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http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20141109/plt1411091029001-n1.htm
2014.11.09
10、11日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて行われる日中首脳会談。日中両政府は7日、その地ならしとして合意文書を発表した。だが、日中間の懸案である「歴史」「領土」「危機管理」について、双方の立場が完全に一致したわけではない。約2年半ぶりに行われる首脳会談では表向き“友好ムード”が演出されるとみられるが、3つの火種はどうなるのか。
■歴史
安倍晋三首相と習近平国家主席の会談実現に向けて水面下で行われた交渉では、中国側が、(1)安倍首相が靖国神社に参拝しないと確約(2)尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領有権問題が存在−の2点を認めるよう強く迫った。
靖国問題について、日本側は合意文書に「靖国」と明記することを拒否。首相が外国に強制されて靖国参拝をしないと明言する可能性がないことは中国側も認識しているとみられ、最終的に「政治的困難を克服」との表現に落ち着いた。
「政治的困難」に靖国問題が含まれていることは、日本外務省幹部も認めているが、首相は7日夜のBSフジ番組で「これは個別の問題を含むものではまったくない」と説明。中国側の意向に関係なく、靖国神社に参拝するかしないかを判断する考えを表明した。
首相が今後参拝すれば、中国政府が今回の合意文書に「違反」していると批判する可能性もあるが、合意文書に「靖国」の文言が入らなかった事実は重い。外務省幹部は同日夜、文書で「若干の認識の一致をみた」と表現されていることについて「そこがいいところじゃないですか。この万感の思いをかみしめてほしい」と語った。
■領土
一方、尖閣諸島の領有権問題に関しては、文書の中に「尖閣諸島」と明記された。ただ、日本側は「変な妥協は一切していない」(交渉担当者)としている。文書で「異なる見解を有していると認識」としている点についても、首相は7日夜、「日本の領海に(中国の)公船が入っていることについて中国側に抗議している。そうしたことが『緊張状態』となっているという見解となる」と述べ、あくまで安全保障問題について立場を異にしていることが文書に反映されているとしている。
とはいえ、首相自身が「中国側はおそらく中国側の考え方があるわけだが…」と認めるように、尖閣諸島領有権問題の棚上げを主張し続けてきた中国側は、日本側が歩み寄ったと評価している。国際的な宣伝戦で「日本が棚上げを認めた」と触れて回る可能性が高い。
こうした事態を見越してか、日本側は合意文書の解釈をめぐる発信に余念がない。首相や外務省幹部が7日夜に日本の立場を繰り返し説明したほか、8日には石破茂地方創生担当相も読売テレビの番組で「(尖閣に)領土問題があることを認めたわけでない。日本の姿勢はまったく変わらない」と強調した。
■危機管理
米国を含む国際社会が最も関心を寄せているのが、日中間における軍事的緊張の緩和。中国軍による射撃管制用レーダー照射や、中国軍機の異常接近などは、世界第2位と第3位の経済大国が偶発的に衝突しかねない危険をはらむからだ。
この点について、合意文書には「危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた」と明記。日中両政府が大筋合意したまま、棚ざらしとなっている「海上連絡メカニズム」の早期運用開始に期待が集まる。
ただ、連絡メカニズムに関する協議再開は9月に中国・青島市で開かれた高級事務レベル海洋協議で合意されているが、2カ月以上経過しても作業部会の日程は固まっていない。9月の海洋協議は日中双方の外務省幹部が団長を務めており、慎重姿勢を崩していない中国人民解放軍が日程調整に応じていないためだ。
日本政府内には「中国軍部は首脳レベルのお墨付きがなければ動けない」(日中関係筋)との観測もあり、谷内正太郎国家安全保障局長と中国の楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(ようけつち)国務委員との間で取り交わされた合意文書が膠着(こうちゃく)した現状を動かす保証はない。
このため、首相は7日夜、日中首脳会談で習主席に連絡メカニズムの運用開始を働きかける方針を明言した。これに対し、習主席がどのように応じるか。これが首脳会談における焦点の一つとなる。
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