日本と世界の経済はどうなるのか、日本経済新聞のベテラン編集委員の見通しをこのほど出版した『日経大予測2015』(日本経済新聞出版社)をもとに紹介する。】
アベノミクス、つまり安倍晋三政権の経済政策は失速するのだろうか。デフレ脱却と経済の好循環実現という目標をぶれずに追求し続けるかどうかが、カギを握っている。結論をいえば、「強い国家」を目指す安倍首相にとって、「強い経済」の回復という目標に揺らぎはない。2015年も日本はさまざまな乱気流には直面しようが、政府・日銀は経済の失速を防ぐために全力を尽くすとみられる。
■金融緩和はぶれずに続く
14年4月の消費税引き上げ後の中だるみを克服し、景気を再び押し上げていく施策を整理しておく必要があるだろう。まず、金融政策は引き続き重要な 役割を担う。アベノミクスの診断では、日本経済の低成長の原因は継続的なデフレにある。大胆な金融緩和で円安と株価上昇を引き起こし、企業業績を回復させ賃上げを実現させるところまではきた。
黒田日銀による金融緩和で際立っているのは、長期金利を抑え込むことだろう。政府と日銀が第一に狙っているのは実質金利(名目金利から物価変動を差し引いた正味の金利)の押し下げで、消費と投資を刺激することである。
カチカチ山の狸のように、家計や企業のおカネをいぶり出して、消費や投資に向かわせようというのが、異次元緩和のもくろみである。政府と日銀が2%の物価目標を掲げていることは、ぶれずに金融緩和を続けるという意味である。
と『日経大予測2015』(10月24日刊)で記したが、日銀は10月31日に追加金融緩和に踏み切った。景気や物価が足踏みしだしたためだ。「デフレマインドの転換が遅れるリスクを未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタム(弾み)を維持する」と、黒田総裁自身がフリップを使って政策意図を明言した。
市場は意表を突かれた格好だ。日銀ウオッチャーが考えていた以上に、黒田日銀は物価目標の達成に真剣だったことになる。円安・株高という市場環境を演出することは、デフレ心理を払拭するうえで、とても重要である。原油など国際商品市況の下落で日本から所得流出が減少することと併せて、 追加緩和は15年にかけて、冷酒のようにジワリと効果を発揮していくと思われる。
■消費再増税に慎重、景気対策には積極的
2本目の矢である財政政策については、2つの側面がある。ひとつは公共投資を柱にした財政支出。13年度には景気を押し上げ、14年度も引き続き景気の下支えを狙った。人手不足、つまり雇用の改善が物語るように、その効果は表れている。一方、もうひとつは財政の立て直しを狙った消費税の引き上げである。14年4月の8%に続いて、15年10月には10%とすることが法律で決められている。
忘れてならないのは、この消費税増税は本来のアベノミクスにはなかったメニューである点だ。なるほど、安倍首相も財政健全化を経済成長と並ぶ重要課題と位置付けている。ただし、まずデフレ脱却と経済の持続的成長を達成してこそ、税収も持ち直してくると確信している。「成長なくして財政再建なし」という立場といってもよい。
そうした安倍首相の視点からすると、民主党の野田佳彦政権のときに民主・自民・公明の3党で決めた消費税の引き上げは、不本意なものだ。14年4月の消費税引き上げにしても、デフレ脱却と経済の好循環を見極めるまで待つべきだった、という気持ちがあろう。消費増税後も景気の落ち込みが予想外に大きかったことで、「だから言わんこっちゃない」という気持ちが強いはずだ。
消費を立て直すために、家計の実入りを増やす必要がある。安倍政権の問題意識はここにある。14年12月に予定される消費税の追加引き上げの判断も、文字通り景気次第となる。
7〜9月期の国内総生産(GDP)がちゃんと持ち直せばよし。戻りが弱ければ無理をせず、増税時期を1年程度延ばす。ドイツの長期金利が一時1%をも下回るなど、経済活動の体温である長期金利が世界的に低下している現状は、そんな安倍流の自然体の判断と整合的である。
