04. 2014年11月20日 18:46:49
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アングル:軽減税率導入で公明に配慮、「財政再建の旗」にほころびも 2014年 11月 20日 18:34 JST [東京 20日 ロイター] - 自民・公明両党は長く隔たりが大きかった軽減税率の導入時期について、消費税率10%への引き上げと同じ2017年4月を目指すことで基本合意した。衆院選を前に「同時導入」を働きかけてきた公明党に配慮した格好だ。ただ、安倍晋三首相が「旗は降ろさない」と明言した財政健全化目標の達成が、より困難になるのは必至だ。 <軽減税率17年度導入、選挙戦突入で玉虫色から前進> 与党税制協議会は20日、消費税率引き上げに伴って生活必需品の税率を低く抑える軽減税率について「2017年度からの導入を目指す」ことで合意した。 昨年の税制改正大綱では、軽減税率について「消費税率10%時に導入する」との表現だった。「消費税率10%への引き上げと同時」を主張する公明党と、再増税と同時の導入に慎重な自民党の主張の違いを反映し、玉虫色の決着となっていた。 15年度税制改正に向けて協議を進めようとしていた矢先の衆院選突入で、与党の選挙協力を進めるとういう情勢を意識し、自民党が公明党に配慮した。 与党合意では、軽減税率の導入時期について明言は避けているが、野田毅・自民党税調会長は「2017年度も2017年4月も似たようなもの」とし、「ワンボイスでやっていく」と強調。公明党の斉藤鉄夫・税調会長は「2017年4月からの導入と読める。それを目指して頑張る」と語り、消費税率10%引き上げ時と同時の導入が合意されたもようだ。 公明党は来たる12月2日公示・14日投開票の選挙戦で、軽減税率導入を前面に立てて戦う構えだ。 <消費再増税の攻防下で伏線も> 伏線は、消費税率再引き上げをめぐる攻防の中にあった。安倍首相、菅義偉官房長官とも当初から10%への引き上げには慎重で、いよいよ再引き上げ見送りの公算が大きくなった10月下旬には、公明党内からも再増税見送りを支持する声が公然と出始めた。 1)消費税率8%への引き上げによる「痛税感」が予想以上に強い、2)軽減税率導入にはシステム上1年から1年半かかり、予定通り15年10月に消費税率が10%に引き上げられても、同時導入は技術的に難しい──ことなどから、消費税率引き上げ時との同時導入を訴えてきた公明党内から「消費税率上げの先送りでもいいではないか」との声が上がっていた。 <軽減税率導入は「禍根を残す」との専門家の声> ただ、軽減税率導入については、専門家の間でも慎重論が多い。民主党税調で消費税率引き上げを主導した藤井裕久・元衆院議員は、利権の温床になりかねないとして否定的だった。 政府税制調査会委員の大田弘子・政策研究大学院大学教授はロイターの取材に対し、消費税の逆進性には給付付き税額控除などで対応し、軽減税率は「導入すべきではない」と述べている。1)軽減税率は低所得者のみならず高所得者にも適用されるため、かなりコストがかかる、2)何を軽減税率にするか線引きが難しく、政治の圧力が働く、3)諸外国で種々の弊害が指摘され、なぜ今日本で導入するのか──といったデメリットがあまりに大きく、導入すれば「相当の禍根を残す」と警告する。 <財政健全化目標達成はより困難に> 最大の問題は財源だ。与党合意では「安定財源について早急に検討を進める」とし、菅官房長官は軽減税率導入で基礎的財政収支(PB)赤字が拡大することは考えられないと反論する。 消費税1%当たりの税収は約2.7兆円。財務省によると、すべての飲食料品の税率を軽減する場合、1%当たり6600億円の税収が減少する。消費税率が10%になったとき、仮に飲食料品の税率を8%に据え置くと、1兆3200億円の減収となる。対象品目をコメ・みそ・しょうゆに限定すれば、1%当たりの減収額は200億円で、これらを8%に据え置くと約500億円の減収となる計算だ。 内閣府試算では、消費税率を予定通り10%に引き上げ、名目3%成長を実現しても、20年度には11兆円のPB赤字が残る。 安倍晋三首相は消費再増税の先送りを表明した18日、「財政再建の旗を降ろすことは決してない」と決意を語った。消費税率を10%に引き上げても、達成が難しい2020年度のPBの黒字化目標も「堅持する」と明言した。 しかし、歳出・歳入両面の具体化は来夏まで先送りされ、現実味は乏しい。加えて、衆院選をにらんで、軽減税率導入時期も十分な議論がないまま方針が固まり、首相が明言した「財政再建の旗」にもほころびが見え隠れする。 消費増税の延期で税収増が見込めるとしても、増税延期と軽減税率の導入が財政健全化目標の達成を難しくするのは確実だ。 政府の財政再建の意思は変わらないとしても、市場が注目するのは決意表明を超えた具体策。10兆円を優に超す収支ギャップを、歳出・歳入両面から切り込んでいけるのか、選挙戦での発言にも注目が集まりそうだ。 (吉川裕子:編集 石田仁志) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0J40SN20141120
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