http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/543.html
Tweet |
17年4月に消費税の税率を10%に引き上げると同時に「軽減税率」を導入し、食料品や新聞に適用することが政府・与党の公約になるようだ。
与党の自民党・公明党は、間もなく実施される総選挙で、この「軽減税率」を、国民多数派(=裕福ではない人たち)から票を集めるための“目玉政策”として利用するだろう。
消費税増税に反対する人たちのなかにも「軽減税率」の導入を求める人がいる。それどころか、消費税制度そのものに反対する勢力から、「せめて、欧州諸国のように「軽減税率」くらいは導入して欲しい」という声さえ聞こえてくる。
そういう情況だから、「「軽減税率」は消費者が負担する消費税を軽減する仕組み」だと“誤解”もしくは“錯覚”をしている人がそれなりにいても不思議ではない。
語感や文字面にもそう思わせる雰囲気が漂っている。しかし、「軽減税率」制度は、消費者の“負担”に直接関係するような話ではなく、消費税を納付しなければならない事業者の負担を軽減するための制度なのである。
さらに言えば、「軽減税率」制度は、消費税を納付しなければならない事業者の負担を軽減するにとどまらず、ある特定の事業者に消費税制度を通じて“利益”を供与するとんでもない仕組みなのである。
「軽減税率」で軽減される“税率”は、実のところ、消費税の税率ではない。
事業者が納付すべき消費税額は、たんに計算上の話だが、「売上に係わる消費税額」から「仕入に係わる消費税額」を控除する(差し引く)ことによって算定される。
「軽減税率」で軽減される“税率”は、消費税そのものの税率ではなく、消費税を算定する計算式の一部である「売上に係わる消費税額」を求めるための乗率(消費税税率が8%であれば、総額売上に対して8/108)でしかない。
計算上の係数でしかないものをあたかも税率のように思わせていることが、“悪魔の税制”である消費税(付加価値税)が現在に至るまでドブに棄てられることなく存続している要因の一つである。
なぜなら、係数でしかないものを税率と思わせることで、「軽減税率」制度や「輸出免税」制度が正当なもので一般国民にとっても利益になるものであるかのような錯誤を生み出しているからである。
「売上に係わる消費税額」は最終的なほんとうの消費税額にとってプラスの要素、「仕入に係わる消費税額」は最終の消費税額にとってマイナスの要素である。
「売上に係わる消費税額」が大きくなればなるほど納付すべき消費税額は増大する。逆に、「売上に係わる消費税額」が小さくなればなるほど納付すべき消費税額は減少する。
最終の消費税額を減らすことになる「仕入に係わる消費税額」を求める乗数が変わらないなら、「売上に係わる消費税額」の乗数を小さくすることでプラス計上を抑え納付しなければならない消費税額を減らすことができる。
「軽減税率」が新聞に適用されると、読売新聞や朝日新聞などに限らず、聖教新聞や「しんぶん赤旗」など新聞を販売している事業者は、「仕入に係わる消費税額」を求める乗数が変わらないなら、「売上に係わる消費税額」の乗数が小さくなるので、同じマージン(付加価値)を得ても納付すべき消費税額が他の事業者よりも少なくなる。
ある新聞社は、新聞を発行するために仕入で総額500億円を費やし、広告掲載料や発行した新聞の販売を通じて総額800億円の売上があるとする。
わかりやすくするために、消費税(標準)税率はそのまま8%で、新聞に5%の軽減税率が適用されると想定して違いをみている。
(従来)
●「売上に係わる消費税額」=800億円×8/108=59.2億円
●「仕入に係わる消費税額」=500億円×8/108=37.0億円
●「消費税額」=59.2億円−37.0億円=22.2億円
(マージン300億円×8/108の値とイコールなので他の国では付加価値税と呼ぶ)
●「手取りマージン」=300億円−22.2億円=277.8億円
(軽減税率適用)
●「売上に係わる消費税額」=800億円×5/105=38.1億円
●「仕入に係わる消費税額」=500億円×8/108=37.0億円
