http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/319.html
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中国政府が関係改善に向かう前提として日本政府に求めてきた内容は、「尖閣諸島に対する中国の領有権主張」・「南京虐殺などの歴史認識」・「安倍首相任期中の靖国神社不参拝」・「今回の関係悪化の責任が日本側にあることの確認」とされている。
今月7日に公表された「日中関係の改善に向けた話し合いについて」という文書は、曖昧な表現に終始し、立場の違いで如何様にも解釈できるものになっている。
しかし、水面下できちんとした合意と了解があるからこそ、あのような玉虫色の文書公表で落とし前とすることができたとも言える。
中国政府が関係改善に向かう前提として日本政府に求めてきた内容は、今年5月までに“回答”を終えている。
「中国の尖閣諸島領有権主張」と「南京虐殺」についての日本政府の見解は、3月に公表された教科書検定の内容で明らかにされた。
安倍氏の首相として残る任期中の靖国神社不参拝も、5月の高村副総裁の訪中のなかで伝言されている。
「今回の関係悪化の責任が日本にあることの確認」も、火付け人である石原前東京都知事が、3月26日に外国人特派員協会の講演で、尖閣諸島の国有化について、「民主党政権が人気稼ぎで買ったのは間違いだった。国のマター(問題)にして、相手(中国)を刺激してしまった」と語ることで、日中関係悪化の原因が当時の野田政権の対応にあったという認識を表明した。
※ 参照記事
「尖閣国有化は間違い=維新・石原氏(時事通信)」
http://www.asyura2.com/14/senkyo163/msg/365.html
■ 教科書検定という裏口を使った外交
教科書検定という裏口を使って外交問題を解決しようとする政府の態度はあまりにみっともないと思っているが、“愛国保守”を売りに支持を集めている安倍政権だから、国内世論を考慮しそのような姑息な手段を使う気持ちはわからなくはない。
転載するNHKの時論公論は、当然のこととして、日中関係という外交的側面には触れずに「教科書をどうするのか」というスタンスで説明しているが、巧妙に中国側にシグナルを送っている内容だとも言える。
● 尖閣諸島領有権問題について
そのなかで、尖閣諸島の記述についてNHKは、「政府の立場に添った形で修正も行われています。「中国が領有を主張しており、政府はその解決に向けて努力を続けています」との記述です。領有権問題が存在するといった誤解のおそれがある表現だとして検定意見が付きました。「中国が領有を主張しています」と修正しています」と説明している。
NHKは“政府の立場に添った形で修正”と強弁しているが、政府の立場に添った形の修正であるなら、「日本国有の領土である尖閣諸島の領有について争いはない」というものでなければならないはずである。
検定で修正された内容は、まさに、尖閣諸島について中国側が求めている内容である。
中国側の要求は、日本政府が「中国が領有権を主張している」ことを認めることであり、それを越えて“中国の領有権”を認めることではない。(それゆえ棚上げ論が出てくる)
NHKが言うところの“政府の立場に添った形で修正”したとされるものは、「中国が領有を主張しており、政府はその解決に向けて努力を続けています」から、「政府はその解決に向けて努力を続けています」という部分を削っただけのものである。
この修正のほうが主権国家としてかえって危うい話である。なぜなら、日本の領土に対して、「中国が領有を主張」しているのなら、日本政府がその解決(否定)に向けて努力を続けるのは当然の責務と言えるからである。
今年3月に公表された教科書検定の尖閣諸島に関する部分は、“政府の立場に添った形で修正”ではなく、中国側の意向を汲んだ修正というほかはないのである。
● 歴史認識としての南京事件
教科書検定での南京事件についてNHKの時事公論は、「申請では、「ほりょにした兵士をはじめ、多くの人々の生命をうばったと外国に報じられ、非難を受けました。」という表現になっていました。旧日本軍が南京で一般人を含む多くの人たちを殺害したこと自体は、定説となっています。最終的には、「多くの人々の生命をうばいました。」と訂正して、そのまま合格しています。教科書会社側の過剰な自衛策の表れとみる専門家もいます」と説明している。
この表現の全体は、文書ではなく画像として示されている。
[申請]
「日本軍が、占領したナンキンで、ほりょにした兵士をはじめ、多くの人々の生命をうばったと外国に報じられ、非難を受けました。(ナンキン事件)」
[修正]
「日本軍が、占領したナンキンで、ほりょにした兵士をはじめ、多くの人々の生命をうばいました(ナンキン事件)この事件は、外国に報じられ、非難を受けました。」
どちらの表現が中国側の意に沿うものであるかは言うまでもないだろう。
[申請]の表現はあくまで“外国の報道によれば”というものであるが、[修正]の表現は、日本政府が、主体的に、多くの人々の生命を奪ったことを認めている。外国の報道はそれを伝えたという位置づけになっている。
