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[永田町インサイド]秘密保護、欧米水準に 12月10日法施行
安保情報、米などと共有へ一歩 公開制度の議論不可欠
機密漏洩に厳罰を科す特定秘密保護法が12月10日に施行される。秘密保全法制が欧米並みになることで、政府は安全保障に関する情報を米国などと共有できると期待している。秘密指定を一定期間後に解除し、情報を開示する制度の拡充論議は進んでいない。指定乱用を防ぐための監視体制の実効性を確保するとともに、公開制度の見直しに向けた議論が求められる。
(学頭貴子)
安倍晋三首相は「国民と国の安全を守るために必要不可欠」として秘密保護法制定を急いだ。核・ミサイル開発を進める北朝鮮や、海洋進出を活発化させる中国の台頭など、日本を取り巻く安保環境は厳しさを増しており、米国などとの安保情報の共有は欠かせないからだ。
米国から要請
秘密保護法制定のきっかけには同盟国である米国の要請もあった。アーミテージ元国務副長官らが2007年にまとめた対日政策報告書(第2次アーミテージ・ナイ報告)では機密保全の強化が求められた。日本では同年にイージス艦のデータ漏洩が発覚するなど、情報漏洩事件が相次いでいた。
法施行後、防衛省、外務省など19の行政機関が特定秘密の指定を開始する。特定秘密は防衛、外交など4分野の55項目に及ぶ。漏洩した公務員や契約企業の社員は10年以下の懲役に、共謀したりそそのかしたりした人も5年以下の懲役になる。
特定秘密を扱う公務員や契約企業の社員は国籍など家族の情報や、精神疾患の治療歴などを審査して厳しく絞り込む。関係企業からは「プライベートに関わる部分が必要なのか理解に苦しむ」との声が上がるほどだ。
指定範囲は曖昧
特定秘密保護法は「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない」とうたうが、懸念は残る。55項目は「自衛隊の訓練、演習」「国民生命、身体保護」など抽象的な表現で、指定範囲がはっきりしない。
秘密指定の有効期間は5年だが、更新可能だ。30年を超えて指定する場合は内閣の承認が必要で、慎重に判断するとしている。指定期間が30年以下で「歴史公文書」にあたらないと判断した場合には首相の同意を得て廃棄できる。60年超の指定は「暗号」などに限る。秘密指定の延長、解除にあたっては、時の首相の判断が極めて重要だ。
米国には国民が秘密指定を解除するよう請求できる制度があるが、日本にはない。欧米水準になった秘密保護に比べると、公開制度は途上といえるかもしれない。情報公開制度に詳しい山田健太・専修大教授は「重要な情報を政府が意図的に隠さないようにするための秘密の管理、情報公開の仕組みを十分議論してこなかった」と指摘する。
乱用監視組織、独立性が焦点
秘密指定の乱用を防ぐための監視機能は、政府と国会、有識者の3者がそれぞれ担う。
政府の監視組織はいずれも首相直轄だ。内閣官房に設置する「内閣保全監視委員会」は官房長官をトップに事務次官級で構成。19の行政機関を指揮監督する。内閣府には審議官級の「独立公文書管理監」と約20人の「情報保全監察室」を置き、指定や解除の適否を検証、監察する。
乱用の有無を判断するときに鍵を握るのは職員らによる内部通報だ。特定秘密保護法の運用基準は、内部通報者を守るため「通報したことを理由に不利益な取り扱いをしないよう適切な措置を講じなければならない」と定めている。
ただし、通報にあたっては、秘密が漏れないよう、記録文書の番号を使うなどの工夫をしなければならない。原則、その秘密を管理する機関が通報窓口になる。独立公文書管理監にも通報できるが、各機関が調査しない場合などに限られる。管理監が秘密文書の提出と指定解除を要求した場合も、各機関は拒否できる。
身内による「お手盛り監視」にならないようにするためには、少なくとも、管理監と保全監察室の職員が、出身機関の意向などに左右されない独立性を確保しておかなければならない。出身機関に戻らないルールづくりなどが必要だ。
菅義偉官房長官は、15日の記者会見で管理監について、国家公務員を起用した場合でも独立性を確保できるとの認識を示したうえで「正義感にあふれ、仕事をしっかりする人を選ぶのは当然だ」と話した。
外部の監視組織としては、衆参両院に置く「情報監視審査会」と、有識者の「情報保全諮問会議」があるが、勧告や意見は強制力に乏しい。民主党は昨年の臨時国会で裁判所が秘密文書を直接調べ、開示の可否を判断する「インカメラ審理」を提案したが、大きな議論にはなっていない。
[日経新聞10月19日朝刊P.5]
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