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増税派に勝つために解散を選んだ安倍首相
増税派たちは「解散」で総崩れ 安倍首相が削除表明した「景気条項」とは何か
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41161
2014年11月21日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 :現代ビジネス
安倍晋三首相が衆院解散と同時に、増税論議の根拠になった法律から景気条項を削除する考えを表明した。
この条項は景気次第で増税を先送りできる理由の1つになっているが、だからといって首相が決断すれば、それで先送りが決まるというわけでもない。ちょっと分かりにくい景気条項とは何か。あらためて論点を整理しよう。
■増税停止に必要な「所要の措置」とは何か
まず景気条項はどう書かれているのか。それは増税を決めた法律(正式には「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」)の附則第18条にある。以下のようだ。
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第18条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度(2011年度)から平成32年度(20年度)までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
2 略
3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前2項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。
ーーーーーー
焦点は3の最後にある「その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」という部分だ。一般には「安倍首相が増税先送りを決めれば、先送りが決まる」と思われがちだが、それは誤解である。増税を本当に停止するためには、条文にあるように「所要の措置」を講じなければならない。
では「所要の措置」とは何か。それがすなわち「増税先送り法」である。つまり本当に先送りしようと思ったら、新たに先送り法案を国会で可決成立させなければならない。首相が「先送りします」といっただけでは、まだ口約束に過ぎず、これから総選挙を経て新たな国会構成の下で先送り法案を成立させる必要がある。だから、もしも国民が増税を望むなら、増税派議員をたくさん選んで先送り法案を葬る、あるいは法案提出そのものを止めればいい(そうはならないだろうが)。
■自民党議員の半分以上は増税派!?
いま与党が衆参両院で多数を握っている。だから野党や増税派マスコミは景気条項を理由に挙げて「首相が先送りしたいなら、いまの国会で先送り法案を可決させればいいじゃないか。何も解散する必要はない」と訴えた。一見、もっともらしいが、きれいごとの建前を言っているだけだ。本音は別にある。ずばり言えば、安倍内閣を潰したいのである。どういうことか。
まず、与党の中にも増税派はたくさんいた。私の見立てでは、自民党議員の半分以上が実は増税派だったのではないか。たとえば野田毅税制調査会長は「絶対増税だ」とテレビカメラの前で何度も強調したし、麻生太郎財務相もそう、谷垣禎一幹事長だって元祖「消費税10%論者」である。
民主党は、もともと野田佳彦政権のときに増税法を作った張本人だから増税派だ。重要なのはマスコミである。一貫して増税反対だったのは東京新聞くらいで、あとは全部増税派だ。表で目立たないようにしながら、国会議員やマスコミの記者、論説委員、テレビに登場する評論家やコメンテーターたちを絨毯爆撃して増税を訴えていたのが財務省である。
それは、政府が意見を聞いた有識者たちの7割が増税に賛成だったことからも分かる。有識者の1人は「財務省の説明攻勢がものすごくて大変だ」と私に語っていた。世論調査では7割が増税反対なのに、有識者たちはまったく正反対だった。「有識者」なる人たちが一般の世論を反映していない証拠である。
さて、そんな状況で安倍首相が先送りを言い出せば、どうなったか。間違いなく、永田町を揺るがす大政局になった。結果はどうかといえば、安倍首相が負けて先送りを断念せざるをえない状況に追い込まれた公算が大きい。そのくらい財務省という役所は力がある。
