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2010年5月、普天間基地の県外移設を断念。当時は沖縄県民の落胆と非難は大きかったが、今は「沖縄のことで本当に動こうとしてくれた首相」と評価する声もある
過熱する沖縄県知事選直前! 元総理大臣・鳩山友紀夫の弁明【前編】「官僚たちの反発で“裸の王様”状態になっていた」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141019-00037396-playboyz-pol
週プレNEWS 10月19日(日)6時0分配信
普天間基地の辺野古移設を最大の争点とする沖縄県知事選が11月に行なわれる。だが、本当に辺野古に基地は必要なのか? 普天間の移設先を「国外、最低でも県外」と公約するも、最終的には撤回した元首相・鳩山友紀夫氏が当時の舞台裏を語る。
■日本の官僚が「首相を潰して」と頼んでいた?
―鳩山さんが政権交代で首相になられた当初、沖縄の米軍普天間基地の移設先として、辺野古ではなく、「国外、最低でも県外」という方針を示されました。当時、それを具現化するための青写真はどこまであったのでしょう?
世間ではまるで「アメリカという巨大な風車に、高貴な血を引くドン・キホーテが突っ込んで見事にぶっ飛ばされた。そして、それをキッカケに民主党政権の崩壊が始まった」と見ている人も多いと思うのですが?
鳩山 もともと旧民主党を立ち上げるときに「常時駐留なき安全保障」ということを謳(うた)いました。米軍に依存しきって日本の安全が担保されることは独立国としては極めて異常なことで、その国の平和、安全というものは基本的に自分たちでつくらなければならない。
そこで出てきた発想のひとつが、日米安保の下に危機存亡のときには米軍が協力をするが、常時駐留はしないで結構だと。基本的に自分たちの安全は自分たちで守れるよう努力するので、米軍はお下がりいただきたい。そういう考え方で「常駐なき駐留」ということを訴えました。
そのことは当時の米国国務省のアーミテージさんと議論したことがあります。当然、かなりの論争になりましたが、最後には「わかった。鳩山が言っていることはよく理解できた、しかし、その言葉を『常駐なき駐留』ではなく『条件付き駐留』ではだめなのか?」とおっしゃっていました。
つまり、「常駐なき駐留」はアメリカが受け入れられないものではなかったと私は理解をしています。1995年に少女暴行事件が起きた際、沖縄で大きな抗議運動が起こり、米軍は撤退、もしくはできる限り基地を縮小せざるを得ないという危機感を持っていたと、当時のモンデール駐日大使がその後の証言で明かしています。
しかし、そのときに「いや、それは困る」と言ったのが当時の自民党政府だった。むしろ日本のほうがかたくなに「沖縄は特別だ」「米軍基地を本土には置きたくない。だからぜひ沖縄にいてください」、そういう発想だったと彼は言うんですね。
しかし、沖縄県民の気持ちは「これ以上、沖縄に基地はいらない、基地を減らしてほしい」というものでしたので、当時の民主党は「最低でも県外」という考え方を示したのです。そして2009年の選挙でそのことを申し上げ、政権を取った以上、その実現に努力しようと思ったわけです。
―その時点で具体的な方法論というのは、どの程度検討されていたのでしょうか?
鳩山 具体的な方法論がまったくなかったわけではありません。例えば、グアムのテニアン島とか。すでにアメリカもグアムに海兵隊を移す考えを持っていたわけで、「最低でも県外、できれば国外」の具体的なイメージとして私が最初に持っていたのは海外でした。
また、ローテーションでオーストラリアやグアムを回りながら、そのなかで沖縄にも海兵隊の存在を認めるという形での駐留もあり得ると、頭の中には描いていました。
ところが、実際に政権を取ってみると、本来なら私をサポートしてくれるはずの外務省や防衛省は「無理だ」と、一切聞く耳を持とうとしなかった。
―それを具体化するために外務省なり防衛省なり官僚に知恵を出してもらうはずが、笛吹けど踊らず状態だったと?
鳩山 そうです。まったく踊らないどころか、これは後にウィキリークスによって明らかになった話(*)ですが、例えば日本の官僚がアメリカ側に「鳩山政権にもっと厳しく対応してくれ」と要請していたりした。それは私が首相を辞めた後でわかったことなわけですが……。
*『琉球049 新報』2011年5月5日付【http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-176779 -storytopic-3.html】
―日本の官僚が「うちの首相を潰(つぶ)してください」とアメリカに頼んでいたのですか?
鳩山 ワシントンの駐米大使も「鳩山内閣は自分たちの思い描いている安全保障の理論と違う。だから早く自民党政権に戻すように」という動きをしていたようです。
私自身、彼らが「面従腹背」、つまり、表向き私の言うことを聞くふりをしながら、裏では足を引っ張る態度でいたことをわかっていなかった。その反省を今は大変強く持っていますが、現実には多勢に無勢というか、“裸の王様”状態になっていたのは、お恥ずかしい話ですが事実だと思います。
―一方、アメリカの本意はどうだったのでしょう?
