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安倍首相は、解散をするべきではなかった 「負けない戦い」の目論見が外れるとき(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/770.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 11 月 20 日 07:03:15: igsppGRN/E9PQ
 

安倍首相は、最悪の選択をしてしまったのか(日本雑誌協会代表撮影)


安倍首相は、解散をするべきではなかった 「負けない戦い」の目論見が外れるとき
http://toyokeizai.net/articles/-/53917
2014年11月20日 小幡 績:慶應義塾大学准教授 現代ビジネス


解散はするべきではなかった。

なぜか?安倍首相自身にとって、最悪だからだ。

■安倍首相は行くところまで、行くしかない

万全を期すれば、結果は破滅となる。例えば、競馬で馬券を買うときに、来る可能性のある馬をすべて網羅的に買ってしまうと、どの馬が来ても儲からない。当たっても配当は買った額よりも少なくなるから、万全のギャンブルとは破滅あるいは勝つ可能性ゼロとなるのである。波で言えば、最大限まで高くなれば、あとは崩れるしかない。バブルの理屈と同じだ。

同時に、バブルの理屈で言えば、いったん膨らみ始めれば、あとははじけるだけであって、はじけないようにするには、現状維持では駄目で(それは即時の破裂となる)、膨らみ続けるしかない。

金融バブルへの政策的対応としては、そのスピードと上昇幅を制御し、他の領域にバブルが移転しないようにし、そして崩壊に備えるということだが、政権の人気というのは、なかなか制御手段が限られていて、いったん人気が膨らんでしまえば、崩壊するのを防ぐためには、行くところまで行くしかなくなる。それが、今回の解散だ。

金融市場と同じで、首相ですら、人々の期待がコントロールできないばかりでなく、政権内、党内の期待値すらコントロールできなくなり、自分の意思では自分の動きですら決められなくなる。安定した場所に収まるわけにはいかなくなるのだ。

バブルも一度始まれば、その中にいる投資家はもう逃げる道はない。とことん、効率的に儲けて、崩壊しても差し引きプラスとなるように、十二分に儲けることしかない。

このコラムは政治分析ではないから、解散が安倍政権にとって損得があるのか、どういう背後関係で解散することに追い込まれたのか、ということは議論しない。単に、解散により、安倍政権とアベノミクスバブルが最後の膨張を目指し、それに成功しても失敗してもバブル崩壊を早めるだけであることを指摘するにとどめる。

選挙に圧勝すれば、解散に追い込んだ側は、自滅するか、分裂、離脱するしかない。一方、負ければ、当然、これまでの人気上昇は支持率の急落となって返ってくる。そしてバブルは普通に崩壊する。

しかし、社会の群集心理の分析として興味深いのは、ここに、GDP成長率が予想外に2期連続マイナスとなった瞬間に解散することとなったことだ。これは事態をどのように変えるのか。

当初は、「増税延期の是非を問う選挙」という打ち出し方だった。多くの国民は消費税8%の引き上げにある程度の痛みを感じているから、それに反対する理由はない。だから、選挙に負ける可能性はなかった。

■「景気後退」で、増税延期が「ふつうの出来事」に

増税延期は無責任だとか、財政が、というのは、他人事としてはそうだが、自分の家計やレジの前で消費税を上乗せされたときの意外な最終支払額の膨らみように毎日直面していれば、増税は無責任だとして絶対反対するのは難しい。

つまり、中途半端な八方美人の民主党政権と違って、徹底したポピュリズムにより勝利を収め続けてきた安倍政権戦術としては、今回も負けのない戦いを仕掛けてきた、あるいは、そのつもりだったのだ。予想通り、民主党はこれに反対できず、争点のない選挙になり、解散をわざわざする大義がない、政局遊びだといういかにも野党的な負け犬の理論で反論するしかないところに追い込まれていた。

しかし、GDP成長率がいまいちなのではなく、マイナスとなれば、景気循環の定義的には景気後退となり、景気動向により増税時期の判断を変えるという考え方ならば(個人的には、消費税増税の時期を景気判断と連動すべきでないと考えているが)、ここで増税を延期するという判断は当然あり得る。だから、増税延期自体は「ふつうの出来事」となったのだ。

「ふつうの出来事」を普通でない重大事件と位置づけるため、重大事件とは、実際に起きた「GDPのマイナス」という事件ではなく、増税延期という行為自体である、とした。増税を延期することを税制の大きな変更として、議会なくして課税なし、という文言を持ち出したのである。

