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消費増税は完全に失敗した。10%増税を進めようとしていた安倍政権も、ここに来て増税に慎重な姿勢を示し始めている。
もっとも、これは安倍総理独自の判断だけでなく、アメリカの働きかけによるところが大きい。しかし、アメリカの圧力によって消費増税を決定し、アメリカの圧力によってさらなる消費増税をやめるというのであれば、「戦後レジームからの脱却」とは一体何であったのか、首を傾げざるを得ない。
ここでは、産経新聞の論説委員として一貫して消費増税に反対し続けてきた、田村秀男氏のインタビューを紹介したい。
『月刊日本』11月号
田村秀男「消費税を5%に戻せ」より
http://gekkan-nippon.com/?p=6402
なぜアメリカは消費増税に反対し始めたのか
―― アメリカはこれまで「日本は消費増税すべきだ」と主張してきました。ところが日本が8%の消費増税に踏み切ったところ、彼らは手の平を返し、「これ以上の消費増税は控えるべきだ」と主張し始めました。こうした動きをどのように見ていますか。
【田村】 日本の消費増税に対する見方が変わってきたというのはその通りだと思います。ヨーロッパの景気が悪いという現状において、日本の景気まで冷え込んでしまえば、アメリカの景気回復に遅れが出てしまうからです。
アメリカ経済は個人消費によって成り立っているため、家計が借金して消費をしなければ景気は良くなりません。その構造はリーマンショック以前から変わっていません。住宅バブルの際も、住宅を担保にして借金することができたからこそ、あれほどの消費ブームが起きたのです。
しかし、現在のアメリカはバブル崩壊の後遺症により、家計が借金を増やせないという状況にあります。実質賃金もさほど上がっておらず、景気の回復力は決して強いとは言えません。そこに不安感が残っているので、ヨーロッパや日本、あるいは新興国の景気が悪くなると、アメリカの株も売られてしまうのです。彼らが一番心配しているのはその点です。
とはいえ、基本的には、アメリカを始めとする国際金融社会は、日本がデフレであることが望ましいと考えています。デフレであれば、国内でお金を使わず、余剰資金を海外へ投資するからです。彼らが日本に対して「消費増税やるべし」と働きかけてきたのはそのためです。
要するに、アメリカは自らの国益にとって都合の良い場合は増税しろと言い、都合が悪くなれば増税はやめろと言う、ただそれだけの話です。アメリカの言うことを真に受けていると、日本経済はとんでもないことになります。
―― 安倍総理もここに来て、これ以上の消費増税には慎重な姿勢を示し始めているように見えます。安倍総理は10%増税へと踏み切るでしょうか。
【田村】 それは五分五分です。自民党内からも消費増税に慎重な意見が出始めています。例えば、岸田派に属する山本幸三議員は消費増税を1年半延期すべきだと主張しています。
山本議員は一議員のように見えるかもしれませんが、アベノミクスの異次元緩和はもともと山本議員のアイディアです。山本氏は安倍総理が自民党総裁に就任する前から、安倍総理に対して異次元緩和をすべきだと働きかけていました。安倍総理はこの金融政策を掲げて総裁になり、総選挙にも勝ったわけです。
山本議員も以前は消費増税に賛成していました。彼は私と議論した際、異次元緩和をやっている限り消費増税のマイナスの影響は相殺されると言っていました。しかし、実際には、消費増税により景気は大きく落ち込みました。山本氏は自らの過ちを認めたからこそ、消費増税延期論を主張し始めたのだと思います。安倍総理に異次元緩和を働きかけてきた山本議員が増税反対へと転じた意味は大きいと思います。
もっとも、自民党内では依然として増税派が多数派を占めており、谷垣幹事長や二階総務会長など党を仕切る幹部は増税路線で党内をまとめようとしています。たとえ安倍総理が増税に慎重だったとしても、これを押し返すのは難しいでしょう。
しかし、もしここで安倍総理がリーダーシップを発揮して増税を延期することができれば、安倍政権は本当の意味で長期政権へと踏み出すことになると思います。他方、このままズルズルと増税を飲むようなことになれば、安倍政権の今後は危ういと言わざるを得ません。(以下略)
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