鳩山 オバマ大統領との会談のなかで、「日本の政権も変わったから安全保障に関しても新しい立場で臨んでいきたい。当然、日米安保は重要だと考えているが、その具体的な方法論については今までの政権と同じではない」と申し上げました。すると、オバマ大統領からも「日本も新しい政権が誕生したんだから、新しい発想を受け入れる」という姿勢を示していただいた。
ただし、普天間の移設問題に関してはあまり時間をかけすぎずに、ある時点できちんと答えを出すから、私を信頼してほしい、「トラストミー」ということを申し上げた。
―有名な「トラストミー」発言ですね?
鳩山 ところがその「トラストミー」が曲解されて、「普天間の移設先は辺野古に戻すから信じてほしい」という話として報じられてしまったんです。
―その解釈もおそらく外務省内でつくられ、意図的にメディアに流されたものだと?
鳩山 そうだと思います。少なくとも私自身はそういう意味で言ったつもりはまったくない。こうした経緯を考えると、むしろ日本の官僚が普天間基地の辺野古移転に固執していて、アメリカはもっと柔軟な発想を持っていたのではないかと。今も日本がしっかりとした結論を示せば、それを受け入れる度量はアメリカにはあるんじゃないかという気がしています。
―その一方で、外務省からは「アメリカも辺野古にしろと急いでいる。首相、どうかご決断を!」という情報が伝えられていたと?
鳩山 私はオバマ大統領が本当はどう考えておられたのか、実はよくわからない。ただし、少なくとも彼から「辺野古」という具体的な要求が出たことはなかった。おそらく、アメリカの中にも温度差があったのかもしれません。その温度差を利用して、外務省や防衛省の官僚が「一度、辺野古と決めたんだから、またそこに戻せるよう鳩山に厳しい対応をしてくれ」と誘導していったように思います。
●鳩山友紀夫(HATOYAMA YUKIO)
1947年生まれ、東京都出身。1986年の総選挙で初当選。2009年、民主党代表に就任し総選挙で勝利、第93代内閣総理大臣となる。沖縄基地問題で「最低でも県外移設」と主張し精力的に活動するも、2010年6月、総理辞任。2012年の総選挙前に政界を引退。昨年から政治信念である「友愛」の文字を取り「友紀夫」名で活動している
*明日配信の後編に続く!
(取材・文/川喜田 研 撮影/五十嵐和博)
◇
過熱する沖縄県知事選直前! 元総理大臣・鳩山由紀夫の弁明【後編】「官僚は私を諦めさせるためにウソをついた」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141020-00037436-playboyz-pol
週プレNEWS 10月20日(月)6時0分配信
「国外、最低でも県外」ーーかつて総理大臣を務めていたときに鳩山由紀夫氏が明言した言葉だ。もし叶っていれば、普天間基地の辺野古移設問題も起きていなかったはず。しかし、鳩山氏はそれを断念。その真相からは、日本政府がつき続けたウソが見えてきた。
―結局、鳩山さんも最後は「辺野古への移転」を受け入れてしまいます。首相を辞任されるときの記者会見で「学べば学ぶほど沖縄基地、海兵隊の抑止力の重要性に思い至った」とのコメントがありましたが、あれは本心? それとも言わされたんでしょうか?
鳩山 正直申し上げれば、あのようなことを言わざるを得ない状況に追い込まれた。そのときに自分としては辺野古にはしたくなかったが、辺野古移転に戻らざるを得ない理屈をつくらなきゃいけない。そこで、陸海空の沖縄駐留米軍全体としての抑止力があり、そのなかの一翼を海兵隊が担っているという言い方で逃げようとしたというのは事実です。
―後悔されてますか?
鳩山 何より、移転先を辺野古に戻してしまったことを後悔していますし、あのような理屈をつけた発言をしてしまったことには当然、悔いが残ります。
―日本の官僚は沖縄に海兵隊がいることが本当に抑止力になると信じているのでしょうか?
鳩山 外務省、防衛省の役人、また自民党も今でも米軍が沖縄に存在していることが抑止力だという考え方です。ただし、私は中国とアメリカが戦争する、特に尖閣諸島を守るために米軍が戦争するなどということはあり得ないと思います。
アメリカは、日本以上に中国と協力していくことが将来的にメリットがあるとわかっていますから、いたずらに中国脅威論を振りかざし、それに対抗するために日米が協力するとか、米軍基地が沖縄にあることが中国に対する抑止力になり、それはアメリカのためでもあるんだ、みたいな発想は根本的な誤りがあると思いますね。
―そういうロジックは主に日本側から出されたものだと?