これは群集心理を動かす。

まず、人々は戸惑う。増税する、という行為に対して、議会なくして課税なし、なのであるから、課税なしなら議会なし、なくてもいい、となるのではないか、と思う。

さらに、混乱するのは、1年半の延期は確定で、3年後には、必ず課税をする、増税をするという。それなら、単なる1年半の延期であり、課税でも課税なしでもなく、わずかな先送りに過ぎない。社会保障改革の先送りはかれこれ20年以上続いているが、1年半、そして必ず課税するのであれば、たいした先送りですらなく、重大事件どころか、出来事ですらないのではないか。これが人々の印象だ。だから、何が起こったのか狐につつまれたようになる。

このとき、エコノミスト的な、3年後の増税には景気条項がないから、どんなに景気が悪くても延期しないのか、それならば、いま延期するのは、今後想定される中で、景気が最悪の状況だからということになり、足元は最悪でアベノミクス失敗という議論になるのか、という理屈っぽい議論は関係ない。

■疎外感を感じた人々が動き出す

人々は、何も起きてないが、選挙は起きるのだな、と思う。

そして、メディアが解散の大義云々、野党がそれを政局のためだけだと非難し、与党は国民の声を聞くことが重要だと叫ぶ。人々は疎外感に陥る。われわれと政治、選挙は関係ないのだなと。

大義のない選挙をする与党は許せん、と息巻くのは、政治好きな有権者であり、そのような人々はもともと群集心理で動かず、政治について自分の立場がある。今回分析する群衆有権者は、そのような人々とは全く違った発想、いや心理に陥る。

ここで、「だから投票率は下がり、各党の構造から行くと・・」、という分析をし始めるのは選挙アナリストで、プロの罠にはまっている。群衆はもっと曖昧で気まぐれで、しかし、必ず動くのだ。

そう。バブルと同じで、群衆は動き始めれば動き続けるのだ。止まっている群衆は止まり続け、それを動かすには、大きなショックが必要だ。それが大恐慌時にケインズが主張したことであり、2012年末に、アベノミクスが起こしたことなのだ。

それが2012年の解散総選挙にも当てはまった。つまり、群衆は動き始めたのであり、動き始めた群衆は止まることを嫌う、というか、止まっては後ろからの群衆につぶされてしまうから、動き続けるしかないのだ。だから、今度も動くだろう。

問題は、狐に包まれたまま、動き続けるとなるとどうなるのか。まったく予想不可能な状態に陥る。それはカオスとなるか、あるいは、逆に予測不可能だか、結果としては、気まぐれな、しかし強い流れができることになろう。

気まぐれな強い流れは、アベノミクスをもう一度、2年前と同様に爆発的に成功させるであろうか。それは難しい。なぜなら、一度膨らんだバブルと同じで、いったん狐につままれ止まった心理は、同じ方向にさらに爆発的に進む、ということは確率が非常に低いからだ。

■安倍首相は、現局面を相当不利だと認識している?

バブルが踊り場に入り、そこからもう一度同じ上方向に爆発することはあるが、それは、バブルの最後の急膨張であり、破裂を早めるだけである。そのときは、一部の過激な人々がバブルに残り続けるのであり、大多数は置いて行かれる状態になる。

同様に、今回、人々の心理に急上昇が起これば、それは一部の極端なグループの行動に過ぎず、多数派の凡人は置いて行かれるだろう。そしてバブルは崩壊するのである。したがって、流れは反転あるいは別方向に行くことになろう。現在の政治環境から見ると、それを受け止める野党は存在せず、安倍政権にも野党にも向かわないとなると、流れはできないことになる。そうなると、やはり、カオスとなる、という確率が高いだろう。

政治家たちは政治のプロであり、選挙のプロであるから、これをあえて仕掛けたということは、このくらいのストーリーは読んでいることになる。そうなると、今回の仕掛けは、小泉郵政解散のように、2段ロケットを狙ったものだ、という政治のプロの解釈もあり得るが、一方で、カオスとなることを狙ったものだ、という説も有力説となる。

後者の戦術はあり得る高等戦術だ。将棋でも、少し不利な局面に陥り、このまま普通に指していくと、プロ同士であるから、確実に負けるということがわかれば、あえて局面を複雑にし、紛れが生じるのを誘う、ということはよくある。今回、支持率が下がってきたので、下がりきる前に解散に打って出るという解釈は、これと共通する考え方である。

