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読者不在の抗争続けては朝日新聞は消滅しかねない 新社長決定までの権力争いの舞台裏
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41098
2014年11月15日(土) 井上 久男「ニュースの深層」 現代ビジネス
朝日新聞社は14日、次期社長に渡辺雅隆取締役(現管理・労務等担当)を昇格させる人事を内定した。同時に飯田真也上席執行役員(現東京本社代表)が代表権を持つ会長に就く人事も決めた。木村伊量社長は引責辞任して特別顧問に退く予定。12月5日に開催予定の臨時株主総会での了承を得て、その後の取締役会で正式に決まる。
■木村社長の案は、2度も過半数に達せず
朝日新聞社長人事を巡っては、経営への影響力を残したいと考える木村社長に対して、それを阻止したい役員が反発。前日の13日に開催された常務会(出席者は木村社長、和気靖常務、佐藤吉雄常務、持田周三常務の4人)では、「木村社長が後継者に推す渡辺社長案に対し、和気常務と佐藤常務が反対して飯田氏を推した」(朝日関係者)ため、2:2となって次期社長人事が決まらなかった。
その後、残り8人の取締役を集めた全取締役12人が集まった会議(正式な取締役会ではない会議)で木村氏は渡辺社長案を提案したが、賛成したのは6人で、残り6人が反対。
「当初、木村社長は、12人全員が集まる取締役全体の会議では、7:5で自分の案が通ると予測していたが、同じ政治部出身で腹心の部下の西村陽一取締役が土壇場で裏切って反対に回って飯田氏を推したため、木村社長の目論見が崩れ、渡辺社長案に賛成役員と反対役員が6:6となって常務会と同じように事態が進展しなかった」(同)ようだ。
このため、木村社長側が譲歩する形で、飯田氏を代表権のある会長に起用することを提案し、渡辺社長案に反対の6人がそれをのむ形で人事が内定した模様だ。そして、14日午後に開催された臨時取締役でこの人事案を正式に決議し、12月5日の臨時株主総会に諮る。
■傀儡政権を目指した木村社長
トップ人事が揉めた背景には、木村社長が自身の影響力を残そうと画策し、それに一部の取締役が反発したことがある。木村社長は当初、同じ政治部出身で子飼いの持田常務を後継に据えようとしたが、周囲から反発されて断念、持田氏自身も固辞した。
その次は同じく政治部出身の西村取締役を昇格させようとしたが、これも本人が固辞。このため、自分の言いなりに動きそうな取締役は渡辺氏だけとなった。そこで次期社長案に渡辺氏が浮上した。
その一方で、一連の不祥事によって部数が落ちて経営が苦しくなり始めた販売店からは「木村氏が即刻辞任して木村色を消した新体制にならなければ朝日の再生はない」といった不満の声が強まり、そうした意見をバックに、OB会である旧友会も木村社長の即刻辞任を求め始めていた。
また、従軍慰安婦検証報道やその後の対応のまずさなどは、「木村社長が編集現場にいちいち口を挟んできて、健全な編集権の独立が阻害されたからであり、この際、編集と経営を分離するためにも、社長は編集以外から出すべきではないか」(中堅幹部)といった意見も出ていた。
しかし、木村社長は、「傀儡政権」にこだわった。その理由は「近い将来、朝日新聞では持ち株会社制度を導入する計画もあり、その際に持ち株会社のトップとして復帰しようと木村氏は考えていたため、自分の指示通りに動く新社長にしたかったのではないか」(同)と見る向きもある。いずれにせよ、木村氏が権力の座に固執したため、次期社長人事が迷走したことは間違いない。
■主導権は政治部から経済部へ
新社長の渡辺氏は現在55歳。1982年入社で大阪社会部長や大阪本社編集局長などを歴任、2013年6月に取締役に就任した。新会長の飯田氏は1975年入社で現在63歳。東京と大阪で販売局長を務め、2009年に取締役に就任。今年、専務取締役を退任して上席執行役員に就き、東京本社代表をしていた。
一連の不祥事の責任を取って退任する取締役は、木村社長の他、持田常務(大阪本社代表、危機管理統括)、福地取締役(社長室長)、杉浦信之取締役(前編集担当)の4人で、喜園尚史執行役員(広報担当)も辞任する。責任を取ったのは、いずれも今回の一連の不祥事に絡んでのリスク管理対応に携わってきた人たちだ。
また、退任する取締役に代わって、社長室や管理部門担当の取締役には経済部系から2人が新たに取締役に昇格するほか、現在常勤監査役の後藤尚雄氏が常務に就く。後藤氏も経済部OBだ。新体制では、政治部出身取締役が3人から1人に、社会部出身者が3人から2人にそれぞれ減るのに対し、経済部出身者が一気に1人から4人に増える。取締役12人のうち3分の1を経済部が占めるため、これまで二代続けて政治部出身者が社長に就いて経済部は冷や飯を食わされていたが、新体制では経済部が一気に浮揚し、新社長を支え、渡辺氏の後は経済部が社長の座を取り返す作戦だろう。
いま、朝日新聞は多くのコア読者に見限られて、未曽有の危機を迎えようとしている。「院政」だの、社内派閥争いだの、読者不在の抗争を続けている間に本当に消滅しかねない。新体制では危機感をもって社内を一枚岩にまとめられることができるのか。こうした点も朝日が再生できるかどうかのカギを握っている。
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