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財務省は、便利な「増税→使い捨て」コンビにしようとしているのかも photo Getty Images
公明・上田勇議員に聞いた「党内の増税反対論」。財務省にとって、増税した安倍首相は「用済み」ではないか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41012
2014年11月07日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
消費税再引き上げはどうなるのか。そして解散総選挙は…。キーマンの1人である菅義偉官房長官が11月5日午前と午後の会見で、増税判断の時期について「11月と12月に出させる(国内総生産の)2つのデータをみて年内に判断する。これが政府の公式見解だ」と述べた。これをどう読み解くか。
先々週(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40887?page=7)と先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40957)で私が衆院解散の可能性を指摘したのは、菅長官が10月22日の会見で11月17日の国内総生産(GDP)1次速報を見て増税するかどうかを判断する可能性を示唆したからだ。
■「12月8日以降増税判断」なら、シナリオは5つ
11月17日なら臨時国会が開かれている最中である。解散は国会開会中が原則なので、11月中の判断であれば、安倍晋三首相は増税先送りを決めて、その是非を国民に問う形で解散しようと思えばできる形になる。菅長官は5日午後の会見(http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201411/5_p.html)では「12月8日以降に最終判断するということか」と記者に問われて「まあ…、ということです」と答えた。
「まあ…」という部分が何を意味するのか、少し引っかかるが、ここは言葉通りに受け取って12月8日以降に判断するとしよう。それなら国会会期末は11月30日なので、会期を8日以降まで延長していない限り、8日の2次速報を見て増税を先送りし解散へ、という日程は不可能になる。
すると、増税と解散のシナリオは次の5つに整理できる。
まず菅長官の公式説明にもかかわらず、安倍首相が11月中に先送りを決めて年内に解散する。この可能性はいまもまったくゼロではない。解散は総理だけに認められた権限だ。
次に12月8日以降まで会期を延長して年内解散する。だが、これは日程が厳しい。
12月8日以降に増税判断して、来年1月の通常国会冒頭に解散する手もある。
それから増税を先送りするが解散は当分、しない。
最後が増税を先送りせず、予定通り来年10月から消費税を10%に引き上げる。この可能性ももちろんある。だがそうすると、来年以降の政権運営は非常に厳しくなるだろう。
私は5日午前、消費税と解散総選挙の行方について公明党の上田勇衆院議員に電話でインタビューした。最近、上田が会長を務める党の会合で消費税再引き上げに反対する声が出たという報道があったからだ。与党の公明党内にも反対論があるのだ。
そこで、まず上田の意見を聞いてみよう。最後にもう一度、増税と解散シナリオを検討する。
■公明党内で増税反対の会合
ーー先日、公明党内で増税反対の会合があったと報道されましたが、どういう会合だったんですか?
上田:反対の結論ありき、ではありません。党の政務調査会の中に私が会長を務めている「経済再生調査会」という組織があります。そもそもは中長期的な経済財政政策はどうあるべきかを検討するのが目的なんですが、当面の重要課題として消費税率の再引き上げを行うべきかどうか、という問題がある。そこで限られた時間ではあるが、有識者から意見を聞こうということで3、4回の予定で始めました。いま2回終わったところです。
ーー報道では増税に反対ないし慎重と報じられましたね。あ、そうかと思ったんですが。
上田:これまで「消費増税は予定通りで」という我が党幹部の話が報道で先行していることもあった。ここは、やはりいろんな意見を聞いたうえで判断材料にしないといけないんじゃないか、と。調査会で結論を出すわけじゃないんですが、とくに若手議員からも「少し幅広く、聞きましょう」という要望があったので、私の経済再生調査会で引き受けたという経緯です。
