http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/811.html
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「食料品に「軽減税率」が適用されたら農家はどうなる?:150万戸農家のうち約92%は消費税非課税事業者という現実」
http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/649.html
でいただいた質問への回答です。
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【引用1】
「1つ目は、基本の基本だと思いますが、たとえば農家が卸業者・仲卸業者・小売店などに消費税込みで農産物を100円で販売した場合、農家の売り上げがいくらになるのか解りません。またその際、課税or非課税選択がどのように絡んでくるのかが解りません。」
【説明2】
消費税についてよく聞かされる説明は、「国内での消費やサービスに対してかかる税金です。消費税は、各取引段階で発生しますが、最終的には消費者がすべてを負担します。国内で事業を行っているものは、販売先(含む消費者)から消費税を預かり、それから仕入先に支払った消費税を差し引いた額を税務署に納めます」といったものだと思います。
求められている説明とずれているかもしれませんが、消費税込みで農産物を100円で販売した場合の農家の売上については、二つの説明ができます。
消費税税率が8%だとして、一つは総額の100円で、もう一つは税抜きの93円です。
というのは、国税庁が消費税課税から逃れられない事業者かどうかを判断する基準として「課税売上高」(税抜きの売上高)という概念を使っているためです。
また、事業者の会計処理で消費税は、個々の売上や仕入を記帳するときに消費税を切り離して“仮払(支払い)&仮受(預かり)”にするところが多いということもあり、多くの事業者が、売上は消費税を抜いた金額だと意識しています。
(このような処理方法や意識は、国税庁がレクチャーしている消費税の計算方法が、「売上に係わる消費税額」=“仮受消費税の総額”から「仕入に係わる消費税額」=“仮払消費税の総額”を控除する(差し引く)かたちになっていることが基礎にあります)
消費税制度が「課税・非課税の選択」を用意しているのは、消費税の課税から逃れることができる売上高が少ない事業者であっても、課税事業者になったほうが得になることがあるからです。
どういう事業者かというと、売上に対する仕入が大きく、「仕入に係わる消費税額」が「売上に係わる消費税額」より大きい場合です。
もう一つの要因は、今話題になっている「軽減税率」制度の導入です。
「軽減税率」制度は、売上にかける乗数(軽減税率)が仕入にかける乗数(標準税率)より小さくなる制度ですから、「軽減税率」の適用を受ける業界では、「仕入に係わる消費税額」が「売上に係わる消費税額」より大きくなる事業者が一気に多くなります。
(「輸出免税」も課税事業者でなければ適用されないので、数は極端に少ないはずですが、売上の少ない輸出事業者も課税事業者になります)
このような背景があることで、売上が少ない事業者も、一律に非課税ではなく、「課税or非課税の選択」ができるようになっています。
(非課税で済む事業者が課税を選択する理由として、販売先が仕入先として非課税事業者を排除するからといった説明もされていますが、日本は、欧州諸国のようなインボイス制を導入していないので関係はありません。日本では、仕入金額を基に計算だけで控除額を算定することができます。インボイス制が持ち込まれると、非課税事業者は納品・請求書に消費税額を記入することができないことから、「仕入に係わる消費税額」を控除できなくなる相手事業者はそのような仕入先を嫌います)
国税庁が消費税の計算方法として、(「売上に係わる消費税額」−「仕入に係わる消費税額」)を前面に出し、事業者もそれに沿って、個々の売上や仕入を記帳するとき消費税を“仮払&仮受”として処理している理由は、
