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野党が閣僚スキャンダルの追及に夢中なればなるほど、国会リセットには好都合?〔PHOTO〕gettyimages
増税の凍結延期から解散総選挙へ---菅義偉官房長官の発言を読み解いた私の見立て
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40957
2014年10月31日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
■間違えるかもしれないリスクを背負った上で
私は先週24日公開のコラムの最後で、消費税再引き上げの先送りは必至とみたうえで「安倍晋三政権は解散総選挙を考え始めたのではないか」と書いた。増税の凍結延期から解散総選挙へ、という見立てである。
本来なら、それだけで1本のコラムを書くはずなのだが、先に話を聞いていた稲田朋美自民党政調会長のインタビューを落とすわけにはいかないので、苦肉の策で「付け足し」にして書いた。私が解散総選挙の可能性に触れたのは、コラムで書いたように10月22日午後のニッポン放送番組『ザ・ボイス〜そこまで言うか』が最初である。
その時点で解散総選挙の可能性に踏み込んで話し活字にしたのは、私だけだ。いずれ新聞やテレビも追っかけてくるだろう、と思っていたら、29日までに産経新聞や毎日新聞、読売新聞、時事通信、TBSが「年内解散論が急浮上」(産経、10月28日付朝刊)などと書いてきた。
これらの記事は、たとえば読売の「自民内に年内解散論」(29日付朝刊)のように、安倍政権や自民党内に「解散論が出てきた」という話である。私のコラムは自民党内の空気を書いたのではない。私自身の読みで解散の可能性を指摘したのだ。同じようなものだと思われるかもしれないが、まったく違う。
私は政府高官や自民党議員に取材した感触を記事を書いたのではない。コラムをお読みいただければお分かりのように、放送当日の菅義偉官房長官の発言を読み解いた結果である。だから、私は自分が間違えるかもしれないリスクを背負っている。
新聞やテレビは客観報道が建前だから、記者の読みだけでは「解散へ」などという記事は書けない。だれかの裏付けが必要なのだ。解散話となると、それは総理の専権事項だから、総理から確認しないと書けない。そこで次善の策として「自民党内には解散論も」という報道になる。
私は記者が独断で「自分はこうみる」というスタイルの記事があってもいいと思う。記者が間違うかもしれないリスクを背負うなら、署名入りで書いたっていいではないか。それはジャーナリズムの自立性を高める。問題はリスクを背負う勇気があるかどうか、である。
これはジャーナリズム、ジャーナリストにとって根本にかかわる話だ。政府高官や有力議員の話を聞かずに自分の見立てを書くわけにはいかない、あるいは高官や有力議員の見立てと違った話を書けないと考えるなら、それは記者の敗北だ。いつまで経っても、高官や議員の後ろにくっついているしかなくなる。そしてやがてポチになる。
■これまで閉会中に衆院が解散された例はない
29日には、自民党の谷垣禎一幹事長がテレビカメラの前で「我々もちょっと厳しい状況で打開しなきゃいけないという時には、そりゃいろいろ議論は出てきますよね」と語り、解散総選挙の可能性に触れた。こうなると、永田町は解散風がますます強くなるだろう。
そんな流れになると指摘したうえで、今回は新聞やテレビが触れていない大事な問題を書いておきたい。まず、考える前提である。新聞記事はどこも明確に指摘していないが、そもそも衆院解散は国会会期中でなければ事実上、できない。
憲法にそんな条文があるわけではないが、解散は総理大臣が国民の代表である衆院議員のクビを切るという話なので、議員が納得したうえで、というわけでもないが、みんながいるとき、すなわち国会開会中のほうが望ましいとされている。実際、これまで閉会中に衆院が解散された例はない。
原則として会期中でなければならないとすると、いったいいつ解散できるのか。これが最初の問題である。新聞やテレビの報道はその点について、まったく詰めていない。
たとえば、毎日新聞は「じわり解散ムード…閣僚不祥事、相次ぎ」(10月28日付朝刊)という記事で「自民党執行部に近い中堅議員は『再増税の判断を保留し、12月解散に踏み切ってはどうか』とつぶやく」と書いて、12月解散の可能性に触れている。
だが12月解散だとすると、臨時国会の会期末が11月30日であるのとどう整合するのか。国会が閉じてしまったら、いくら総理だって解散できないではないか。12月解散なら当然、臨時国会を延長しなければならない。これが第1点だ。
それから記事は、安倍首相が12月8日以降の年内に再増税の判断をする予定と書いている。再増税の凍結延期が前提だとしたら、解散は12月8日以降にならざるをえない。つまり会期延長は不可欠という話になる。では、どうして会期延長について触れないのか。一読者として読むと、クエスチョンマークが3つくらい付いてしまう。
■菅長官は記者の感性を試していた?
