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4月以降の景気下降についてアベノミクスの失敗という分析も多く出されているが、そのようには捉えていない。
なぜなら、アベノミクスの経済政策的側面(第三の矢)は、付け足しでしかなく、アベノミクスの本旨は、「国債サイクル維持」政策でしかないからである。
景気浮揚効果が期待できる政府の経済政策といえば、赤字財政支出の増加や所得税・消費税の減税など限られたものしかない。それらも、経済社会の総需要を増大させる政策であり、結局のところ、生身で経済活動を行う企業の力に依拠するしかない。
(財政支出を増大させても、それに効率的に応えられる企業がなければ、インフレを昂進させるだけである)
経済成長路線確立に失敗した要因は、消費税増税政策と併行しての社会保障制度の給付縮小と負担増加、さらには円安“バンザイ”マインドにあると考えている。
景気低迷のなかでデフレに戻ってしまうとの声も聞こえてくるが、すでに、日本経済にデフレに戻れるだけの“力”はない。
国民が反乱を起こさないままデフレを長期に続けられるというのは、その国民経済が破格の競争力を維持しているという“立派な証”なのである。
ギリシャやスペインでみられるように、景気低迷状況下で財政支出を抑制することで起きる短期的デフレは別だが、1998年以降2012年までといった長期のデフレ傾向は、高い産業国際競争力を誇っていた国家でしか持続できないのである。
それは、歴史を顧みればわかる。長期にわたるデフレは、15年ほど続いた日本に限らず、19世紀後半に20年ほど続いた英国、20世紀前半に10年ほど続いた米国と、当時産業競争力がもっとも高かった国家で生じる事象である。
(日本は、80年代から90年代前半にかけて、輸出競争力の高さで「ジャパン・アズ・No.1」と言われていた世界最高の産業国家であった)
消費税増税政策と円安“バンザイ”マインドに共通する問題は、家計所得(可処分所得)の増加レベルを超える物価の上昇を引き起こすことである。
円安傾向は、それが輸出企業の生産増加や設備投資拡大に結びつけば、GDPに好影響を与えるが、この間のように、輸出企業に利益増大をもたらすだけであれば、せいぜい配当や輸出企業従業員の賃金が少し増えるだけでの効果で終わってしまう。
消費税増税が景気に及ぼす経路を簡単に説明する。
増税直後は政府やメディアによる“宣伝”効果もあり、増税で増大した事業者の負担を販売価格に転嫁できる割合が高い。しかし、全体として家計可処分所得の増加が伴っていないため、転嫁できる割合は徐々に減っていく。可処分所得がよくて2%ほど増えた程度では、それまでと同じ数量の買い物について消費税増税転嫁分を受け止められないことは火を見るより明らかである。
※ 転載する記事にも、「サラリーマンや公務員の給与・報酬総額を示す雇用者報酬は名目で前年同期比2.6%増。ただ、物価上昇の影響を除いた実質ではマイナス0.6%で、3四半期連続で減少した」とある。2.6%増加した雇用者報酬は総額なので、個々の家計が得る報酬が2.6%増えたというわけではない。就労していなかった人が就労することでも、雇用者報酬の総額は増加する。その場合、可処分所得の増加は、労働報酬が失業給付や家族から受けていた支援の額からどれだけ増えたかによる)
そのようなか、国内市場向け事業者は、値段を高くして売れなくなるのは最悪だから、消費税負担増の転嫁を減らして(=利益を減らして)商売をするようになる。
日々購入するものやサービスの価格が一気に上がるという衝撃を受けた低中所得レベルの消費者のほうも、さらに、来年10月には消費税が10%になるとか(それほど遠くない時期に20%近くまで)、年金給付額はこれから減り続けるといったいどうなってしまうのか“不安”を膨らませたことで、消費をより抑制するようになる。
消費者物価指数の上昇も、需要の増大で起きたワケではなく、円安に伴う輸入物価とりわけ原油やLNGの輸入価格が上昇したことで起きている。
電力やガソリンを供給する事業者は価格支配力が強いので、円安で膨らんだコストを最終価格に転嫁しやすい。
これは、それらのものの価格上昇で家計の可処分所得が喰われてしまうことを意味する。そのため、他の商品やサービスの購入に回せる可処分所得が減り、価格支配力に乏しい事業者は売上減・利益源・税負担増の三重苦に見舞われることになる。
このような経路は、消費者物価指数の上昇率が徐々に鈍化していることでもわかる。消費税増税後まもなくは3.7%であったものが、9月には3.0%まで下がっている。
事業者の苦境をより如実に示している指標はGDPデフレータである。
消費者物価指数は3.0%程度上昇しているのに、GDPデフレータのほうは2.1%しか上昇していない。これは、輸入物価の上昇が国内販売での価格や輸出での価格にきちんと織り込まれていないことを意味する。
このような状況こそが、第一次石油ショックで爆発的に起きたスタグフレーション(不況下での物価上昇)である。
別の機会に詳しく説明するつもりだが、今年の賃金(雇用者報酬)が増加した主たる要因は、グローバル企業従業員の賃金アップと国家公務員俸給の7.8%アップ(2年間減給措置の解除)である。