● 消費税は消費者が最終的に負担するものという“雰囲気”や“イメージ”を定着させるため
消費税は、わざわざ個々の取引を本体価格と消費税に分けるような煩雑なことをしなくても、売上総額(税込)と仕入総額(税込)を使って一発で計算するほうが面倒もなくすっきりします。
「売上に係わる消費税額」を求めるための乗数と「仕入に係わる消費税額」を求めるための乗数が同じ値なら、(売上額−仕入額)×消費税税率/(100+消費税税率)という計算式で求めても同じ値になります。
しかし、消費税額の算定としてすっきりしたこの計算方法を提示すると、事業者のほとんどが、「消費税は結局マージンに課税する付加価値税なんだ」と気づいてしまいます。
マージン(荒利・付加価値)はまさに(売上額−仕入額)だからです。
※ 以降の説明で表記する“乗数”は、「消費税税率/(100+消費税税率)」を指すものとします。
● 「輸出免税」や「軽減税率」という国家の詐欺的行為が正当な制度に思えるようにするため
この二つ目の理由を説明することがもう一つの問いに対する説明になるので、次に移ります。
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【引用2】
「2つ目は、消費税が5%〜8%に上げられるとき、輸出企業は消費税が上がると輸出戻し税の絡みで還付金が取得できて、ぼろ儲けできるという話が話題になったと思います。「トヨタなどは3%上がっただけで、2000億円〜3000億円も還付金でぼろ儲け」なんて、ことが書いてあったのをどこかで読んだこともありますが、その説は、正しいとか間違いとかいろいろな意見を見かけて訳がわかりません。なぜ、消費税が上がると、輸出企業が還付金を受けることができるようになるのか、そのあたりの税のシステムを教えていただければ幸いです。 」
【説明】
まず、「輸出免税」は免税ではなく特殊な課税です。消費税制度は、あやしい仕掛けがすぐには疑われないよう用語にはいたく気をつかっています。
「輸出免税」は、輸出売上に対しゼロ%の課税を行うという仕組みにするこで整合性を維持している制度です。
国内販売と輸出の両方がある事業者の消費税は、次のような計算式で求められます。
消費税額=(国内売上ד乗数”+輸出売上×0%)−仕入ד乗数”
「輸出売上×0%」の値はゼロなので、
消費税額=国内売上ד乗数”−仕入ד乗数”=(国内売上−仕入)ד乗数”
この式の意味は、輸出で稼いだ付加価値(マージン:荒利)には付加価値税(消費税)を課さないということです。
還付金が発生するのは、(国内売上−仕入)<0の場合です。
なお、消費税における仕入には、原材料費や外注費といった原価要素だけでなく、新規購入製造装置全額や派遣労働者費用そして広告宣伝費などの販売管理費も含まれています。
説明を進める前に確認しておきたいのは、たとえ消費税としてお金を受け取る還付金が発生しないとしても、「輸出免税」制度が適用されることで、国内販売で稼いだ付加価値に対して課される消費税が大きく減額されることです。
還付金は、「輸出免税」制度による消費税額の減額があまりに大きくマイナスにまでなったというケースで生じるものです。
このような仕組みである「輸出免税」制度で、例えばトヨタ自動車は、消費税税率が5%のときでも、およそ3千億円の消費税還付が発生していると言われています。
この3千億円は、トヨタ自動車が国内のディーラーに出荷したときの「売上に係わる消費税額」を帳消しにしたうえでの金額です。
還付金を受けるくらいですから、国内販売を通じて“預かった”消費税はまったく納付していません。
国内の消費者が自動車を購入するときに“負担した”と思っている消費税額は、1円たりとも国庫や地方政府の口座には入っていません。ディーラーは消費税を納付していますが、メーカーが受けている還付金を引くと、自動車業界全体の消費税納付額はマイナスになります。
(消費者は、事業者の消費税負担分の一部が販売価格を通じて転嫁されることはあっても、消費税を負担することはありません。消費税を負担しているという解釈は、消費者は、マージンや法人税を負担していると言うようなものです)