もちろん再増税を見送れば、基礎的財政赤字の名目GDP比を15年度には10年度の半分に減らすとの国際公約がほごになってしまう。このため7〜9月期の GDPの足取りが重いときには、補正予算を組み、景気を下支えしつつ、再増税に踏み切ることも考えられる。ただ首相の最優先課題が経済の立て直しにあり、景気に目をつむった再増税には反対の姿勢をとっていることは、念頭に置いておくべきだろう。
■減税+ガバナンス強化で企業を揺さぶる
第3の矢である成長戦略については、今がラストチャンスであると、安倍政権は考えている。14年6月に打ち出した成長戦略では、企業を動かすことに焦点を当てた。法人税減税や公的年金による株式運用拡大が明らかになるにつれて、市場の評価も次第に前向きになってきた。
国と地方を合わせた法人税の実効税率は35.64%(東京都)。その税率を数年内に20%台に下げるが、まず15年度から法人減税に乗り出す。1%の減税で企業の税負担は4700億円減る。日本企業の純利益は12年度で約30兆円なので、減税が実れば企業の手元に残るおカネは相当増える。
とはいえ、企業が浮いたおカネを抱え込んでは、次の成長の見取り図が描けない。そのおカネを投資、賃金、配当に回すように促すべきだ、という話になる。 14年の成長戦略(日本再興戦略)は「コーポレートガバナンス(企業統治)」の強化で、経営者の背中を押そうとしている。
麻生太郎財務相が「法人税を減税しても企業の内部留保に充てられては何の意味もない」と述べ、「コーポレートガバナンスが必要」と強調していることに注目したい。麻生氏は金融相も兼任するが、その金融庁がいま活発に動いている。
そうしたメッセージは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をはじめ、公的資金の運用改革にも通じる。公的資金が株式投資で成長資金の供給を増やす一方で、収益力向上を求める声を強めようというのだ。年金運用の受託者であるGPIFが、企業経営者との建設的対話を通じて企業収益を向上させるとともに、資金運用の実績を改善させようというのである。
企業のガバナンスはこれまでリベラルな学者や弁護士のおはこだった。ところが保守の理念を掲げる安倍政権が一丸となって、このテーマに取り組んでいるのが面白い。14年9月の内閣改造で、GPIF改革やガバナンス問題で積極的だった塩崎恭久氏が厚生労働相に就任した点に注目したい。
■株価を意識した政策運営が続く
潜在成長率が低下し成長の天井が意識されだした今こそ、情報技術を生かした合理化や省力化のための投資が欠かせない。2020年には団塊の世代が全員70歳代になる。超高齢化に備えた介護ロボットの開発など、需要を先取りするときでもある。
岩盤規制という名のしがらみと足かせを取り払い、企業の投資を引き出してこそ、低すぎる成長の天井を突破することができる。正規雇用と非正規雇用に分断している労働市場の流動性を高め、成長性の高い分野に働く人が円滑に移動できるようにすることも肝心だ。
こうした成長戦略が実際の成長率を高めるまでには、ふつう数年単位の時間を要する。その間の時間を買うために、安倍政権は株価が上向く環境を整えようとしている。成長期待が株高を促すばかりでなく、株価の上昇を通じて経済の先行きへの期待を担保しようとしている。
法人税減税やGPIFの株式運用拡大、株主還元を企業に促すコーポレートガバナンス強化、日銀による上場投資信託(ETF)の購入拡大などは、そのための手段と位置付けられる。
株価を気にしすぎることは邪道との批判もあるだろうが、今は長く続いたデフレ均衡から脱却できるかどうかの正念場だ。日銀の追加緩和、GPIFの株式運用拡大の決定、補正予算の検討――。本書で指摘した課題は、本書刊行後に現実のものとなった。着実に政策を実施するのは結構なことだ。政権が経済最優先の基本線を守り、引き続き機動的な政策対応を進めるならば、新たな15年も市場を味方につけることが可能だろう。
[10月24日発売の『これからの日本の論点 日経大予測2015』の一部を抜粋、再構成]
滝田洋一(たきた・よういち) 金融部、経済部、チューリヒ支局、米州総局(ニューヨーク)編集委員、論説副委員長を経て2011年から日本経済新聞編集委員。金融市場を足場に景気や経済動向を解説している。主著に『通貨を読む』『金利を読む』(いずれも日経文庫)など。
≪ 日経平均株価は2万円を超えるか? 〜日経大予測2015(2)
編集委員 三反園哲治