ただ、私のバイアスもかかっていますので(笑)1回目は本田悦朗内閣官房参与、2回目は片岡剛士三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員をお呼びしました(注・いずれも増税反対派)。後はバランスもあるので、財政を重視する人も呼ぶ予定です。
ーー上田さんご自身のスタンスはどうなんですか。
上田:この時期の消費税再引き上げは、景気の腰折れを招く危険性が高いと思います。増税と先送りのどちらの選択をしてもリスクはありますが、腰折れリスクのほうが大きいのではないかと思うので、やはり一定期間延期すべきである、と。個人的に私はそう考えています。
ーー景気の現状については、どうみていますか。
上田:とくに消費が悪いですね。4月に消費税を引き上げた分だけ可処分所得を減らしてますから、これは当然のことですね。可処分所得がまだ上がっていないわけですから、消費が回復するにはもう少し時間がかかる。(再増税予定の)来年10月の時点で回復するのは、なかなか難しいのではないかと思います。
■公明党は「2017年4月増税」論へ
ーーどのくらいの延期を考えているんですか。それとも期限は定めず無期限延期ですか。
上田:延期の期限は定めざるをえないと思うんですね。みなさんと一緒ですけど、1年半くらい延期する。なぜ1年半かというと、景気回復まで最低1年はかかるだろうと。それと軽減税率の話で業界からヒアリングしていると、やはり「年度途中はつらい」という声が多い。そうであれば、1年半延期して4月の年度初めからが適切ではないか、と思います。
ーーそうすると、2017年4月から引き上げるという話ですね。
上田:そうです。
ーー会合に出席した議員には党の役職者とか政府の人間は入っているんですか。
上田:政府は入っていません。政務官とかは入っていたかもしれないですけど。
ーー会として意見集約するんですか。
上田:それはまだ決めていません。政府もいま点検会合やってるじゃないですか。この後、政党レベルで協議することになるのかどうか、そのへんもまだわからないし、政調の一部門である調査会で決めていいいかどうか、という問題もある。議連などでやっているなら話は別ですが。
ーー山口那津男代表は「予定通り引き上げるべし」と公言していますね。
上田:だからといって、べつにギクシャクはありません。官邸だって最初から浜田宏一先生(内閣官房参与)を呼んでるじゃないですか。与党として議論するのは当然のことです。
ーー会合開催を言い出したのは上田先生ですか。
上田:え〜、はい。そうです。ただ、党の政調で打ち合わせしている時に、別の方から「官邸でも点検会合やるっていうのに党として何もしないでいいの、という声は多いよ」という話があったので、私が引き取ったという経緯です。政調として了解されています。
ーー増税について、党内の雰囲気はどうなんですか。
上田:会合には10人から10数人が出席されているんですが「予定通り引き上げるのはリスクが高い」という声が多いですね。来られない方がどういうご意見かは分かりませんけど。
■「年内解散という話も出てくる」
ーーずばり、安倍首相はどう判断すると思いますか。
上田:これは分かりません。上げるのも上げないのもリスクがありますよね。そのリスクをどう比較するか、を最終的に詰めて判断されるんでしょう。
ーー地方はどこも景気が悪いって言ってます。いま名古屋に来ているんですが、こちらでもそうです。
上田:私の地元の横浜も悪いです。
ーー解散総選挙の可能性についてはどうですか。
上田:いやあ、分かりませんね。消費税引き上げの判断にもかかると思うんですが、もしも引き上げるとすれば、いまがいいタイミングじゃないですよね。
ーーあとに残るのは重たい案件ばかりです。たとえば集団的自衛権の法制化とか原発再稼働とか。
上田:それもそうですが、この先には社会保障制度改革の議論が出てきますよね。これも大変ですよ。あまり、いい話じゃないですから。
ーーそう、基本的には歳出を切り詰める話です。消費増税したうえ社会保障支出を切り詰める。国民には不人気な政策の話になります。
上田:消費税については国民の関心が高くて、与党に不利とか有利といった話だけではすまない。近い将来の選挙が視野に入ってくると、冷静な議論にならないですよね。政局絡みになってなかなか冷静な議論にならない。そういう意味では、選挙が視野に入っていると、社会保障制度の設計とか、それに絡んだ経済対策とか適切な対応ができなくなる可能性があります。
ーーそうすると、早めの解散という話になる。
上田:となるでしょうね。だから年内解散というような話も出てくる。
■「安倍首相は考えている」
