04. 2014年10月19日 08:47:01
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クローズアップ2014:「看板」小渕氏、辞任不可避 政権に大きな打撃 毎日新聞 2014年10月19日 毎日新聞 東京朝刊 政治団体の不明朗会計問題で、小渕優子経済産業相の辞任が不可避の情勢となっている。辞任となれば政権が大きな打撃を受けるだけに、安倍晋三首相は引き続き小渕氏に説明を求める方針だ。ただ、問題となった支援者向けの観劇会を巡っては、小渕氏側の政治団体が一部費用を負担する前提で会費を設定した疑いがあり、国民が納得する説明は難しそうだ。首相は9月の内閣改造で党内の不満解消を狙ったが、「政治とカネ」問題の噴出という誤算に見舞われている。【本多健、阿部亮介、松本晃】 ◇「ドミノ倒し」募る危機感 「納得できる説明をして、閣僚を続けるのがベストだ」。自民党幹部は、小渕氏が今週にも自らの疑惑について説明し、辞任を免れることに期待を示した。 小渕氏に近い与党議員の間には、「政治とカネ」とはほど遠いとの印象を持たれていた小渕氏が誠心誠意説明することで、会計処理上の「記載ミス」に過ぎなかったとの印象付けができれば、逃げ切れるのではないかとの思惑がある。 だが、小渕氏の地元後援会が開いた観劇会をめぐっては、入場料や食事代の支出を大きく下回る収入しか報告されていなかった。差額を小渕氏側が負担していれば、有権者への利益供与を禁じた公職選挙法違反、収入を政治資金収支報告書に記載していなければ政治資金規正法違反にあたる疑いがある。 どちらに転んでも違法性が疑われる厳しい局面にあるのは間違いなく、自民党内は「記載漏れと言って逃れられるような状況ではない」(中堅議員)との声が強い。政府内でも「不明朗な会計処理が多額に及んでおり、世論が付いていかない」(関係者)との見方が出ている。 それでも安倍政権が小渕氏の説明を待っているのは、女性活躍推進を掲げる第2次安倍改造内閣の5人の女性閣僚の一人であるのみならず、将来の首相候補とみなされる「看板閣僚」であるためだ。カネに絡む疑惑で辞任すれば、政権に大きなダメージを与えることは必至。首相周辺も「裏金などはなく、帳簿上のミスだ」と語り、小渕氏を擁護する姿勢を示している。 また、閣僚の一人は「辞任なんかしたら、この後、次々とドミノ倒しになる。耐え抜くことが大事。最初の1例目を耐えることだ」と語る。政権中枢が拙速な判断を避ける姿勢を示しているのは、第1次安倍内閣で「政治とカネ」を巡る疑惑で相次いで閣僚が交代した「辞任ドミノ」の再現を恐れているからだ。 第1次安倍内閣では、佐田玄一郎行政改革担当相が、自らの政治団体が事実上存在しない事務所に計約7800万円の経費を支出したとの虚偽の収支報告書を提出していた疑惑が発覚して辞任した。その後、資金管理団体の事務所で高額な光熱水費を計上していた疑惑などで追及を受けた松岡利勝農相が自殺。久間章生防衛相、赤城徳彦農相、遠藤武彦農相(いずれも当時)も相次いで辞任に追い込まれ、政権は体力を奪われ、第1次政権が短命に終わる一因となった。 実際、今国会でも、野党側の「政治とカネ」疑惑の追及の対象は小渕氏にとどまらない。小渕氏の辞任が辞任ドミノ再現の引き金になる可能性は否定できない状況にあるのが実態だ。 松島みどり法相は2012〜14年に「うちわ」を約178万円で2万1980本作製し、選挙区内のイベントで配布。野党は「配布は法律で禁じられている寄付」に当たるとして、民主党議員が東京地検に刑事告発した。江渡聡徳防衛相の資金管理団体が、江渡氏本人に09年と12年に計350万円を寄付したと収支報告書に記載していたことが発覚。寄付行為は禁じられており、江渡氏は「人件費だった」と収支報告書を訂正したが、疑惑を野党が追及している。 ◇内閣改造、思わぬ誤算 9月の内閣改造は、自民党内に停滞する約50人に上る「入閣待機組」を処遇する意味合いが強かった。また、「女性活躍」を政策の柱に据えたことに合わせ、女性閣僚を増やすことにも主眼があった。しかし、12年12月の安倍政権発足後、一人も欠けることなく、比較的安定感があった布陣を入れ替えることは、リスクと背中合わせだった。 