日経平均株価は2015年に2万円に迫る可能性がある。上場会社の業績が過去最高益にほぼ並ぶ水準にあるうえ、国内の年金マネーが株式市場に流入す るのが追い風だ。政府が成長戦略の柱として企業の「稼ぐ力」の向上を盛り込んだのをきっかけに、日本企業でも資本効率を重視した経営が広がりつつある。こうした企業の変革に着目し日本株を見直す海外投資家も増えそうだ。世界で地政学リスクが落ち着き、国内外の景気が安定するなど外部環境で好条件が重なれば、日経平均が2万円を超える局面もあるかもしれない。
■時価総額で過去最高の水準に
日経平均2万円という水準には、単なる節目という以上の意味がある。現状の株価水準と時価総額から推計すると、日経平均が2万円をつけると東京株式市場の 全体の時価総額は600兆円を超える。日経平均が史上最高値3万8915円をつけた1989年末の時価総額611兆円にほぼ並ぶ水準だ。
日経平均が史上最高値をつけた89年末と今では、東京株式市場の中身が様変わりしている。時価総額が国内2位のソフトバンクをはじめ、現在の上場会社の半数以上はバブル経済が崩壊した90年以降に上場した会社だ。「失われた20年」と呼ばれた長期低迷のなかでもマーケットの新陳代謝は進んできた。東京市場がピーク時の時価総額を回復することは、日本の株式市場がバブル崩壊をようやく克服し成長に向け新たなスタートをきることを象徴する。
予想PER(株価収益率)やPBR(純資産倍率)などの株価指標を日経平均が過去に高値をつけた時点と比べても、現在の株価指標に割高感はない。PERは 10倍台半ばという世界でも標準的な水準にある。内外の経済環境が大きく変わるようなショックが起きなければ、株式相場にはまだ上昇する余地がある。
■ITバブルからアベノミクスへ
先行きを考えるうえで、これまでの流れを振り返るのが有益だ。日経平均が2万円の大台を回復したのは2000年春が最後だ。当時はIT(情報技術)ブームが巻き起こり、ハイテク企業や通信会社が人気を集めた。しかし、米国でITバブルがはじけると日本株も失速した。
日本で株価が再び上昇トレンドに戻るには銀行の不良債権という構造問題の解決が不可欠だった。旧りそな銀行への公的資金投入をきっかけに03年から 株式相場が上げに転じたのも、日本の金融システムがいよいよ正常化するとの期待感が国内外で高まったことが背景だった。05年には小泉政権での「郵政解 散」をきっかけに日本経済が変わるという期待を海外投資家が抱き、株価の上昇にさらに弾みがついた。同時に世界景気も拡大しており、日本の上場会社は08 年3月期に過去最高益をあげた。そのなかで日経平均がつけた高値が07年夏の1万8261円だった。
ところが、米国で住宅バブルが崩壊し、08年秋にはリーマン・ショックが起きた。日経平均は2万円の大台を目前にして下落に転じたうえ、09年3月にはバブルが崩壊した後の最安値である7054円まで下げてしまった。
東日本大震災なども重なり株価がなかなか浮上するきっかけをつかめないなかで、12年暮れに登場したのが安倍晋三政権の経済・金融政策「アベノミクス」だった。円高から円安トレンドへの転換、デフレ経済からの脱却という政権の明確なメッセージに、ヘッジファンドなど海外マネーが飛びつき日経平均は13年 末、ほぼ6年ぶりに1万6000円台を回復した。
日本経済が大きく転換するかもしれないというマクロ材料に海外勢が反応した。そういう意味では2000年代半ばの株高と同じ構図を持つ。相場上昇をけん引した海外マネーは個別の企業ではなく日本株全体を買ったのだ。政策など大きな材料(イベ ント)を手掛かりに目先の利益を求める短期マネーも含まれていた。それだけに、14年上半期に相場が下がったのも自然な流れだった。
■公的年金と個人マネーが動き出す
株式相場の流れをこのように整理すると、日経平均が2万円を超えるための大きな条件が2つみえてくる。(1)短期の海外マネーに代わる中長期の買い手が登場する、(2)上場企業そのものが投資対象としての魅力を高めマネーを呼び込む−−この2点だ。