再増税の判断を留保して12月解散というシナリオはちょっと考えにくい。いままで政権が言ってきたこととまったく違ってしまうからだ。
国会開会中でなければ解散できない、という前提で考えれば、増税先送りも開会中でなければならない。すると先送りの決断は11月30日までか、あるいは会期を延長して12月8日以降という話になる。
私が「速報値で判断する」という菅義偉官房長官の発言に注目したのは、そういう事情からだ。11月17日の1次速報値で判断するなら会期中であり、安倍首相が解散しようと思えばできる自由な環境になるのだ。
政府の用語に従えば、国内総生産(GDP)には1次速報と2次速報がある(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kouhyou/kouhyou_top.html)。菅長官はもしも記者に「速報値で判断とは、11月17日以降に判断という意味か」と問われたら「速報値には12月8日の2次速報もある」と答えるつもりだったのではないか。
それなら「これまでの説明と同じ」とも言えるし、11月17日の後に判断したとしても「速報値で判断という説明に嘘はない」と言えるからだ。菅長官は記者の感性を試していたのだろう。
実際には、記者からそんな質問は出なかった。情けない話である。菅長官は追い打ち質問を待っていただろう。そういう質問が出れば、どっちともとれるように答える。その結果「安倍政権は会期中に増税判断をするかもしれない。そうなれば解散じゃないか」という観測が広がる。それが野党に対するけん制になる。
菅長官の思惑はそのあたりだろうと思いながら、私は先週のコラムを書いた。政権の思惑がどうだろうと関係ない。私の商売は書くことである。
■増税は「前政権からの負の遺産」
話を元に戻すと、新聞、テレビが12月解散説を報じるなら、そのとき国会は開かれているかどうかについても触れなければ、つじつまが合わない。読者に政局の核心部分が伝わらない。つまり、自民党内の空気取材だけではダメなのだ。
解散するなら大義は何か、という問題もある。大義などと振りかぶると、何か「勤王の志士」を連想させるようで、私は好きではない。別の言い方をすると、解散に正統性があるか、という問題である。
私は「再増税を先送りして衆院を解散する」のは完全に正統性があると思う。なぜかといえば、そもそも消費増税は安倍政権が考えた話ではなかった。民主党の野田佳彦政権当時、自民党と公明党が加わった3党合意で決めた話だ。当時の自民党総裁は谷垣であり、安倍ではない。
つまり増税は野田と谷垣、山口那津男公明党代表が決めた話で、安倍政権は宿題として背負わされた立場である。まして増税とアベノミクスとは何の関係もない。私に言わせれば、増税は「前政権からの負の遺産」である。
本来なら、安倍政権が誕生したとき「増税は野田政権の話だから、私の政権は引き継がない」と言ったっておかしくなかった。だが谷垣に敬意を払い、安倍自身も賛成投票したから引き継がざるをえなかった。それで8%には引き上げた。そういう話である。
ところが実際に引き上げてみたら、景気が悪くなった。であれば、景気次第で判断する弾力条項が法律に盛り込まれているのだから、10%への引き上げは延期したとしてもおかしくない。
ただし、それには政権として「けじめをつける」。つまり「安倍政権は前政権が決めた増税を凍結する。その代わり、それでいいかどうか、あらためて国民に信を問う」という姿勢は政治の正統性を確保するうえで筋が通っていると思う。
むしろ、解散しないで増税凍結するほうがおかしいくらいである。一言で言えば「安倍政権は前政権と違う大きな決断をするから、あらためて国民の声を聞きます」という話である。
先週のコラムで書いた内容を1点、修正しておきたい。それは最後の「となると増税凍結法案を成立させた後、11月19日の大安で解散、12月14日の友引あたりが投票日か」という部分だ。増税凍結法案はべつに臨時国会で絶対に成立させる必要はない。解散総選挙後、来年の通常国会で成立させたっていい。むしろ、総選挙後にしたほうが国民の信を問う正統性がより高まるともいえる。
つまり、安倍首相は国民に「みなさん、私は増税凍結延期を決断しました。それには凍結法案を成立させる必要があります。だから、私の政権を支持してください」と訴えるのだ。そうなれば、国民の7割が増税反対なのだから凍結法案を成立させるためにも、安倍政権を支持して投票するだろう。国民の支持を背景に増税勢力と戦う構図にするのだ。
野党はといえば、閣僚スキャンダルの追及に夢中になっている。ところが、ここへきて民主党の枝野幸男幹事長ら野党側にも問題が出てきた。野党がスキャンダル追及に夢中になればなるほど、安倍政権としたら「そんな国会でいいのか、国民に声を聞いてみる」という話になるだろう。安倍首相は苦境に追い込まれるどころか、ますます国会のリセットに好都合とほくそ笑んでいるのではないか。
(一部敬称略)
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