来年以降の問題として、消費税増税で苦しむ中小企業従業員賃金に下押し圧力が掛かり続けるなか、消費税増税で潤うグローバル企業が従業員の賃金を引き上げるかということを指摘できる。
グローバル企業が今年それなりに賃金を引き上げたのは、消費税増税で利益が増加することを織り込むと同時に、政府からも消費税増税実施の代償として従業員の給与を上げるよう強い働きかけがあったことによる。
来年10月の消費税増税が延期されることで、グローバル企業の来年の賃上げが萎んでしまう可能性が高い。実際にそうなれば、日本経済は、デフレに戻るのではなく、スタグフレーションの悪化という違い事象で苦しむことになってしまうだろう。
哀しいことにそのような事態に対応して政府ができることは限られている。
利益を膨らませているグローバル企業に賃上げを求め、消費者物価指数が上昇していることを理由に公務員の俸給を上げ、人材確保で難しくなっている公共投資の増大はあきらめ子育て支援などを名目に家計にばらまくことくらいしかない。
安倍政権もそれらに近いことをやるのだろうが、すぐにできるより効果的な経済政策は、消費税税率を5%に戻すことである。
それにより、中小企業も家計もわずかだが息をつけるようになる。
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GDP:実質年率1.6%減 7〜9月期
毎日新聞 2014年11月17日 08時57分(最終更新 11月17日 11時26分)
内閣府が17日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・4%減、年率換算で1.6%減となった。年率7.3%減だった4〜6月期に続く2四半期連続のマイナス成長で、直前の市場予測(約2.5%増)を大幅に下回った。今春の消費増税以降、個人消費の低迷が長期化したほか、在庫の取り崩しが進んだことが主因で、景気停滞が鮮明になっている。マイナス成長の継続で日本経済は景気後退局面に入った可能性も出てきた。
7〜9月期は、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げの是非を判断するのに最大の材料とされてきた。今回の結果を踏まえ、安倍晋三首相は18日、増税を2017年4月に1年半先送りし、衆院を解散する方針を表明する。
会見した甘利明経済再生担当相は景気低迷の背景について「デフレマインドが払拭(ふっしょく)しきれない中で増税のインパクトが想定より大きかった。消費者が生活防衛に走ったところがある」と説明した。安倍首相は前日、「(増税で)景気が腰折れし、税収が落ちれば元も子もない」と発言。18日には増税先送りだけでなく、景気下支えのため、経済対策を盛り込んだ14年度補正予算の編成を閣僚らに指示する方針だ。
7〜9月期の実質GDPの内訳では、全体の約6割を占める個人消費が前期比0.4%増。増税前の駆け込み需要の反動で5.0%減だった4〜6月期から2四半期ぶりにプラスに転じたが、力強さを欠いている。今春の消費増税や夏場の天候不順もあり、自動車や家電販売などが伸び悩んだ。内閣府幹部は「旅行や外食なども含めて、消費者が幅広く支出を抑えた」と指摘。住宅投資も、駆け込み需要の反動が続いたままで、6.7%減と2四半期連続でマイナスだった。
成長率が市場予測を大幅に下回ったのは、在庫投資が成長率を0.6ポイント押し下げたことが大きい。消費低迷を受けて企業が自動車や、パソコンなど電子通信機器の生産を抑えた結果、在庫が減少した。市場では「在庫削減が進み、過剰在庫が解消されれば、今後の生産回復につながる」との指摘もある。
設備投資も0.2%減と2四半期連続で減少。今後は好調な企業収益を背景に増加が見込まれるが、7〜9月期は低調だった。公共投資は、13年度補正予算や14年度予算に盛り込まれた公共事業の早期執行で2.2%増となり、2四半期連続で増加した。
輸出は、米国向け自動車などが低迷したが、アジア向けのスマートフォン部品などが好調で、1.3%増と2四半期ぶりのプラス。ただ、円安で海外からの原材料や燃料などの価格が高止まりし、輸入も0.8%増と2四半期ぶりに増加した。輸出から輸入を差し引いた「外需」の成長率押し上げ効果は0.1ポイントのプラスにとどまった。
物価変動を反映した名目成長率は0・8%減、年率換算で3.0%減。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比でプラス2.1%となり、2四半期連続で増加したが、消費低迷のあおりで前期比ではマイナス0.3%だった。サラリーマンや公務員の給与・報酬総額を示す雇用者報酬は名目で前年同期比2.6%増。ただ、物価上昇の影響を除いた実質ではマイナス0.6%で、3四半期連続で減少した。【小倉祥徳】
http://mainichi.jp/select/news/20141117k0000e020125000c.html
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