しかし、そうだとすると、現局面を相当不利な局面だと認識していることになる。ダメージコントロールとして、カオスにするのは最終手段だからだ。

狐につつまれた群衆を誘導するためであろうか。安倍首相の演説では、解散の理由は、いつの間にか、増税延期の是非から、アベノミクスをこのまま続けていいかどうか、ということに変わっていった。

そこで演説を締めくくったことにより、いざ解散、争点はアベノミクス、と自ら打ち出したのである。増税延期の理論、実は黒田日銀追加緩和も同じ理屈なのだが、現行の経済政策は成功している、経済は基本的に問題はない、しかし、ちょっとだけ黒い雲(蜘蛛?)が出てきたから(原油下落によるインフレ率低下、あるいはGDP増加率マイナス)、万全を期すために、デフレマインド脱却を完全に達成するために、ダメ押しのために、追加緩和、増税延期が必要なのだ、というロジックだったはずだ。

それなら、アベノミクスを続けていいか、と問う必要はない。2年前、4年間の任期の衆議院議員を選ぶ選挙で勝ったのだから、そして、それが、政権運営を任された首相がうまくいっているとおもっているのだから、一部の小さい不安、問題に対処するなら、国民に問うことなく、手早く速やかに掃除をすればいいだけのことなのだ。

■2段ロケットを狙ったのか、カオス戦術なのか

こう考えると、私の思考もカオスに陥ってしまうが、やはり、郵政解散のような2段ロケットを狙ったか、局面が相当不利と読んでカオス戦術に出たか、どちらかとなる。

ただ、前者を狙ったとしても、それが実現する確率は低いのではないか。なぜなら、消費税率引き上げの判断を行うための有識者会合では、経済の専門家たちは、いわゆるアベノミクスブレーンと呼ばれる人たちだけが先送りを強く支持し、普通の専門家たちは、増税は延期するべきでないと言ったのだ。そして、前者のグループこそ、アベノミクスが大成功していると主張している人々で、消費税だけが悪いという主張なのだ。

株式市場であれば、この一部の強気の人々が、最後のバブルを作るところであるが、群衆誘導ではそうはいかない。群衆は置いて行かれる場なのであり、行き場に困って戸惑うしかない。

これが選挙中、選挙後の姿となろう。この結果、景気対策の打ち出しに反応して、株式市場は乱高下する展開となるが、実体経済は混乱した流れとなり、景気刺激策の部分を除けばマイナスの影響がもたらされるのではないか。

そして、カオスとは不透明性であり、将来不安ということにもなり、実は、この20年のデフレマインドの根源的な理由であった将来の不透明性、つまり、政治、社会保障制度、雇用、期待生涯所得などにたいする不透明性を、もう一度復活させることになる。

せっかくアベノミクスによるデフレマインド脱却という呪文により、人々の不安を一掃したのに、自ら不安を復活させる戦術に打って出たのは、やはり理解できない。カオス戦術は、私の思考をカオスにすることだけには成功したが、群衆は私ほど素直であるかどうかはわからない。


 

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コメント
 
01. 2014年11月20日 07:11:06 : jXbiWWJBCA
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「政治と市場の“正しい”見方」
「義」もなく「利」もない解散・総選挙

第1次内閣の教訓を思い出せ

2014年11月20日(木)  門司 総一郎

 「増税先送りなら解散」と題する記事を読売新聞が掲載したのは11月9日のことでした 。その後「増税先送り・解散」観測は燎原の火のごとく広がり、11月18日に安倍晋三首相は増税先送りと解散を発表しました。

 この決断は「危険な賭け」と思われます。「野党の準備ができていない今、総選挙で大勝すれば今後の政局運営に弾みがつく」との見方もありますが、逆に想定以上に議席を減らして安倍首相の政治基盤が揺らぐリスクもあります。今回は増税先送りと解散・総選挙について考えてみます。

安倍首相の決断

 増税先送りと解散・総選挙に関して安倍首相が決定した内容は以下の通りです。

8%から10%への消費税率引き上げの時期を2015年10月から17年4月に先送り。
2017年4月の税率引き上げに伴って軽減税率を検討。また景気条項(経済状況を踏まえた増税の可否の判断を認める条項)は廃止する。
衆議院を解散。
 消費税率引き上げを先送りしたからといって総選挙を行う必要はありません。元々今回の税率引き上げについては2012年に3党合意で消費増税を決定した際に景気条項が付けられており、景気の弱さを理由とした税率引き上げの見送り(先送り)は認められたものです。

 法改正は必要ですが、与党が衆参両院で多数を占めている以上、これも問題はありません。にもかかわらずあえて解散する理由については「税率引き上げ先送りは重大な方針変更であるため、国民の信を問う」と解説されています。