政府関係者は「やっぱり内閣改造は大変だと思った。1年8カ月で一度も閣僚が代わらなかった最初の内閣は偉大だった」と漏らす。改造直後に自民党幹部から「石破茂地方創生担当相と女性閣僚以外に目立つ顔ぶれはいない」と批判する声があがるほど、もとから改造不要論が根強かった。 チェック体制の甘さも指摘されている。首相周辺は組閣や改造時、入閣候補に不祥事がないか調べる「身体検査」を行う。今回も初入閣候補を中心に調査したが、小渕氏の入閣は2度目だったこともあり、今回発覚した政治資金の問題を見逃した可能性は否めない。 過去の内閣改造を振り返ると、支持率が低迷している場合には政権浮揚につながる例がある一方で、新閣僚の問題が発覚し、打撃を受けたケースもある。 成功例としては、小泉純一郎首相が03年9月の改造で、当時、首相候補だった麻生太郎氏を総務相、谷垣禎一氏を財務相に抜てき。同時に行った自民党役員人事では安倍首相を幹事長に登用した。毎日新聞の世論調査で内閣支持率は11ポイント上がり、65%になった。 民主党政権時代には、菅直人首相が10年9月の改造で、対立していた小沢一郎元代表(現生活の党代表)のグループを一掃し、「脱小沢路線」を明確に打ち出したことで、支持率が上昇した事例がある。 一方で、失敗例としては、橋本龍太郎首相が1997年9月、派閥均衡を重視する改造を断行し、ロッキード事件で有罪が確定した佐藤孝行氏を行政改革担当の総務庁長官(当時)に起用した。これによって有権者からの反発が強まり、佐藤氏はわずか12日間で辞任。内閣支持率は改造前から4ポイント下がり、33%となって、首相の求心力低下を招いた。 ◇小渕氏二つの政治団体 観劇会費、負担前提か 1万2000円でまかなえず 問題視されている10年と11年の支援者向け観劇会について、小渕氏は「観劇料金、バス代金の両方とも実費をお支払いいただいている」と国会で答弁し、1人1万2000円程度の会費を実費として参加者から徴収している、と説明した。 ところが、共催した二つの政治団体「小渕優子後援会」と「自民党群馬県ふるさと振興支部」の政治資金収支報告書を分析すると、往復のバス代を含めれば1万2000円で開催費をまかなうのは不可能で、会費額が最初から小渕氏側の費用負担を前提に設定されていた疑いがある。 報告書にある記載された2年分の収入は742万円。一方、「入場料(観劇代)・食事代」は3384万円で、その差額2642万円が、公職選挙法の禁じている有権者への利益供与に当たるのではないかと批判されている。 2団体の収支報告書によると、明治座(東京・日本橋浜町)への支出と同じ「大会費」「行事費」名目で、観劇会の前後に計1284万円がバス会社などに支払われた。関係者の証言では、毎年26台前後の大型バスをチャーターしていたという。小渕氏の国会答弁通り「バス代金」も実費徴収の対象だったとすれば、集めなければならない開催費の総額は4668万円となり、疑惑を呼ぶ差額は3926万円に膨らむ。 小渕氏は「実費の徴収状況は調査中」などとして、観劇会の参加者数や経費明細を明らかにしていない。明治座のホームページによると会場の座席数は1368ある。仮に2年連続で全席が埋まったとしても、会費が小渕氏の言う通り1万2000円なら収入総額は3283万円で、必要な開催費にはるかに届かない。満席を前提に会費を1万7000円とすれば、ようやく収支は釣り合う。 参加者によると、毎年の観劇会では、大物演歌歌手や俳優による公演の前に、小渕氏や後援会幹部のあいさつがあったという。公選法などに基づく現行のルールは、「政治集会」の場合、政治団体による社会通念上やむを得ない最小限度の旅費負担や弁当支給を認めている。 実態はともかく観劇会を「政治集会」とした場合、バス代と弁当支給は許される。仮に、報告書に記載された収入742万円を大物演歌歌手や俳優を呼んで会場を借り切る「観劇代」とすれば、弁当代は観劇代の4倍近い2642万円となり不自然だ。実際の収入が記載と異なれば政治資金規正法違反(虚偽記載)で、記載通りなら参加者から会費をきちんと集めていない利益供与の疑いがある。週明けの説明が注目される。 http://mainichi.jp/shimen/news/20141019ddm003010138000c.html |