NHKは「教科書会社側の過剰な自衛策の表れとみる専門家もいます」と説明しているが、安倍首相のことを愛国保守の歴史修正主義者と受け止めている教科書会社であれば、表現が慎重になるのは致し方ないだろう。
どちらも、NHKの解説委員が説明に腐心したことが窺い知れる“中国寄り”の修正なのである。
■ 安倍首相任期中の靖国神社不参拝
高村自民党副総裁が5月に訪中した際、中国側の要人に「安倍総理はもう靖国神社には行かないと思う」と伝えていたことが報じられた。
それを報じたNHKの記事には、「ただ、あくまでも高村氏の見解であって、安倍総理に確認したうえでの発言ではないということです」との説明が加えられているが、子どもの使いではないのだから、高村氏が“感想”や“予想”を中国側に伝えたというのはナイーブすぎるだろう。
靖国神社参拝については、昨年暮れの参拝の前にも、米国とも事前に調整し了解を得、中国や韓国にも事前に趣旨を報告して了承を得ていると考えている。
バイデン副大統領の反対を押し切って強行したとも解説されているが、従米の安倍首相が米国支配層の明示した反対を強行突破できるはずもない。
また、中国と韓国に対し事前に根回ししたえで参拝を行ったことは、実際の参拝より前、日本のメディアより早く中韓のメディアが参拝を報じたことや中韓政府の参拝非難が温和であったことで推測できる。中国は、直後に気配があった反日デモを抑え込んでいる。
※ 参照投稿
「APECに合わせ日中首脳会談を:尖閣諸島と南京虐殺の問題で中国の言い分を認めた安倍首相とは喜んで会談 」
http://www.asyura2.com/14/senkyo168/msg/407.html
「「日中首脳会談」11月の実現に向け意欲 安倍総理:実施確定:高村氏の「もう靖国神社には行かない」発言を利用した“猿芝居”」
http://www.asyura2.com/14/senkyo168/msg/520.html
「桝添東京都知事訪中の真意は“安倍訪中の露払い”:日中関係悪化の理由に関する石原氏の説明と教科書検定で改善に向かう日中関係」
http://www.asyura2.com/14/senkyo164/msg/312.html
「[衆議院解散劇の裏を読む]米国も絡む日中関係に規定され動いてきた日本の12年後半政局」(http://www.asyura2.com/12/senkyo140/msg/769.html)
「茶番劇!?石原氏は、息子も出馬した総裁選での安倍勝利を予め知っていた可能性:無視されたままの党首討論会「石原重要証言」」
http://www.asyura2.com/12/senkyo140/msg/780.html
「三度目で決断した安倍首相 366日目の靖国参拝:米中韓に事前連絡した“愛国保守”パフォーマンスの代償は?」
http://www.asyura2.com/13/senkyo158/msg/487.html
「老獪な安倍サイドの仕掛けに嵌っているのは天木氏:それはいいとして、問題は安倍首相よりも軽率で愚かな天木氏の見解」
http://www.asyura2.com/14/senkyo163/msg/511.html
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時論公論 「教科書をどうするのか」
2014年04月05日 (土) 午前0時〜
西川 龍一 解説委員
【前説】
来年4月から小学校で使われる教科書の検定結果が公表されました。教科書検定を巡って、文部科学省は、通常、学習指導要領の改訂にあわせて行う検定基準の見直しを単独で行うなど、教科書作りや採択に対する国の関与を強めるような動きが見られます。教科書をどうしようというのかについて考えます。
今回の検定の対象は、来年4月から使われる小学校のすべてと、高校の一部の教科書で、小学校は申請された139点すべてが検定意見に基づく修正を経て合格しました。最近の教科書検定では、不合格になる教科書はほとんどありませんが、こうした事態を避けたい教科書会社が文部科学省側の意図をくもうとしているからだという見方もあります。
教科書検定はどのように行われているのか。教科書を作る民間の教科書会社は、あらかじめ文部科学省が公表した検定基準に基づいて編集をし、文部科学省に申請します。教科書調査官が基準などをチェックし、教科書検定調査審議会で審査して、それぞれに検定意見書を示します。教科書会社の修正を経て、文部科学大臣が合否を決めることになっています。
この検定基準は、おおむね10年に1度行われる学習指導要領の改訂にあわせて見直されてきました。ところが文部科学省は、指導要領の改訂は行われていないのに、ことし、異例の見直しを行いました。
検定基準はどのように見直されたのか。いずれも小中学校の社会や、高校の地理歴史、公民の教科書が対象で、ポイントは3つです。
1つは、▽政府の統一的な見解や確定した判例がある場合はそれを取り上げること。2つ目は▽学術的な通説が定まっていない事柄についてはバランスのとれた記述をすること。そして3つ目は▽愛国心などを盛り込んだ教育基本法の目標に照らして、重大な欠陥があると判断された場合、不合格にすることを明記したことです。