解散・総選挙は危険な賭けか

 現在衆議院では自民が295議席、公明が31議席、合計で326議席と全480議席の3分の2を超える議席を保有しており(時事通信調べ)、任期も2年残っています。また一時より低下したとはいえ内閣支持率は50%前後とまだ高く、政局運営にこれ以上は望めない状況です。こうした状況で自ら解散・総選挙に打って出ることは通常ありません。

 もし解散すれば、過半数割れはあり得ないにしても、議席を減らすことはほぼ確実です。2012年の総選挙では当時の与党民主党に対して不満を持つ有権者の票が自民党に集中したことが追い風になり、自民党は大きく議席を伸ばしました。しかし今回はそこまでの追い風は望めず、まずその分議席を減らすことになります。

 また前回は自公以外の野党(及び民主党)がバラバラに戦い票を食い合ったことも自公を利すことになりました。今回野党がどこまで連携できるかは不透明ですが、民主党が与党だった前回と異なり、今回は自公(与党)対その他(野党)の図式なので、前回に比べれば野党間の連携は進むと思われます。これも与党にとってはマイナスです。

 この2つの要因だけでも与党は議席を10〜20議席程度減らすと思われます。ただ、それだけなら3分の2は割り込むものの絶対安定多数は確保しており「危険な賭け」という程ではありません。「危険な賭け」というのはそれ以上に与党が議席を減らす可能性があるからです。

大義のない解散・総選挙

 与党の苦戦を見込む第一の理由は選挙に大義名分がないことです。前述のように3党合意に基づけば解散する必要はまったくありません。「税率引き上げ先送りは重大な方針変更であるため、国民の信を問う」という理屈にも違和感があります。

 解散しなくても世論調査を見れば引き上げに反対(あるいは先送りに賛成)が多数であることは明らかですし、本気で信を問うなら先に解散して民意を確認した上で延期を決定すべきでしょう。先に決定・後から解散では順序が逆です。

 株式市場には今回の解散・総選挙を小泉純一郎首相の郵政解散・総選挙になぞらえて株高を期待する向きもあります。しかし、今回はまったく事情が異なります。小泉首相は郵政民営化法案が参院で否決されたことを受けて衆院を解散、国民の信を問いました。「正義の小泉をいじめる悪の自民党抵抗勢力」の図式が国民の熱狂を引き起こし、総選挙での大勝と株価急騰をもたらしたわけです。

 今回は与党にも野党にも、安倍首相の決断を阻めるものはいません。いわばドラえもんに出てくるジャイアンが自分が決めたことについて「みんな、文句ないか?」と聞くようなもので、見ている方はしらけてしまいます。郵政解散の再現はまずあり得ません。

真の理由は公明への配慮?

 このように考えると、消費増税の先送りはともかくとして、なぜ解散・総選挙が必要なのかわかりません。自民党の議員はもちろん嫌でしょうし、本来歓迎すべき野党も選挙準備の遅れからこの時点での選挙には消極的です。国民の間でも元々忙しい12月の選挙を歓迎する人は少ないでしょう。ここで浮上するのが公明党の存在です。

 以前から一部には「2014年中に総選挙」の観測がありました。これは、「次の国政選挙は2016年に衆参ダブル→公明党はダブル選を嫌う→衆院選を前倒し→2015年は春に統一地方選→2014年内に総選挙」との理屈です。自民党・野党共にここでの総選挙にメリットは感じられませんが、公明党にとっては望ましいものかもしれません。

 軽減税率の導入もそうです。軽減税率は食料品など生活必需品への税率を低く抑えるものです。税率構造が複雑化するため会計システムなど小売業者の負担が大きくなるといわれています。そのため自民党では麻生太郎財務相はじめ、軽減税率に対する反対の声が強かったのですが、公明党はその導入を主張していました。

 今回の解散総選挙を巡る報道を見ても、公明党関係者からは当初から「安倍首相から連絡を受けた」との発言があったのに対し、自民党幹部や主要閣僚からは「首相が決めたのなら仕方がない」「正式には決まっていないはず」など報道で初めて聞いたという発言が目立ちました。安倍首相が党幹部や主要閣僚と相談せず、公明党との間で消費増税先送りと解散・総選挙を決断したようにも見えます。

