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さきほど、安倍首相は憲法第7条が規定する天皇の国事行為を濫用した憲法違反の衆議院解散を断行した。
12年暮れの選挙結果をどう受け止めるかは様々だろうが、行政府の長である内閣総理大臣が、国民有権者の判断によって選出された衆議院議員を自身の勝手な判断で任期半ばに失職させるという統治行為は許されざる暴挙以外のなにものでもない。
内閣総理大臣は主権者である国民に直接選ばれた存在ではないが、国権の最高機関である国会の議員は、国政の場で唯一主権者である国民に直接選ばれた存在である。内閣総理大臣(内閣)は、憲法の規定に従えば国会に劣る政治権力的存在なのである。
国民の意思表明の結果を勝手に捨て去ることを意味する憲法第7条のみに依拠した衆議院解散は、内閣総理大臣が国権の最高機関に成り上がることに等しい。
憲法問題はともかく、「消費税増税延期」や「アベノミクスの継続」の信を問うことを目的とした今回の衆議院解散は、自民党内からさえそういう声が出ているほど、大義や必要性が疑問視されている。
「消費税増税延期」判断については、消費税増税法案に「景気弾力条項」があるとともに来年10月に10%に引き上げるべきではないことについては野党も共有していることを考えれば解散の大義にならない。
「アベノミクスの継続」も、12年総選挙の自民党公約に書かれている内容とほとんど同じ政策なので、野党や識者から反対や異論があるとしても、わざわざこの機会に国民に信を問う必要がないものである。
安倍首相も、不必要な解散・総選挙だと自覚しているらしく、税制の変更など国民生活に深く関わる問題は国民に信を問うのが議会制民主主義の王道である説明しつつ、12年の消費税増税法案での三党協議では時の与党民主党に対し“事前”に国民の信を問う解散を求めたと“ウソ”をついている。
(“ウソ”の具体的説明は別途投稿するつもりだが、自民党が求めたのは“消費税増税法案成立後の解散・総選挙”である)
安倍首相の恥ずべき“ウソ”を民主党のメディアも放置しているのだから日本の政治は笑うしかない。
ただ、自民党総裁が「税制の変更など国民生活に深く関わる問題は国民に信を問うのが議会制民主主義の王道」と見得を切ったのだから、これからは、公約に掲げていない「国民生活に深く関わる問題」を新しく政策化するときは、憲法の規定に従う形式で必ず解散・総選挙を実施すると期待しておこう。
前段が長くなったが、安倍首相が、そういう性格の解散・総選挙まで断行してまで、自分が内閣総理大臣を務める政権をあと4年間は延命させる条件を手に入れようと思う目的は何かという説明に入る。
まず、解散が今というタイミングで行われるのは、今後の景気見通しが主たる理由である。今後時間が経過すればするほど経済の悪化が明確になり、安倍氏が政権を継続できなくなる可能性も出てくると判断したからである。
来る総選挙で自公が多数を握れば、安倍氏が踏ん張るなら、あと4年、18年11月までは首相で居続けることができる。但し、自民党総裁であり続ければという条件がつく。
来年9月に自民党総裁選が行われることになっているが、有力な対抗馬といわれている石破氏も立候補しないで、安倍氏が総裁・総理を継続すると考えている。
安倍首相が任期中に必ずやり遂げると宣言した政策が二つある。
それは、「デフレからの脱却を果たし日本経済を成長軌道に戻すこと」と「北朝鮮拉致問題の解決」である。
その他、原発問題については、新規建設及び増設は行わないということを前提に、再稼働を安全(危険)面で慎重に考えながら進めるという感じで、原発推進を最重要テーマとしているわけではない。
特定秘密保護法や集団的自衛権憲法解釈問題も、日米間で長年の懸案になっていた課題だから、従米政権としてはやらざるを得ない課題であり、どちらかと言えば、同じ従米政党である民主党が政権時にやらなかった(できなかった)“安全保障政策”の積み残しをさっさとやってしまったと評価してもいいものである。