ーーたとえば、来年4月の統一地方選と一緒にダブルで総選挙はどうですか。
上田:それはなかなか難しいんじゃないでしょうか。争点が全然違います。統一地方選は県会、市会、さらに首長選をやる場合もある。そこに衆院選となると、争点がぼけちゃいますよね。本来、地方には地方の争点があり、国には国で争点があるはずです。そこがぼけちゃんじゃないでしょうか。
ーーその指摘はまったく正しいと思います。地方重視といいながら、そもそもの出発点である選挙でごっちゃにすると、それぞれの課題が明確にならなくなる。
上田:複雑になりますよね。選挙区割も違うし。
ーーそうすると、やはり年内解散でしょうか。
上田:可能性はなくはないんじゃないですかね。少なくとも安倍首相は考えてはいると思いますよ。
ーー問題は解散日です。臨時国会は11月30日で閉じるので、12月8日のGDP2次速報を待っていたら、会期を延長しない限り、国会は閉じているので解散はできなくなりますね。
上田:うん。
ーーそうすると11月17日の1次速報をみて判断するか、あるいは12月8日の2次速報後まで国会を延長するかですが、延長した場合はだれしも解散かと思いますよ。
上田:そうですね。そこまで引っ張っちゃうと、年内投票が難しくなる。
ーー12月28日が大安ですが、1週間前の21日は先負ですから、それを除くと投票日は友引の14日くらいしかない。そこから逆算すると12月8日まで引っ張れないんじゃないですか。
上田:そうじゃないかなって感じはするんです。
ーー11月17日の1次速報を見て19日の大安で解散、それで12月14日に投票という選択肢が1つ。それを越してしまうと来年1月の通常国会で冒頭解散というシナリオもありますが、そこまで待つ理由もあまりないかな、と。増税を先送りしてくれれば国民は7割が賛成ですから、そこですぐにやったほうが政権には都合がいいと考えるのではないか。
上田:12月28日投票っていうのはできないでしょう。しかも、今年は26日が金曜日で予算編成がありますね。
ーー公明党としての選挙体制はどうですか。
上田:何もしてません。ただ11月に入って、来年の地方選に向けて動き始めますからモメンタムはできますよね、いずれにしても。
ーーありがとうございました。
■増税すれば、財務省にとって安倍首相は「用済み」
以上である。
冒頭に書いたように、これは11月5日午前のインタビューだ。菅官房長官が「11月と12月のデータをみて増税を判断する」と語った同日午前・午後の会見内容は織り込んでいない。だから、そこを割り引いて読んでほしいが、それにしても、上田も年内解散の可能性はありとみていた。
最後に先送りでなく、増税を決断した場合についても検討しておこう。増税すれば間違いなく景気は一層、悪くなる。政府は景気対策を講じるだろうが、消費増税はGDPの6割を占める最終消費を冷やすから、多少の公共事業を追加したところでたいした効果は望めないだろう。
消費を直接支援するつもりなら、たとえば家計に給付金とか商品券を支給する手もある。だが、そんなことをしたって増税はずっと続くのだから、その分、家計は財布の紐を締めるだけだ。主婦は愚かではない。
景気が悪くなれば、内閣支持率は下がる。集団的自衛権の法制化問題に加えて、政権運営が難しくなるのは避けられない。
もう1つ。財務省との関係がある。財務省からみると、安倍政権が2度目の増税を決断してくれたら感謝感激で一層、政権を支えるだろうか。そう思われるかもしれないが、実はまったく逆だ。
安倍政権が増税を2度もしてくれれば、これ以上、政権に期待するものは何もなくなる。はっきり言えば、用済みになるのだ。野田佳彦政権が増税法を成立させたとたんに、財務省が解散総選挙を迫った実例もある(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33952)。むしろ、内閣人事局を作って霞が関の幹部人事に手を突っ込んだ安倍政権は煙たい存在である。
そんな政権に比べれば、たとえば麻生太郎財務相とか谷垣禎一自民党幹事長のほうがはるかに財務省に優しい存在である。ずばり言おう。安倍首相が増税を決断すれば、財務省はその後、政権の足元をじわじわと掘り崩しにかかるのではないか。安倍政権にとっては、そこが最大の懸念材料になる。
2006年から07年にかけての第1次政権で公務員制度改革をめぐって霞が関と激突した安倍首相や菅官房長官は、そんな最深部の政治力学をよく承知している。それも織り込んだうえでの増税判断になる。
(一部敬称略)
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