 もし安倍首相が公明党に配慮したとすれば、理由は集団的自衛権の憲法解釈見直しの時の協力に対する見返りと思われます。公明党は元々集団的自衛権の解釈見直しに慎重でしたが、通常国会の会期末が迫る中、最後の段階ではかなり無理をして安倍首相に譲った感があります。安倍首相にとって、今回の決断はその時の借りを返すものなのかもしれません。

 公明党との関係はともかく、今回の解散・総選挙に大義名分が感じられないことは確かであり、この点を野党が突いてくることは間違いありません。これが与党苦戦を予想する第一の理由です。

「アベノミクス」を主張できない与党

 本来与党が安倍政権の実績として主張したいのは景気回復、円安、デフレ脱却などです。しかし、今回の選挙で与党はこれらを主張できなくなっています。

 まず景気について。消費増税を先送りしてしまった以上、「景気回復」を声高に主張することはできません。また与党は円安対策を公約に含める方向です。そうなると「円安」「デフレ脱却」を主張することもできなくなります。こうなると与党は自分でアベノミクスの失敗を認めているようなもので、逆に野党は攻め手に事欠きません。

 結局このタイミングで消費増税先送りとセットで解散に踏み切ったのは安倍首相の判断ミスだったということになります。アベノミクスを封印されては、与党に主張できる点はほとんどありません。内閣改造後の2閣僚の辞任もまだ記憶に新しく、「政治とカネ」の問題でも与党は受け身に回らざるを得ません。

 最近の知事選の結果を見ても、3回の知事選で2敗1分けです。7月の滋賀では与党候補が落選。10月の福島では、自民党は独自候補を擁立することができず、結局民主党が推す候補に相乗りしました(結果は当選)。さらに11月16日の沖縄では自民党が推す現職の仲井真弘多知事が落選しています(公明党は自主投票)。

 地方選と国政選挙は別物です。福島県も沖縄県も、それぞれ原発や基地など地域独自の問題を抱える県ではあります。しかし、この結果を見ると、与党にとって今は選挙を避けるべき時と見るのが正しいと思われます。

 今回の総選挙には大義名分という「義」もなく、また勝っても得るものは少なく負けて失うものは大きいという状況で「利」もありません。これが、この選挙は安倍首相にとっての危険な賭けと考える理由です。

「解散・総選挙は買い」は本当か?

 こんな解散・総選挙が株式市場にプラスになるとは思えませんが、株式市場は上昇を続け、一部の市場参加者は「解散・総選挙は買い」と主張しています。その理由として挙げられるのは下記のようなものです。

小泉首相の郵政解散・総選挙の再来を期待できる。
総選挙で大勝すれば今後の政局運営に弾みがつく。
消費増税を先送りすることは景気にプラス。また選挙となれば景気対策が期待でき、これも景気にプラス。よって解散・総選挙は株式市場にもプラス。
 1番目は既に触れたように論外です。2番目も安定的な政局運営のために今以上の状況は望めないため、的外れと言ってよいでしょう。3番目はもっともらしく聞こえますが、これも根拠のない理由です。

 「消費増税の先送りは景気にプラス」と言いますが、実際にその効果が出てくるのは来年10月以降の話。これを理由に株価が上昇するにはまだ時間がかかります。むしろ消費増税の先送りは短期的には景気にマイナスに働きます。

 政府は既に景気対策の準備を進めており、その規模は2〜3兆円と報道されています。当初は4〜5兆円が見込まれていたと思いますが、消費税率引き上げの先送りに伴って来年度の税収が減ることから、経済対策の規模も縮小される見込みです。来年4月に予定されている法人減税についても財源の問題から引き下げ幅が縮小されるとの見方があります。

 また衆院を解散することにより、1カ月弱の間、政策協議に空白期間ができることになります。これが今年度補正予算や来年度予算の成立の遅れにつながることになれば、株式市場にはマイナスとなります。選挙で与党が想定以上に議席を失うことになれば、マイナスの影響は一段と大きくなります。

 このように見ると、「解散・総選挙は買い」がどこから出てきたのか分かりません。11月に入ってからの日本株の上昇は理由があってのものというよりも、マクロ・ヘッジファンドなど一部の短期的な投資家の買いに振り回されているだけであり、大きな調整があってもおかしくないと考えています。

第1次安倍内閣の教訓を思い出せ

 昨年は、景気は好調、インフレ率もプラスに転換、株価も上昇し、安倍政権は絶好調でした。しかし、今年は集団的自衛権の憲法解釈見直しで苦労し、滋賀県知事選では敗北、内閣改造直後に2人の女性閣僚が辞任に追い込まれました。