鳩山 もし沖縄の米軍基地が抑止力というなら、沖縄はあまりにも中国に近すぎて、もしミサイルが来たら、あっという間に潰されてしまう。抑止力になるどころか最初に壊滅させられてしまう場所だから、もっと遠くに基地を置いたほうが戦略的にもいいことはアメリカもわかっているはずです。
―つまり、「国外、最低でも県外」は決して荒唐無稽(こうとうむけい)な提案ではなかった。それを阻んだ最大の障害は、沖縄の米軍基地を「抑止力」とする考えに固執し続けている日本側の安全保障政策、官僚組織ということですか?
鳩山 そうだと思います。
―ところで、辺野古に戻したことを悔いているとのことですが、実際にどの段階で諦めさせられたのでしょう?
鳩山 この問題に解決のめどがつけられなければ2010年の参院選に勝てないと考えたのが戦術ミスでした。
参院選が7月なので、タイムリミットは5月。政権発足後はまだ時間的余裕があると思ったのですが、最初の数ヵ月は予算編成などでまったく余裕がなくなってしまい、気がつけばもう4月、5月しか残ってない。この期間で基地移設を議論するのはあまりにも性急すぎた。
しかし、この数ヵ月の間にいくつか提案もいただき、最も有力な案として残ったのが鹿児島県の徳之島でした。2009年12月頃に徳之島の青年たちや当時の町長から、「島の活性化のため普天間の移設先として徳之島を」というお話を非公式にいただき、この方向でなんとかしたいと動いていたのです。ところが、その情報が外に漏れて一斉に反対運動が巻き起こり、今まで賛成していた人たちや町長さんたちも、反対と言わざるを得なくなって潰れてしまった。
さらに、県外移設を諦めたもうひとつの決め手が、当時、日本の官僚を通じて「米国の意向」として伝えられていた「普天間基地の移転先は沖縄の海兵隊基地から60マイル以内」という条件です。60マイルというと約96km圏内ですから、徳之島はもちろん、そもそもどうやったって沖縄県外には出せない。この話で心臓を刺されたような感じになりましたね。
―それは本当にアメリカからの要望だったのですか?
鳩山 いいえ。これも後でわかったことなのですが、アメリカ側からはそんな条件は一切出ていなかったのです。
―最近、辺野古が完成するまで、佐賀に普天間のオスプレイを移すという話がありました。
鳩山 沖縄の海兵隊基地から60マイル以内という条件が本当ならば、佐賀なんてとんでもない話であり得ない。結局、60マイルは私を諦めさせるための理屈として、官僚がつくった話だったのでしょう。
―あえて厳しい言い方をすれば鳩山首相をはじめとする当時の民主党が、官僚のコントロールやメディアの使い方、時間のマネジメントなど、政権担当能力が足りなかったとは感じます。
ただ、すべてを民主党政権のせいにするのではなく、あのとき、実際に何があったのか? 「最低でも県外」の実現を阻んだのはなんだったのかを検証することは、今、沖縄の基地問題を考える上で必要だと思います。
尖閣をめぐる中国の攻勢など東アジアの情勢は、鳩山さんが首相当時と大きく変化しています。それも含めて沖縄の基地問題を今どう見られていますか?
鳩山 先日、菅(すが)官房長官が沖縄に行き、「あと5年で普天間を運用停止する」と明言しました。しかし、仮に辺野古に基地が造られるとしても2019年には間に合わない。それでも普天間を運用停止できるなら、そもそも辺野古は必要ないことになる。それを官房長官自らが言ってしまったのです。もちろん、この発言が知事選に向けた単なる空手形であれば、5年で普天間運用停止が実現可能かどうか考える必要もないのでしょうが……。しかし、この選挙は単に沖縄のトップを決めるだけではありません。これは日米関係の将来を大きく変える可能性のある、大変意味ある重要な知事選だと、私は認識しています。
辺野古に戻してしまった自分の失敗で、沖縄県民の皆さんに大変な失望と苦痛を味わわせてしまった。その意味で今、私にできることは、辺野古をはじめ、「もう沖縄に米軍基地はいらない」というオール沖縄の切実な思いに寄り添い努力することだと思っています。
●鳩山友紀夫(HATOYAMA YUKIO)
1947年生まれ、東京都出身。1986年の総選挙で初当選。2009年、民主党代表に就任し総選挙で勝利、第93代内閣総理大臣となる。沖縄基地問題で「最低でも県外移設」と主張し精力的に活動するも、2010年6月、総理辞任。2012年の総選挙前に政界を引退。昨年から政治信念である「友愛」の文字を取り「友紀夫」名で活動している
(取材・文/川喜田 研 撮影/五十嵐和博)
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