●「消費税額」=38.1億円−37.0億円=1.1億円
●「手取りマージン」=300億円−1.1億円=298.9億円
どちらも仕入額と売上額は同じなので「売上−仕入」であるマージンも同じ300億円だが、納付すべき消費税額に21.1億円の違いが生じている。
そのため、税金を考慮した手取りマージン(付加価値)は、軽減税率の適用を受けた場合、標準税率適用のときより21.1億円も増加する。
もっとわかりやすく、新聞に「軽減税率」ゼロ%が適用された場合や「軽減税率」5%は据え置きで標準税率のほうが15%になった場合を考えてみよう。
(軽減税率ゼロ%)
●「売上に係わる消費税額」=800億円×0=0億円
●「仕入に係わる消費税額」=500億円×8/108=37.0億円
●「消費税額」=0円−37.0億円=マイナス37.0億円
●「手取りマージン」=300億円+37.0億円=337.0億円
(軽減税率5%・標準税率15%)
●「売上に係わる消費税額」=800億円×5/105=38.1億円
●「仕入に係わる消費税額」=500億円×15/115=65.2億円
●「消費税額」=38.1円−65.2億円=マイナス27.1億円
●「手取りマージン」=300億円+27.1億円=327.1億円
この2つの例では、この事業者は、消費税を負担しないどころか、消費税の還付を受けている。
はっきり言えば、消費税制度を通じて“利益”を得ているのである。その“利益”は誰から得ているからと言えば、消費税を納付している他の事業者からである。
(念のため、仕入で消費税を“負担”しているから、還付を受けるのは当然では?と考えたひとは悪魔に魅入られている可能性が高いので詐欺被害にご用心を)
最終の消費税額を減らしたければ、プラス要素である「売上に係わる消費税額」を求める乗数をより小さくするか、マイナス要素である「仕入に係わる消費税額」を求める乗数をより大きくすればいい。
要するに、「軽減税率」と標準税率の落差が大きくなればなるほど、「軽減税率」の適用を受けるものを販売している事業者は、消費税制度を通じて大きな利益を受けるようになる。
だからこそ、日本経団連などは、社会保障の持続性や財政の健全化というウソを盾にしながら、消費税増税を声高に主張するのである。
ここまでの説明で、「軽減税率」制度は、消費者の“負担”を軽くするものではなく、事業者の負担を軽くするものであることはおわかりいただけたと思う。
消費者の“負担”が軽くなるかどうかは、「軽減税率」の適用を受けたことで得た利益を購読者に還元するかどうかにかかっている。
統制経済ではなく自由主義的市場経済を標榜している日本は、コスト構成要素のある部分が安くなったからといって販売価格を安くする義務も道理もない。
新聞はインターネットやスマホの普及で部数をじりじりと減らしている。「軽減税率」の適用を受けたからといって、購読料を下げるとは考えにくい。
それより何より、財政健全化や社会保障の充実を説き、国民に消費税の負担増はしかたがないだと訴えてきた新聞社に、消費税制度を通じて利益を与えるなんてとんでもない話である。
今回は、新聞を素材に「軽減税率」の内実を説明したが、食料品についてもまったく同じ論理が働く。但し、米や生鮮食品の生産者である農家は90%以上が消費税非課税事業者なので、別の次元からの考察が必要になる。
生鮮食料品に「軽減税率」が適用されるとここで説明した論理の逆転が起きるため、とんでもない情況に陥る可能性もある。
※ 念のため、新聞に「軽減税率」が適用されても、別資本である新聞販売店は新聞社ほど「軽減税率」の恩恵を受けない。なぜなら、「売上に係わる消費税額」の乗数が5%になっても、「仕入に係わる消費税額」の乗数も5%なので、消費税が5%に戻った条件と同じになる。
(新聞販売店でも経営のためには新聞以外の仕入もあるので、その部分は、新聞社並みの特典がつく)
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK174掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。