 さらに拉致問題は進展せず、景気の回復も遅れるなど、ここまで安倍首相にとっては不本意な年だったでしょう。そうした思いが党幹部や主要閣僚に相談することがないままの増税先送りと解散・総選挙の決断につながったのではないかと思います。

 しかし、元々2014年と15年は国政選がなく、選挙を気にすることなく、痛みを伴う政策に集中できる年といわれていました。消費税率の引き上げがこの2年の間に予定されていたのもそのためです。この意味では集団的自衛権の憲法解釈の見直しに今年取り組んだのは正しいタイミングといえます。しかし、今回の安倍首相は動き過ぎでした。

 第2次内閣発足直後の安倍首相は、第1次内閣の印象が強かったことから、「すぐに投げ出すのではないか」と懸念されていましたが、実際には人が変わったような活躍を見せました。しかし、最近の安倍首相を見ていると、また投げ出すのではないかという懸念を感じます。

 今回の増税先送りと解散・総選挙は安倍首相にとって大きな失点となる可能性があります。それでも、幸い議席にも支持率にも余裕があり、立て直しは可能です。第1次内閣の時の教訓を思い出して、簡単に投げ出すことなく、盟友である麻生財務相や菅義偉官房長官、甘利明経済財政・再生相 とよく相談して、粘り強く困難に立ち向かってほしいと思います。

以上

このコラムについて
政治と市場の“正しい”見方

 今、日本は新政権の誕生で「政治」と「金融市場」の関係がこれまで以上に強まり、複雑化しています。さらに欧州の債務危機や米国の財政の崖、中国の新執行部選出など、政治と市場を巡る動きは、海外でも大きな焦点となっています。

 しかし、市場関係者がこの両者の関係を論じる場合、「アベノミクスで日本は変わる」など物事を極めて単純化した主張になりがちで、十分な分析がなされているとは言えません。そこで、このコラムでは政治と市場の関係について深く考察し、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141119/274035/?ST=print


02. 2014年11月20日 07:21:50 : jXbiWWJBCA

「記者の眼」
安倍首相、「不意打ち解散」の内幕

狙いは長期政権、景気失速で誤算も

2014年11月20日(木)  安藤 毅

消費税率10%への引き上げ延期を決め、衆院解散に踏み切る安倍晋三首相。任期2年余りを残した今、なぜ「不意打ち解散」に打って出るのか。長期政権をにらみ、政権基盤の再強化を図ろうという舞台裏を検証した。
 「税制こそ議会制民主主義と言っても良い。その税制において大きな変更を行う以上、国民に信を問うべきであると考えた」

 18日の記者会見。安倍晋三首相は2015年10月に予定していた消費税率の10%への引き上げを1年半先送りする方針を正式に表明。政策変更について国民の審判を仰ぐことを大義に21日に衆院を解散すると宣言した。

節目は「ダブル辞任」

 消費増税の延期と解散――。長期政権をにらむ安倍首相や菅義偉・官房長官らはこの夏ごろから解散・総選挙のタイミングを模索していた。関係者によると、増税延期を理由とした解散戦略に安倍首相が舵を切ったのは、小渕優子前経済産業相らがダブル辞任に追い込まれた10月20日前後だった。

 2006〜07年の第1次安倍内閣では「政治とカネ」の問題などで閣僚の進退問題が続出。「辞任ドミノ」に陥り、内閣支持率は急落した。

 その反省から早期の事態収拾に動いたものの、一部の閣僚への野党の攻撃が継続。自民党内でも「これで安倍1強体制は変わる」といった空気が広がり始めていた。

 改造失敗を帳消しにし、政権基盤を立て直す。安倍首相はその最も有効な手段である「解散カード」を早期に切る意向を固めたのだ。

 後はタイミングと大義が問題だったが、答えはほどなく「年内」と「消費増税先送り」に絞り込まれた。

 安倍首相らは2020年の東京五輪まで首相の座に就けるよう自民党の総裁任期を延長する「超長期政権」の実現を目指している。その間に宿願の憲法改正に道筋を付けたいとの思いもあるためだ。

 そのためには2015年9月の自民党総裁選までに総選挙を乗り切り、総裁選を無風で通過するのが大前提と考えている。ただ、来年1月の通常国会冒頭の解散では2015年度予算案の今年度内成立は困難になり、多方面に影響を及ぼす。

 4月の統一地方選と同時は連立パートナーの公明党が渋り、通常国会の会期末やそれ以降は原子力発電所再稼働問題や集団的自衛権の行使容認に向けた安全保障法制の国会審議の影響などから世論の逆風も見込まれる。

