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消費税税率の10%への引き上げと同時に導入されようとしている「軽減税率」の内実がどのようなものであるかを知る一助として、いつもの新聞についてではなく、食料品とそれを生産する農家の関係から考えてみたい。
まず、農家は、兼業が多いことからわかるように売上規模が小さく、およそ92%は消費税の非課税事業になっている。農家のおよそ85%が農産物の年間販売金額50万円以下とされる。(国内農産物出荷額に占める非課税事業者の割合は不勉強なので不明)
制度の内実に照らせば間違った言い方になるが、“雰囲気”として説明すると、非課税事業者の農家から出荷される農産物には「軽減税率」どころか消費税そのものがまったくかかっていないのである。
(そのような消費税がかかっていない農産物であっても、卸売りや小売の段階の事業者が課税事業者であれば、その段階から消費税がかかるようになる)
消費税制度では、基準とする期間における課税売上高が1千万円以下の事業者について、課税事業者になるか非課税事業者になるかを選択できる。
単一税率である現状の消費税の場合、設備投資などで仕入を積極的に行っていない限り、非課税事業者を選択したほうが税負担が少なくて済む。
※携帯電話通信事業者のように、設備投資を盛んに行い派遣労働者も大量に活用しているような企業は、消費税をほとんど負担(納付)していない可能性が高い。
(事業者が直接採用する労働者の賃金は「仕入に係わる消費税額」の控除の範囲外だが、ハケンで支払う分についてはそれを仕入として「仕入に係わる消費税額」を控除できる。このような課税ロジックが派遣労働者を増加させてきた要因の一つである)
課税事業者と非課税事業者で消費税がどのように違ってくるのか説明したい。
【総額売上:800万円・総額仕入:600万円の農家を想定】
[非課税事業者を選択]
納付すべき消費税=ゼロ円
[課税事業者を選択]
納付すべき消費税=14万8千円(800万円×8/108−600万円×8/108)
※これは、付加価値(マージン)200万円に対して8/108(およそ7.4%)の乗率で課税したことを意味する
消費税として納税すべき額がゼロと14万8千円という違いなので、このケースでは、税の負担額を少なくしたいなら非課税事業者を選択する。
※ よく見られる勘違いだが、「仕入に係わる消費税額」なるものは、あくまで消費税額を計算する過程で使われる概念であり、仕入で消費税を実際に負担(納付)しているというわけではない。
「輸出免税」に伴う消費税還付に正当な根拠があるというのなら、消費税納付額がゼロのこの非課税事業者も、“実のところ”、44.4万円の消費税を負担していることになってしまう。
逆に、この非課税事業者は消費税を負担しているわけではないと考えるのなら、いわゆる「輸出戻し税」で還付金を支払う仕組みは、政府による詐欺行為ということになる。
次に、標準税率は8%のままで非課税事業者の販売している食料品すべてに「軽減税率」5%が適用されることになったときを考える。
[非課税事業者を選択]
納付すべき消費税=ゼロ円
[課税事業者を選択]
納付すべき消費税=▲6万3千円(800万円×5/105−600万円×8/108)
「軽減税率」が適用されても、非課税事業者の消費税がゼロであることは変わらないが、課税事業者を選択していれば、消費税は納める必要がないどころか還付を受けられるものに変わる。
稼いだ付加価値(マージン)が同じでも、消費税を考慮したあとに残る付加価値が6万3千円も多くなるのだから、このケースでは、課税事業者を選択したほうがいいことになる。
ところで、このような仕組みの「軽減税率」が米・小麦・野菜・肉など食料品に適用されたからといって、最終小売価格が下がると言えるのだろうか?
この間説明してきたように、「軽減税率」は事業者の消費税負担を減少させるものであり、モノの価格そのものを下げるような効能が表立ってあるわけではない。
詳細は別の機会に説明するつもりだが、工業製品とは違い、天候変動の影響を強く受け商品の日持ちも短い生鮮食品は卸売市場で大きな価格は発生するので、善良な(利益を貪らない)事業者を想定しても、消費税の税率が消費者価格に与える影響の度合いは極めて低い。
天候などで全体の出荷量が大きく変動してしまう生鮮食品は、「軽減税率」を適用することで消費者段階の価格が下がるとは言えない。
ちなみに、「軽減税率」が導入されたとき、どういうケースであれば、消費税の負担が軽減されるだけでなく消費税の還付まで受け取れるのだろうか。
売上に占める仕入の割合が、「軽減税率/標準税率×100」の値より大きければ還付を受けるようになる。
むろん、還付を受けるほどの利益はなくとも、消費税の軽減だけでも、稼いだ付加価値(マージン)に対してきっちり消費税を納めなければならない事業者に較べれば立派に特典を得ていることになる。
この例では、8%の標準税率に対する軽減税率5%の割合は62.5%なので、仕入額が売上額の62.5%を越えていれば消費税の還付が発生する。
軽減税率がゼロ%なら、マージンがある限り((売上−仕入)>0)、どういう対売上仕入率であっても、その商品のマージンに加え消費税の還付というかたちの利益を得る。
消費税の「軽減税率」に関するこのような話は、実のところ、現状の単一税率でも起きている。「輸出免税」制度がそれである。
「輸出免税」は、商品種別ではなく販売先区分の違いで適用される「軽減税率」制度と言える。適用を受ける販売先は、外国ないし外国人(輸出)である。
非課税事業者が仕入で転嫁を受けていても仕入で消費税を負担(納付)しているとは言えないのなら、「輸出免税」(実際はゼロ%課税)の輸出売上分について「仕入に係わる消費税額」の控除ができたり、「軽減税率」という名目で「売上に係わる消費税額」を算定するための乗率を「仕入に係わる消費税額」を算定するための乗率より小さくするといった仕組みは、法の下の平等や課税の公平性に反するものになる。
日本経団連が「軽減税率」の導入に反対するのは、そのようなものが広がることにより、「輸出免税」の詐欺性に気づくひとが増えることを心配しているせいではないかと疑っている。
次は、軽減税率を適用された食料品を仕入れて調理し食事として提供する外食産業にとっての「軽減税率」を説明する予定である。
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