しかし、重大な欠陥とはどのようなものなのかなど、具体例は示されないだけに、不合格を恐れる教科書会社側が、ますます無難な記述しかできなくなると危惧する声もあります。
あわせて文部科学省は、教科書作りの指針となる中学校と高校の「学習指導要領の解説書」の改訂も行い、領土教育の強化を目的に、沖縄県の尖閣諸島と島根県の竹島を「我が国固有の領土」と明記し、尖閣諸島には解決すべき領有権の問題は存在しないことなどを盛り込みました。これから申請が始まる中学校の教科書検定から、この検定基準と解説書が適用されます。
検定基準を巡っては、去年、自民党の特別部会が、今の教科書は歴史や領土に関する記述に問題が多いとして見直しを提言しました。これを受けて下村文部科学大臣が検定基準を改正する考えを示していました。このため、教科書検定審議会が見直しを検討しましたが、そのための会議は、去年11月から12月にかけてわずか2回だけでした。文部科学省は、あらかじめ論点を整理してから審議会での議論を始めたもので、手続きには問題はないと説明しています。しかし、前回の見直しでは、10か月にわたって議論を積み重ねて結論を出しています。中学校の教科書申請の期限が迫る中、結論ありきで見直しを急いだという印象は否めないように思います。
さて、改めて今回の検定結果を小学校の社会を例に見てみましょう。今回の検定は、見直し前の基準で行われたわけですが、新たな基準を先取りしたかのような記述が見られます。
社会の教科書では、14冊中11冊で、尖閣諸島や竹島について取り上げました。前回記述があったのは、17冊中1冊でした。文部科学省は、「領土問題が大きな関心を呼ぶ中で、各教科書会社が判断した」と言っています。一方、小学校の学習指導要領では、必ず学ぶ内容には含まれていないことから、出版関係者の中には、教科書会社の中に政府の意向をそんたくしてあえて記述をする傾向が強まっていることの現れとの見方があります。
尖閣諸島の記述については、政府の立場に添った形で修正も行われています。「中国が領有を主張しており、政府はその解決に向けて努力を続けています」との記述です。領有権問題が存在するといった誤解のおそれがある表現だとして検定意見が付きました。「中国が領有を主張しています」と修正しています。
日本の領土について小学生から教えることは大事なことだと思います。ただ、このように記述するだけで、なぜ中国が尖閣諸島の領有を主張しているのか、なぜ韓国が竹島を占拠する状態が続くのかまで理解させる必要はないのでしょうか。
教科書会社側があえて自主規制したともとれる記述もありました。日中戦争中に起きた南京事件の記述です。
申請では、「ほりょにした兵士をはじめ、多くの人々の生命をうばったと外国に報じられ、非難を受けました。」という表現になっていました。旧日本軍が南京で一般人を含む多くの人たちを殺害したこと自体は、定説となっています。最終的には、「多くの人々の生命をうばいました。」と訂正して、そのまま合格しています。教科書会社側の過剰な自衛策の表れとみる専門家もいます。
教科書については、採択を巡る問題もあります。沖縄県竹富町は中学校の公民で、地区の協議会が選んだものとは別の教科書を使っています。地区で選ばれた教科書の在日アメリカ軍基地問題の取り扱いが不十分という理由からです。小中学校の教科書は、同じ地区の中では同じものを使うことが教科書無償措置法で義務づけられています。竹富町は、3年前から別の教科書を使っていますが、文部科学省が先月、町の教育委員会に直接、法的に改善を義務づける「是正要求」を出しました。国が市町村に直接「是正要求」を出すのは初めてのことですが、下村文部科学大臣は、「法治国家として違法状態を解消するのは当然」と説明しました。
一方で、地方教育行政法という別の法律は、教科書を選ぶ権利は市町村教育委員会にあると定めていて、町はこれを根拠に違法ではないと主張しています。文部科学省は、無償措置法の規定が優先されると説明しますが、こうした法律の矛盾とも言える状態はそのままに、地方の小さな町を責めるような対応が、公平な方法と言えるのでしょうか。すでに教科書を発注し、年間指導計画作りなどの準備を進めていたこの時期に教科書を替えることになれば、現場はむしろ混乱することになります。さらに生徒たちに配布される教科書の代金は、寄付を募ってまかなっているため、無償給付という本来の目的は遂げられている状態です。
今の教科書検定制度について、文部科学省は、民間の創意工夫を尊重し、教科書の的確性に重点を置く制度に変わってきたと説明します。しかし、今回の検定基準の見直しによって教科書会社が国から一定の方向に無言の圧力を感じるようでは、教科書の画一化が進むばかりですし、竹富町の例を見ると国は検定が終わったあとの採択にまで口出しするのかという声すら出かねません。教科書裁判の教訓を生かしてきたはずの制度が再び関与を強める方向に向かうことはないのか、今一度確認しておく必要があると思います。
(西川龍一 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/184765.html#more
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