 さらに、米連邦準備理事会(FRB)のゼロ金利解除が早まれば市場が混乱し、政権が重視する株価も不安定になりかねない。今はダブル辞任にも関わらず、内閣支持率も高水準を維持している。

 今は野党の選挙体制が整っていない。過去の経験則から師走選挙は低投票率になりがちで、組織選挙に有利に働くとの計算も働いた。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)を利用した日中首脳会談の実現にこだわりを見せたのも、外交成果を選挙のプラス材料にしようとの思惑からだ。

大義は「消費増税先送り」に

 年内解散となれば、大義は1つしかなかった。目前には消費税率再引き上げの判断が迫っている。10%への引き上げを延期し、政策変更について国民に信を問うとのストーリーが固まった。

 デフレからの脱却を優先すべきという立場の安倍首相はもともと、消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%へと短期間に2段階で引き上げる民主党、自民、公明による「3党合意」に懐疑的だった。

 2012年末の第2次政権発足時には既に敷かれていた増税へのレール。渋々決断した8%への引き上げ後、景気見通しは事前の予測より大幅に悪化し続けた。年率換算で見た4〜6月期の実質GDP(国内総生産)が前期比7.3%減と落ち込むに至り、安倍首相や菅氏は警戒感をさらに強めた。

 10%への引き上げについても粛々と行うのが首相としての責任との“常識”に従えば、アベノミクスは失速し、政権運営は行き詰まりかねない――。 

 再増税の可否を巡り思い悩むことも多かった安倍首相だったが、最重視していた今年7〜9月期のGDPの民間予測が個人消費の停滞などから夏場と比べ大きく下振れしていることを受け「延期」へと大きく傾斜した。

 安倍首相の決断の背景には財務省主導の「包囲網」に対する反発もあった。財政再建を錦の御旗に与野党や経済界などに「予定通りの引き上げ」の重要性を説き、環境整備に躍起となった財務省。安倍首相は最近も「消費税さえ上げさせれば、後は政権や景気がどうなってもいいというのが財務省の本音だ」と親しい関係者に漏らし、不信感をあらわにしている。

 同省出身で増税の必要性を強調していた日銀の黒田東彦総裁に対しても安倍首相は距離を感じ始めていた。フリーハンドを保ちたい安倍首相は9月11日、首相官邸に黒田総裁を呼び、「最終的に政策判断をするのは自分」という趣旨の言葉でくぎを刺している。

 その黒田総裁は10月31日、官邸に根回しすることなく追加の金融緩和を主導。「財務省と連携して消費増税への環境整備を進めた」とみた安倍首相はこの時、親しい関係者に「聞いていなかった」と不快感を示している。

 黒田総裁は今月12日の衆院財務金融委員会で、追加緩和は「2015年10月に予定される消費税率の10%への引き上げを前提に実施した」と言い切って最後の抵抗を試みたが、安倍首相の決意は変わらなかった。

 11月に入るや、親しい関係者に安倍首相は「1〜2%程度の成長率なら消費税は上げない」と断言。「庶民が求める消費増税の先送りは争点にならない。仮に民主党内で意見が割れれば、それも選挙戦にプラスになる」とみて最終的に解散を決断した。

 APECなど一連の外遊から帰国してからでは解散までの時間が足りない。そこで安倍首相は出発前の今月7日に自民の谷垣禎一幹事長、公明の山口那津男代表に年内解散を検討していると表明。この直後から突風のような解散風が吹き出し、安倍首相が帰国するまでにそれは確報に変わった。公明幹部は「この時期の解散はベスト」と漏らしている。

「財務省包囲網」突破もプラスに

 ふたを開けてみれば、7〜9月期の実質GDP速報値は、年率換算で1.6%減と事前の予測を大きく下回り2四半期連続のマイナスに。消費増税後の反動減からの回復が見込まれていた内需の不振が鮮明になった。

 安倍首相周辺は「増税先送り以外の選択肢はあり得なかった。解散に動いていたことでアベノミクスへの国会追及などをかわすこともできた」と胸をなでおろす。

 さらに「財務省や日銀、経済界の反対を押し切った形をとることで生活重視の姿勢もアピールできる」と「増税先送り解散」の意義を強調している。

 安倍首相は会見で10%への引き上げについて、2017年4月には「確実に実施する」と明言。退路を断ったうえで、財政健全化の目安になる基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度に黒字化する目標を堅持する考えを表明し、増税先送りに伴う財政悪化懸念に配慮してみせた。