先送りを断念せざるを得ない状況に追い込めば、財務省と増税派の大勝利である。そうなれば、首相の求心力はガタ落ちし、景気は崖から転落状態になる。来年は集団的自衛権の法制化どころではなく、最終的には政権崩壊につながっただろう。その後に迎えるのは増税派政権である。それが財務省と増税派マスコミの究極的な狙いだったのだ。
ギリギリの状況になってから、首相が解散に訴える手はある。だが、そういう展開になれば、増税派マスコミは「安倍の追い込まれ解散」と批判したに違いない。それでも勝てる可能性はあるが、安倍批判の大合唱の下で追い込まれた解散では、あきらかに分が悪くなる。だからこそ、先手を打ったのだ。
■「有識者」ではなく、「国民」が増税判断できる状態に
結果はどうだったか。「解散」の2文字の前に、増税派は総崩れ状態になった。自民党議員は言うに及ばず、なんと民主党さえも先送りを容認してしまった。理由は明白だ。国民の7割が増税に反対する中で、選挙カーの上から増税断行を唱えたら、とてもじゃないが当選がおぼつかなくなるからだ。典型的な「オポチュニスト(日和見主義者)」の行動である。
増税に賛成していた民主党支持母体の日本労働組合総連合会(連合)は、はしごを外された思いだろう。それも仕方がない。庶民の暮らしを守るはずの労組が増税賛成を唱えたこと自体が間違っていたのだ。19日午後、東京の日比谷公園では労組の集会とデモがあったが、宣伝カーは「消費増税ハンターイ!」と大音量で訴えていた。いまや労組勢力自体が分裂している。
安倍政権は解散に打って出ることで、与野党に深く根を張っていた増税勢力を切り崩し、先送りを確実にした。それは良くないことか。目的を達成したのだから、まず政権の勝利である。しかも、ここがもっとも重要なのだが、最終判断は国民に委ねられている。それは良くないことか。良くないどころか、それこそ民主主義そのものだ。国民に最終判断が委ねられなかったら、有識者の判断が勝ったかもしれないのだ。
増税派マスコミが「大義なき解散」と批判するのは、増税をめぐって大政局になり、安倍政権が崩壊するシナリオが消えてしまったのが悔しくてならない、という気分を反映している。彼らは安倍政権打倒が最終目的なのだ。ところが先手を打って解散を宣言され、安倍首相と戦うはずだった増税派議員たちは次々に膝を屈してしまった。それが腹立たしいのである。
今回の解散が「党利党略だ」という批判もある。これには「おいおい、大丈夫か」と言いたくなる。政治に党利党略以外の駆け引きがあるか。与党も野党も党利党略で行動するのは当たり前だ。解散で最終判断を下すのは国民である。国民が判断するのがけしからん、と言うのだろうか。まるで批判になっていない。
■「景気条項削除」に大した意味はない
菅義偉官房長官の会見では「特定秘密保護法や集団的自衛権の閣議決定では、民意を問わなかったじゃないか」という質問も出た。今回の解散はダメで、集団的自衛権をめぐる解散なら良しなのか。国民は愚かではない。集団的自衛権問題も含めて国民はきちんと判断する。
増税と安倍政権打倒を目指すあまり、国民に選択を委ねる解散総選挙を批判するマスコミは、いまや国民の敵といってもいいくらいである。本末転倒もここに極まれり、という思いがする。
今回の解散はマスコミと政権の関係をこれまでになく鮮明に炙りだした。安倍政権打倒を目指しているのは朝日新聞と東京新聞、毎日新聞。逆に支持しているのは読売新聞、産経新聞と多くの人が理解している。日本経済新聞は霞が関支持であり、霞が関の意向に沿う政策なら安倍政権支持、沿わないなら反対とみていい。
私は新聞の立場が明確になるのは、必ずしも悪いとは思わない。それによって、言論の多様性が確保される面もある。だが、自分たちのスタンスを先行させるあまり、事実を取り違えたり、見たくない現実から目をそむけるようになっては、報道機関としておしまいだ。意見を主張する論説はともかく、事実を伝える報道は現実主義に徹するべきだ。
もう1つ。安倍政権が再選されたとして、景気条項を削除するとどうなるか。別にたいして変わらない。景気条項がないからといって、絶対に将来の増税を停止できないわけではない。実際、安倍首相はTBSの番組でリーマン・ショック級の危機が起きれば、再延期する法律を出す可能性に言及した。
それは当然だ。国会で作る法律はオールマイティである。前に作った法律の中身を新しい法律で無効にする例はいくらでもある。すなわち、景気条項にたいした意味はない。民主党の枝野幸男幹事長は「景気条項を削ったのは無責任」などと言っているが、これもまた核心を外した議論である。(一部敬称略)
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