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【高木桂一の『ここだけ』の話】
国益毀損に暴走する鳩山元首相。その“瀬戸際外交”に外務省は応答要領さえ作らず。「無視するのが一番!」
http://www.sankei.com/premium/news/141031/prm1410310003-n1.html
政界から引退しても「この人」はどうしてもおとなしくしてられないらしい。ノコノコと海外に出かけては「放言」「問題発言」を繰り返してきた鳩山由紀夫元首相が、今度はロシアで政府の外交方針・戦略から逸脱する発言をやらかした。「私に注目して…」と言わんばかりの懲りない言動は、折りに核とミサイルを振りかざして国際社会の目を向かせようとする、かの国の“瀬戸際外交”とだぶってくる。
鳩山氏が“健在ぶり”を示したのは今月13日のことだ。日露の一部メディアの報道を総合すると、訪問先のモスクワでプーチン大統領の側近とされるナルイシキン下院議長と会談し、和平への展望が開けないウクライナ情勢について「日本政府、特に外務省は常に米国に配慮しなければならない状況に陥っている」と言い放ったという。
鳩山氏にすれば、ウクライナ危機で発動した日本の対露制裁は米国の圧力を受けたもので、間違いだとの考えを強調したかったのだろう。
この鳩山氏の日本政府批判に対し、ナルイシキン氏は待ってましたとばかりに「日本が米国から大きな圧力を受けて制裁に同調したと認識している」と応じたという。
鳩山氏はさらに、日本で来年開催される10回目の「ロシア文化フェスティバル」に合わせたプーチン氏の訪日を提案したという。鳩山氏は同フェスティバルの日本側組織委員長で、ナルイシキン氏はロシア側の組織委員長である。
つまり鳩山氏は自身のからむ“お祭り”に花を添えてもらうべく、そのタイミングでの大統領の訪日をイベントのカウンターパートに頼んだのだ。まさに安倍晋三政権が今秋のプーチン氏訪日実現の可能性を懸命に模索していたときのことである。
その後、政府はプーチン氏の今秋の訪日は断念し、来年に持ち越す判断に至った。だが、あくまで個人的事情でプーチン氏を日本に招こうとする鳩山氏の発言が、政府の対露外交を度外視する「不規則発言」であったことは言うまでもない。
これに対し、ナルイシキン氏がどう返答したかは報じられていない。しかし対露制裁をめぐる日本政府批判しかり、来年の大統領訪日提案しかり、鳩山氏はいかなる資格と了見で発言したのだろうか。
日本外務省幹部はこう指摘する。
「プーチン政権は実権もない鳩山氏の発言を真に受けているわけがない。だが、その発言はロシア国内で報道されており、国民の間には日本の元首相の見解として浸透している。突き詰めれば日露関係にとって邪魔であることは間違いない。マスコミも鳩山氏の発言を無視すればいいのだが報道の自由があるから…」
筆者も結果的に、ここで鳩山発言を報じる形になったが、前出の日本外務省幹部はこう付け加えた。
「政府はそもそも鳩山氏の訪露にタッチしていないし、モスクワの大使館が便宜供与することもなかった。当然、政府は表向き、鳩山氏の発言を完全無視している。官房長官の記者会見向けの『応答要領』も作らなかった」
「応答要領」とは、記者会見で想定される質問に対し事前に所管省庁が政府見解をメモとして作成するものだが、鳩山発言に関しては外務省も「ばからしくて、付き合いきれない」と判断したという。
「おかげさまで、首相を辞めた後も海外でさまざまな活動をできている。この財産を国益に資するように使わせていただきたい」
鳩山氏は平成24年11月の政界引退記者会見でこう述べたが、過去にその軽い口から飛び出した、国益を毀損(きそん)させる問題発言は枚挙にいとまがない。
首相を経験し、なおも議員バッジを付けていたときのことだ。民主党政権末期の同年4月、当時の野田佳彦首相の再三にわたる自制要請を振り切り、党最高顧問として訪問したイランで、国際原子力機関(IAEA)は「ダブルスタンダード(二重基準)を適用して不公平だ」と語った、とイラン側に発表された。核開発をめぐり国際社会で孤立の道をたどるイランの手のひらに乗せられた不用意な発言だった。
鳩山氏は当時、このイラン訪問を渡航3日前まで秘匿し、ホテルや車の手配など費用負担までイラン側の丸抱えで訪れた。首相の親書も持っていない。つまり「教科書に載せたいような悪い二元外交」(対談集『動乱のインテリジェンス』で元外務省主任分析官・佐藤優氏)だった。
政界から身を引いた後の最たる問題発言は、昨年6月に中国を訪問したときの尖閣諸島(沖縄県石垣市)放言だった。
鳩山氏は清華大学主催のフォーラムで、尖閣諸島について「中国からみれば(日本が)盗んだ思われても仕方がない」「中国にも中国の言い分がある」などと言い放ったのだ。
安倍政権からは「国賊」(小野寺五典防衛相。当時)、「国益を著しく損なう」(岸田文雄外相)と非難の声が相次いだことは言うまでもない。
鳩山氏はさる9月20日には、沖縄県名護市の漁港で行われた、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)移設に伴う新基地建設反対集会に出席した。
鳩山氏は首相時代に、普天間飛行場は「最低でも県外」と主張しておきながら迷走し、結局は名護市辺野古移設に回帰したはずだ。にもかかわらず昨春、自ら設立した「東アジア共同体研究所」理事長として、臆面もなく反対派の支援を続けているのだ。
その反対集会には約5千人が参加しシュプレヒコールを繰り返していたが、公安関係者はこう言う。
「反対集会の参加者には相当数の『革マル』メンバーが紛れ込んでいることが確認されている。今や民間人とはいえ、元首相の肩書がある鳩山さんがこういう怪しい集会に出ていていのですかねえ…」
もはや鳩山氏の“暴走”は止めようがないが、この元首相の止まぬ放言癖について外務省幹部はこう解説してみせた。
「政界を去った後も、世間に振り向いてもらいたくしようがないのだろう。米国はじめ国際社会にかまってもらいたいがために、ミサイルを放ったり、核実験を強行したりと挑発行為を繰り返してしてきた北朝鮮と同じようなもの。最近の北に対する米国の如く過剰に反応せずに、事実上の無視を決め込むことが一番だ」
おそらく鳩山氏にとっては、前出の沖縄での反対集会はさぞ心残りがあろう。沖縄県の地元紙「沖縄タイムス」「琉球新報」はいずれも集会自自体を一面で大きく報じていたが、鳩山氏が参加したことは全く取り上げられなかったからだ。
ここで筆者も宣言する。鳩山氏が今後、いかなる放言をしようとも一切取り合わないと−。(政治部編集委員 高木桂一)
[産経ニュース 2014/10/31]
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