ひとつは株式需給の問題であり、もうひとつは株式価値をいかに高めるかという当然のポイントだ。 株式需給の面で最大の注目点は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を中心とした公的年金マネーだ。GPIFは約127兆円の運用資産を抱 える世界最大の機関投資家だ。これまでは国債に偏った資金運用を続けてきた。政府は成長戦略の一環としてGPIFのポートフォリオに占める株式の比重を高める方針を打ち出している。14年3月末時点で運用資産に占める日本株の比率は16.5%だった。
くわえて、一般に「3共済」と呼ばれる公的年金もある。国家公務員共済や地方公務員共済、私学共済の3つの運用資産を合わせるとざっと30兆円にのぼる。GPIFに歩調を合わせ3共済でも日本株を買い増すと市場では予想している。
そのGPIFは10月31日、日本株の運用比率を25%に高めるなど新たなポートフォリオ構成の目安を発表した。ゴールドマン・サックス証券はGPIFと 3共済を合わせた株式への追加投資額を次のように試算する。仮に5年間で積み増す場合は年1.7兆円、3年間の場合は年3.5兆円が東京株式市場に新規に流入するという。
さらに、日銀が上場投資信託(ETF)を買い入れることで実質的な株式購入が年3兆円に膨らむことも加えると、今後 3〜5年間で年4.7〜6.5兆円の株式への資金流入につながる。13年に年間で日経平均が6割近く上がった時の海外投資家の買越額が15兆円だったことを考えれば、その規模の大きさがわかる。
約1600兆円にのぼる個人マネーの存在も無視できない。14年からスタートした個人向けの投資 優遇税制であるNISA(少額投資非課税制度)を通じた資金流入が期待できる。NISAの枠を超え個人マネーが動き出す可能性も残る。個人金融資産の過半を超える874兆円が預貯金として眠っている。アベノミクスがうまく働き経済がインフレへ転換すると実感できるようになれば、個人投資家も証券投資に前向きになるだろう。
■企業の手元資金を引き出せ
株式の需給面では最後に、国内勢としては上場会社そのものが自社株買いを通じた日本株の買い手として注目だ。自社株買いは株式の需給を引き締めるだけでなく、実施する企業の資本効率を高め投資対象としての魅力を増す効果がある。企業が自社株買いをすると、市場に流通する株式数が減り1株当たりの価値がその分高まる。株主にとっては配当を受けたのと同じ効果を持つ。 海外投資家が自社株買いに注目する理由は、そうした株式の利回り改善効果だけではない。現金を手元にためこむことを優先してきた日本企業が、資本効率を高める経営に転換するシグナルとして海外勢は好意的に受け止める傾向がある。
象徴的な例が金属加工機械メーカーのアマダだ。期間利益の半分を配当に、残り半分を自社株買いにあてると14年5月に発表し、株価が急騰した。アマダは実質無借金で手元資金を豊富に抱え、株主配分にはそれほど前向きな会社とはみられていなかった。それだけに、変わる日本企業の代表例として海外の機関投資家は歓迎した。アマダのような会社が今後も相次ぎ出てくれば、日本企業に対する世界からの評価も高まり海外マネーをひき付けられるはずだ。
■日経平均2万円台も現実的に
足元の企業業績は最高益を記録した08年3月期に肉薄しつつある。08年3月期中の07年7月に日経平均は1万8261円の高値をつけた。足元でも最高益に近い企業業績が見込めるだけに、日経平均が1万8000円台を回復できるかどうかがひとつの節目として意識されている。
15年3月期に踊り場にさしかかった企業収益が15年にかけ再び上向く兆しが出てくれば、日経平均も1万8000円を上回る上昇トレンドに入る可能性がある。もちろん、アベノミクスの成果が出て国内景気が着実に回復を続けることが大前提だ。
投資家の不安心理を高めている世界各地の地政学リスクが落ち着き、米国の景気も順調に拡大し、欧州経済が深刻な低迷期に入らなければ、日経平均が15年中 に2万円台を回復する局面がくるかもしれない。ただ、裏を返せば株価は過去の例と同様に世界経済の動きの影響を受けやすいリスクは残る。もちろん円相場の 動きも見逃せない。適度な円安が続けば株価にもプラスだ。
[10月24日発売の『これからの日本の論点 日経大予測2015』の一部を抜粋、再構成]
三反園哲治(さんたぞの・てつじ) 株式市場や上場企業の財務などの取材経験が長い。バフェット氏ら海外の大物投資家の動向にも詳しい。1999年から4年間駐在したニューヨークではウォール街を中心に取材し、エンロン不正会計事件などを報道した。