私は日米安保廃棄派だが、日米安保体制を是とする限り、特定秘密保護法と集団的自衛権に関する憲法解釈変更は避けて通れなかったのである。
幸か不幸か、日本経済はデフレからの脱却を果たした。
脱却を果たしたというより、デフレのままでは経済活動が回らない悪条件に移行したことでデフレが終わった。日本は、ある意味では心地よかったデフレ状況にもう戻れないのである。
安倍首相や黒田日銀総裁は、今なお、ようやくデフレ脱却の見通しがついてきたのでデフレに戻るようなことがあってはならないと説明し、自分たちの政策を継続することを正当化している。
しかし、今の日本で危惧すべきことは、インフレが経済成長に結びつかず逆にインフレが国民生活を脅かすとともに経済活動を低迷に陥れるスタグフレーションである。
何度か書いてきたが、生産性を上昇させる唯一の道である設備投資が衰退し今後も円安状況が続く日本は、もう長期にわたるデフレに戻ることができないのである。
膨大な生産設備を重要な基礎とする資本制経済は緩やかなインフレーションが望ましいと考えているが、今の日本は、円安と消費税増税で生まれたインフレ様相を活用できずにスタグフレーションに落ちていくのではと危惧している。
安倍政権は、「デフレからの脱却を果たし日本経済を成長軌道に戻すこと」のうち、「デフレからの脱却は歪んだ経緯(円安傾向)で果たしたが、成長軌道に戻すことはできていないと評価できる。さらに、今後アベノミクスを継続しても、日本経済は成長軌道を確立することはできないと断じる。
アベノミクスの「第1の矢」と「第2の矢」を継続することに異論はないが、経済成長について政府ができることは呼び水を注ぐことや条件を整えることだけで、実現するのはそれぞれの才覚と努力で経済活動を行っている企業である。
“呼び水の使い方”や“整備すべき条件”がどういうものなかを見極めることが課題である。それらは、12年総選挙の自民党公約としても打ち出されている公共投資の今以上の増大や規制緩和推進や女性の活用ではない。
これまでに打ち出していない手法や政策を実現したいというのならわかるが、今回の解散で新たな手法や政策は説明されていないから、解散の目的がアベノミクス継続による「デフレからの脱却と日本経済の成長軌道への復帰」だとは考えられない。
そうなると、残る本当の解散=政権延命目的は、安倍首相が会見やメディアのインタビューでまったく触れていないが、残るもう一つの使命である「北朝鮮拉致問題の解決」ということになる。
そう、今回の解散は、「北朝鮮国交正常化時間稼ぎ解散」なのである。
そして、野田首相による12年11月の解散は、「日中関係改善のための首相交代解散」だった。
日本政治は、2回続けて外交問題を解決するために解散・総選挙を行うのである。
外務省の伊原局長が、10月下旬に、「拉致被害者の調査が最優先」という02年来の主張を伝えるためにわざわざ訪朝した。
あの訪朝は、誰に聞いても、“子どもの使い”にさえなっていない意味のない低劣で酷いものだと答えるだろう。
安倍首相を信頼し最後の決定的な期待を寄せていた拉致被害者家族会が、激怒したのは当然である。
伊原局長にあの訪朝をさせると決めた時点で、安倍氏及び安倍周辺は解散・総選挙も決めたと思っている。
安倍首相は、任期中に拉致被害者を取り返すと何度も表明してきた。そして、それは、家族会や国民向けの約束にとどまらず、国際公約しかも対米公約にもなっている。
安倍首相が就任まもなくの13年2月下旬に訪米してオバマ大統領と会談したとき、いくつかの合意や約束をした。
それらのなかでも破格の約束と言えるのが、「日朝国交正常化の達成」である。表現としては、「北朝鮮による拉致問題について,安倍総理より,自分の政権のうちに完全に解決するとの決意を表明」というものである。
表面的な話としては、そのような決意表明を米国の大統領が聞いたところで意味がないことは自明である。