ご質問にもあるように、この「輸出免税」制度に伴う還付金は、政府が仕組む不当な利得なのか、誰もが制度的に納得できる正当な還付金なのかという点で意見が分かれています。
まず、国家が認めているというより国家自らが法律を定めそれに基づき給付しているものなので、不当な利得だとしても犯罪ではありません。
特定の業種や特定の家族にも補助金や補償金が支払われていたりしますから、「輸出免税」制度を角が立たない表現にすれば、「輸出報償金」といったものになるのでしょう。
「トヨタなどは3%上がっただけで、2000億円〜3000億円も還付金でぼろ儲け」という話は、表現にトゲがあるとしても正しい説明です。
計算式をご覧いただけばわかるように、プラス要素はゼロのまま変わらないのに、マイナス要素は膨らむのですから、マイナス=還付金の値は大きくなります。
消費税の税率が引き上げられても納付すべき消費税にとってプラスの要素である「輸出売上に係わる消費税額」はゼロのまま、その一方で、納付すべき消費税の算定にとってマイナスの要素である輸出向け製品に使われる原材料費や加工賃といった「輸出用仕入に係わる消費税額」にかける“乗数”は、増税により「5%/(100+5%)=4.76%」から「8%/(100+8%)=7.4%」へと大きくなったのですから当然です。
(財務省の官僚やまっとうな経済学者は、不当利得とは言わないし公言もしませんが、「輸出免税」制度が消費税制度を通じて特定の事業者が得る利益であることを認めています)
「輸出免税」制度が正当な仕組みだと思っている人は、消費税額の算定方法として示されている(「売上に係わる消費税額」−「仕入に係わる消費税額」)に、惑わされているのだと思います。
どういう錯誤かというと、「輸出では消費税が課されていないのに、輸出する製品を造るための仕入では消費税を“負担”している。そうであるなら、「仕入に係わる消費税額」を差し引く(控除する)のは当たり前だ。そして、差し引いた結果がマイナスになったら、還付金を受け取るのは当然だ」という内容です。
「輸出免税」制度が正当なものとする判断の決定的な誤りは、「仕入に係わる消費税額」が、税務署に納付した消費税の金額ではなく、事業者自身が納付すべき消費税額を計算する式の一部を構成している項目名(説明のための便宜的で仮の名称)でしかないことを理解していないことです。
別の言い方をすれば、消費税が、「売上−仕入」で表される付加価値に課された税であるという認識がないことです。
消費税は、あくまでも、事業者が売上を通じて得た付加価値について所定の税率の税金を支払うものです。
仕入段階で、仕入先事業者からその事業者が負担する消費税の一部を転嫁されたのでその分を余計に支払ったからといって、消費税を納付したことにはならないのです。
「仕入に係わる消費税額」が消費税を納付したことを意味するのなら、農家の約92%が該当する非課税事業者は、種苗・肥料・農薬・燃料・農機具などを仕入れたときに「仕入に係わる消費税額」相当分を納付したことになるので、非課税事業者ではなく“課税事業者”になってしまいます。
社会保険医療や住宅賃貸など特定の非課税取引も、薬剤・医療器械や建築費・修繕費といった仕入の段階で「仕入に係わる消費税額」を納付していることになり、医療や福祉は非課税!といった政府の説明は間違っていることになります。
非課税事業者が非課税事業者たるゆえんは、「総額売上−総額仕入」であるマージン(付加価値)に対して消費税を課されていないことです。
販売価格(単価)は、国内向け・輸出とも、「製造原価+税負担を含む諸経費+荒利」で構成されていると言えます。(小売などの場合は「仕入価格+税負担を含む諸経費+荒利」)
輸出還付金を正当な仕組みだと主張する人のなかには、輸出では消費税をもらえないという素朴な指摘をしますが、それは、消費税制度を理解していないだけでなく、商売をも理解していない話です。
商取引なら、「輸出免税」であっても、輸出価格を引き上げて「売上に係わる消費税額」を上回る金額を荒利にさらに上乗せすることもできれば、逆に、荒利がマイナスというコスト割れの価格で輸出しなければならないときもあります。