≪ 日本を待つ「3つの嵐」、ふりかかる米ロ対立の火の粉 〜日経大予測2015(3)
編集委員 秋田浩之
■2015年、待ち受ける「歴史の時限爆弾」
「このまま2015年に突入したら、大変なことになってしまう……」。日本政府内で外交や安全保障政策にたずさわる当局者らが、こう危惧していることがある。大きな原因が、歴史問題である。
15年は危険な年である。日本に深くかかわる2つの歴史の記念日が控えているからだ。第2次世界大戦の終結70周年と、日韓国交正常化50周年である。
このうち、前者をめぐっては、すでに中国が大々的な反日キャンペーンの準備にとりかかっている。その姿勢がはっきりしたのが14年7月7日、習近平国家主席による極めて異例の行動だった。 この日は日中が全面戦争に入り込むきっかけとなった盧溝橋事件の、77年目にあたる記念日。盧溝橋近くで大きな式典が開かれ、習主席が演説したのだった。彼は名指しこそしなかったものの、日本をあからさまにけん制した。
「今日もなお一部の人々が歴史の事実を無視し、歴史の潮流に逆行し、侵略の歴史を美化し、地域に緊張を招いている」
何の区切りでもない「77周年」に、国家主席が自ら出席するのは近年、ほとんど例がないという。中国各部局では翌年の対日戦勝70周年に向けた反日キャンペーンの足音も高鳴っている。
習近平政権の思惑はどこにあるのか。中国外交に精通した複数の外交筋はこう解説する。
中国はアジアでの影響力を広げるため、日本を孤立させ、日米同盟を弱めたいと考えている。そんな戦略から70周年を機に、靖国神社参拝や日本の“右傾化”といった歴史問題を宣伝し、日本を強くたたこうとしている。
「軍国主義」を復活させ、戦後秩序に挑戦しようとしているのは日本という言説を広めれば、尖閣諸島問題でも中国の理解者を増やせると踏んでいる――。
もっとも中国が単独でキャンペーンを展開するだけなら、日本が深刻な窮地に追い込まれる危険はさほど大きくない。気がかりなのは、中国の反日キャンペーンに同調したり、便乗したりする国々が出てくるかもしれないことだ。
■韓国の出方が波乱の芽に
なかでも焦点になるの が、韓国の出方だ。民主主義国であり、米国の同盟国でもある韓国が中国と組み、反日キャンペーンを進めれば、米欧社会で一定の注目を集める可能性がある。逆に、韓国が中国と一線を画し、同調しなければ、中国のキャンペーンは空回りに終わる公算が大きい。
朴槿恵・韓国大統領はどちらの路線を選ぶのだろうか。この段階では、楽観、悲観両方のシナリオがあり得る。
日本の植民地支配からの解放を祝う、8月15日の「光復節」。この日の式典で、朴大統領は従軍慰安婦問題にふれ、こう訴えた。
「この問題が正しく解決されれば、15年の国交正常化50周年を両国民がともに祝える」
「(15年は)友情を背景に、両国民が新しい未来に向かう出発の年にしたい」
従軍慰安婦問題で日本に善処を迫る一方で、国交正常化50周年を機に、日本との関係を修復したいという意向もにじませた。いわば、半身の姿勢である。安倍政権がどこまで歩み寄るか、15年にかけてひとまず、様子を見るつもりだろう。
しかしながら、日韓国交正常化50周年で韓国内のナショナリズムが盛り上がれば、歴史問題で中国と連携しようという機運が高まる危険もある。
実際、複数の日韓関係筋によると、韓国は中国から、歴史問題で共闘するよう、猛烈な誘いをかけられている。習近平主席が14年7月初め、長年の慣例を破って北朝鮮よりも韓国を先に訪問したのも、そんな狙いからだ。中国側はこの訪問で、「中韓共同声明に『歴史問題』を明記するよう求めたほか、15年に対日戦勝70周年記念式典を共催するよう、強く働きかけた」(同関係筋)という。
韓国の行方に加えてもうひとつ、日本を揺さぶりかねない波乱要因がある。プーチン大統領が率いるロシアの動きである。
■対日圧力、ロシアが中国と組む日
尖閣諸島や歴史問題をめぐり、中国はロシアにも、再三にわたって対日共闘を要請してきた。ロシアから協力を得るため、中国は水面下でかなり大胆な取引も持ちかけている。中ロ関係に通じた外交筋は証言する。