安倍首相が米国大統領にそのような決意をわざわざ表明するかたちで約束しなければならなかったワケは、拉致問題の解決と日本国内向けに気を遣った表現にはしているが、その意味するところは「拉致問題解決→核やミサイルの問題解決→国交正常化」を果たすというものだからである。
※ 参考資料
外務省「日米首脳会談(概要)平成25年2月22日」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_abe2/vti_1302/us.html
02年の小泉訪朝そのものが、米国支配層の要求に基づくものであり、それから10年以上経過したにもかかわらず日朝平壌宣言が履行されていないことに米国支配層はいらだっている。(米国支配層は、朝鮮半島の分断解消を20年までに行いたいと表明している)
6ヶ国協議が中断しているのも、日朝国交正常化交渉が進展しないなか協議をやっても意味がないからである。北朝鮮に核開発やミサイル輸出を断念させるための“カネ”を負担することになっている日本が身動きできない状況に陥っていれば交渉しても意味がない。
07年の代表質問直前の政権投げ出し遁走劇を演じた安倍首相は、国会議員もだが、絶対になってはならない内閣総理大臣に再び就任した。
周辺や自民党有力者もそう思っているし、安倍氏自身も、自分が首相になってはいけない政治家であることぐらいわかっている。
それでも、日中関係が急激に悪化した12年に再び首相の座についたのは、安倍氏でなければ達成できない外交課題がぶら下がっていたからである。
だから、私は、安倍首相は内閣総理大臣の座に執着はしていないとみている。安倍氏は、やらなければならない政治的課題を果たしたら職を辞すだろうと思っている。本人が続けたいと思っても、使命を果たした安倍氏が続投することを回りが許さないだろう。
安倍氏は、強硬な愛国主義の保守政治家だと思われている。それゆえ、対外政策に対し口うるさい右派的勢力からも強い支持を受けている。拉致被害者家族会の方々も、そういう安倍氏だから、北朝鮮に屈することなく拉致問題を解決してくれるだろうと信じている。
日中関係を改善することや日朝国交正常化を果たすという外交課題は、中国や北朝鮮の言動やそれを伝える日本のメディアを見聞きしている国民の意識情況を考えれば、極めて困難な政治テーマだと言える。
端的に言えば、社民党・共産党的価値観を有する政権がそれをやれば国民多数派から猛反発を受け政権は瓦解するだろう。鳩山元首相的アプローチでもあざ笑われているくらいである。
今の日本で、北朝鮮との国交正常化に、身に火の粉を浴びながら火中の栗を拾う覚悟で臨むことができるような覚悟と胆力をもった政治家はなかなかいないと思っている。
醜悪な遁走劇を演じた安倍氏に覚悟と胆力があるとは思っていないが、安倍氏は、火の粉を被っても逃げられない宿命を背負っているから、やり遂げるしかない。
米国も中国も北朝鮮も、北朝鮮に多大な恩義がある安倍氏が、この問題から遁走できないことをわかっている。
拉致被害者家族会にとっては辛く悲しいことだが、拉致被害者の救出はまだまだ時間がかかるようである。
拉致被害者家族会も指摘しているように、北朝鮮権力機構が管理下に置いている拉致被害者の今がわからないというバカな話はない。新たな調査の必要なぞないのである。
02年の小泉訪朝時点ですでに拉致被害者の現状がわかっていたのである。それもわからずに日朝平壌宣言に署名したとしたら、日本は世界の物笑いのネタになるだろう。
安倍首相には、しかたなくやるのではなく、愛国保守の政治家を演じているときくらいの“覚悟と胆力”をもって、対北朝鮮外交を推進して貰いたい。
国民に対してこれまで説明してきたことと違うニュアンスで説明しなければ先に進めないのなら、事前に家族会にきちんと説明したうえで覚悟を決めてそうすべきである。
安倍首相が敗戦国日本に残された最後の処理である日朝国交正常化を早期に達成することを強く願っている。
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