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国家公安委員会公式サイトより
京大寮へのガサ入れと中核派摘発に「公安はどこまでヒマなんだ」と失笑
http://lite-ra.com/2014/11/post-646.html
2014.11.21. リテラ
寮の敷地内になだれこむものすごい数の機動隊員、それに対して抵抗の声を上げるヘルメット、マスク姿の学生たち……。警視庁公安部による京都大学熊野寮ガサ入れのニュースに驚いた読者も多いのではないだろうか。
報道によれば、その10日ほど前に東京・銀座のデモで中核派の京大生3人が公務執行妨害で逮捕されたことを受けての家宅捜索らしいが、動員された機動隊員はなんと120人! ワイドショーやスポーツ紙もこのニュースを大きく取り上げ、「京大の熊野寮というのは中核派の拠点になっている」「プロの活動家が入り込んで、何も知らない学生を洗脳している」などとしたり顔の解説を加えた。
新左翼過激派なんて化石のような存在だと思っていたのに、まさかこの時代にまだ寮を占拠して公安からマークされるくらいの勢力をもっているとは……。さすがは京大!と妙なところで感心していたら、少し取材しただけで、この驚きは脱力感に変わった。関西在住の公安問題に詳しいジャーナリストがこう笑う。
「そんなわけないじゃないですか。たしかに京大は他に比べるとまだ新左翼の活動は活発だけど、それでも中核派なんて数えるほどしかいない。公安も熊野寮が中核派の拠点だなんて誰も思ってないですよ」
最近まで熊野寮に住んでいた京大OBもこの話を裏付ける。
「たしかに熊野寮の自治会は中核派が執行部を握っていますが、実際に中核派の学生は400人定員の寮の中で10人に満たないんじゃないか。執行部だって、年によっては中核派が選挙に落ちて一般の学生が代表になることもある。自治寮といっても今はもうユルいもんですよ。しかも、熊野寮には京都府警が嫌がらせでしょっちゅうガサ入れをしていますから、危険なものなんて出てくる訳がない」
実は当日、機動隊委員と対峙していたヘルメット姿の学生たちも、多くは中核派じゃなかったらしい。
「京大の中核派はふだんヘルメットやマスクをつけていないですからね。当日は京大のもうひとつの自治寮である吉田寮の連中が応援にきていたんですが、ヘルメットにマスクやサングラスというのは、彼らが一種のパフォーマンスとしてやってた可能性が高いんじゃないかな。吉田寮は執行部も新左翼とは何の関係もなくて、ただの変人がいっぱい住んでるんですが(笑)、昔からガサ入れがあると、お祭り気分でああいうパフォーマンスをやるんです」(前出・熊野寮OB)
ようするにこの程度のものに、警視庁公安部がわざわざ東京から大挙して出向き、あんな大仰な捜索をしたというわけだ。公安ってどこまでヒマなんだよ!といいたくなる所業だが、この背景にはお察しの通り、例の“京大版ポポロ事件”がある。
この事件は、デモの翌日の11月4日、京都府警の公安警察官が京大の構内に無断で立ち入っているのを学生に見つかり、取り押さえられたというもの。新聞やテレビでも大きく取り上げられ、警察官のケータイにLINEで「離脱しろ!」というメッセージが流れていたことまでが報道された。
公安警察としては大失態をおかしたわけだが、今回の捜索は完全にその報復措置だったらしい。今度は警視庁の公安担当記者が語る。
「公安警察官が学生に取り押さえられるという前代未聞の事態に、警察庁警備局が激怒。警察の威信をかけて中核派を叩くという方針を打ち出したらしい。ただし、京都府警がやれば露骨すぎるし、また失敗しかねないというんで、警視庁公安部に捜索するよう指示したみたいだ。名目はデモでの公務執行妨害事件の関連先捜索でしたが、あの逮捕そのものが微罪だから、普通ならありえない捜査だよ」
ここまでくると、公安の弾圧だ!と叫ぶのもばかばかしくなるようなお粗末さだが、しかし、これが今の公安警察の実態らしい。今回にかぎらず、最近の公安の捜査はほとんどが何の役にも立たない、ただの予算の無駄遣いにすぎなくなっているのだという。
「中核派なんて武装闘争路線を捨ててから久しく、活動家もかなり少なくなっているのに、まだ警視庁だけで100人近く、全国では1000人を超える警察官を担当に配置したまま。他も同じで、共産党や労働組合にかなりの人員をさいている一方、最近、過激な動きをしている在特会をはじめとする極右組織に対してはほとんど人員や予算をつけず、放置している。お役所体質丸出しで、まったく実態とかみあっていないんだよ」(前出・警視庁公安担当記者)
ようするに、公安は自分たちの予算を守るために、新左翼セクトの小さな事件を必死で大きく見せて大々的な捜査を展開しているだけらしい。
だが、安倍政権下ではこの公安警察の体質は改革されるどころか、さらにエスカレートしていくだろう。何しろ、安倍首相、山谷えり子国家公安委員長と、在特会などの右派組織に近く、その一方でありもしない左翼過激派の謀略論をふりまくのが大好きな政治家が組織のトップに立っているのだ。警察官僚がこの空気を忖度しないわけがない。
実際、朝日新聞の誤報問題の後、慰安婦報道に関わった朝日OBが教員をつとめる帝塚山学院大学、北星学園大学に対して行われた爆破テロの脅迫事件では、公安はほとんど捜査らしい捜査をしていない。そして、対照的に京大の捜査はさらに続行する予定だという。
「“ポポロ事件”のほうも京都府警が立件するつもりらしいですね。ただし、取り押さえられた捜査官がそのとき『休暇中だった』と嘘をついてしまったので、公務執行妨害でなく、傷害罪で捜査を進めているらしい。とても公判にたえられるとは思えませんが、それでもいいみたいですよ」(前出・関西在住のジャーナリスト)
日本は警察国家というより、幼稚な陰謀国家になりつつあるらしい。
(野尻民夫)
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