 野党による攻撃ポイントに先手を打った形。だが、安倍首相にとって盤石にみえた不意打ち解散シナリオにもいくつかの不安要素が生じてきた。

 まずは、景気の足踏みだ。消費増税先送りの判断の正当化には追い風だったが、7〜9月期のマイナス成長は想定外の悪さ。専門家の間で景気後退局面入りとの観測も出る中、争点設定に悩む野党にアベノミクス批判という格好の攻撃材料を与えた格好だ。

「政局的には正解。政治空白はマイナス」

 「政局という観点からすれば、このタイミングでの解散は正解。一方、景気の腰折れ懸念が強まっているさなかに政治空白を作るのはリスクが大きい」。安倍首相に批判的な自民のベテラン議員はこう語気を強める。

 これに関連するが、「なぜ今解散なのか」「何が大義なのか」という重要な点が有権者に浸透しているとは言い難い点も波乱要因になりそうだ。

 「今選挙をしたほうがいいといった話はしょせん、内輪の論理。こんな大変な時期に金を使って選挙などしている場合かといった批判の矛先が向けられてもおかしくない」。自民の中堅議員はこう漏らす。

 自民の選挙対策部門のスタッフは「身勝手解散といったレッテルを張られ、勝たせすぎてはいけないとの空気が広がるのが怖い」と警戒する。選挙戦を通じて、安倍首相や与党幹部がどれだけ有権者に納得感を与えることができるのかが問われる。

 勝敗のカギを握るのが野党共闘の行方だ。2012年の衆院選は政党が乱立したまま選挙戦に突入。自民・公明と民主以外の第三極が分散したことで、結果的に自民の圧勝につながった。

 生活の党の小沢一郎代表は「野党が統一戦線を組めば勝てる。そのためには新党を作るのがベストだ」と強調するが、野党の大同団結には「野合」批判がついて回ることもあり、困難な情勢。現実的選択として、民主を中心とした選挙区調整が動き出している。

 その1つとして、元々同じ党だった生活の現職の選挙区に民主が候補者を立てない方向が固まった。これにより、例えば小沢氏のおひざ元の岩手県では情勢がかなり変わり、少なくとも選挙区では自民候補は前回より厳しい戦いを強いられる見通しだ。

 みんなの党が解体に向かうなど第三極は腰の定まらない動きが続くが、仮にこうした野党間の調整が進めば、流れひとつで与党は思わぬ苦戦を強いられる展開もあるかもしれない。何しろ、各種世論調査では、特定の支持政党を持たない「無党派層」が一番多いのだから。

 「私が進めている経済対策が間違っているのか、正しいのか。ほかに選択肢があるのか、論戦を通じて明らかにする」。会見で安倍首相はこう強調し、アベノミクスの是非を争点に選挙戦を戦うと宣言した。

 実質的に安倍政権の信任投票となる師走の選挙戦。その結果は日本経済の今後をも左右することになるのは間違いない。

このコラムについて
記者の眼

日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141119/274045/?ST=print


03. 2014年11月20日 10:14:10 : grnNd17W9c
自民は確実に議席を減らす。 野党は統一など出来ないが、自民の減らした分の議席をそれぞれが増やす。 公明は現状のままの可能性が高い。 結果としては自民は単独過半数を失い、公明を除く野党はばらばらのままとなるだろう。 自民・公明で過半数が維持できるかどうかがポイントになる。 これが過半数を維持できなければ、それこそカオスになる。 安倍は辞職せざるを得ないが、後任は増税派の麻生という訳には行かないだろう。 野党が統一候補でも出せるなら別だが、まとまる筈は無かろうと思うがね。 

04. 2014年11月20日 11:54:37 : JNdTfzBugk
消費増税の先送り解散というマジック;増税延期の正しい判断自民党あっぱれ!的論評が多いが、何のことはない10%増税の可否を国民に問う選挙つまり消費税増税解散ということだ、国民はあまりこのことに気がついていない。増税で勝った内閣はないという神話が覆されることになる重要な選挙である、もちろん多少の議席を減らすことにはなるが自民党が圧勝するのは間違いない。今回の選挙は自公で半数を確保すれば勝利という判断はここから来る。

05. 2014年11月20日 14:01:05 : E0zHQw6A1I
解散して大きく議席を減らして退陣すべきだ。
だから解散をするべきだ。右翼の星は消え去るべきだ。

06. 2014年11月21日 19:29:46 : x87Tth4XU2
他はどうであれ、沖縄の自民党は惨敗して辺野古の海の藻屑となる。

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