「日本が尖閣諸島を購入した12年ごろから、中国は数回にわたり、プーチン大統領に秘密提案を持ちかけている。それは、北方領土問題で中国がロシア支持に回る代わりに、尖閣諸島問題ではロシアが中国を支持するというものだった」 1960年代末の国境紛争を受け、中国とソ連は事実上、天敵になった。中国はこのため、北方領土問題で日本の支持に回ってきた。この立場はソ連が91年に崩壊し、中ロが和解した後も変わっていない。だが、中国はこの原則を180度、転換。中ロが手を結び、領土問題で日本に対抗する構想をプーチン大統領に申し入れたのだった。
いまのところ、ロシアは中国の誘いには乗らず、頑として中立を保っている。最悪なのはロシアがこの中立策をやめ、中国と一緒になって日本に圧力をかけてくる構図だ。
プーチン大統領はいま、ウクライナ危機でオバマ政権と真っ向から対立し、厳しい制裁を科されている。米国は日本にも「ロシアにもっと厳しい制裁を科してもらいたい」との圧力を強めている。
米国に背中を押されるように、日本は8月5日、ロシア政府関係者らの資産凍結を柱とする追加制裁に渋々、踏み切った。日本批判を控えていたプーチン政権が豹変(ひょうへん)したのは、まさにその時だ。
「日ロ関係の全般に深刻的な影響が及ぶだろう」。ロシア政府は日本の追加制裁にこう警告し、8月末に予定されていた領土問題の日ロ次官級協議を延期した。
米国に押され、日本は9月にも新たな追加制裁を決めた。日ロ関係が冷え、日本は中国、ロシアとの2正面対立に追い込まれる危険が増している。
■日本を待ち構える3つの嵐
そんな展開が現実になったとき、日本は「3つの嵐」に苦しめられることになるだろう。
1つ目の嵐は、「歴史包囲網」である。ロシアが中国の誘いに乗り、15年、対日戦勝70周年を一緒に盛り上げるという展開だ。そこに韓国も加わり、中韓ロがそろって反日キャンペーンを仕掛ける可能性もある。
こうした事態になっても、米国や欧州がすぐには同調することはないだろう。ただ、日本が歴史問題で自ら墓穴を掘り、米欧諸国からも批判され、孤立してしまうリスクはある。
なかでも大きな地雷は従軍慰安婦問題だ。この問題が日本に与える影響を懸念する知日派の元米政府高官は語る。
「日本は、従軍慰安婦が強制されたかどうかといった事実関係にこだわる。だが、米欧世論は強制性があろうがなかろうが、従軍慰安婦は『性の奴隷の犠牲者』 と受け止めている。日本の政治家が釈明を繰り返せば、安倍政権は米欧からも批判を浴び、結局、中国の反日キャンペーンを利することになる」
2つ目の嵐は、領土問題だ。中ロないしは中韓ロが歴史問題で協調すれば、領土問題でも連携する公算が大きい。領土と歴史はいわば表裏一体の関係にあるからだ。尖閣諸島、北方領土、竹島問題について、3カ国がそれぞれの立場を支持し合うという構図である。
3つ目の嵐は、中ロの軍事協力である。中国は東シナ海や南シナ海での米軍優位を崩すため、軍備増強を加速している。
中国がいま、いちばん欲しがっているのが、ロシア製の最新兵器であるステルス戦闘機SU35と地対空ミサイルS400である。14年5月下旬にプーチン大 統領が訪中した際、2つの売却で合意するとの観測もあったが、結局、ロシアは合意を見送った。条件が折り合わなかったことに加えて、安倍政権への一定の配慮もあるとされる。
ロシアと日米が決定的に対立し、中ロ接近に拍車がかかれば、こうした日本への遠慮は必要なくなる。日本の安保担当者は顔を曇らせる。
「ロシアが孤立し、中国に一段と接近すれば、玉突きで日本にも多くの火種がふりかかってくる。特に心配なのが、ロシア製の最新兵器がこれまで以上の勢いで、中国に流れ込むことだ」
世界の危機や紛争によって米中ロの力学がどう変わり、日本にどんな影響が跳ね返ってくるのか。地球儀を片手に考えると、決して安心できない現実が待っているようにみえる。
秋田浩之(あきた・ひろゆき) 1987年、自由学園最高学部卒、日本経済新聞社入社。政治部編集委員兼論説委員。外交や安全保障政策担当。1994-98年北京、2002-06年にワシントン支局。ボストン大学大学院修了(91年)。著書『暗流 米中日外交三国志』 ≫(以上3コラム、日経新聞電子版)
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