買う側にしてみれば、あるものに対し支払わなければならない金額のうち、原価はどれだけ、税金負担分がどれだけ、儲けはどれだけといったことはまったく関係ない事柄です。
買う側にとっては、価格構成要素の比率は無関係で、すべてがコストなのです。(これは、事業者の仕入を考えればよくわかることです)
消費税制度は、価格構成要素の一つである消費税だけをことさら抽出して買う側に意識させることで、消費税の負担を転嫁しやすくしているわけです。
(論理的に言えば、利益や原価なども売値を通じて相手に転嫁されているわけですから、消費税だけをフォーカスするのはおかしな話です)
※ ここ2年ほどの動きでわかるように、円安傾向は、「輸出免税」であっても輸出価格を引き上げて「売上に係わる消費税額」相当を超える金額を荒利として加算することができる」絶好の条件を意味します。しかも、ドルなど最終購入者の通貨建てでは価格を上げないでも、日本円で手にする金額が25%とか30%とか増えます。これが、昨年そして今年と、グローバル企業が空前の利益を上げている主たる理由です。
消費税制度は、「原価+諸経費+荒利」で構成される販売価格がベースにあって、消費税はそれに上乗せされるものといった擬制の上に成り立っているものです。
実際のところ、そのような擬制をお話ではなく現実のものにできるのは、市場支配力に優れた一部の有力企業だけです。
有力企業は、人件費や営業利益の原資になる荒利を確実に確保するために、原価がアップしたら販売価格を上げ、諸経費が増えたときも販売価格を上げ、消費税などの税負担が増加したらやはり販売価格にすべて転嫁するといった対応ができやすい地位にあります。
(むろん、最終的には消費者の購買力が決めることですから、いつでも思うようにできるわけではありませんが)
その他の多くの事業者も当然、消費税税率が上がって負担が増加すれば、増えた負担分をできるだけ多く取引先に転嫁したいと思います。
しかし、円安で原材料費や電力料金が上がったことでコストが増えたからといって、その全額を転嫁できないで苦しんでいる現状を考えればわかるように、消費税の負担増加もすべてを転嫁できるわけではありません。
消費税の負担増加分をすべて転嫁できないということは、人件費や営業利益の元になる荒利をそれまでよりも減らしてしまうことを意味します。
さらに、コストアップ分も転嫁できないということであれば、二重に荒利を減らすことになります。
これが、グローバル企業以外の事業者で起きている事態で、4月以降のGDP速報値も、そのような事態が起きて当然という惨憺たる内容になっています。
このような現実を踏まえると、消費税額の算定式で使われている「売上に係わる消費税額」や「仕入に係わる消費税額」は実態とはまったくかけ離れたたんなる計算上の観念(絵空事)で、売上そのもの(総額売上)や仕入そのもの(総額仕入)だけが現実的に意味のある数値だということがわかります。
どういうことを言いたいかと言えば、「原価+諸経費」のコストに荒利を加算して決まる本体販売価格に消費税税率を乗じたものが「売上に係わる消費税額」になるという理路ではなく、「売上に係わる消費税額」は、転嫁ができたかどうかは無関係で、売上にとにかく“乗数”をかけることで算出されるものであるということです。
もっとわかりやすく言えば、販売で思うように消費税を転嫁できない、極端に言えば負担が増えた分を1円も転嫁できなかったとしても、とにかく、「売上×(8%/(100+8%))」の消費税を転嫁した(預かった)とみなしてしまう凶暴な制度なのです。
説明としては通用するかもしれない仮構の仕組みを現実のものと錯覚したうえで、消費税の様々な仕組みの正否について、「売上に係わる消費税額」−「仕入に係わる消費税額」といった算術的側面をベースに判断しようとするためおかしな判断をしたり、「軽減税率」についても、一般の事業者や多数派の国民は負担や転嫁される金額が増えるのに、言葉の印象で負担が楽になる制度と錯誤してしまうのだと思っています。
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